映画「ウェディング・ハイ」公式サイト

映画「ウェディング・ハイ」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

これから披露するのは、結婚式場を舞台にした大騒動が巻き起こる物語である。主演の篠原涼子が熱血ウェディングプランナーに扮し、「結婚式は一生に一度の晴れ舞台」というロマンあふれるテーマを、予想外の方向へ突き進ませているのだ。結婚式といえば、どの家庭にもドラマがあるものだが、本作ではそれぞれの登場人物が抱える“こじらせ度”が想像以上にハイテンション。主賓スピーチや余興をめぐるバトル、さらには新婦の元カレが乗り込むなど、勢いが止まらない展開が続く。この一筋縄ではいかないハチャメチャさは、笑いながらも結婚式を見つめ直すきっかけにもなるかもしれない。世間的には「ご祝儀泥棒」の話なんてまず耳にしないだろうが、本作ではまさかの絡み方をしてくるから油断ならない。

さて、このドタバタ劇、果たしてどんな結末が待ち受けているのか。ここからは容赦なく本編の核心まで触れていくので、未見の方は覚悟を決めてほしい。

映画「ウェディング・ハイ」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「ウェディング・ハイ」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作は「結婚式なんて面倒くさい」と思いがちな新郎の視点と、「一世一代の大舞台を最高に仕上げたい」という新婦の視点を同時に描きつつ、そこに強烈な脇役たちがどんどん乱入してくる構成である。まず注目すべきは、篠原涼子演じるウェディングプランナーの中越真帆だ。新郎新婦の「一生に一度を後悔させたくない」という信念を胸に、どんなに無茶な要求でも断らず突き進む姿勢が頼もしい。結婚式を台無しにしかねない課題が連発するのに、涼しい顔で(実際は汗だくになりながら)解決策を考える。その頑張りっぷりは時に涙ぐましく、時に滑稽なほどのパワフルさを感じる。

物語の中心にいる新郎新婦は、やや温度差があるように見える。新郎・彰人はあまりハイテンションな性格ではなく、基本は周囲に流されやすいタイプ。式の準備や招待客選定、衣装合わせなど、彼にとっては「選ばなきゃいけないことが多すぎる」という地獄のような日々だ。世の中には「結婚式を挙げるかどうか」からして相当もめるカップルがいるのだが、彼の場合、どうやら新婦や双方の両親の熱意に押し切られているらしい。それでも「せっかくやるなら失敗したくない」という気持ちがないわけではなく、その素直さがかえって面白いトラブルに巻き込まれるきっかけになっている。

一方の新婦・遥は明るく素直な性格で、「結婚式は思い出を形にする最高のイベント」と信じて疑わない。引き出物の中身からお色直しのドレス選びまで、何から何までこだわりたい派である。そんな彼女の元カレが披露宴にやってくるという事態が起きた時点で、通常なら「えっ、それは困る!」と慌てふためきそうなものだが、ここでも遥は前向きすぎるゆえに、ある意味ではあまり気づいていない部分もある。結果として「いろんな人の熱量がごちゃ混ぜになった大混乱」が結婚式当日に爆発する形になるのだ。

そして新郎新婦の周囲には、新郎の上司や友人、父親同士など、みごとに濃いキャラクターが集結している。特に強烈なのは「主賓スピーチに人生を懸ける上司」や「力作すぎる映像を披露したがる後輩」、さらに「マグロ解体ショーに燃える花嫁の父」など、結婚式経験者なら「こういう人、いたな」と共感しそうなネタを全力でやってくる。普通なら式の流れをシンプルにまとめたいところが、みんな張り切りすぎて持ち時間をオーバー。最終的にはあちこちに皺寄せが来て、肝心の新郎新婦の時間がカツカツになるという、あるある話が極限まで拡大したような騒動になっている。

ここでカオスがさらに加速するのは、新婦の元カレ・裕也の存在だ。彼が思い込みで「遥は親が決めた相手と渋々結婚するんじゃないか?」と勘違いして、文字どおり披露宴に“乱入”しようとする。しかも途中で牡蠣に当たって腹を壊しつつ、式場に入り込んではタイミングを見計らうわけだが、どうにも彼の体調は戻らないし、スタッフのような男(実は脱獄した泥棒)もいて、なぜかスムーズに潜入できない。いわゆる「花嫁奪還劇」にしてはグダグダが過ぎるのだけれど、本作においてはむしろ、そのグダグダこそがスパイスになっていると言っていい。

さらに言うなら、あちこちで派手な余興が同時多発的に行われる中、裏ではご祝儀泥棒が暗躍しており、それを元カレが追いかけまわすという構図が生まれる。結婚式とは無縁の事件が混ざり合うのに、タイミングという奇跡が重なるからこそ、式本編は大失敗に至らず、ギリギリのところで落ち着いていく。こうした複数のストーリーを並行して転がす脚本は、いかにもバカリズムらしい“こじらせ具合”を見せてくれる。まさに「大人の事情と偶然が交錯し、収拾がつかないけど最終的におさまる」という独特の持ち味だ。

さて、クライマックスは新郎新婦が作り上げたプログラムをすべて消化できるのかどうか、というハラハラ感が最大限に高まる瞬間だ。主賓スピーチが長すぎて大幅に押すわ、乾杯のあいさつに余計なギャグが入りすぎるわ、紹介VTRが本気のショートフィルム級になっているわで、披露宴本来の予定が崩壊寸前。それを中越がタイトな時間管理で巻き返していく姿は、まるで火消しに走る消防士のようでもある。ダンスと太鼓演奏を同時進行にしちゃうアイデアなんて、普通なら絶対にやらないはずだが、本編では見事に融合してしまうから侮れない。個人的には、こういった「予想外の組み合わせが絶妙にハマる瞬間」を見ると、思わず拍手したくなる気分になる。

そして最終的には、「やっぱり結婚式はいいものだ」という結論に着地する。序盤で「結婚式なんて面倒だ」とぼやいていた新郎も、最後には感動に包まれて「ああ、やって良かったんだな」と思うに至る。現実の結婚式でも、多くのカップルが当日はドタバタに追われながらも、終わってみれば良い思い出になったと感じるものだ。本作はその「良い思い出になるまでの道のり」を、めいっぱい笑いに転がしながら、しっかりと温かいところに着地させる。しかもウェディングプランナーが実は離婚していたりと、ちょっとほろ苦い背景も垣間見せるのが面白い。結婚式はゴールではなく、その先も人生はいろいろ続くのだ、というメッセージを暗に伝えているようにも見える。

脱獄犯を演じる向井理や、新婦の元カレ役の岩田剛典といったイケメン俳優を、騒動の裏側に配置している点も見逃せない。イケメン同士が衝突するかと思いきや、結局は「匂い」に敗北するというオチは予想外すぎて腹を抱えて笑ってしまった。実はそこにこそ、脚本の芸が詰まっていると言えるかもしれない。きれいごとだけでは終わらないのが結婚式、という現実をうまく描き出しているのだ。

本作を観終わった後、筆者は「こんなにいっぱい詰め込んでも破綻しないものなのか」と感心した。結婚式という狭い舞台ながら、ありとあらゆる登場人物にストーリーがあり、さすがに飽和しそうなものだが、脚本と演出のバランス感覚が良いのだろう。ちゃんとそれぞれに見せ場があって、最後は次の披露宴の時間に追われつつも感動的なエンディングを迎える。この「詰め込みすぎの一日」を一気に見せられる快感こそが、本作最大の魅力ではないかと感じた。たとえば披露宴でありがちなパターンを大げさに描く一方、想像を超えるアクシデントも同時に走らせて、現実とは違うスケールの盛り上がりを作っている。いわば一種の祭りである。

もちろん、現実で同じようなことが起きたら式場スタッフは阿鼻叫喚だろうが、本作の中越は最後まで走り抜く。彼女が走るたびに髪が乱れ、メイクがやや崩れていく様子は、ある意味ですごく勇敢だ。自分の仕事に誇りを持っているからこそ、絶対に諦めず、どんなトラブルも少し強引にでも調整してしまう。そこに心打たれる人は多いのではないか。式場スタッフだって、一度きりの披露宴を“成功”で終わらせたい気持ちは強いはずだ。それを形にするのは簡単ではないが、中越の姿からは「最後までやりきる覚悟」が伝わってくる。主人公というより、縁の下の力持ちとしてめいっぱい輝いているのが印象的である。

結婚式は、新郎新婦だけでなく、ゲスト全員の“人生の思い出の一部”になる。だからこそ、本作のように周辺キャラのエピソードが多彩だと、むしろリアリティを感じる部分がある。みんながそれぞれ複雑な思惑を抱きながら、式の空気を盛り上げたり引っかき回したりする。最終的にはハッピーエンドで幕を閉じるのだが、その背景には数々のドラマがあったと想像できるわけだ。これこそ「結婚式あるある」の極みでもあり、本作ならではのサービス精神ともいえよう。

鑑賞後に残るのは「やっぱり人間、みんな何かしらこじらせているけど、いざという時は協力するものだ」という妙な安心感だ。招待客も新郎新婦も、さらには謎の第三者までもがバタバタ動きまわることで、奇妙なチームワークが生まれる。結婚式の本質は「お祝い」と「感謝」だが、それを前面に押し出しつつも泥臭いゴタゴタをしっかり描くのが、本作の味わい深さといえよう。とにかく最後に新郎新婦の笑顔が見られればいいじゃないか、という熱い思いが全編にわたって感じられる。

もし「自分たちが結婚式を挙げるなら、こんなドタバタは勘弁してほしい」と思いつつも、観客としては笑い飛ばせるはずだ。実際のところ、人生最大級のイベントは想定外のハプニングだらけ。そんなリアルを面白おかしく拡張しつつ、最後にしっかり涙を誘ってくれるからこそ、本作は忘れ難い一品になっている。筆者も、終盤の「お色直し即戻り」や余興同時進行の場面など、すさまじい馬力を感じて拍手喝采だった。結婚式を経験した人はもちろん、これから予定している人にも、ぜひ一度は観てほしい作品である。

映画「ウェディング・ハイ」はこんな人にオススメ!

結婚式というと、華やかなイメージの裏でいろいろ大変なのでは…と不安を抱える人は多いだろう。そんな方こそ、この作品をおすすめしたい。なぜなら、式の準備段階から当日までの“あるある”ネタを総まとめにしつつ、予想もしない事件まで詰め込んでいるからだ。「自分が当事者になる前に、ここまでの混沌を先に観ておけば、ちょっとやそっとのトラブルでは動じないのでは?」とさえ思える。新郎新婦のみならず、ゲストとして式に出席するときも、本作が頭にあると「こんなことも起こり得るんだな」と余裕を持って対応できそうだ。

また、本作は単なるハッピーウェディングだけに終わらず、ウェディングプランナーの苦労やゲストの抱える事情など、式の裏側にあるドラマをうまく描いている。だからこそ、「結婚式は誰のために行うのか」というテーマについて、改めて考えさせられるきっかけにもなるだろう。周囲を巻き込みながらも、最終的には「結婚式って良いな」と再確認できるストーリーなので、「一度も式を挙げたことがない」「式を挙げるか迷っている」という人にも響くと思われる。もちろん、既に式を経験した夫婦には「わかるわかる!」と頷きつつ楽しんでもらえるはずだ。

さらに、バカリズムらしい脚本の妙も見どころのひとつ。それぞれのキャラクターが持つちょっと変わった行動原理が、最終的にひとつの大団円を迎える様子は、観終わったあと元気をもらえること間違いなし。爆笑が散りばめられているので、明るい気分になりたい人、日常から少しだけ離れた騒ぎを堪能したい人にはぜひ体験してほしい。要するに「結婚式のリアルを笑い飛ばしたい人」「結婚式のイメージを良い意味で覆したい人」にはピッタリの映画といえるだろう。

まとめ

本作は「結婚式は新郎新婦だけのものではない」という事実を痛感させてくれる。ゲストそれぞれが抱える事情や想いが渦巻き、なかには不可解な行動を取る者まで混ざり合う。その結果、式場はまさかのアクション大作ばりの展開になるが、最後は「めでたし、めでたし」で締めくくられるのが爽快だ。

劇中では多くのトラブルが起きるのに、プランナーが全力でサポートし、みんなで乗り越える過程を描いている点に心が温まる。多少の無茶ぶりも強引にまとめ上げる様子は、どこか日本人の“助け合い精神”を示しているかのようだ。なにより、本作を観終わると結婚式に対する価値観が少し変わるかもしれない。

悲喜こもごもを全部ひっくるめて、「結婚式って悪くないな」と思わせる力がある。笑いとトラブルにまみれても、最後に新郎新婦が最高の笑顔でゴールインする姿は見ていて清々しい。結婚式には“人生最大のイベント”と言えるくらいのドラマが詰まっているのだと再認識させられる作品である。