映画「バイオレンスアクション」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
専門学生が実は殺し屋という突拍子もない設定に、主演・橋本環奈の軽やかなアクションが加わり、話題性たっぷりの作品である。見た目は可憐でも中身は最強というギャップが際立ち、予想外の展開にドギマギさせられるのも醍醐味だ。ほんわかムードで繰り広げられる会話と、血が飛び散る激しい戦闘描写の混ぜ合わせが絶妙で、思わず吹き出しそうになる瞬間があるのもポイント。気軽に楽しめそうに見えて、背後にはしっかりとしたドラマが存在しているため、意外なほど奥深い内容に驚かされるはずだ。暗く重たいだけで終わらないところが、この作品の面白いところでもある。
ここから先はネタバレを含むため、鑑賞前の方はご注意いただきたいが、後で作品を観ても楽しめるよう、なるべく分かりやすく展開を語っていくつもりだ。どんな結末が待っているのか期待しながら読み進めてもらえれば幸いである。
映画「バイオレンスアクション」の個人的評価
評価:★★★☆☆
映画「バイオレンスアクション」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作は、「専門学生が副業で殺し屋をしている」という一見ふざけたような設定から始まる。しかし、その根底には「人を裁く」という重いテーマや、少し肩透かしを食らうような軽やかな雰囲気が同居しているのが興味深い。橋本環奈演じる主人公のケイは、勉強に励みながらも淡々と“仕事”をこなす。いわくつきの依頼が舞い込んだら、お店の仲間とゆるい会話を交わしつつ現場へ向かい、躊躇なく大立ち回りを繰り広げるのだ。そこにヒヤリとさせる迫力があるかと思えば、何ともいえない軽快なやり取りが挟まり、見る者の気持ちをほぐす。殺しと平凡な日常が同じステージに共存しているという不思議さが、本作ならではの味わいである。
しかも、主人公が「バイト感覚」で血なまぐさい仕事を引き受けるため、観る側は「どうしても深刻になりきれない」状況に陥る。例えば、ケイはヤクザとの抗争に巻き込まれながらも、専門学校の試験勉強を優先しようとするし、「資格に合格すれば未来は明るいかも」などという発言をさらっと口にする。高揚感とゆるさが同居する世界観のおかげで、通常のハードボイルドな殺し屋映画とは一味違う空気が流れているのだ。ここが本作の大きな魅力といえる。
また、周囲の人間模様にも注目したい。ケイをサポートする運転手のヅラさんは、妙に親しみやすいキャラクターで、彼女がどれだけ残酷な現場にいても、あっけらかんと送り迎えをしてくれる。しかも「体調大丈夫か?」などと声をかける姿勢に、ほのかな温もりがにじむ。さらに、ケイに惚れてしまう同級生の渡辺は、彼女の本当の姿に気づくと逆に「自分もこの世界に入りたい」と言い出すのだから、呆れるやら笑えるやらだ。殺し屋組織を隠れ蓑にしているラーメン屋の店長も含め、どこかズレている人々が集結しているため、それぞれのやり取りにクスリとさせられる場面が多い。凄惨な流血シーンと一緒に、軽妙な掛け合いが連続するあたりは斬新でもある。
一方で、対立するヤクザ組織や狂気じみた殺し屋同士の戦いは、かなり激しい。銃撃戦や派手なアクションはもちろんだが、中でも「みちたかくん」と呼ばれる危険人物が強烈な存在感を放つ。超人的な動きで相手を追い詰める姿は不気味かつ恐ろしいのに、どこかリズミカルにアクションをこなしているようにも見えるから不思議だ。相手を切り刻んだり、銃弾を華麗にかわしたりする光景が、ある種の躍動感を伴って展開する。そのため、観客としては「あまりに人間離れしている」と困惑しつつも、目が離せなくなるのである。
ケイとみちたかくんの対決は、本作のクライマックスと呼べる迫力に満ちている。お互いが一歩も引かず、しかも地味に嫌な手段まで使うため、勝負の行方が読めないまま突き進む。最終的にどういう決着を迎えるかは実際に目にしてほしいが、その幕引きにはちょっとした切なさや寂寥感も感じられる。血で血を洗う抗争の中であっても、どこか情に流されそうになる瞬間があり、それがケイや周囲の人々の人間性を垣間見せるポイントになるのだ。「ああ、こんな連中でも何かしらの夢や希望があったのだな」と思わせるシーンが随所に散りばめられているから、不思議と彼らの姿を憎みきれない。むしろ応援したくなってしまう自分に気づいて少し驚くかもしれない。
さらに、作品終盤では「本当に守りたいものとは何か」という問いが浮かび上がる。表面的には殺しや暴力が絶えない世界だが、登場人物たちが大切にしているものは意外とシンプルだ。そこにはケイが追いかける資格試験の合格や、仲間同士のさりげない気遣い、あるいは行きたかった海外の街での新たな暮らしなど、それぞれのささやかな望みがある。そうした小さな願いを胸に抱きながら、大の大人たちがド派手に火花を散らす光景は、どこか笑えるのに妙に胸に刺さる。締めくくりに向かうにつれて、「普通の日常を手に入れること」や「ささやかな幸せこそが一番難しいのでは」というテーマが見え隠れするのが何とも印象的である。
橋本環奈のキャラクターは、正直いって無理やり感があるほど可愛らしい。だが、そんな彼女が演じるケイには「意外と地に足がついている人間性」が感じられるのだ。血に染まった現場であっても真顔で淡々と対処し、合間にスマホで勉強をチェックしている姿を見ていると、「なんでそこまで平然とやっていられるのか」と突っ込みたくなる。同時に、彼女なりの一生懸命さがひしひしと伝わってくるから不思議である。そのギャップがケイという人物を単なる“萌えキャラ”や“ヒーロー像”にとどめず、不思議な説得力を生み出しているように思われる。
映像面では、ワイヤーアクションが少々大げさに映る場面もあるが、スピード感の演出やコミカルなカット割りを織り交ぜることで、勢いを失わないように工夫されている。実際の動きがどこまで俳優本人の演技かはさておき、少なくとも画面からは「なんだかスルッと身体が動いている」という不思議な爽快感が感じられる。もちろん、人を選ぶアクションスタイルであることは確かだが、それこそが本作の“らしさ”でもあるため、どう受け止めるかは観客次第だろう。
また、肝心なドラマ部分では、ヤクザの抗争にまつわる裏金や跡目争いが絡むため、意外とシリアスな空気も漂っている。裏切りや復讐が渦巻く泥沼状態に放り込まれる形で、ケイたちがどう立ち回るかが注目ポイントだ。彼女が仕事仲間と戦略を立てつつ、敵陣営の盲点をついていく展開はなかなか面白い。まるでアクションRPGをプレイしているかのような感覚で、次々に迫ってくる強敵をどう倒すかワクワクしながら見守れる。
とはいえ、本作を“リアルな殺し屋映画”と期待するのは間違いだろう。血が飛ぶ描写こそあるが、基本的にファンタジー寄りの世界観だし、法や社会のシビアな面を深く掘り下げるようなドラマでもない。「日常のすぐ裏側に非日常が転がっている」という不思議さや、「こんなに軽いノリで殺し合いが起きるのか」という意外性を楽しむ作品と割り切ったほうがいい。そこに大真面目な正義や倫理を見いだそうとしてしまうと、少し戸惑うかもしれない。
それでも、「何か大きな野望を実現しよう」と意気込むヤクザたちが思いがけず滑稽に映ったり、ケイの相棒たちがいちいちギャグめいた会話を繰り広げたりと、要所要所で笑える要素が挟まれているため、観終わったあとに「ああ、なんだか妙に元気が出る」と感じる人もいるはずだ。実際、作中で描かれるキャラクター同士の絆は、やたらとあたたかいところがあり、最終的には「人を大切にしたい」というメッセージが浮かび上がる。もちろん血みどろなシーンは苦手という方もいるかもしれないが、刺激と軽妙さの両方を兼ね備えた作風は、ある意味で新鮮だといえる。
まとめると、本作は殺し屋映画の定番を踏まえながらも、意外なほど軽やかでポップに仕上がっているのが特徴である。凶暴なシーンがあっても後味がそこまで悪くないのは、主人公をはじめとする登場人物がどこか人懐っこく、肩の力を抜いて人生を楽しんでいるように見えるからだ。暗くてハードなだけのバイオレンス作品に飽きた人には、新鮮な感覚を与えてくれるだろう。むろん、ギャップを面白がれるかどうかで評価は分かれるかもしれないが、アクション好きも、ゆるい日常ドラマ好きも、思い切って味わってみる価値はあると感じる。
映画「バイオレンスアクション」はこんな人にオススメ!
日常の延長線上に壮絶なバトルを見たい人に向いている作品だといえる。主人公のケイは、学校で簿記を学びつつもバイト感覚で殺しの仕事を受けているため、「普通の学生生活」と「超危険な闇仕事」が同時に進行していく。そのギャップこそが最大の醍醐味なので、ふだんは何気なく暮らしているのに、いざというときには派手に暴れ回るキャラが好きな人にはぴったりだろう。さらに、一般的な殺し屋映画のように全編が重苦しいわけではなく、軽妙なやり取りやほのかな温かさが散りばめられているため、痛快さと親しみやすさの両方を楽しめる。
それだけでなく、主人公をはじめとする個性的な人物たちのやり取りが、ともすればシリアスに転びそうな場面を和ませてくれるのも嬉しいポイントだ。「血なまぐさいのは苦手だけど、笑えるシーンがあるなら見てみたい」という人にも手を伸ばしやすいはずである。逆にいうと、骨太な暗黒ドラマを求める人や、現実味のあるハードボイルド殺し屋映画を期待している人には向かないかもしれない。本作はどちらかといえばマンガ的なファンタジー要素が強く、ありえない動きや間抜けなやり取りを「これはこれで面白い」と思えるかどうかが鍵になっている。
また、主演の橋本環奈のファンなら、彼女の可憐さと大胆さが同居する立ち振る舞いに惹かれる可能性が高い。殺しの現場でもつい「勉強をしなくちゃ」と言い出すようなマイペースぶりは、ある種のカラッとした明るさをもたらしており、橋本環奈が持つアイドル性と相まって不思議な輝きを放っている。したがって、アイドル×アクションという組み合わせが好きな人や、ゆるさの中にも刺激的なシーンを求める人には打ってつけの娯楽作だ。とにかくカジュアルなノリでありながら、血みどろの抗争が展開するアンバランスさを笑って受け止められるなら、かなり楽しめるに違いない。
まとめ
本作は、専門学生で殺し屋という奇抜な肩書きをもつ少女が主人公でありながら、ただのドタバタ劇に終わらないのが面白いところである。随所に暴力的なアクションシーンがある一方、ほのぼのした会話や仲間たちのあたたかな支えが入り混じり、まるでゆるい学園ドラマと危険なアクション大作が同居しているかのような不思議な魅力を放っている。
もちろん、シリアスな場面はしっかり緊張感を伴うため、見応えがあるし、殺し屋組織やヤクザ社会のドロドロした抗争にも注目できる。けれども観終わるころには、キャラクター同士の絆や何気ないやり取りのほうが心に残るのだから不思議だ。とにかく「何も考えずに楽しめる派手なアクション」と「素直にくすっと笑ってしまう軽妙さ」が同時に味わえるのは本作の強みである。結局のところ、バイオレンスとゆるさのミスマッチこそが最大のポイントであり、その絶妙な空気感がクセになる人も少なくないだろう。