映画「月の満ち欠け」公式サイト

映画「月の満ち欠け」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

正直、初めは「大泉洋さん主演の作品なら軽妙なタッチで進むのでは?」と高を括っていた。ところが実際には、想像以上にややこしくて、いい意味でも悪い意味でも感情をかき乱してくれる作品だったのだ。簡単に言えば「生まれ変わり」を巡る物語ではあるが、そのテーマの描き方が独特で、見終わったあと「あれ、誰に共感すれば良かったんだっけ?」と戸惑う瞬間もしばしば。

物語の中では妻を失った悲しみ、過去の恋のほろ苦さ、そして時間軸を超えて絡み合う人間関係が、なんとも複雑かつ奇妙な形で交差していく。観賞中の筆者は、涙腺が揺さぶられるというより、思わぬ展開に何度も頭を抱えてしまった。俳優陣の熱演や映像美はたしかに見応え十分だが、鑑賞後にじわじわ効いてくる独特の余韻は好みが分かれそうだ。

今回はそういった複雑な想いを赤裸々に語りつつ、激辛目線で本作を振り返っていく。

映画「月の満ち欠け」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「月の満ち欠け」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作を最初にひとことで表すならば、「想定外に振り回される作品」である。なにしろ、「生まれ変わり」が大きなテーマになっているにもかかわらず、その描かれ方がかなり大胆かつ複雑だ。大泉洋さん演じる小山内は、妻(柴咲コウさん)と娘を一度に事故で失ったという悲劇を背負いながら、そこに突如現れた三角(目黒蓮さん)から「あなたの娘は、自分が愛した女性(有村架純さん)の生まれ変わりかもしれない」という、まるでトンデモ話のような告白を受ける。これはもう、小山内の立場になれば「はぁ、何言ってるんだ」と言いたくなるような展開だろう。

ところが、話を追ううちに「ん? でも本当にそうかもしれない」と思えてくるのがこの作品のこわいところだ。たとえば小学生の子が、いきなり以前の人生の記憶をはっきり思い出し、大人の女性としての人格に変化していく、などという描写は、下手をするとホラーかサスペンスのような雰囲気さえ漂う。筆者は途中で「これ、切ない再会のラブストーリーというより、かなり背筋が寒いドラマなのでは?」と混乱するほどだった。

さらに厄介なのが、田中圭さん演じる正木の存在だ。見た目はきちんとスーツを着こなす誠実そうな男性なのだが、物語が進むにつれ、彼の行動に首をかしげずにはいられなくなる。モラハラ気質とも取れる言動や、事故を誘発しそうな勢いの執拗さ。優しいようで実はとんでもないトリガーになっている人物が物語を引っかき回していく。まさに、この人の言動がなければ多くの登場人物が悲しい運命をたどる必要もなかったのでは? とさえ思えてくる。

しかし、その「とんでもなさ」こそが逆に人間くさくもあり、「ああ、現実にもいるよ、こういう雰囲気だけ良い人を装ったタチの悪いタイプ」という納得感もある。結果として、映画の後半は小山内や三角だけでなく、正木への複雑な感情もあいまって、観客の頭の中がぐるぐるかき回されてしまうのだ。

本作は、原作が直木賞を受賞した小説だけあってストーリーラインは緻密に構成されているようだが、映画としては要素が詰め込まれ過ぎていて、一度の鑑賞では時系列やキャラクターの思惑をすっきり理解するのが難しいかもしれない。回想シーンが随所に差し挟まれ、しかも「生まれ変わり」の概念があるせいで、何がいつの話なのか、どの視点の物語なのかを整理するのに時間がかかるのだ。

また、本来なら「愛する家族を失った悲しみ」と「かつての恋人を取り戻したいという渇望」という感情に大いに共感したいところなのだが、どうにも登場人物みんなが別方向を向いて走り回っているように見えてしまう。誰もが愛に必死で、一途な想いを抱えているはずなのに、なぜか互いの気持ちが行き違いになって痛い結果ばかりを生んでいるように映る。そのあたりが物語の狙いでもあり、切ないポイントでもあるのだが、観る側としては「ちょっと待って、ほんとにそれでいいの?」と何度も画面にツッコミを入れたくなる。

それでも映像的な美しさや役者陣の熱演はさすがである。季節感あふれる背景、人物の心情を映し出すかのように配置された月のモチーフ、そして要所要所で流れる音楽にどことなく郷愁を誘われる。大泉洋さんはいつもの軽妙なイメージとは違い、喪失感を抱えた男の姿を重厚に演じており、その苦悩がひしひしと伝わってくる。一方の目黒蓮さんは若さゆえの純粋さが漂っていて、「こんな熱量で人を愛することって、本当にあり得るのか?」と思わせるほど真っ直ぐだ。有村架純さんは透明感と妖しさを兼ね備えた難しい役どころをこなし、田中圭さんは善人にも悪人にも見えそうな曖昧な男を絶妙に表現している。柴咲コウさんや伊藤沙莉さんなど、脇を固める俳優陣もそれぞれの立ち位置で存在感を放っている。

ストーリーの途中で「こんなのどうしようもないじゃん」と叫びたくなる場面が何度かあった。たとえば、幼い娘が突然「私は前世の○○なの」と言い出して、過去の記憶を持ったままどんどん人格まで変化してしまう様子。これには母親の立場になれば「ちょっと待て!」と止めたい気持ちになるし、筆者なら絶対にショック死するレベルの話である。ところが映画では割とあっさり受け入れてしまうキャラクターがいて、その大らかさに思わずツッコミを入れたくなった。まあ、フィクションだからと言ってしまえばそれまでだが、もうちょっと登場人物が戸惑う描写があっても良いのではないかと思うのだ。

終盤にはさらなる「え、そう来る?」という展開が待ち構えている。何気ないシーンでこれまでの伏線が回収されそうなところに、まだ余計な種がまかれる感じ。月の満ち欠けが繰り返されるように、登場人物たちの関係性も「満ちる→欠ける→また満ちる」を繰り返し、再生するのかしないのか曖昧なままふわっと終わる。あえて決定的に救いを与えないラストゆえに、後味は人によって大きく分かれるだろう。ぐっと感動する人もいれば、「ちょっとホラーじゃないか?」とザワザワしたまま帰路につく人もいるはずだ。筆者は後者寄りで、あまりにも大きなテーマに比して人物同士の接点がしっちゃかめっちゃかに絡み合っている印象が拭えなかった。

とはいえ、こういう「理解しきれない不可思議さ」が本作の面白いところでもある。いわば、誰かの過去や思い出、そして未来への願いがごちゃ混ぜになって、ふとしたきっかけで別世界へ跳躍してしまう。その混沌を許容できるかどうかが、この映画を好きになれるかどうかの分かれ道になるだろう。

個人的には、目黒蓮さんと有村架純さんのロマンチックなシーンは「ここだけ別の純愛映画なのかな?」と思うほど美しく撮られており、そこは素直に見とれてしまった。若手と中堅、ベテランが入り乱れて表現する人間模様は熱量が高く、たとえストーリーにツッコミを入れずにはいられなくても、役者の魅力に引き込まれて最後まで目が離せないのも事実だ。

結局のところ、本作の評価は「この異様なまでのスケール感と設定を受け入れられるか否か」にかかっている気がする。お涙ちょうだいの感動巨編を期待して行くと肩すかしを食らうかもしれないし、純愛ファンタジーだと思えば途中で「ん? これちょっと違うぞ」と置いてけぼりになる可能性もある。ただし、そこを「斬新だ!」と感じられる人にとっては、相当印象に残る作品になるはずだ。観終わってから「結局あのキャラはどういうつもりだったの?」と誰かと話し合いたくなるし、「こういう設定もアリかもな」と半ば呆れつつも興味を惹かれる不思議な吸引力がある。

最終的に筆者としては、「三度見」ぐらいして全貌を整理しながら楽しむ映画だと思っている。一度目はストーリーの把握に集中し、二度目はキャラクター同士の思惑を踏まえたうえで役者の芝居を堪能し、三度目にようやく細かい伏線や時系列の意味合いを噛みしめる、といった感じだ。時間もお金もかかって大変だが、そのぐらい徹底的に味わっても損はしないだけの厚みが本作にはある。

ただし、最初からカッチリと筋の通った物語を求める人や、「生まれ変わり」の要素にリアリティを感じたい人にとっては不満が残るかもしれない。いろいろな意見が出るだろうが、そういう賛否両論こそが「月の満ち欠け」という作品の本質なのだろう。結局、視聴者の側に受け取る余地を残す結末こそ、原作者や監督の意図した世界観なのではないだろうか。

こちらの記事もいかがですか?

有村架純さんの出演映画はこちら

映画「月の満ち欠け」はこんな人にオススメ!

まず、ストレートなラブストーリーが好きな人には、ちょっと刺激が強い作品である。ベタベタの恋愛映画を想像して劇場に足を運ぶと、「なんだか話がややこしすぎるぞ?」と戸惑う可能性が高い。だからこそ、「どこかに奇妙な要素や不可思議な展開が混じった物語を味わいたい」という人にはピッタリだと思うのだ。異世界ファンタジーとまではいかないが、ちょっとしたホラー感も漂う設定に興奮を覚えるタイプなら、そのねじれた感触が絶妙にクセになるだろう。

また、俳優陣の熱演を隅々まで楽しみたい人にも向いている。大泉洋さんのシリアスな部分や、有村架純さんのミステリアスな雰囲気、目黒蓮さんの真っ直ぐな熱量、田中圭さんの底知れぬ怖さ、柴咲コウさんのしとやかな存在感、そして伊藤沙莉さんの複雑な感情をひょうひょうと表現する技量。これらを一度に味わえるのは、なかなか贅沢ではないか。役者の表情やしぐさを追うだけでも十分に見応えがあるので、ストーリーが分からなくなっても「いやいや、この場面の演技すごくない?」と楽しめるだろう。

加えて、「生と死」「再生」「運命」という単語に惹かれるタイプの人にもオススメだ。誰かを失った苦しみや、別の人生で再会できるかもしれないという希望が、ファンタジックに描かれているのが本作の大きな特徴である。たとえリアリティに欠けると感じても、心のどこかがほんの少し救われるような気持ちになるかもしれない。現実離れした要素を織り交ぜながら、それでも「人を想う気持ち」の純粋さが根底にある作品なので、そんなテーマにピンとくる人はじっくり味わってほしい。

こちらの記事もいかがですか?

柴咲コウさんの出演映画はこちら

まとめ

ここまで激辛目線であれこれ語ってきたが、「月の満ち欠け」は良くも悪くも観た人の印象に強く残る作品だと思う。大泉洋さんが背負う哀しみや、三角の不器用なほど一途な姿、有村架純さんの不可思議な美しさ、それをかき乱すかのような田中圭さんの濃密な存在感。どれを取っても一筋縄ではいかない要素が詰まっているのだから、観終わった後にモヤモヤするのも当然だろう。

ただし、そのモヤモヤこそがこの映画の魅力でもある。万人に分かりやすく寄り添うのではなく、「こういう解釈もあるかも」「あの行動の裏にはこういう思いがあったのかも」と、想像力をかき立てる余地がたっぷりあるのだ。筆者はそこにこそ、作品の懐の深さを感じる。もしあなたが「単純明快なストーリーはちょっと退屈だ」と思うなら、本作の混沌に飛び込んでみるのも一興だろう。もしかしたら、後日になってからじわじわと味わいが増してくるかもしれない。

こちらの記事もいかがですか?

目黒蓮さんの出演映画はこちら