映画「東京喰種 トーキョーグール」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
本作は石田スイによる人気漫画を実写映画化した作品で、2017年に公開されたことは記憶に新しい。実写化と聞くと、原作ファンは期待と不安が入り混じり、まるで突如として現れた“グール”を目の当たりにするようなドキドキ感を覚えるのではないだろうか。さらに主人公・金木研の苦悩を演じる窪田正孝の迫力ある表情や、原作の世界観をどれほど再現できるかが大いなる注目ポイントである。人を喰う“グール”という存在を描きつつ、現実社会への風刺や、アイデンティティの揺らぎを突きつけるようなテーマ性は「東京喰種 トーキョーグール」ならではの魅力だ。
しかしながら映像での表現はグロテスク要素が強めなため、人によっては“痛いシーン”続出に身構えてしまうかもしれない。それでも本作には、ユーモアというスパイスや個性的なキャラクターが散りばめられており、怖いだけで終わらないのがミソだ。そんな映画「東京喰種 トーキョーグール」の魅力と課題を、激辛コメントも含めて掘り下げていこうと思う。果たして実写版は成功作なのか、それともハンパなグール体験に終わるのか? ここからは容赦なくネタバレありで突っ込んでいくので、心の準備はよろしいだろうか。
映画「東京喰種 トーキョーグール」の個人的評価
評価:★★★☆☆
映画「東京喰種 トーキョーグール」の感想・レビュー(ネタバレあり)
ここからは、評価として星3つに落ち着いた理由を中心に、映画「東京喰種 トーキョーグール」の感想・レビューを激辛トークでまとめていく。原作漫画やアニメ版との比較、キャストの妙、映像表現の意欲と惜しさなど、あらゆる視点からネタバレ全開で語ってみるので、未見の方は要注意だ。
まず、主人公・金木研(演:窪田正孝)のキャラクター造形について。原作の金木研は、穏やかな青年がある日突然グールに転化してしまい、その結果、人間としての自分を否定せざるを得ない葛藤を抱える。その苦悩がシリーズ全体の肝といっても過言ではない。しかし実写映画版の金木は、やや原作の内面描写が簡略化されている印象だ。もちろん2時間ほどの映画に多くを詰め込むのは難しいが、金木の心情変化がややあっさりしすぎているため、観客が感情移入する前に「もうグールの力に目覚めちゃったの?」という流れになりがちである。窪田正孝の演技は熱量があるし、アクションも迫力を持ってこなしているが、金木が抱える静かな絶望感がもっと描かれたら印象が異なったはずだ。
次に、ヒロイン(というより準ヒロイン的存在)の霧嶋董香(演:清水富美加、現在の芸名:千眼美子)との関係性について。原作では、金木とトーカの関係は友情や葛藤、共闘などを通して徐々に深みを増していく。しかし映画「東京喰種 トーキョーグール」では、二人の交流が駆け足気味で、「最初ツンケンしていたトーカが、気づけば金木に手を差し伸べていた」という印象を受ける。原作ファンなら事情を知っているが、初見の人からすると「もうちょっと二人の距離感を味わいたかった」というもどかしさがあるかもしれない。このあたりは、シリーズ化前提かどうかによって、脚本上の取捨選択があったのだろうが、もう一歩踏み込んだドラマ性を見たかったところである。
さらに深堀りすると、本作の最大の特徴である「グール」の描写も賛否両論のようだ。グールは人間の肉を食糧とする存在であり、目の色が赤黒く変化し、“赫子”と呼ばれる触手のような武器を繰り出す。この赫子のCG表現やアクションシーンに関しては、頑張っている部分もあるものの、若干のチープさも否めない。特に金木がラスト付近で覚醒し、強烈な赫子をブンブン振り回すシーンは一見派手だが、どこか既視感のある演出に留まっている。
原作の魅力は、赫子の形状や能力がキャラクターごとに個性を持ち、それがバトルの駆け引きを左右するところだが、映画ではそこまで突っ込んだ描写ができていない印象である。とはいえ、その限られた時間と予算の中で、グロテスクな質感をある程度表現した努力は評価に値する。特に、グールが人肉を食すシーンや、金木が最初に人肉へ手を伸ばすときの「こんなの、食べたくない…」という悲痛な表情には、独特の生々しさがあった。
また、本作の視点において忘れてはならないのが、石田スイ作品が持つ哲学的要素だ。人間の姿をしていても、内面は人の肉を欲する化け物、という自己否定や、人間社会に受け入れられない存在としての孤独がキモになる。ところが映画版では、この思想的な部分が少々薄味になっており、アクションとバイオレンスの側面に比重が寄っているように見える。もちろん、実写版で大衆に受けやすいエンタメ性を重視するという戦略はわからなくはないが、「東京喰種 トーキョーグール」という作品の持つダークな哲学を期待している原作ファンにとっては、物足りなさを感じる点だろう。結果、アクション映画としてはそこそこ楽しめるが、原作の深みを求めると肩透かしというバランスになっている。
キャスト陣については、やはり窪田正孝の怪演が光る。彼はテレビドラマなどでも定評のある役者で、陰のある青年像を演じるのが得意だ。金木の苦悩を体の動きや抑えた表情で表現し、一方で暴走シーンでは激しく取り乱すような二面性を見せてくれる。このメリハリが作品の中心を支えていると言ってもよいだろう。清水富美加演じるトーカも、クールな中に潜む優しさをきちんと表現しているが、やはりもう少し彼女の視点での葛藤が見たかったところだ。また、神代利世(演:蒼井優)の狂気じみたオーラには、原作ファンもうなる説得力がある。特に序盤の「人間の世界など飽き飽きだわ」という雰囲気は、彼女の演技力が大いに発揮されており、金木を翻弄する存在として見応えがある。
一方で、捜査官サイド、特に真戸呉緒(演:大泉洋)のキャラクターはややコミカルに振りすぎという声もある。原作の真戸は狂気と正義感が絶妙に同居したやり方でグールを追い詰める恐ろしい存在だが、映画では大泉洋の独特な演技がどうしてもコミカルさを先行させてしまう部分がある。これは好みが分かれるだろう。実写映画ならではの“キャスティングの妙”とも言えるが、原作の凄みを重視するなら、もう少し狂気的な演技に振ってもよかったのではないかと感じる。
ストーリー展開については、原作の序盤をほぼなぞる形になっており、金木がグールになった経緯から、あんていくの面々との交流、捜査官との対立までが描かれる。しかし、2時間という尺の都合上、原作の中でも重要なサブキャラの掘り下げはやや犠牲になっている。西尾錦や月山習といった人気キャラクターはチラリと登場するものの、深く関わるのは続編を匂わせる程度に留められている。これによって映画としての完結感が薄れ、「続編を見なきゃストーリーが完結しないのかな…」というモヤモヤを抱える観客もいたかもしれない。製作側としてはシリーズ化を見越しているのだろうが、単独の映画としてはやや物足りない印象になってしまうのは否めない。
とはいえ、アクションとグロテスク描写をそこそこ堪能したい人にとっては、ポップコーン片手に楽しめる仕上がりでもある。日本の漫画実写化の中には、もっと大胆に改変されて原型をとどめない作品もあるが、それに比べれば「東京喰種 トーキョーグール」の映画版は原作リスペクトの意識が高いと言える。キャラクターの衣装や世界観の雰囲気、独特の人間社会とグール社会の交錯など、原作ファンが見たい“ツボ”を押さえる要素も多い。CGや脚本面での限界は感じるものの、それは日本映画界の予算やスケジュールの問題とも絡むため、ある程度は仕方ない部分もあるだろう。
個人的には、劇中での演出にもう少しインパクトが欲しかった。例えば、金木が覚醒して目が赤黒く変化するシーンは、原作では読者の背筋をぞわっとさせる迫力があるが、映画ではどうしても既視感あるホラー演出に留まっている感がある。ここで思い切ってホラー度を増してみたり、金木の精神世界をイメージシーンで挟み込んだりするなど、映画ならではの手法をもっと駆使してほしかった。さらに言えば、音楽面もやや地味だったため、アクションシーンやホラーシーンでのBGMがもう少しアグレッシブだとメリハリがついてより盛り上がったのではないか。
総合的に見ると、「東京喰種 トーキョーグール」実写版は“原作ファンから大喝采”というほどではないにせよ、“そこまで大コケでもない”微妙なラインを走っていると感じる。漫画の実写化には常につきまとう難しさがあり、予算面・時間面・表現規制などに縛られる中、ここまで頑張ったのは評価したい。だが、原作が持つダークで哲学的な世界観やキャラクターの内面を存分に描き切れたかと問われると、やはり「うーん、惜しい…」と首をひねってしまうところがある。だからこその星3つ、すなわち“良くも悪くも中間的”な評価に落ち着いたわけだ。
とはいえ、続編やスピンオフへの期待値は決して低くはない。本作が盛り上がれば、第2章・第3章と続けて、より多面的に世界観が広がる可能性がある。とくに金木が覚醒し、反政府的な勢力や強力な捜査官らと激突する展開が本シリーズの真骨頂なので、映画でもこの先どう料理してくれるのか楽しみでもある。ただし実写版には、アクションだけでなく、登場人物一人ひとりの深い“哀しみ”を描き出すという繊細さも求められる。その点がもう少しブラッシュアップされれば、次回作以降はさらに評価を上げるポテンシャルがあるだろう。
最後に、娯楽作品としての立ち位置も考えてみよう。日本の実写映画でここまでグロテスク要素を全面に出すのは挑戦的な試みだし、多くの観客にとっては刺激的な体験になるかもしれない。グールという架空の存在を通して、「自分が社会にとって異物だったら?」という不安や絶望、あるいは仲間と出会って互いを支え合う尊さなど、普段はあまり意識しないテーマに触れられるのが「東京喰種 トーキョーグール」の大きな魅力だ。原作ファンはもちろん、初見の人にもある種の衝撃を与える作品だと言っていいだろう。
そんなわけで、まとめると映画「東京喰種 トーキョーグール」は、激辛視点では「ここが惜しい!」と思う部分が散見されつつも、作品自体のパワーや俳優陣の熱演が光る実写化としては悪くない仕上がりである。グロテスクな描写に抵抗がなければ、一度は観ておいて損はないはずだ。続編でさらなる深化を期待したいところだが、現時点では星3つ=「もうひと頑張り!」というのが正直なところである。
映画「東京喰種 トーキョーグール」はこんな人にオススメ!
「東京喰種 トーキョーグール」は、グロテスク描写が強めな一方で、ファンタジーやアクションを求める人だけでなく、人間心理の闇を少しでも深く考えてみたい人にもオススメだ。なにせ“人を喰らうグール”という存在は、道徳的に完全アウトな行為をやらかすにもかかわらず、その実、社会に溶け込みながら孤独に生きている。要するに、表向きは人間と変わらない生活を送っているというのが、この作品ならではの妙味なのだ。もしあなたが「実写版なんて、どうせ原作ファンをがっかりさせるんでしょ?」と斜に構えているなら、むしろその期待値を下げた状態で観ると、思わぬ発見があるかもしれない。
また、漫画実写化やホラー系アクションが好きな人にはしっかりハマる要素が詰まっている。想像以上にグールの世界観がリアルに描かれているし、日本映画の中では頑張っているCGや特殊メイクは見どころのひとつだ。さらに、原作の濃厚なストーリーが完全再現とまではいかなくても、窪田正孝や清水富美加(千眼美子)、蒼井優らの個性的な演技が作品を飽きさせない。特に「原作との違いを見つけてあれこれ突っ込みたい!」という人にとっては、突っ込みどころ満載なので、一種の“ツッコミ鑑賞”として楽しむのもアリだろう。
要するに、この映画は「原作ファン」「グロ耐性がある人」「実写化の完成度に興味がある人」「俳優陣の熱演を見たい人」あたりにオススメできる。さらに、軽い気持ちで“ダークなアクション映画”を楽しみたい人にも適している。逆に、血なまぐさい描写が苦手だったり、原作の世界観を完全に再現していないと許せない完璧主義者には少々厳しいかもしれない。それでも「東京喰種 トーキョーグール」の雰囲気を味わうには十分価値があるので、一度くらいはチャレンジしてみてはいかがだろうか。
まとめ
以上、映画「東京喰種 トーキョーグール」の感想・レビューをお送りした。結論としては、実写化としては悪くないが、完璧ではないという落としどころだ。原作のダークで哲学的な深みは十分には描き切れていないものの、キャスト陣の熱演やグロテスクな表現、独特の世界観の再現度には一定の評価を与えられる。満点を期待すると肩透かしを食らうかもしれないが、続編を含めて今後の展開次第では、より高い評価を得るポテンシャルを秘めたシリーズだと思う。
とりあえず「東京喰種 トーキョーグール」の感想・レビューを探している人なら、一度は視聴する価値があるだろう。何より、実写化ゆえの限界を思い知る一方で、独特の病みつきになる魅力を持っているのが本作の強みでもある。もしあなたがグロ耐性を持ち、意外と奥深い物語を味わいたいなら、ぜひチャレンジしてみてほしい。