映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム」公式サイト
映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
本シリーズといえば、何の気なしに落としたスマートフォンが恐るべき事態を引き起こすという衝撃的な展開でおなじみである。まさかここまで話が膨れあがり、国家レベルの騒動にまで発展するとは、前作までを観ていても想像がつかなかった人は多いだろう。筆者も「もうスマホを落とさないように首からかけるしかないか…」と変な決意をしたほどだ。
本作では海外に逃亡した危険人物や、これまで数々の事件を解決(?)してきた人物たちが入り乱れ、大規模なサイバー攻撃まで勃発する。そんな中でもシリーズを通して根底に流れる“執着”や“愛憎”が、さらに濃厚に描かれているのが最大の魅力である。どんなラストで幕を閉じるのか気になって仕方がないという向きも多いはずだが、今回はストーリーの結末まで踏み込んで遠慮なく述べていく所存である。
もっとも、刺激が強すぎて胸やけになっても責任は負えない。覚悟して読み進めていただきたい。
映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作ではまず、前作までとは比べものにならないスケールの事件が発生する。何しろ海外に逃亡した元凶が、より一層凶悪な面々と手を組み、国家の中枢をターゲットに据えた大仕掛けを繰り出してくるわけだ。ちょっと想像しただけで背筋が寒くなるし、自分のスマホを握りしめる手にも力がこもる。
だが、このシリーズらしさも健在である。つまり、ただのサスペンスに留まらず、人の心の弱さや闇に迫る要素がたっぷり盛り込まれている点だ。少々物騒な言い方になるが「知識や技術が悪用されれば、こんなにも簡単に人々は追い詰められてしまうのか…」という恐怖を改めて突きつけられる。普段の暮らしで当たり前に使っている通信機器やアプリが、いつの間にか誰かの陰謀に利用されているかもしれないと思うと、手汗が止まらなくなる。
さて、物語の中心にいるのは、前作から引き続き姿を消していた“天才的だが非常に危険なハッカー”。加えて、既存キャラクターたちもそれぞれの思惑を抱えて再登場する。ここに新たな面々が加わり、同じようにハッキングに精通していたり、あるいは国内外の組織に深く関わっていたりと、思いがけない人物がどんどん出てくる。映画冒頭で「もしかしてこの人も食えないヤツなのでは…」と思わせるシーンがいくつもあるのだが、最後まで観れば納得する部分が多い。
物語中盤では、これまでスマホを落としてしまったがゆえにえらい目に遭ってきた夫婦や、元刑事の面々が何とか事件を防ごうと立ち回る。しかし大がかりなバイトを動員した攪乱作戦や、まさかのアプリを使った一斉攻撃など、近未来的というよりも“すでに起こりえるリアル”な手法を用いるから怖い。ネット上にはさまざまな闇があると知ってはいても、いざ映画の形で見せられると現実との境目が分からなくなる感覚に陥るのだ。
特に印象的だったのは、大勢の一般ユーザーが“あるゲーム”だと思って遊んでいたものが、実は国家転覆にも等しい規模の悪事に利用されているという展開。明るい音楽とポップな画面に隠れて、とんでもない陰謀が渦巻いているのだからゾッとする。プレイヤーたちは“まさか自分がテロの一端を担っている”などと夢にも思わないわけで、仕掛けた黒幕の頭脳が底なしすぎて背中が冷えるレベルである。
そして、本作のもう一つの大きな軸となるのが、“虐待のトラウマ”や“どこにも属せない孤独”を抱えた者たちのドラマだ。前作を観ている人ならピンとくるかもしれないが、何かと問題を起こす彼がなぜこうも執着心をむき出しにし、なおかつ矛先が女性に向かいがちなのかが、より鮮明に分かってくる。さらに、今作では新キャラクターとして登場する女性もまた同じように心に傷を抱えており、そこに一種の共感や同情、あるいは歪んだ愛が生まれる描写が注目だ。
ここまで観客としては「その関係、どこに行き着くの?」とハラハラするが、結果から言えばそう簡単に語れるような結末ではなかった。「それは愛なのか、それとも支配なのか」「もしくは救いを求める叫びのようなものなのか」と、観ている間はずっと頭をフル回転させていた。ある意味、本作のエンディングはとても“狂おしく”、人によっては「え、ここまでやるの?」と絶句するかもしれないし、「これでこそ最終章」と手を叩くかもしれない。
実際、自分は終盤の数分間で頭の中が騒がしくなった。敵なのか味方なのか曖昧な警察関係者の動き、ある人物の隠された計画、さらには「おまえまで!?」と叫びたくなるような裏切り(というか異様な忠誠)も絡む。まるで繰り返し遊んできたジェンガが、最後の最後で一気に崩れ落ちる瞬間を見ているようだ。どこを抜いたら崩れるかは分かっていても、止められない。そんな破滅的な美しさを感じた。
加えて、今作では日韓首脳会談という大舞台をも巻き込む展開になっているため、映画の中で日本と韓国を股にかけた攻防が描かれる。日本の刑事たちが韓国に潜入するパートや、逆に韓国側の事情が細かく描写されるパートなど、まるで国際スパイ映画を見ているかのような雰囲気だ。現地語のやり取りや背景に映る街並みが新鮮でありながらも、「人間の本質的な問題は国境を超えても変わらないのだな」と思わされる。結局、裏切りと信頼、愛と憎しみが交錯するのは万国共通で、そこに古傷を抱えた人物たちが落ち合えば、より混沌を極めるのだろう。
もう一つ注目したいのは、歴代キャラクターたちの再登場がさりげなく配置されている点。第1作でヒロインを危機に陥れた事件の当事者が、今回はまた別の角度で事件に巻き込まれていたり、前回の因縁を引きずったまま現在まで執念を燃やしていたりと、シリーズのファンには嬉しい連続性がある。とはいえ、本作からいきなり観る人には「こんな人がいたのか」と混乱することもあるかもしれない。そこは複数の説明シーンが丁寧に挿入されているので、初見でも流れは分かるようになっているだろう。
さらに演出面で言うと、やはりシリーズを手掛けてきた監督らしい、ゾクゾクする画作りやカット割りが際立つ。静かな日常シーンから突如として不気味なメロディが響き、スマホ画面のアップに移行していく場面などは、ホラーのようでいて現代のSNS社会ならではの恐怖を強く感じさせる。人間の暗部に踏み込む演出力が実に巧みなので、本作でもトラウマめいた瞬間をいくつか味わってしまった。
キャストの熱演も光っている。特に、本シリーズを象徴する危険人物役の俳優は、ただの“冷酷な狂人”ではなく、“寂しさや優しさを捨てきれない人間”であることを絶妙に表現していた。そこに、対峙する刑事役や、新たに登場する女性キャラクターたちの存在が絡み合ってくるから、誰が善で誰が悪なのかさえ曖昧になる。常識的な視点から言えば悪であることは間違いないのだが、どこか心の奥に共鳴するものがあり、完全に憎みきれなくなるのだから不思議だ。
そしてクライマックス。日韓の要人が集まる会場が厳戒態勢に置かれながらも、まさかの方法でテロ予告が進行していく。周到に準備されたバーチャル作戦は、画面越しに見ているこちらまで「え、そこまでリアルタイム連動させちゃう!?」と震え上がるレベル。映画だから少し誇張している部分もあるとは思いつつ、実際に起こりそうなリアルさも感じてしまう。このネット依存の社会では、ほんの少しボタンを押し間違えただけでとんでもないパニックが起きる可能性を否定できないからこそ、物語に没入せざるを得ない。
終盤の対決シーンは、個人的にシリーズ最高の熱量だった。複数の人物が別々の動機で各所へ駆けつけ、ちょっと目を離した隙に誰かが倒れ、あるいは逃げ、さらに裏切りが発覚し…という、もはや先の展開が追いつかない怒涛の状況である。その混戦を静かに制するのは、やはりこのシリーズで一貫して主導権を握り続けてきた“彼”なのか、それとも新たな黒幕なのか。画面にかぶりついて見守るしかない。
そして迎えるラストは、何もかもが壮絶だ。ここで「シリーズ最終章たるゆえん」をまざまざと見せつけられる。良い意味でも悪い意味でも「そう来るか!」と驚く展開で、最終的にはある人物が“最もほしいもの”を手に入れたようにも見えるし、別の視点からすれば「こんな形でしか救えなかったのか」と切ない思いにもなる。結末を真正面から捉えるならば、まさしく賛否両論が巻き起こる終わり方だろう。
ただ、そのどぎつい結末も含め、本作が投げかけるテーマは一貫している。人の過去や環境、トラウマや孤独がどのようにして現在を形作るのか。そして、それに巻き込まれる周囲の人間が、どう向き合い、どう手を差し伸べるのか。あるいは差し伸べられなかったのか――。シリーズを通して描かれてきた闇と救済の物語は、最終章でしっかりと肩代わりしてくれたはずだ。
結果、観終わった後には、もやっとしたような、しかし妙に納得できる感情が残った。「あれほどの大事件が起きたのに、この収束の仕方で良いのか?」と自問する一方で、「これ以上にリアルな着地もないだろう」と感じるジレンマがある。
シリーズへの愛着がある人なら「うわー、これで終わってしまうのか…!」という寂しさと満足感の混在した余韻を味わえるだろう。今作が初見の人にとっては、斬新な題材と容赦ない描写に度肝を抜かれるはずだ。いずれにしても、斜め上をいく結末を迎えたのは間違いない。アフターケアが必要なほど刺激が強いが、そういう作品こそが記憶に深く刻まれるのではないかと思う。
映画「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム」はこんな人にオススメ!
この作品をオススメしたいのは、まず「シリーズを一通り観てきて、最後の決着を見届けないと夜も眠れない!」という人だろう。前作までの因縁や伏線がここにきて全力で回収されるため、最終的な答えを見届けたい方には必須の一作である。もちろん、前作を見ていなくても要所要所で過去の事件が断片的に説明されるので、飛び入り参加でもある程度の筋は追える。
さらに「現代のテクノロジーを使ったサスペンスに興味がある」という人にもピッタリだ。暗号通貨やハッキング、ドローン攻撃やらゲームアプリの悪用まで、多種多様な仕掛けが描かれるので、ネット社会の脆弱性を肌で感じられる。ニュースで耳にする“サイバー犯罪”が身近に迫ってくる恐怖と同時に、その裏側を覗き見るような刺激的な要素が詰まっているから、IT系の話題に関心がある人ならドキドキが止まらないだろう。
また「人間関係の歪みや、トラウマを抱えるキャラクターの葛藤に強く惹かれる」というタイプにもオススメしたい。過去に虐待を受けた者同士の奇妙な絆や、その傷をどう扱えば救われるのかといった重いテーマが、本作でも重要な鍵になっている。登場人物同士が激しくぶつかり合いながらも、どこか寂しさをにじませている姿は、一種の人間ドラマとして深く心に突き刺さるはずだ。
そして最後に、「エンタメ性がありつつドギツい結末でも大歓迎!」という猛者には特に刺さるだろう。シリーズのフィナーレにふさわしく、やや過激な場面もあれば思わず吹き出してしまう場面もあり、感情を大いに揺さぶられること間違いなしだ。最終的な顛末をどう受け止めるかは人それぞれだが、少なくとも退屈はしないし、誰かと語り合いたくなる魅力が満載である。
まとめ
最終章と銘打たれた「スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム」は、まさに有終の美…というよりは凄まじい衝撃を伴うクライマックスであった。シリーズの大きなテーマである“身近なテクノロジーへの恐怖”はもちろんのこと、人間の心に潜む闇や救いのない哀しみが重く響いてくる。実際に「そこまで踏み込むか!」と驚愕する描写が連発するため、刺激を求める方なら満足できるだろうし、胸に来るものが多すぎて呆然となる方もいるだろう。
それほどまでに濃密な作品だからこそ「スマホを落としただけなのに」の幕を閉じるにはふさわしいと感じられる。単に事件が解決するのではなく、これまで積み重なった恨みや執着、そして一縷の希望が複雑に交錯しながら行きつく結末は、観る側にさまざまな問いを投げかける。エンドロールのあとも心拍数がなかなか下がらないが、それこそが最終章を見届けた証でもある。どこかで少しだけ現実に帰りつつ、この摩訶不思議な余韻をしっかり受け止めたいと思う。