映画「リバーズ・エッジ」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
本作は、二階堂ふみが主演を務める作品として注目を集めているが、ただの青春映画と侮るなかれ。いわゆる学園モノのようでいて、その実、登場人物たちのえぐい本音やトラウマ、そしてちょっぴり刺激的な出来事が次々と描かれるため、一筋縄ではいかないところが魅力である。どこかくすんだような映像と、淡々と進むようでいて急にエモーショナルになる展開が相まって、心の奥底をザワつかせる不思議な力があるのだ。
二階堂ふみの存在感は言わずもがなで、若者特有の繊細さや粗野さを絶妙に混ぜ合わせたキャラクターを体当たりで表現している。観る側はその演技に目を奪われつつ、気づいたときには、スクリーン越しにまるで自分もその闇に片足を突っ込んでいるような感覚に陥っていることだろう。
とはいえ、あまりにも生々しい描写に「うわ、マジかよ…」と感じるシーンもあるかもしれない。しかし、そこが「リバーズ・エッジ」の真骨頂。決して美しいだけじゃない青春の闇と光を、リアルに、でもどこかシュールに描いている。青春をテーマにした作品とはいえ、胸キュンやキラキラだけでは済まない複雑さこそが、この映画の魅力といえるだろう。さて、ここからは内容に踏み込んだ“激辛”レビューをお届けするので、まだ観ていない方は覚悟して読み進めてほしい。
映画「リバーズ・エッジ」の個人的評価
評価:★★★☆☆
映画「リバーズ・エッジ」の感想・レビュー(ネタバレあり)
ここからは「リバーズ・エッジ 感想」「リバーズ・エッジ レビュー」をさらに深堀りしていく。なにしろ、本作は原作が岡崎京子の漫画ということもあり、原作ファンにとっては「おお、こんな形で映像化されたのか!」と感じさせる部分が多々ある。映画は監督・行定勲の手によって、どこか詩的でありながら、容赦なく生々しい世界観が作り出されているのが印象的だ。以下、がっつりネタバレを含むので要注意。
まず、主人公であるハルカ(演:二階堂ふみ)のキャラクターが面白い。学校では一見普通の女子高生っぽく過ごしているが、内面には複雑な想いや欲望が渦巻いている。常に「自分はどこに属しているのか」を探しているようなフラフラ感と、だけど核心を突くときは遠慮なく踏み込むような大胆さのギャップが、二階堂ふみの存在感でさらに際立っている。彼女が日常の中でふと漏らす感情の揺れが妙にリアルで、「自分もこんなふうにモヤモヤしてた時期あったかも…」と思わず共感してしまうのだ。
一方で、山田一郎(演:吉沢亮)がまた絶妙に不気味かつ繊細なキャラで、いじめを受けながらも、ある意味ではそれを楽しんでいるようにも見える。彼が秘密の場所に死体を隠しているという衝撃的な設定は、それだけ聞くと「え、ホラー映画なの?」と誤解されそうだが、決してホラーではなく、むしろ人間の暗部を象徴するメタファーのように感じられる。死体という動かない存在と対比するように、彼自身の繊細な心の動きが描かれ、このアンバランスさが物語に重層的な奥行きを与えているのだ。
さらに注目したいのはコウ(演:上杉柊平)とこずえ(演:SUMIRE)の関係性だ。コウが表向きはヒエラルキーの上位にいるように見えるが、実は恋人・こずえに対して暴力的な行為を働いていたりして、実に歪んだ依存関係を築いている。普通の学園ドラマであれば、もしかすると「DV彼氏は悪、彼女は被害者」という単純な図式になりがちだが、本作ではそうした善悪二元論では語れない、人間関係の複雑さが映し出されている。こずえ自身もただの被害者ではなく、意外な行動に走ったり、ある種の諦観を抱えていたりと、一筋縄ではいかないキャラクターだ。
物語全体としては、青春映画というよりも「登場人物たちの心の暗い川底を覗き込む映画」と言ったほうがしっくりくるかもしれない。いじめ、暴力、ドラッグ、セックス、そして死体…といった要素が散りばめられているが、それぞれが単にスキャンダラスなだけでなく、キャラクター同士の関係に必然性を与える装置として機能しているのがお見事だ。「リバーズ・エッジ レビュー」を語るうえで外せないのは、登場人物の誰もが抱える「居場所のなさ」や「自分は何者なのか」というアイデンティティの問題。青春期に一度は感じるであろうモヤモヤを、あえて生々しく描き切っているので、観ているほうも苦い気持ちになりつつ、妙に納得してしまう。
また、映像表現においては、全体的にどこか寒々しく、乾いた雰囲気が漂っている。学校のシーンであっても、家のシーンであっても、そして死体の隠された川辺のシーンであっても、常に「生」と「死」が同居しているような錯覚を覚える。これは行定監督の演出力の賜物で、観る者に「青春とは決して美化できるものではない」というメッセージを突きつけてくるわけだ。さらに、役者たちの表情や仕草をじっくりと捉えるカメラワークが多く、とくに二階堂ふみの揺れ動く瞳や、吉沢亮の儚げな微笑みには、観ているだけでこちらの心がジクジクと刺激される。
さて、肝心のクライマックスは、秘密にしていた死体の存在が大きな波紋を広げる…という展開に至るわけだが、ここがまさに人間の本能や、欲望、そして共犯意識がむき出しになっていくポイントである。救いがあるようでない、ないようである、そんな曖昧なグレーゾーンのまま物語が収束していくので、観終わった後には少し重たい空気を引きずるかもしれない。しかし、そこにこそ「リバーズ・エッジ」の本質があると思う。人生は白黒はっきり割り切れないことのほうが多いし、誰もが他人には言えない秘密を抱えている。そんなリアリティを認めた上で、それでもなんとか生きていくしかないのだ…というメッセージを、本作は突きつけてくる。
もちろん、苦手な人にとっては「ハードすぎる」「重たすぎる」と感じるかもしれない。でも、この少し病んだような世界観がクセになる人もいるはずだ。二階堂ふみをはじめとした若手俳優たちの熱演は見ごたえ十分であり、特に会話の少ないシーンでの演技力が光っている。言葉ではなく表情や身体の動きで物語を語るその技量は、彼らがただのアイドル俳優ではなく、しっかりと演技派であることを証明しているといえるだろう。
思わず「青春ってなんだろう?」とか「大人って一体なに?」と哲学的な疑問を抱かせられる作品だが、そう感じさせるのは描写が暗くてショッキングだからだけではない。むしろ誰しもが心のどこかに持っているわだかまりやトラウマを刺激されるからこそ、「リバーズ・エッジ 感想」を語るときにも、単なる映画の感想にとどまらず、自分自身の人生観を考えさせられるのだろう。ある意味、「青春時代のあるある」を、とことん暗く、かつリアルにえぐり出した怪作ともいえる。
まとめると、「リバーズ・エッジ」は若者たちのエグさ、脆さ、そしてどこか病的なほどの純粋さが交差する不思議な映画である。興味をそそられた方はぜひ観てほしいし、観終わった後は自分の心のリバーズ・エッジを覗き込んでみるのもいいかもしれない。怖いもの見たさで手を出すのもアリだし、原作漫画との比較もまた面白い。どのみち、この映画を観終わったとき、あなたはもう以前の自分とは少し違う景色を見ているはずだ。
映画「リバーズ・エッジ」はこんな人にオススメ!
まずは、「甘酸っぱい青春もの? それとも学園ラブコメ?」と期待している人には申し訳ないが、むしろそういう既存のイメージを根こそぎ覆してほしいタイプの人にオススメである。要するに、「青春=キラキラ」みたいな固定観念があんまり得意じゃない人や、「リアルな痛みを伴うドラマを観たいんだよね」という猛者にはぜひ観ていただきたい。また、二階堂ふみや吉沢亮をはじめ、若手俳優陣のガチな演技を堪能したい人にとっては、彼らの潜在能力を垣間見ることができる好機になるだろう。
さらに、「暴力的な描写や、人間の暗部をガッツリ見せる映画が好き」という人にとっては、なかなかツボを刺激してくれる。作品そのものが何とも言えない後味を残すので、「ああ、スカッとした!」というよりは、「え、ちょっと待って、私の心はどこへ行くの?」と戸惑いながらモヤモヤを抱えるタイプの映画を好む方にはピッタリだ。
逆に、ハッピーエンドや分かりやすい勧善懲悪を求める人には厳しいかもしれない。しかし、そういう人こそ一度は挑戦してみる価値があるかもしれない。人生には綺麗事だけじゃなく、ドロドロした部分もあるということを、映画という安全な視点から覗いてみるのは意外と刺激的だからだ。
結果的に、観る人を選ぶ作品ではあるが、それだけにハマったときの衝撃や後味の濃厚さはケタ違いである。心の中をえぐられたい、痛いところを突かれたい、そしてその痛みのなかにこそリアリティや救いを見出したい—そんなちょっと変わり者の映画ファンには、ぜひともオススメしたい一本だ。
まとめ
「リバーズ・エッジ」は、いわゆる“青春映画”というラベルだけでは語れない複雑な味わいがある作品だ。恋愛や友情といったキラキラした要素もあるが、その裏には常にドロドロとした闇や暴力が潜んでいる。だからこそ、普通の学園ドラマでは満足できない人には一見の価値があるといえる。
二階堂ふみの演技はもちろん、吉沢亮や上杉柊平、SUMIREら若手俳優たちが生々しくも魅力的なキャラクターを体現している点も見逃せない。決して「観れば元気になれる!」という映画ではないが、「知らなかった自分の感情」に出会えるかもしれない独特の刺激がある。痛みとむなしさ、でもそこにかすかな光も感じるような不思議な感覚を味わいたいなら、ぜひ本作をチェックしてみよう。視聴後にはきっと、あなただけの“リバーズ・エッジ”を探す旅に出たくなるはずだ。