映画「おいハンサム!!」公式サイト

映画「おいハンサム!!」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は吉田鋼太郎が演じる父・源太郎が、個性的すぎる三姉妹をあれこれ振り回しつつも愛情深く見守る家族ドラマである。もともとテレビシリーズで人気を博してからの映画化ということで、「大きなスクリーンであの家族を見たい!」という思いを叶えてくれる一本だ。物語としては、恋に悩む娘たちや食卓を囲むシーンが随所にちりばめられ、思わず吹き出す場面もあれば、しみじみと心に響く場面もある。特に源太郎の言葉は時に厳しく、時に優しく、そしてちょっと斜め上をいく説得力を持っているのが面白い。やや大げさなくらい家族を大事にする姿勢が、この映画の“ほのぼの”とした魅力につながっていると感じた。

ただし本作では、テレビシリーズ同様に“起承転結”がはっきりあるわけではなく、ぶつ切りのエピソードを重ねるように進んでいくのが特徴だ。そこに新たなキャラクターや京都ロケなどの要素が追加されているため、「テレビ版を観ていないと分かりにくい?」と思う方もいるかもしれない。とはいえ、父と三姉妹のゆるくも熱い日常を楽しむだけでも十分に味わい深い。真剣に生きているのにちょっと抜けている彼らのやりとりは、どこか自分たちの家族や友人との日常と重なって笑ってしまう部分も多いはずだ。些細なトラブルがあったかと思えば肩透かしな解決を見せる展開が連続するので、スクリーンの中に流れるほのぼのムードをそのまま受け取るのが一番気楽である。

家族愛をテーマにしながら、同時に食に対するこだわりや“明日を生きるモチベーション”の描き方にも注目したい一本だ。上映後にお腹が空いてしまうほど、食卓シーンは魅力的に映っているので、観終わった後はぜひ何か美味しいものを食べに行くのがおすすめである。吉田鋼太郎の渋くてダンディな父っぷりに痺れながら、クセの強い三姉妹に振り回されたい人にはたまらない作品だと断言する。

映画「おいハンサム!!」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「おいハンサム!!」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作は、これまでのテレビシリーズで培われた“家族のなんでもない日常を面白おかしく見せる”エッセンスがぎゅっと詰め込まれた映画である。とはいえ、スクリーンで描かれるのは決して大冒険や大事件ではなく、地続きのように続く日常の断片たち。ドラマで“ゆるく長く”楽しんできた人には、懐かしさと安心感があるだろう。以下では、各キャラクターやストーリーのポイントをざっくり挙げつつ語っていく。長文になるので、コーヒーでも飲みながら気楽に読んでもらえれば幸いだ。

まず、物語の中心人物・源太郎(吉田鋼太郎)は、本作でも相変わらず“娘たちを愛しすぎる父”として暴走気味に活躍している。彼はとにかく言葉のセンスが独特で、妙に胸に刺さる説教を飛ばしてくる。一歩間違えれば暑苦しいだけだが、そこに抜群のサービス精神(自覚はないかもしれない)が加わるため、観ている側としては「またその調子かよ!」と笑ってしまう。そんな源太郎の言動が、三姉妹の恋愛や仕事の悩みを見事にかき回すわけだが、そこが最大の見どころでもある。

三姉妹それぞれのエピソードも、今回の映画でよりバリエーション豊かになった。長女は仕事も恋愛も一見順調そうに見えて、実は元カレの存在がチラついていたり、結婚間近の同僚への嫉妬を抱えたりで、ままならない日々を送る。次女は京都へ赴いて和菓子の世界に飛び込むが、当初は「観光気分?」なんて言われてバカにされる場面もありながら、地道な作業の積み重ねに向き合ううちに自分を見つめ直していく。一方、三女はイマドキの軽快さを漂わせつつ、妙にズレた相手との恋模様に振り回され、泣いたり笑ったりを繰り返す。その様子を遠目から見ていると、三者三様にこじらせているのが絶妙に面白い。

ただし本作は、どのエピソードも「劇的な変化」や「涙なくしては語れない大感動!」といったタイプではない。むしろ、「そんな小さな事件で大騒ぎするんだな」と微笑ましくなるような出来事が続発し、あっという間に2時間が過ぎる。映画というフォーマットとしては珍しいほど肩の力が抜けていて、まるで2時間スペシャルのドラマを観ているような感覚だ。実際、「もっと映画的なド派手さがあってもいいのでは?」と感じる人もいるかもしれないが、これはこれでアリだと思う。観終わった後の、ふわっとした幸福感は、この作風ならではではないだろうか。

たとえば、作中でたびたび映る“食のシーン”は、原作漫画のテイストやテレビシリーズの魅力をそのまま映画館へ拡大したような印象を受ける。特に伊藤家の食卓風景は、父が唐突に語りだす「生きること」と「食べること」の結びつきが印象的である。さらには母(MEGUMI)のマイペースすぎるリアクションもまた良い塩梅で、ありふれた献立をしみじみ美味しそうに見せるから不思議だ。観終わるころには、自分も何かおいしいものを食べたくてしょうがなくなる。

京都へ飛んだ次女の和菓子修行エピソードが象徴的だが、本作が大切にしているのは「同じことを淡々と繰り返す日常の美しさ」だと感じる。毎朝同じように生地をこね、同じ分量で餡を包み、同じようにお店を開いてお客さんを迎える。その繰り返しこそが“つまらない”と思われがちだけれど、そこにこそ人生の面白みがあると語る職人の言葉は、まさに伊藤家の日常にも通じている。特別な変化やドラマチックな事件がなくても、家族が集まれば毎日がなんだかんだで大騒ぎ。そういう姿を見せてくれるからこそ、「何でもない日常は実はすごくかけがえのないものだよな」と思わせてくれるのだ。

本作のクライマックス近くでは、父・源太郎の“ありがたいお言葉ショー”が再び炸裂する。正直、ちょっと暑苦しいくらいの熱弁ではあるが、これまで積み重ねてきた三姉妹との関係があるからこそ、不思議と納得してしまう。テレビシリーズを観てきた人なら「はいはい、きたきた!」という感じで身構えられるが、映画から入った初見の人でも「これが伊藤家のスタイルなんだな」とクスッと笑えるはずだ。そして最後には、ちょっとだけ心が軽くなるようなオチが用意されている。すべてがスッキリ解決するわけでもないし、いろんな伏線が鮮やかに回収されるわけでもない。だが、その“ゆるい余韻”こそが本作の持ち味だと思う。

本作は「あの家族を大きなスクリーンでもっと観たい」「モヤモヤする毎日をちょっと笑い飛ばしたい」「食べることが好きで、そこから生まれる日常のあれこれを眺めたい」という気分の人にピッタリだと感じる。テレビシリーズのファンはもちろん、初めての人でも意外とすんなり楽しめるはず。ただ、“ド迫力の映画体験”を期待すると肩透かしかもしれないので、その点は要注意。無理にあれこれ深読みするより、「おいハンサム!!」一家のほのぼのアクションに身を委ねるのが正解である。

そして鑑賞後の最大の楽しみは、なんと言っても「さて、何を食べようか?」と考えることだ。劇中で頻繁に登場する料理の数々が頭にちらついて、お腹がぐうぐう鳴ること必至である。源太郎の真似をしてババロアを注文するもよし、カレーを食べるもよし。そうやって日常をちょっとだけ楽しくさせるきっかけをくれるあたり、本作は“生きる活力”をそっと差し出してくれる映画だといえるのではないだろうか。

映画「おいハンサム!!」はこんな人にオススメ!

本作は、ファミリードラマが好きな人にはもちろんだが、「目立ったアクションや恋愛の盛り上がりがなくても、見終わったあとにクスッと笑える作品を求めている」タイプの人におすすめしたい。特に、“頑固な父と奔放な子どもたち”の微妙なすれ違いに共感できる人や、家族という枠組みの面倒くささと温かさの両方をひしひしと感じたい人にドンピシャである。

それから、「毎日のご飯が大事」という感覚を大切にしている人もハマるだろう。本作では、おいしそうな食べ物がこれでもかと登場するが、それがただの“味覚的な楽しみ”にとどまらず、登場人物同士のコミュニケーションや人生観の一端を映し出す道具になっているところが見逃せない。また、何気ない会話の中でポロッと出てくる小ネタにフフッと笑える人もきっと楽しめる。大事件やサスペンス的な刺激を求める人には物足りないかもしれないが、「なんでもない毎日の大切さ」を改めて感じたいときに観ると、妙に染みる作品だと思う。
さらに、ドラマ版を見逃していても、いきなり映画に飛び込んで問題ない。ちょっとした人間関係の背景がわからなくても、人物のキャラが立っているので自然とついていけるからだ。

むしろ「テレビシリーズも見たくなった!」と興味をそそられるきっかけになるかもしれない。心が疲れているとき、寝る前にちょっとだけ元気をもらいたいとき、気軽に家族のドタバタを覗いて笑いたいとき――そんな人たちが観ると、ほっこりした気持ちで映画館をあとにできるはずである。

まとめ

本作は、吉田鋼太郎演じる源太郎を中心に、ゆるい騒動を積み重ねていくスタイルが特徴的だ。大仰なアクションもなければ、一点に向かって突き進むようなストーリーもない。にもかかわらず、三姉妹のちょっとズレた恋模様や、家族のどうでもいいようなやりとりを眺めているだけでいつの間にか時間が経ってしまう。観終わったあとに、「何だか自分の家族や友人たちのことをもう少し大切に思えそうだな」と感じる人もいるだろう。

それぞれのキャラクターが抱える問題は一筋縄ではいかないが、最後には肩透かしのように解決したり、あるいは解決しなかったりと、まとまりそうでまとまらない塩梅が絶妙である。そこが逆にリアルで、まるで毎日の暮らしを鏡で映したかのよう。だからこそ、鑑賞中は「こういうのあるある」とひそかに首を縦に振りたくなる場面が多いのだと思う。吉田鋼太郎のコミカルな“説教”が響く人もいれば、「まるで自分の父を見ているみたいだ」と笑う人もいるかもしれない。

全体的には、ほんの少し癖のある家族ドラマが好きな人にはたまらない一本だ。特に気張らずに、飲み物とポップコーンを片手に、スクリーンの中に広がる“何でもないけどちょっと幸せな日常”を堪能するといいだろう。肩の力を抜いて楽しめば、エンドロールを見送りながら「いやあ、家族って面倒だけど悪くないかもね」と思えるはずである。