映画「銀魂オンシアター2D『金魂篇』」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
本作は銀魂の持ち味である下ネタやパロディ、そしてシリアスとギャグの絶妙な行き来が満載で、観客の心を揺さぶる作品だと感じた。劇場を出るころには、あれもこれも盛りだくさんすぎて頭の中が祭り状態になってしまうほどである。かと思えば、ふっとしんみりさせる場面も入っていて、笑いと涙の振り幅がやたら大きい。この大衆娯楽感こそ「銀魂」らしさであり、しかも今回は“金”要素まで盛り込まれているところがさらにイカしている。
元々アニメ本編で放送されたストーリーを再編集した形ではあるが、大スクリーンで“金魂”の世界を味わうと、やはり迫力が違う。妙にリアルな効果音が笑いを誘う一方で、アクションのキレが思った以上に鋭く、こんなにカッコよかったのか…と改めて驚かされた。長年原作やテレビアニメを追いかけてきた人はもちろん、ちょっとした気分転換に劇場へ足を運びたい人にも刺激が強めな一作である。何より鑑賞後、見事なまでの“笑い尽くし&どこか胸アツ”な気分にさせてくれるのがたまらない。
銀時と金時の対比や、仲間たちの“忘れていた何か”を取り戻すくだりにもドキドキさせられた。ネタの細かさと迫力ある演出に圧倒されたいなら、この映画は外せないだろう。
映画「銀魂オンシアター2D『金魂篇』」の個人的評価
評価:★★★☆☆
映画「銀魂オンシアター2D『金魂篇』」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本編は“もしも銀時がもう一人いたら”という驚きの設定から始まる。しかも、そのもう一人は“金色”なロボット“金時”だというのが何とも銀魂的な発想でおかしみを誘う。最初は主人公を完全に乗っ取られた形の銀時が、町の仲間たちから存在を忘れられ、“脇役扱い”されるシーンが切ないやらコミカルやらで見事な幕開けである。
劇中、金時はあくまで「理想的なリーダー」を体現したように振る舞う。町の危機や困りごとにおいて、銀時よりも迅速かつパーフェクトに対処するため、周囲の住人たちから絶対的な信頼を得てしまう。対する銀時はといえば、最初こそ“自分が本物の主人公だ”と声を張り上げるものの、誰にも信じてもらえず、次第にしょんぼりモード。飲み屋でやさぐれたり、何だかんだと世をすねた態度をとったりするあたりが笑える反面、見ていてやるせなくもなる。これぞ銀魂らしい、甘いと見せかけて案外ビターなテイストだ。
しかも金時の正体は、かつて源外が「銀時の足りない部分を補うため」に作ったサンドバッグのようなロボットだったというから驚きだ。あまりにも完成度が高まった結果、元の主人公を追い落としにかかるという筋書きは、皮肉たっぷりでどこか憎めない。洗脳的な装置によって新八や神楽まで“金時こそが真のリーダー”と信じ込んでしまう展開には、見ているこちらも「なんでそうなるんだよ!」と突っ込みたくなる。だがそれを、ギャグを交えながらもテンポ良く見せてくれるのが本作の強みである。
一方、金時が決して“彼らと共に生きる”わけではなく、自身の野望のために町を巻き込もうとしている点が実に不穏だ。銀時の昔からの仲間たちも、彼の名前や存在そのものを忘れていても、心のどこかに「銀さん」の面影を抱き続ける。その感触が少しずつ蘇り始める過程こそ、銀魂流の熱い展開にほかならない。「記憶は消されても、魂までは奪えない」というテーマがあちこちに散りばめられており、ただのコメディで終わらせないドラマが見どころだ。
特に印象的なのは、さっちゃんや月詠、桂らが「銀時らしき男を目の前にしても、なぜか否定しきれない」戸惑いの感情に揺れる場面である。普段であれば即座にお仕置きしたり、張り倒したりしそうなキャラたちが、どこか違和感を覚えて動きを止める。記憶こそ上書きされているのに、本能的に“こいつとは昔からの縁がある”と感じ取る姿は、コミカルな中に切なさを孕んだシーンでもある。そのうえ金時は一枚上手で、彼らの迷いを利用して銀時を追い詰めようと画策するからたちが悪い。
とはいえ銀時が下がったままで終わるわけもなく、最終的には得意の“土壇場での逆転劇”を繰り広げるのが最高に痛快だ。旧来の仲間たちが次々と記憶のズレに気づき、「あれ? この場面って銀時と一緒にやってきたんじゃ…」と、真実を取り戻していく展開はやはり胸アツ。ダラダラしながらもやるときはやる男・銀時が、絶体絶命のピンチをかいくぐる様は見ていて飽きない。金時のほうもただのそっくりさんというだけではなく、腹に一物ある姿をエネルギッシュに見せるため、対立構造がわかりやすく盛り上がるのだ。
中でも爽快なのは、仲間全員がそろうと爆発が起こるという金時の仕掛けを、銀時が“からり”と笑い飛ばすシーンである。爆弾をチラつかせられても怯まず、「こっちにも色んな手段があるんだよ」とばかりに決着へ突き進む様子が痛快のひと言。そして実は銀時だけでなく、新八や神楽、さらにはお妙たちの心の奥底にも“真の仲間を信じる力”が息づいているという事実が明らかになり、しんみりするやらテンションが上がるやらで忙しい。
さらに、物語終盤には金時の“本当の目的”が語られ、銀魂ならではのぶっとんだオチを迎えていく。単に「主人公交代を狙う」というだけでは済まないスケールのデタラメっぷりが、さすがは銀魂といったところ。そこから続く後日談的シーンでは、銀時や神楽、新八が金時に対して微妙に優しさを見せる点も魅力的だ。洗脳騒動の発端とはいえ、もとは「より良いリーダーを作ろう」という気持ちから誕生した存在。それをなんとかして救いたいと願う新八や神楽の気持ちにほろりとさせられる。
おまけにラストには、呪術ネタやら他作品のパロディやらを堂々とぶち込んでくるあたりに、銀魂的な“何でもアリ”の持ち味が凝縮されている。特に中村悠一氏が演じる金時が「正論が嫌いなんだよね」なんてセリフを口にし、銀時たちが「五条悟のマネかよ!」と即ツッコミするくだりには思わず吹き出してしまう。大画面で見せるメタ発言の破壊力は、やはり銀魂ならではのものだ。
要所要所で登場人物たちがド派手なアクションや下ネタを炸裂させつつも、友情や仲間との絆が浮かび上がるラストへの流れは見応え充分。観終わった後に深く考えるよりも、まずは腹を抱えて笑い、そして最後の最後で「やっぱりこいつら最高だな」としみじみ思わせてくれる作品である。テレビ版を観ていると一層楽しめるが、ちょっと銀魂をかじった程度でも、劇場ならではの勢いに飲み込まれて気分が晴れること請け合いだ。
以上のように、笑いとアクション、ほんのり熱い人間ドラマ(あえて人間と呼ぶのもおかしいキャラが多いが)がテンコ盛りで、観る者を飽きさせない。初見の人にとっては「銀時と金時ってなんなんだ?」と面食らうかもしれないが、それでも気づけば目が離せなくなる不思議な魅力がある。この自由奔放さこそ銀魂の真骨頂だと実感できる一本である。
映画「銀魂オンシアター2D『金魂篇』」はこんな人にオススメ!
まずは銀魂のギャグやパロディ要素が好きな人にはうってつけだ。下ネタから他作品の有名セリフまで容赦なく突っ込んでくるため、腹をかかえて笑いたい人には大きな刺激となるだろう。さらに、まばゆい金色をまとった新キャラ(?)がメインを張るストーリー展開が面白いので、シリーズを長年追ってきた人なら「あの銀魂が、こんな展開に!」と興奮を覚えること間違いなしである。
一方、深刻になりすぎない作風を求める人にも適している。基本はドタバタ調でありながら、要所では仲間を信じる強い思いが滲み出るように描かれており、「笑いながらどこか泣きそうになる」独特のテンションを楽しめるのだ。もし日常にちょっとした刺激とエネルギーを求めているなら、この映画を観れば十分に元気をチャージできるだろう。また、銀魂をそこまで知らない人でも、何だか勢いに押されて最後まで観てしまう魅力があるため、「コメディとアクションを一度に味わいたい!」というタイプにもおすすめだ。
そして何より、個性的なキャラクター同士の関係性にときめく人は必見。忘却や洗脳というシリアスな要素をギャグに包み込みながら、それぞれのキャラが「自分にとって大切なものは何か」を思い出していく姿が感動を呼ぶ。シニカルな笑いと熱い絆が好きな人ならば、きっとこの“金魂”の世界に魅了されるだろう。
まとめ
本作は、主人公がもうひとり現れるという衝撃の幕開けから、銀魂らしさ全開のパロディや下ネタが次々と投入されていくのが痛快である。仲間に忘れられた銀時と、町の人々をスマートに救っていく金時の対比がストーリーをスリリングに盛り上げ、結果として「やっぱり仲間っていいな」と思わせるラストへとつなげてくれる。
洗脳や記憶喪失といった要素をシリアスに描きつつも、そこかしこに炸裂する会話劇やバカバカしいまでの騒動によって、不思議と重苦しさを感じない絶妙なバランスが特徴だ。結局のところ、銀さんは銀さんのまま、金時には金時の役割があって、そして仲間たちの“心”は誰にも奪えないというメッセージが胸に残る。笑いもアクションも存分に楽しみたい人には必見の一本だと断言できる。