映画「キングダム2 遥かなる大地へ」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
紀元前の中国・春秋戦国時代を舞台としたこの作品は、前作で山崎賢人演じる主人公・信が若き王と出会い、玉座奪還を成し遂げたところから半年後の物語である。続編にあたる今作では、まさに本格的な“初陣”が描かれ、壮大な戦場へ信が飛び込んでいく様子が圧巻だ。テレビアニメでも人気を博した原作漫画の迫力を、実写でどこまで再現できるのかと期待していたが、良い意味で裏切られた。個人的には物語のテンポ感と出演陣の熱量にガツンとやられ、まばたきする暇もないほど場面が次々展開していく。
とはいえ、初めて挑む“真の戦争”は甘くない。前作とはひと味もふた味も違う大規模な戦闘シーンに「これが天下を目指す道か」と思わず息をのむ。橋本環奈が演じる河了貂や清野菜名が演じる羌瘣といったキャラクターの魅力も倍増し、信が仲間とぶつかり合いながら成長していく様子をコミカルかつ真剣に描いているところも見どころだ。ここからは作品をさらに深掘りする形で徹底的に語っていこうと思うので、未鑑賞の方は覚悟を決めて読み進めてほしい。
映画「キングダム2 遥かなる大地へ」の個人的評価
評価:★★★★☆
映画「キングダム2 遥かなる大地へ」の感想・レビュー(ネタバレあり)
前作ではクーデターが起こった王都での攻防がメインだったが、今作は隣国・魏が攻め寄せてくる“蛇甘平原の戦い”が物語の主軸となる。大軍同士が広大な平原を舞台に激突するため、スケール感が一気に跳ね上がった。主人公の信はもちろん、周囲を取り巻く仲間たちが圧倒的な敵を相手にどんな策を打つのか、そして誰が生き残り誰が散っていくのか。その展開を目にすると、改めて「これぞ戦争映画の醍醐味だ」と唸らされる。
まずは主人公・信の成長ぶりに注目したい。前作で奴隷の身分から一歩抜け出し、晴れて兵として戦に参加することになった信だが、初の戦場で身をもって思い知る“生と死の交錯”がすさまじい。前線をかき分けて突撃していく信の姿は想像以上に猛々しく、「勢いばかりで大丈夫か」と心配になるほどだが、その“猪突猛進”とも言える単純明快な行動力こそが周囲の士気を高めていく。山崎賢人の熱演は相変わらずエネルギッシュで、泥だらけになりながら切り込んでいく表情には思わず笑いと緊張が入り混じる。ある種の危うさをはらんだキャラクター造形が、映画の盛り上がりを担っているといっても過言ではない。
一方、今作の目玉といってもいい新キャラ・羌瘣は、清野菜名が華麗な立ち回りを披露していて興味深い。羌瘣は一見して小柄な風貌ながら、“蚩尤”という伝説の暗殺者を生む一族で育ったという設定で、戦場では人間離れした動きを見せる。清野自身が得意とするアクションスキルを余すところなく発揮していて、原作のイメージをしっかり再現している点に拍手したい。しかも彼女は冷酷非情な剣の達人というわけではなく、仇を追う悲痛な決意を抱えながらも仲間とのつながりを少しずつ育てる姿が好印象だ。信とのやり取りではコミカルな部分もしっかりと表情に出してくるので、硬派な戦争映画の中でも気の抜ける瞬間を作ってくれる。
その戦場の大きな見どころとしては、何といっても“装甲戦車”の登場が挙げられる。漫画やアニメではすでに有名だが、実写で繰り広げられる重厚感には驚くばかりだ。歩兵が陣形を整えたところへ、鉄塊の如き車輪がドドドドッと突っ込んでいくシーンは目を背けたくなるほどの凶悪さがある。秦軍が一気に蹂躙されてしまう光景は胸が痛むが、それを一人でも破壊しようと奮戦する信や羌瘣の強烈さに「まだまだ捨てたもんじゃない」と奮い立つ気持ちにもなる。監督の佐藤信介が得意とする映像表現がフルに生かされ、破壊と混乱の一瞬をリアルに切り取っているのが印象的だ。
そして、この大混戦を指揮する千人将・縛虎申や総大将・麃公の存在感も見逃せない。縛虎申は無謀な突撃を好む武将として描かれ、ともすれば“無茶な上官”に見えかねないが、その実は兵を鼓舞する肝の据わった人物である。渋川清彦が演じる縛虎申は不器用ながら人望を集める雰囲気をしっかり体現していて、信の持つ一途さとの相乗効果で「突撃しろ!」という叫びが劇中で何度も響いてくる。やや強引な作戦でも部下がついてくるのは、縛虎申の懐の深さを感じさせる演技力の賜物だろう。
一方の麃公は、豊川悦司がその豪胆さを大胆に表現していて迫力満点である。蛇甘平原において決して有利ではない状況下で、“勝利をもぎ取るにはまず攻めよ”という信条を貫くこの大将の豪快な立ち居振る舞いは見応え抜群だ。ところどころで見せる豪快な笑みや兵への檄が戦意を高め、「この人なら勝てるかもしれない」と思わせる妙な説得力があるのだ。
また本作では、第一作目でも注目を集めた王騎(大沢たかお)の存在感が相変わらず群を抜いている。戦局を観察しに来たという形で堂々と登場し、実際の戦いには加担しないながらも周囲を翻弄する。その姿は「まだ“将軍の格”を感じさせる出番は温存しているのか」と思わせるほど余裕たっぷりだ。圧倒的なカリスマ性を持つ王騎がヒョウ公と魏の呉慶のぶつかり合いを“解説”していく場面は、観客としても状況を俯瞰しやすくなるうえ、彼の飄々とした言葉回しがなんともクセになる。王騎はきっと今後のシリーズにおいて、さらに大きな役割を果たすのだろうという期待を持たせる立ち位置である。
さて、肝心の“蛇甘平原の戦い”の結末に関しては、原作を知っている方なら「そうなるよね」とうなずく展開かもしれない。だが、映画ならではの迫力やドラマ性が上乗せされていることで、いわゆる“知ってても楽しめる”作品に仕上がっていると感じた。呉慶がどんな策で秦軍を迎え撃ち、ヒョウ公と刀を交えるのか。そして信は歩兵の少数部隊でいかに不可能を可能にしようとするのか。知っていても胸が熱くなるし、知らない人ならなおさら衝撃と興奮を味わうに違いない。
物語の終盤では、信や羌瘣、そして仲間たちが“次の戦い”に向けてそれぞれの道を進み始める余韻の残し方が見事である。魏への旅立ちを決意する羌瘣と、彼女を呼び止めながらも最後には背中を押す信のやり取りには、小さな笑いと切なさが同居していた。「またどこかで戦場を駆け抜けよう」といったセリフが口に出されるわけではないが、2人の関係性の基盤が固まった瞬間を目の当たりにできるのは嬉しい。今後のシリーズで再会したときに、より深い絆が確立されていく予感がする。
さらに、王都に残された河了貂の葛藤や、冷静に権力の座へと歩を進める呂不韋との駆け引きが小出しに描かれることで、世界観がぐっと広がった印象を受ける。王都内部の権力争いと前線の戦いが微妙にリンクしていく様子は“戦場だけがすべてではない”という奥行きを生み、物語を膨らませる効果がある。嬴政(えい政)を演じる吉沢亮は、もはや王のオーラを纏っているとも言える存在感で、強大な敵を前にしながらも秘めたる自信を絶やさない。前作から半年の経過を上手く表現しており、前よりも堂々と玉座に座る姿勢が印象深い。
撮影面や美術面にも注目したい。特に甲冑の細やかな造型や大量のエキストラを動員した合戦シーンには気合いが入っており、戦国時代を思わせる土臭さや重みが画面から伝わってくる。曇天の空の色合いや乾いた大地、血や埃が舞う空気感など、全体の色調が前作に比べさらに深みを増しているように感じた。作品全体のリアリティや深刻さが高まる一方で、妙なおかしみを感じさせる瞬間も組み込む演出がなされているので、息苦しさばかりが募るわけではない。エンターテインメントとしてのバランス感覚は非常に優れているといえるだろう。
さて、ここまで語ってきたように、今作は前作のテイストをしっかりと継承しつつ大規模戦闘へ突入したことで、“天下の大将軍”を目指す物語にさらなる奥行きを与えている。キングダムという原作の醍醐味である「仲間の死を乗り越え、それでも前へ進む」というテーマがいよいよ本格化した印象だ。ひとりでは何もできなかった信が、仲間の力で不可能を可能にする背中を見せてくれるのが王道的でありながら胸アツだし、それに呼応する形で嬴政や羌瘣がそれぞれの目的を果たす意志を固めていく様はとてもドラマチックである。
もちろん、戦争映画であるがゆえの壮絶な描写があるので、苦手な人は構える必要があるかもしれない。とはいえ、そこに出てくるキャラクターのかけ合いには随所に軽快さや日常のやりとりが混ざり込むため、血なまぐささ一辺倒ではない。合戦の迫力と人間模様のドラマがバランスよく交わることで、観る側の感情を絶妙に揺さぶってくれるのだ。
この先、物語はさらに苛烈な舞台へ広がっていくことを予感させるラストが用意されている。今作で百人将に昇格した信が、次はどんな大きな戦いに挑んでいくのか。王騎や蒙武といった大将軍たちが本気を出すとき、そして呂不韋と嬴政の政治闘争がどのように進むのか。一筋縄ではいかない運命に引き寄せられ、次回作が今から待ち遠しいというのが正直な感想である。実際、エンドロール後にさらっと“続編”を予感させる告知が入るのもファンには嬉しい仕掛けだ。
今作は“最初の戦場”を真正面から描いた作品といえる。想像を超える兵力差を前にしても諦めず、苦境の中に活路を見いだそうとする登場人物たちの姿勢には元気をもらえる。原作ファンはもちろん、前作で「こんなにもアツい作品があるのか」と驚いた人にもぜひ観てほしい。実写化作品によくある問題が大きく見えないほどに仕上がりが整っているのは、キャストやスタッフ全員の力の結集だろう。今後も間違いなく話題となるシリーズだけに、この第2作目の熱狂を見逃す手はない。
映画「キングダム2 遥かなる大地へ」はこんな人にオススメ!
日頃から熱い人間ドラマが好きで、さらにド派手な戦闘シーンも楽しみたい方にはぴったりだ。特に「弱小と思われた連中が大舞台でのし上がっていくストーリー」に胸を打たれるタイプなら、本作はまさに好物といえるだろう。少年漫画的なヒロイック要素があるため、戦国時代の骨太な合戦ものとしてはもちろん、仲間と共に困難を乗り越えていく王道エンターテインメントとしても満足度が高い。
さらに、原作漫画やアニメを未視聴でも大丈夫だと思えるのが魅力だ。冒頭で前作の流れをふまえた紹介がうまく挿入されており、「とりあえず続編から観る」というスタンスでもある程度の理解ができるよう作られている。もちろん、第一作目を観ておいたほうがキャラ関係図や国の情勢などをスムーズに把握できてより楽しめるが、敢えて飛び込んでも十分に迫力とドラマを堪能できるはずだ。
歴史物には興味があるが「堅苦しくて眠くなりそう」と敬遠してきた人にもおすすめしたい。華やかな衣装や迫力ある殺陣がふんだんに盛り込まれており、テンポも軽快なので退屈しにくい。加えて、出演陣の個性的なキャラクター同士の掛け合いに時折クスッとさせられる部分があるため、血なまぐさいだけの戦争劇ではないバランス感が魅力だ。要するに、重量級の合戦をメインに据えながら、軽妙なやり取りも楽しめるという一石二鳥の娯楽性があるということ。心の奥底まで燃え上がるような勇壮な物語に触れたい人は、ぜひ一度この映画の世界へ足を踏み入れてみるといいだろう。
まとめ
本作は、壮大な戦争シーンの迫力と登場人物たちの友情や意地が激しくぶつかり合うドラマをしっかりと両立させた力作である。
前作とは比較にならない数の兵士が入り乱れる合戦を大胆に映像化しつつ、一人ひとりのキャラクターが個性を発揮しているのが大きな魅力だ。特に羌瘣の存在は、華麗なアクションや切ない過去など多面的に見どころを増やし、物語全体を引き締めるスパイスとして機能している。信が百人将にまで駆け上がり、一歩ずつ夢に近づいていく様子を見ると、「いよいよキングダムの世界が本格的に動き始めたな」という感慨がこみあげる。あの王騎や呂不韋といったクセの強い将や政治家も存在感抜群で、続く展開をどう進めていくのか、これからも目が離せない。
結果として、息をつかせぬ勢いと骨太の演出が凝縮された作品になっているので、まだ観ていない方はぜひ手に取ってみてほしい。戦場を駆ける英雄たちの姿を通じて、自分の人生観にも刺激を受けること請け合いだ。