映画「君の膵臓をたべたい」公式アカウント

映画「君の膵臓をたべたい」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作はタイトルからして「え、ホラー? 臓物系グルメ?」とツッコミたくなるが、蓋を開けてみれば青春×闘病×不測の事態という、実にハイブリッドな展開で攻めてくる意外性の塊である。しかも、お涙頂戴かと思いきや、どこか笑いも込みで観客の心を鷲づかみにしようとしてくるから侮れない。とくにメインヒロインの山内桜良が引っ張るストーリー展開は、いわゆる“天真爛漫女子に振り回される地味男子”の王道パターンを踏襲しつつも、時折まさかの方向に脱線して視聴者の不意を突く。

実写映画としては珍しく、原作小説ファンを絶望の淵に叩き落とさないどころか、むしろ新たな解釈を提示している点がウリでもある。そんな良いところ尽くしの作品でありながら、感動を匂わせつつベタベタに泣かせにかかるわけでもない。いや、しっかり泣かされるのだが、その涙には不思議と清々しさと「ちょっと待て、それアリ?」な突っ込みたくなる要素が同居している。

今回はそんな映画「君の膵臓をたべたい」の魅力を、辛口トークを織り交ぜつつまとめてみる。

映画「君の膵臓をたべたい」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「君の膵臓をたべたい」の感想・レビュー(ネタバレあり)

映画「君の膵臓をたべたい」は、一見するとありがちな“泣ける青春モノ”かと思わせておいて、実はちょっと変化球を投げてくる不思議な作品である。物語のテーマは「生きるとは何か」「人とのつながりをどう感じるか」が軸になっているが、そこに「膵臓を食べる」という、いかにもイロモノっぽいタイトルをぶち込んでくるのだから度肝を抜かれる。自分だったら「肺を食べる」でも「心臓を食べる」でも一緒だろうと思うのだが、そこは膵臓にこだわりがあるらしい。いや、決してホルモン系焼肉の話ではない。

とはいえ、あまりにもタイトルがインパクト大なので、ハードルが上がりすぎているきらいもある。実は蓋を開ければ、病を抱えたヒロイン・山内桜良(浜辺美波)が余命を宣告され、そこへ輪をかけて友達もいない地味男子(北村匠海)が登場する、いわゆる青春群像劇の一種。だが、この映画版「君の膵臓をたべたい」は、その流れを丁寧に描きつつ、原作小説のファンをも取り込むために、現在パート(大人になった【僕】=小栗旬)と高校時代を回想するパートを交錯させる構成になっている。ここで賛否が割れがちな点は、「え、突然12年後に時間飛ぶの?」という驚きと、「ああ、この大人パートは後日談として付け足されたのね」という納得の両方だ。

個人的には、この二重構成のおかげでヒロインの死後に【僕】(北村匠海)がどんな人生を歩んでいるのかをしっかり描けたのはプラスだと思う。一方で、「過去の甘酸っぱい青春と、現在の大人の苦悩が半端なバランスで入り混じって、どっちがメインか分からなくなる」という意見もあるので、観る人によってはやや冗長に感じるかもしれない。そのあたりは、映画がまるで焼き鳥のハツとレバーを交互に食べさせてくるようなもので、好きな人にはたまらないが、苦手な人には「ちょ、もうお腹いっぱい」となるのだろう。

さて、ヒロインの桜良について。彼女は病気を隠しながらも、明るく笑顔でクラスの人気者。いわゆる「誰に対しても分け隔てなく接するタイプ」である。こういうキャラは、下手をすれば“都合のいい美少女像”になりかねないが、本作の場合、桜良の行動には絶妙なリアリティがある。例えば、自分の病状を受け止めながらも、「死ぬまでにやりたいことリスト」を作って日々を楽しもうとする姿勢は、どこか開き直っているようにも見え、同時に「本当は怖いんだろうな」と感じさせる繊細さをちらちらのぞかせる。実はこの両面性こそが彼女の魅力であり、主人公の地味男子が惹かれていく要因でもある。そりゃあ、大人しく図書室にこもって本だけ読んでいた男子からすれば、あれだけ派手に自分の世界に踏み込んでくれる女性は衝撃的だ。なんせ「君、私の秘密知っちゃったでしょ? 責任取ってね!」なんて言われたら、「うわぁ、思春期男子の夢かな?」と動揺するのも無理はない。

では、そんな桜良はどう物語の結末に向かっていくのか。大方の人が予想する通り、“病気で死んでしまうのか”と思わせておいて、実はまったく別の死が訪れる——これには観客も驚く。何せ、順当に「余命が短いから悲しい別れがやってくるのかな」と身構えていたところに、不意打ちのように交通事故でもなく、ましてや医療ミスでもなく、“通り魔”という最悪の展開を持ち出してくる。「君の膵臓をたべたい」の感想を語る際、まずこの衝撃展開が真っ先に話題に上る。ネット上にも「こんなの予想できないし、納得いかない!」と悲鳴混じりのレビューが溢れている。確かに、もう少し上品に言えば「いや、その死に方は唐突すぎない?」である。だが、この唐突さは本作の魅力でもある。人の死が常に病気や老衰だけで訪れるわけではない、というリアルを突きつけてくるからこそ、この作品のメッセージ——「いつどこで何が起こるか分からないからこそ、今を大切に生きるべし」——が強く胸に刻まれる。

一方で、映画的演出としては賛否両論だ。あまりに突飛な退場ゆえに、シリアスなはずが「え、マジで? その辺の通り魔ってそんなに都合よく出現する?」と、物語性を突き抜けたむしろギャグ要素にも見えかねない。個人的にも、初見時は「いくらなんでも急すぎない?」と思わず二度見してしまった。実際、その唐突さに感動モードから一気に現実に引き戻される人もいるだろう。しかし、そこから先の【僕】(北村匠海→小栗旬)の苦しみや後悔、桜良の置き手紙ともいえる「共病文庫」の存在によって、映画は現実的な痛みと、桜良が遺した前向きなメッセージを同時に描き切ることに成功している。ここが本作のキモであり、「やられた」と感じるか、「雑だな」と感じるかで作品の評価は大きく変わると思う。だから、評価が分かれるのは当然ではある。

また、映画「君の膵臓をたべたい」のレビューをする上で外せないのが、キャスト陣の熱演である。浜辺美波の透明感ある演技は言わずもがな、若き北村匠海のクールな中にある青臭さ、小栗旬のややくたびれた大人感、大友花恋の“友達としてのジレンマ”など、どこを切り取っても「この役者で良かった」と思わせる説得力がある。特に高校時代の【僕】を演じた北村匠海の“やる気なさげだけど内面は不安定”な演技は、身近なクラスメイト感があって良い味を出している。そもそも、スクールカースト的には超下位にいる地味男子が、スクールカースト最上位っぽい元気系女子に絡まれるシチュエーションがリアルなのかファンタジーなのかは永遠の謎だが、実際こういう奇跡的な出会いがあった人も世の中にはいるかもしれない(うらやましい)。

そして、忘れてはならないのが大人になった【僕】を演じる小栗旬の存在。教師になりながらも辞職を考えている彼が、桜良を失ってから長い年月を経て、どのように心の整理をつけてきたのかが丁寧に描かれている。もちろん映画の尺上、「そんなに時間かけられないよ!」という声が出るくらい詰め込み気味の構成ではあるが、個人的にはうまくまとめたほうだと思う。とりわけ桜良の親友・恭子(大友花恋→北川景子)との友情や確執もきちんと回収するので、後味よくストーリーを締めくくっている。桜良が遺した手紙から自分に向けられていた思いを再確認し、「自分がどう生きるか」を見つめ直す主人公の姿には、ある種“青春の総決算”を感じさせる。

いっぽう、辛口目線で言えば、「主人公が内向的で読書好きっていう割に、そこまでディープな文学話は展開されないし、桜良との深い精神的交流みたいなところももう少し見たかった」という思いがある。映画としては尺が限られているので仕方ないが、もう少し二人の“心のすれ違い”とか“価値観のぶつかり合い”があっても良かった気がする。その点で、タイトルの「君の膵臓をたべたい」という奇天烈フレーズを最大限に活かしきれているかどうかは微妙なところだ。さらに言えば、「膵臓だけじゃなく、もうちょっと他の部位も食べてほしかった」と思うのは私だけだろうか。もはや食人映画のノリだが、それくらい振り切ったら伝説級の衝撃作品になっていただろう。

それでも、泣かせどころがズバリ刺さる構成になっているのは見事と言わざるを得ない。桜良の死を知った【僕】が、彼女の想いを手紙や“共病文庫”を通して知るシーンで、「ああ、もっと早く気づいてやれよ」「人生は儚いんだよ!」と思わず叫んでしまいそうになる。青春映画にありがちな“告白の瞬間”だとか“恋敵との対立”みたいなベタ展開はあっさり流されるわりに、友情と死別の痛みの部分はしっかり深堀りしてくれる。このバランスが絶妙であり、結果として観終わった後に「人間関係って面倒だし、尊いよなぁ…」としみじみ感じさせるのだ。

総じて、映画「君の膵臓をたべたい」は、王道青春映画のお約束を守りつつも、突然のシリアス展開で視聴者を動揺させる挑戦的な一作である。観る人を選ぶ面は確かにあるが、ラストで訪れる静かな感動、そしてほんの少し背中を押されるようなメッセージ性は多くの人の心に響くだろう。評価としては「★★★☆☆」というビミョーなラインに着地するが、それは決して作品としてダメという意味ではない。むしろ「あと少し食い足りない」という、嬉しい物足りなさがある作品だと感じる。観終わった後に思わず「膵臓って、なんだかんだで生きるのに重要だよな……」としみじみ感謝したくなる。いわば、僕らは日々自分の臓器の存在を意識せず生きているわけで、そこに気づかせてくれるだけでも本作の価値はある。とはいえ、もし本気で「君の膵臓をたべたい」と言い出す人が身近に現れたら、そっと距離を取るのが身のためだろう。病弱ヒロインに対する夢は映画の中だけで楽しんでおきたい。

映画「君の膵臓をたべたい」はこんな人にオススメ!

映画「君の膵臓をたべたい」は、いわゆる青春映画好きにはもちろんオススメだが、それだけでなく「大事な人との別れ」「命の儚さ」をテーマにしながらも、妙に重苦しくなりすぎない作品を探している人に向いている。泣きたいけど気分をドン底に落としたくはないという、わがままなニーズに応えてくれる絶妙なバランス感が特徴である。とくに「純愛ものは好きだけど、あざといベタな展開にはもう飽き飽き」と思っている人には、ちょっとした変化球として楽しめるだろう。

また、普段はホラーやアクションばかり観ている人にも意外と刺さるかもしれない。何しろタイトルからして衝撃的なので、「まさかの展開」を期待する人の好奇心は十分に満たされるはずだ。実際、劇中で起こる悲劇的な出来事は、ある意味ホラーよりも恐ろしく、「人生って本当に何が起きるか分からない!」と痛感させられるインパクトがある。

さらに「自分は地味めな性格だけど、いつか明るい異性に振り回されてみたい」と願望を持つ人にはドンピシャだと思う。主人公の地味男子とハイテンション女子の組み合わせは、ある種の妄想を具現化したような世界であり、「もしかしたら俺(私)もこんな出会いがあるかも…」と勝手に期待するのも悪くない。もちろん、桜良のような命の期限を抱えた相手という設定はファンタジー要素が強いが、そこが青春映画の醍醐味でもある。

要するに、ちょっと背伸びをしてでも心を揺さぶられる体験をしたい人、恋愛と死生観に関する物語でしっかり泣いて笑って考えたい人、そして辛口ながらも奇妙なタイトルに興味をそそられる人には、ぜひ一度観てほしい。胃腸薬よりも強力な感動を味わえるかもしれない。

まとめ

映画「君の膵臓をたべたい」は、青春映画好きのハートを鷲づかみにしつつ、一方では「その死に方はあんまりじゃないか?」とツッコミを入れたくなる不意打ちで観客の度肝を抜くチャレンジングな作品である。評価としては「★★★☆☆」の星3つにとどまるが、それは決してつまらないわけではなく、「あともうひと押し!」という余白を残した魅力の裏返しでもある。むしろこの“惜しさ”が物語にリアリティを与え、生きることの儚さや人とのつながりの大切さを深く考えさせてくれるから侮れない。

観終わったあと、「自分の膵臓、大事にしなきゃな…」「人との関係ってほんとに難しいけど、価値あるな…」と、いつもはスルーするようなテーマを真面目にかみしめたくなる。そんなちょっぴり刺激的で、かつ不思議と元気も出る作品が「君の膵臓をたべたい」なのだ。もしまだ観ていないなら、人生のタイミングを問わずふとした瞬間に鑑賞してみると面白い発見があるかもしれない。タイトルの真意を自分なりに解釈しつつ、涙腺の準備をお忘れなく。