映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」公式サイト

映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

竹内涼真が演じる主人公・間宮響の壮絶なサバイバルも、ついに最終局面へ突入したわけだが、これがなかなか手強い作品であった。ゾンビ(作中ではゴーレムと呼ばれる)と人間の激突が続く中、最愛の人を守りぬきたいという想いが、どれほど強大な困難を呼び寄せるのか。おまけに人間同士の利害が交錯することで、むしろゾンビ以上に人の欲望や裏切りが恐ろしく映るという皮肉さもある。

シリーズを通してファンだった人はもちろん、初めて観る人にも衝撃を与える展開が盛りだくさんだ。本当にラストを飾るに相応しい一作なのか、気になる部分やツッコミどころも含め、ざっくばらんに語っていこうと思う。前置きが長くなったが、早速ここから濃い内容へ踏み込んでいくので、未鑑賞の方は注意が必要だ。

映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」の感想・レビュー(ネタバレあり)

まず、これまでのシリーズを追いかけてきた人ならご存じのとおり、主人公・間宮響はいつも限界ギリギリまで踏ん張っては、大事な人を守るために命をかける姿が印象的だった。今作でもその“覚悟”がさらに強調されており、「そこまでやるのか!」と驚きながらも感動してしまう展開が用意されているのだ。

ストーリーをざっとおさらいすると、世界をゴーレムウィルスが覆いつくし、噛まれた者は容赦なく化け物へ変貌する地獄絵図の中、響は自身の娘であるミライを探し続けていた。途中で幾多の仲間と出会い、ある者とは協力し、ある者とは衝突を繰り返す。誰を信じられるのか、どこまで疑心暗鬼になればいいのか、その匙加減を常に試されるのが、この作品の面白くも恐ろしいところだ。

劇場版の最大の舞台となるのは、“ユートピア”と呼ばれるタワーである。名前だけ聞けば救いの砦のようにも思えるが、実際に響たちが足を踏み入れると、権力や富を得た人間ほど安泰に暮らし、下層の人間はゴーレムと紙一重のようなギリギリの生活を強いられている。この上なくシビアな現実が立ちはだかり、そこでワクチンの研究が行われているという話を軸に、新たなドラマが生み出される構造となっている。

ドラマシリーズからのファンにとっては、シーズン1~4で活躍した面々がどうなったかが気になるはずだが、今作では主に新顔の若手キャラクターが物語を引っ張る展開だ。特に高橋文哉演じる柴崎大和と、堀田真由演じる羽鳥葵は、まさに新時代の響&来美のようなポジション。平和だった頃、偶然にも響や来美と“ある海辺”で出会っていたというエピソードがあり、運命のような伏線が最後に効いてくる。

さて、そのタワーを牛耳るのは、西条という男(吉田鋼太郎)。一見すると人類の存続を目指す立派な指導者に見えなくもないが、実際は効率主義と犠牲の強要を平然と実行する冷酷な人物である。彼からすれば「ひとりの子供より、多数の命を救うことが優先」という理屈らしいが、そのためなら手段を選ばない姿勢には背筋が凍る。これこそ、ゾンビ(ゴーレム)より厄介な“人間の闇”を感じる部分だろう。

同じく研究タワーで台風の目になるのが、首藤シンジ(シーズン1から登場している医師)。ミライの特別な血液がワクチン開発に使えると分かった段階で、彼は欲望に飲み込まれていった。響たちを裏切り、ミライを研究材料扱いする非道さは憎々しいばかり。ただ、彼も「世界を救うため」という言い分を掲げている点で、西条と本質はそう変わらないのかもしれない。いずれにせよ、“自分だけが正しい”と信じている姿は、観る者の怒りを煽るには十分だ。

今作で大きく注目したいのは、響の“最期の選択”だ。愛する娘を救うため、まさか自分がゴーレム化のリスクを冒すような真似をするとは、さすがに予想を超えていた。既に体に致命的なダメージを負いながらも、「それでもミライを生かす」という意志を貫く姿には泣けてしまう。ここまでボロボロになりながら、ギリギリまで走り続ける主人公は、近年の日本映画でもなかなか見られない熱さではないだろうか。

さらに衝撃的なのは、ある時間を経てタワー跡を訪れるメンバーの存在である。タワーが崩壊して長らく経った後にやってくるという演出によって、物語の時系列が二重構造になっているのだ。冒頭で砂漠を歩く人物たちと、響が行動を共にするシーンが混在し、最終的にそれらが合流する流れは「なるほど、そう来たか!」と感心させられる仕組みである。

結局、劇場版は響が娘のために身を尽くし、その後の世界がどう変わっていったのかをダイナミックに描いている。中には「こんな状況、現実離れしすぎじゃない?」とツッコミたくなる場面もあるが、そこを含めてエンターテインメント作品として楽しむのが正解かと思う。リアリティよりも“熱量”や“愛の深さ”が前面に押し出されており、ゾンビ映画好きのみならず、人間ドラマとしての熱い展開を味わいたい人には響くはずだ。

演者たちの魅力ももちろん大きい。竹内涼真は言わずもがなのハマり役で、ただカッコいいだけではなく、弱さや必死さをさらけ出す芝居が板に付いている。高橋文哉と堀田真由のコンビも瑞々しく、彼らの視点で見る終末世界はどこか切なさが漂う。脇を固める出演陣も、それぞれ事情を抱えながら決断を迫られており、人間関係のバランスが絶妙に配置されているのが面白いところだ。

以上を踏まえると、シリーズを通して見てきた人はもちろん、ここから一気に最終章だけ観る人でも、壮大なカタルシスを得られる作品だと感じた。全体的に痛快なアクションや血みどろのバトル、極限状態での人間模様など、ゾンビものの醍醐味が詰まっている。そこに恋愛や家族愛の要素が組み合わさっている点が「君と世界が終わる日に」の特徴であり、本作でその総決算を迎えた印象だ。

ラストシーンは賛否が分かれると思うが、個人的には「ここまでやるか!」と驚きつつも納得できる締めくくりだった。絶望の中にも、一筋の光を見出そうとする人々の意志がしっかりと描かれているため、観終わった後には妙な爽快感が残る。そうした意味で、最終章にふさわしい濃度の高さとインパクトが詰まっていると感じた。

観終わった後には「となりのタワーって何だ?」と、まだまだ気になる伏線もちらつくが、本作がシリーズの一区切りを迎える重要な区切りであることは間違いない。ゾンビ好きな方、サバイバル系のドラマを好む方、あるいは単純に竹内涼真の体当たり演技を観たい方は、ぜひこの最終章を見届けてほしいと思う。細かい粗さやご都合主義な部分も含めて、熱量全開で走り抜けるこの作品は、ある意味で最高に“らしさ”が詰まった一作だと断言したい。

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映画「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」はこんな人にオススメ!

最初に断言しておくが、ホラーやサバイバル系がまったくダメだという方には勧めづらい。それでもこの作品を推したくなる理由は、人間ドラマのウェイトがかなり大きいからだ。ゾンビとの戦い自体も見どころ満載だが、むしろ注目すべきは「人がどこまで執念を燃やせるか」という部分にあると感じる。主人公・間宮響をはじめ、誰かを守るために自分を犠牲にする人がいたり、逆に自己保身のために仲間を平気で撃ってしまう人がいたりと、それぞれの内面がむき出しになるのが面白い。

特におすすめしたいのは、「極限状態での人間の善悪の境界」に興味があるタイプだ。正義感が強い人間が最後まで報われるとは限らないし、悪人に見えた人物がふとした瞬間に弱さや後悔を見せたりもする。そうした生々しい人間模様は、単なるホラーでは終わらせない深みを与えている印象だ。

主人公だけでなく、脇役たちにもそれぞれドラマがあるのが魅力。タワー側の支配者が抱えるエゴや、地下に追いやられた人々が秘める復讐心など、それぞれの立ち位置で必死に生きようとする姿はどこか応援したくなるし、ときにゾッとするほど恐ろしくもある。自分だったらどうするだろう、と考えずにはいられない迫力があるわけだ。

したがって、「ゾンビ映画はちょっと怖いけど、人間ドラマとしての熱さを味わいたい」という方にもピッタリだと思う。血なまぐさいシーンを避けられない作品ではあるが、それ以上に“人間の心”がくっきりと描き出されているので、ストーリー重視の方にもおすすめできる一作だ。

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まとめ

シリーズを締めくくる「劇場版 君と世界が終わる日に FINAL」は、まさに総決算と言うべき完成度だった。竹内涼真演じる響が“最期に何を選ぶのか”という部分は、これまでのシーズンを観てきた人なら絶対に見逃せないポイントだろう。極限状態でどこまで人は踏ん張れるのか、そして愛する者を守るためにどれほど犠牲を払えるのか。ゾンビが襲い来るパニック映画としての側面だけでなく、人間関係や道徳観を考えさせられる要素がこれでもかと詰め込まれている。

結末はかなりショッキングだが、不思議と後味は悪くない。きっと、この作品を通して「どんな世界になっても、大切な人を守りたい」という熱いメッセージが受け取れるはずだ。長く続いたシリーズに終止符を打つ本作を、ぜひ自分の目で確かめてみてほしいと思う。

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