映画「カラダ探し」公式サイト

映画「カラダ探し」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作はループ系ホラーと学園ドラマが融合した異色の一本である。ホラーとしての恐怖描写はもちろんのこと、青春要素をかなり盛り込んできているのが特徴的だ。橋本環奈が演じる主人公の奮闘ぶりは一見アイドル映画のようにも見えるが、蓋を開けると血まみれの亡霊に追い回される壮絶な展開が待ち構えている。最初は「かわいい主演とちょっと背筋の凍る場面があれば満足」と思いきや、気づけばクラスメイトとの連帯感に胸が熱くなったり、その合間に容赦のないホラーシーンがドカンと来たりとなかなか油断できない。

ある意味“青春群像劇×深夜の学校×終わらない追跡”という盛りだくさんの状況に放り込まれてしまうため、思わぬ方向からドキッとさせられる瞬間も多い。ここでは、そんな本作の独特な魅力を思い切り語っていこうと思う。ネタバレを気にしない方はぜひ最後までついてきてほしい。

映画「カラダ探し」の個人的評価

評価:★★☆☆☆

映画「カラダ探し」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作は、端的に言うと“血まみれ少女の怨念”と“時間のループ”を掛け合わせた作品である。正直、自分としては序盤から「またループものか」と思わなくもなかったが、その印象をものの見事に覆される展開が待っていた。いわゆる“死に戻り”を題材にした作品は数多くあるが、本作ほどテンションの振れ幅が大きいものは珍しいと感じる。というのも、青春ムードと絶望ホラーが極端に行ったり来たりするため、観ている側の心があちこち揺さぶられるのだ。

まずは序盤の衝撃的な始まりだ。深夜の学校にいきなり6人の高校生が呼び出され、「赤い人」に襲われるシーンはホラーの定番要素をしっかり踏まえている。一瞬で真っ二つにされたり、逃げ場のない所まで追い詰められたりと、いかにもスプラッター映画的な匂いがプンプンする。しかも倒されたら次の日の朝に戻り、再び同じ恐怖を繰り返すのだから、普通なら即座に心が折れてしまいそうだ。しかし、そこからがこの物語の肝でもある。何度死んでも朝に目覚めるうちに、主人公をはじめ若者たちが「だったらやれるところまでやってみよう」と妙な結束力を育み始めるのだ。

橋本環奈演じる主人公はクラスで浮き気味の少女として描かれているが、このループ現象を通じて、他の5人との距離を少しずつ縮めていく。優等生タイプや不良っぽい生徒、引きこもりぎみのメンバーなど、普段なら交わらない面子との共闘が、まるで部活の合宿のように絆を深めていくプロセスが興味深い。とはいえ合宿気分で終われるほど世界は甘くない。日常パートが「なんか楽しいかも」と盛り上がるタイミングで、血塗れの“赤い人”が牙をむく。油断した頃に突然始まる鬼ごっこがなかなか強烈で、毎回この落差に冷や汗をかかされる。

しかも中盤以降は“ただ逃げるだけ”ではなく、「カラダ探し」という謎の儀式そのものの真相にも踏み込んでいく。犠牲となった少女の無念や、そこに関わる人形の存在など、“殺人鬼映画”だけでは片づけられないほど情報が盛りだくさん。さらに謎を調べる司書の先生がいたり、メンバー同士の人間関係が少しずつ変化したりして、単にホラーやミステリーの枠を超えた群像劇へと進化していくところが見どころだ。

とりわけ印象的なのは、学校という閉ざされた空間の中で、青春ドラマの熱さとホラーの冷ややかさが交差し続ける演出である。文化祭の準備をしていたかと思えば、次のシーンでは血みどろの亡霊に襲われ、また翌朝にはいつもと同じ風景に戻る。この繰り返しが続くうちに、登場人物たちは自分のトラウマや孤立感と向き合わざるを得なくなる。一見ホラーの皮をかぶっているようでいて、“仲間との連帯”“自分の弱さの克服”“守りたいもののために戦う”といった王道テーマがかなり熱量高めに描かれているのだ。

ただし、痛快な青春要素が際立つ一方、終盤になるにつれホラー描写もさらにエスカレートしていく。“赤い人”と合体したかのように見える怪物的存在が出てきたときには、「そこまでやるか!」とツッコミたくなるほどの騒々しさである。人が丸呑みにされて“存在ごと消される”というのは、恐怖を通り越して若干笑ってしまいそうな荒唐無稽さだが、そこに“絆や仲間の記憶も消される”という切なさがスパイスとして効いているのだから侮れない。結果的に、最後まで誰が生き残るのか、そもそも“生き残った”という定義すらどこにあるのか、気が抜けないままクライマックスへとなだれ込む。

最終的に物語が収束したようで、実はまだ終わっていない…という含みを残すのもホラー映画らしい。最後のシーンを見れば、「あれ、これもしかして次の展開があるんじゃ?」と思わざるを得ない雰囲気が漂っている。そこまで含めて、ホラーの伝統的な“余韻の残し方”を大事にしているとも言えるだろう。個人的にはもう少しキャラ同士の絆を膨らませてほしかったが、長さ的にちょうど良いテンポだったとも思う。ループ構造を活かしたドラマ展開とホラー演出のバランスが巧みに取れているので、ラストまで飽きずに観られた。

とはいえ、悲鳴や血しぶきにめげず青春感を押し出す本作は、見る人によっては「軽いノリ」と受け止められるかもしれない。また、殺人鬼に追われる恐怖をしっかり味わいたい人にとっては、仲間のやり取りが長く感じることもあるだろう。自分としては、完全に怖がらせに走るよりも、この絶妙なギャップがむしろクセになると感じた。

本作は“赤い人”のホラー描写と学園青春劇の融合具合がバランスをとりつつ、最後に一気に怪物バトルへ突入するのが見所ではないかと思う。ループもの特有の“デスゲーム”感に加え、登場人物の想いが最終的にひとつにまとまっていくストーリーはシンプルに胸が熱くなった。ダークな結末で終わるホラーが好きな人にとっては物足りないかもしれないが、“ひと味違うティーンホラー”としては十分楽しめる仕上がりである。血塗れパートと学園青春パートの混ぜ方がちょうど良い塩梅なので、興味があるならぜひ試してみてほしい。

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映画「カラダ探し」はこんな人にオススメ!

本作を薦めたいのは、まず“ループ系ホラー”や“青春群像劇”が好きな人だ。たとえば同じ一日を繰り返しつつ、謎を解き明かしたり仲間との距離を縮めたりする話が好みなら、きっとハマるだろう。しかも単なるホラーではなく、クラスメイト同士の友情や恋模様が織り交ざるので「血まみれは苦手だけど学生ノリは気になる」という人にも意外と刺さるはずである。グロさばかりを推す作品ではなく、“次の日はどうなるんだろう?”というワクワク感と恐怖を同時に味わえるバランス感が絶妙だ。

また、怖い物語でも“心の通い合い”に重点を置いてほしいタイプの人にも向いている。登場キャラが互いに支え合いながら先に進むので、絶望の底に突き落とされるだけではないし、見終わった後にどことなく温かさが残るところが魅力だ。もちろん、連続する悲劇をすべて払拭できるわけではないが、それでも諦めずに突き進んでいく学生たちの姿に励まされる部分がある。さらに、登場人物の個性もバラエティ豊かなので、“いろんなタイプの若者が力を合わせる物語”を見たい人にもぴったりではないかと思う。

一方で、いわゆるガチホラーを期待すると拍子抜けする可能性もあるので注意したい。どちらかと言えば、“程よく背筋をゾクッとさせつつ、学生同士の交流も楽しめる作品”という印象が強いからだ。“学校を舞台にしたホラー作品が好きで、なおかつ青春劇も許容できる人”にとっては最高の組み合わせだろう。“奇抜な展開と爽やかさ”を同時に味わいたい方は、ぜひ挑戦してみてほしい。

まとめ

本作は、血みどろの恐怖と学生ならではの熱い繋がりが同居するという、なかなか珍しい映画だ。開始早々、とにかく容赦ない追撃に身がすくむかと思いきや、何度も死を経験しながらだんだん仲間意識を高める展開が微笑ましくもある。ホラーが苦手な人は少し気合いが必要かもしれないが、単にグロさを推す作品とは違って、明るい空気も確かに存在している。

物語の要所要所で“生き延びるにはどうすればいいのか”を必死に考え合う高校生の姿には、それぞれの抱える悩みや成長の物語も詰まっているため、最後まで飽きが来ないのだ。結局、いちばん怖いのは人間の孤立なのか、それとも赤い亡霊なのか――そんなことまで考えさせられる作品になっていると言えるだろう。観終わったとき、「意外と熱血だった」と感じるか、「怖すぎて眠れない」と思うかは、あなた次第だ。