映画「KAPPEI カッペイ」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
1999年に世界が滅亡すると信じ込まされてきた男たちが、実際には何も起こらないまま2022年を迎えてしまう――そんな突拍子もない設定を土台に、主演の伊藤英明をはじめとする濃厚な面々が一切手を抜かずに大暴れする作品である。原作漫画の“荒唐無稽さ”がどんなかたちで実写化されるのか、最初は半信半疑だったが、いざ幕が開くや否や想像の上をいく勢いで笑わせにくるのが最大の魅力だ。おまけにアクションシーンまで全力なので、筋肉の迫力と地を揺らすような拳の応酬が続出する。真面目さとバカバカしさがごちゃ混ぜになって生まれる独特の空気感は、一度ハマれば抜け出せないほどの破壊力がある。
愛すべきアホらしさを存分に楽しみながら、主人公たちの意外とピュアな恋模様にも目を向けると、妙に心が温まってしまうから不思議だ。はたして“終末”という名の宿命と、恋に落ちた戦士の行方はどうなるのか。最後まで息をつかせぬ勢いで突っ走る本作の魅力を、ここから存分に味わっていこう。
映画「KAPPEI カッペイ」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「KAPPEI カッペイ」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作を観終わったあと、まず浮かんだのは「よくこの題材をここまで振り切ったな」という率直な感想である。ノストラダムスの大予言に備えて孤島で修行を積み続けてきた“終末の戦士”たちが、いきなり解散を言い渡されて都会へ飛び出す――それだけでも十分にトンデモ設定だが、そこから先に繰り広げられる出来事はさらに振り切ったものばかりだ。戦士たちが背負う筋肉と拳の威力は尋常ではないのに、世間の価値観が丸ごとすっぽり抜け落ちたような彼らの行動が、やたらとバカバカしくて愛らしい。それもすべて真剣だからこそ、絶妙なズレに笑ってしまうのだ。
主人公・勝平(伊藤英明)の見事なまでの筋肉美と無骨さが、本編を通して最強のインパクトを放っている。やたらと鋭い目つきで、いつも眉間にシワを寄せながら行動する姿は、まるで「北斗系」の世紀末を生き抜いてきた男のようだ。だが、そんな彼が都会に出てくると、そこには信じられないほどのカルチャーショックが待ち受けている。服装ひとつ取っても浮きまくりなのに、そんな違和感を一切気にしない勝平の大真面目な態度が、笑いを誘う最たるポイントである。さらに恋愛に関してはまったくの素人という設定なので、上白石萌歌演じる山瀬ハルへ向ける一途な想いも、ふとしたところで爆発的な破壊力を生み出す。普通なら「それ、ちょっと気持ち悪いよ」という行為であっても、勝平が全力かつ純粋にやってのけるからこそ、引くより先に笑いがこみ上げる仕掛けになっている。
同じ“終末の戦士”仲間として登場する正義(山本耕史)、守(大貫勇輔)、英雄(西畑大吾)らのキャラクターも相当ぶっ飛んでいる。彼らには「世界が終わるその日まで、ひたすら修行を積む」という厳かな目的があったはずなのに、ふたを開けてみればただのバカ強い筋肉集団で、世間知らずな言動ばかりを繰り返す。とはいえ、そこに至るまでの育成環境が凄まじいことは冒頭でしっかり描かれているため、観客は「ああ、こうなるしかなかったんだな」と妙に納得してしまうのだ。この下地があるからこそ、山本耕史がとんでもない格好で踊り狂ったり、自分のケツを叩いて気合を入れたりしても「まあ、そりゃそうなるよな」と大笑いできる。きっと役者陣も「俺たち何やってるんだろう」と一瞬は思ったに違いないが、そこを振り切って体当たりで演じきる姿が何より痛快だ。
そして、本作は意外なほど真っ当に“恋愛”を描いている点も注目に値する。勝平とハルのやり取りは、ものすごい筋肉をもった不器用な男が、初めての恋に右往左往する様子そのものだ。たとえば勝平がハルにスマホを使って「彼氏はいるのか?」と遠回しに尋ねたり、ハルの周囲にいる男性へ無駄に張り合ったりするシーンは、普通の人なら「それはやめとけ」と突っ込みたくなるが、当人はいたって大まじめ。そこにこそ笑いが生まれるし、少しだけ胸がきゅんとする。さらに、その感情を拗らせると信じられないレベルの拳やアクションにつながってしまうので、観ている側も「まさかそんな展開が待っているのか」とワクワクしっぱなしだ。
クライマックスでは、もはや現実感が吹き飛んだような演出が連発されるが、全編を通して「そんなもの知らん!」とばかりに突き進んできた作品なので、むしろ素直に受け入れてしまう自分がいる。特に終盤の隕石落下や、それに伴う“世界の終末”の描き方は、現実離れしすぎて「いったい何が起こってるんだ?」とポカンとしてしまうレベル。だが、この一貫したブレなさこそ本作の醍醐味であり、初めから最後まで理屈なんか関係なく楽しませてくれる。実際、「これ、本気で作っているのか?」と疑問が湧くほどバカバカしい展開だが、作り手は間違いなく大真面目なのである。そのギャップが笑いと変な感動を同時に呼び起こすから不思議だ。
キャスト陣の豪華さも本作を盛り上げる重要な要素だ。伊藤英明、上白石萌歌、西畑大吾、大貫勇輔、山本耕史、小澤征悦、古田新太といった面々が、それぞれ全力投球で“終末の戦士”や関係者を演じている。普段は硬派なイメージのある俳優たちが、意味のわからない格好で拳をぶつけ合い、勢い任せの恋に落ちていく姿を見ると、「こんな役をよく引き受けたな」と感心してしまうと同時に、その体当たり精神に笑みがこぼれてしまう。誰ひとり恥ずかしがらず、むしろ楽しんでいるように見えるからこそ、観客としても遠慮なく「もっとやれ!」と応援したくなるのだ。
また、アクションとギャグのバランスも秀逸で、全体を通してスピーディに展開する点が見どころである。普通ならシリアスな戦闘シーンであっても、ちょっとした仕草やセリフが入るだけで笑いに転じる。これだけ振り切ると場当たり的になりがちだが、本作は「終末の戦士としての生い立ちと、その真剣さ」が物語の根幹にあるため、無茶苦茶な行動にも理由づけがなされている。つまり、笑いがちゃんと必然として成立しているので、ただのギャグを連発しているだけとはまったく違う手応えがあるのだ。
一方で、恋愛面は意外なくらい王道なところも押さえている。勝平とハルがわかり合っていく過程は、スケールこそ違えど、青春映画さながらのピュアさが詰まっている。だからこそ、車が突っ込んできたり、とんでもない敵が現れたりしても、観ている側は「もっと頑張れ!」と心底応援する気持ちになれる。最終的には「世界が終わるかもしれない」という大ピンチが用意されているのに、そこさえもバカバカしく笑い飛ばしてしまうから驚きだ。普通なら緊張感が高まるはずの場面でさえ、なぜか肩の力が抜けてゲラゲラ笑えてしまう。これは作品全体に貫かれた“バカを大真面目にやる”精神が徹底されているからこそだろう。
本作は「筋肉」「拳」「純愛」「世紀末」「現代社会」という要素が混ざり合い、化学反応を起こしている作品だ。途中でいろいろツッコミたくなるポイントは多いが、いっそツッコミを捨ててしまえば、より楽しめるはずである。真面目な顔で馬鹿げたことを全力でやり続ける大人たちの姿は、それだけで尊いものであり、そのエネルギーに圧倒されるのが本作の見どころだ。心が沈んでいるときに観ると、「なんでこんなくだらないことに悩んでたんだろう」と気が晴れるような爽快感すらある。まるで本気でおふざけしている仲間に巻き込まれるかのような感覚で、ぜひ最後まで付き合ってほしい。
映画「KAPPEI カッペイ」はこんな人にオススメ!
まず、何も考えずにド派手なアクションと馬鹿馬鹿しさに笑いたい人にはピッタリだ。拳や筋肉を駆使した無意味に壮絶な戦闘シーンは、疲れた脳みそを一気にほぐしてくれる。他愛ないやり取りの中に光る、登場人物たちのズレっぷりも見逃せない。現実世界に縛られすぎず、「くだらないけど面白い!」を素直に楽しめる人ほどハマるだろう。
さらに、真面目な男が真顔でボケるギャップに弱い人にもおすすめしたい。勝平をはじめとした戦士たちは、技のレベルこそ超一流だが、一般常識には疎すぎる。だからこそ、都会でのちょっとした出来事がすべて新鮮に見え、その反応がいちいち可笑しい。いわゆる“空気の読めなさ”を武器にして、場を盛り上げる姿が好きな人には、どハマりするはずだ。
一方で、恋愛要素もある程度欲しいという人にとっては、程よい刺激になるだろう。勝平とハルの不器用で純粋なやり取りは、見ていて思わずニヤニヤしてしまう瞬間が多い。コメディ寄りではあっても、恋のときめきや切なさが意外と丁寧に描かれているので、甘い気持ちを味わいたい人にも悪くない。大爆笑の合間に、ちょっとした胸キュンポイントが混ざっている感じが絶妙である。
最後に、シリアスなことを一旦忘れたい人にも合うだろう。世界が滅びるか否かなんて大問題のはずなのに、作中の人物たちは常に本気で斜め上の行動をとり続ける。むしろ、深刻なことほど笑いへ転じるスイッチになっているので、難しく考えてしまうタイプの人こそ肩の力を抜いて楽しめるはずだ。「現実をひととき忘れて思い切り笑い飛ばしたい」という気持ちがあるなら、迷わず手に取ってみてもいいだろう。
まとめ
本作は、あえて脳内の理屈を手放して全身で受け止めるのが正解だ。筋肉も恋も隕石も、同じ土俵に乗せてごった煮のようにガンガン盛り上げてくれる。普通の映画なら「これは無理があるだろう」と突っ込みそうな場面でも、本編が終わるころには「まあ、こういう世界観だしアリだな」とむしろ納得してしまうのが面白いところである。俳優陣が総力戦でバカなシチュエーションを演じているのに、その演技がどこまでも大まじめである点も感服ものだ。
結局、本作を楽しむポイントは“これでもか”というほどの全力ぶりにある。「そんなに真剣にやられたら笑わずにはいられない」という感情が湧き出てくるのだ。恋愛のときめきも、アクションの迫力も、終末感の盛り上がりも、すべてをひとまとまりにして見せる力技は、そうそうお目にかかれない。気分を上げたいときや、笑いと勢いに身を任せたいときに観れば、きっとスカッと爽快になれるだろう。