映画「顔だけじゃ好きになりません」公式サイト

映画「顔だけじゃ好きになりません」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は宮世琉弥が主演を務める青春ラブストーリーでありながら、一筋縄ではいかない恋模様や学園生活の裏側が描かれている点が特徴だ。タイトルからはイケメンに惹かれる気持ちが全面に押し出されるように思えるが、実際には登場人物それぞれの葛藤や成長も丁寧に追っており、人間関係の機微がしっかりと伝わってくる。 物語は、顔だけを重視してきた主人公が、内面に触れた瞬間に揺れ動く心情をきっかけに、周囲の人たちと衝突しながらも変化していく姿に焦点を当てる。キャラクター同士のやりとりは軽妙でありつつも、ときに真剣な衝突を見せるため、観る側にとっては想像以上に共感できる部分が多いのが魅力だ。

学園ラブコメの定番を踏襲しつつも、SNS活用や私服通学といった斬新な設定により、今どきの学生たちの空気感が画面いっぱいに漂っているのも印象的である。王道と新しさのバランスが取れたこの作品には、主人公と一緒に心の変化を体感できるだけの面白さが詰まっていると感じた。ここから先はネタバレ要素を含むため、まだ観ていない人は注意して読み進めてほしい。 さて、本編の核心に迫る前に、本記事では率直な感想を存分に綴っていく。

映画「顔だけじゃ好きになりません」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「顔だけじゃ好きになりません」の感想・レビュー(ネタバレあり)

まず、物語の発端は「顔が良ければだいたいオールオッケー!」と豪語していた主人公が、あろうことか自分の“推し”イケメンに振り回されるところから始まる。主人公は高校生ながらイケメンの顔を見るだけで生きる活力を得ており、SNSに載っている写真をこまめにチェックしては喜びを噛みしめるタイプだ。決して内面が嫌いというわけではなく、とにかく顔面偏差値を重視するというスタンスが揺るぎない。そこだけ聞くと強烈な印象だが、蓋を開けると主人公の姿はわりと素直で、友人たちとの付き合い方も極端に破綻していないのが面白い点である。

一方、学園イチのイケメンと噂される先輩は、見た目こそ際立っているが、内面や行動に多少の問題があるという噂が絶えない人物だ。たとえば留年しかけているとか、学校側からSNS活用の協力を半ば強制されているとか、いろんな背景があるため、いわゆる“夢見る王子様”とはほど遠い。本人も超然とした性格かと思いきや、意外と繊細な一面が垣間見えたり、冗談めかした態度で周囲との距離を測ったりと、どこか人間味のあるキャラクター設定が印象に残る。

そんな彼と主人公がひょんなことから接点を持ち、SNSの管理を共に行うという展開になるのだから、波乱が起きないわけがない。なにせ主人公は、相手がイケメンであることを最優先する一方で、当のイケメン先輩はどうにもマイペース。さらに周りを取り巻く友人たちやクラスメイトも、ちょっとした勘違いやすれ違いを連発する。このあたりのギャップが物語を盛り上げる大きな要素になっている。

とりわけ興味深いのが、主人公と先輩が完全に価値観を共有しているわけではない点だ。主人公はとにかく顔を推しの原動力にするタイプだが、先輩は「顔なんて飾りにすぎない」と思っている節がある。だからこそSNSのフォロワーを増やすよう促されても気が進まず、主人公の協力に対しても少し斜に構えた態度を見せる。だが、その根底には「実は周囲の評価が怖い」「期待に応えられなかった自分への苛立ち」といった複雑な思いが隠れているようにも見えるのだ。

実際、先輩が留年した理由や、学校からSNSで人を集めろと指示されている背景が明かされるにつれ、単なるイケメン男子の話では終わらない深みが生じてくる。表向きはクールだが、内側には自己肯定感の低さや将来への不安がくすぶっている。逆に主人公は顔を愛でるだけの“お気楽キャラ”かと思いきや、「本当に好きになるってどういうことだろう?」と葛藤し始める展開が見どころだ。

そして、忘れてはならないのが周辺キャラクターの存在だ。とくに主人公のクラスメイトや友人は、いわゆる当て馬役だけでなく、ストーリーに新風を吹き込むような位置づけで活躍する。主人公と先輩の秘密のやりとりを覗き見たり、助け舟を出すような行動を取ったりと、ややお節介気味なサブキャラが豊富に登場するのは本作の魅力といえよう。中でも声を大にして語りたいのが、先輩を陰から支える同級生の存在だ。SNS運営を共同で行う際のちぐはぐなコンビネーションは、妙な可笑しさと胸のすくような爽快感が同居していて飽きさせない。

一見すれば“顔を眺めるだけの学園ラブコメ”にしか思えないかもしれないが、実は友情や自立といった要素もかなり濃厚に描かれている。たとえば、主人公が自分の欲望だけで行動しているように見えて、実際には周囲の状況や先輩の気持ちを少しずつ理解しようと努力を重ねている点が大きい。序盤では「顔が良いだけでOK」だった思考が、中盤あたりから少しずつ変わっていく様子が説得力を持って伝わってくるのだ。

恋愛ものというと、どうしても当事者同士の関係に注目が集まりがちである。しかし本作は、主人公が抱く“推しへの憧れ”と“現実の相手に対する感情”の違いがじわじわと浮き彫りになるため、観る側としては「推しの顔が好きなだけじゃ終わらないのかも」という期待感が高まる。なおかつ、周囲の友人たちのサポートや、クラスで巻き起こる小さなトラブルが重なり合うことで、物語全体にテンポの良さと多層的な面白みが生まれている。

演出面については、SNSの投稿画面を効果的に用いた表現が印象的だった。タイムラインの流れやコメント欄の反応などが画面に投影される演出は、現代の学生ならではのコミュニケーション手段をうまく映し出しており、ただ“スマホでやりとりする”だけのシーンを見せるよりも説得力がある。また、私服通学という設定も効いていて、キャラクターたちのファッションが個性を際立たせるだけでなく、学校とプライベートの境界が曖昧になることが人間関係の混乱を加速させているようにも見える。

さらに、画面づくりの面で言えば、主人公が先輩の顔を撮りまくるシーンなど、見どころとなるカットが多い。イケメンを堪能する映画といえば、もっとキラキラした演出に振り切ることもできたはずだが、案外あっさりした描写も多く、そこが好みの分かれどころかもしれない。もっと顔ドアップ満載でも良かったのでは、と思う人もいるだろうし、「そこまでゴリ押ししないからこそ観やすいんだ」と感じる人もいるはずだ。いずれにせよ、適度なバランスでイケメンを拝む場面が用意されているため、主人公の気持ちに共感しやすいのは間違いない。

ストーリー面で特徴的なのは、登場人物同士が素直に意思疎通を図らないことによって生じる小競り合いである。友人同士であれば一言伝えれば解決するはずの誤解が、なかなか解けずに思わぬ方向へ話が転がっていく。そのたびに「これ、もっと早く相談しておけばいいのに」と思わされるが、実際の青春時代も似たような遠回りは多かったはずで、逆にリアルさを感じるポイントでもある。

とりわけ、先輩と主人公、そしてクラスメイトの三角関係が危ういところに踏み込むシーンは見逃せない。嫉妬や不満、それに自分でもコントロールできない恋心が入り乱れて、思わず「この人たち、ちゃんと大丈夫か?」と心配になるほどのドタバタが繰り広げられる。だが、その騒動がひと段落する頃には、キャラクターたちそれぞれが少しずつ成長し、人との関わり方に変化が生まれるから興味深い。

クライマックスでは、あえて大げさな展開にはならず、あくまで学園の一日として物語が収束する感覚がある。ここが本作の肝とも言える部分で、いわゆる“大事件”が起きて学校全体を巻き込むわけではない。むしろ、主人公が先輩をどう理解し、先輩が主人公をどう受け入れるかという、内面的な変化に重点が置かれている。そこにこそ青春映画らしい熱量が宿っているのだと感じる。

また、本作で意外に刺さるのが、SNSを通じて発信する行為の重さである。先輩がフォロワー数を増やすことを使命のように背負わされているため、一見すると軽い課題に見えるが、そこには“自分をどう見せるか”“本当の自分は何者なのか”といった問題が常に付きまとう。しかも、SNSでバズったところで誰かの役に立つのか、そもそも何のためにやっているのか、といった根源的な問いが無言の圧力として先輩を追いつめている。そこに絡む主人公もまた、自分の“顔への執着”がどこから来ているかを自問する場面があり、その過程は妙に説得力をもって迫ってくる。

キャラクター同士のやりとりは時にコミカルで、時にシリアス。学園ラブコメの枠を超えた問題提起があるとも言えるが、それを重く感じさせないのは、やはり若さゆえの勢いと人間関係の軽やかさだろう。大きく口論しても翌日にはケロッと仲直りしていたり、些細なきっかけで打ち解けたりと、等身大の学生らしい行動原理が見どころである。

外見を重視するキャラクターの心理描写は多少誇張があるものの、観ているうちに「こういう子、本当にいそうだな」と思えてくるほど生々しく演じられている。主演の宮世琉弥の存在感も大きく、普段は軽薄そうでありながら、ふとした瞬間に深みをのぞかせる演技が印象的だ。まるで“顔だけに頼っているように見えるけれど、実は……”というキャラクター像を丁寧に体現しているようで、観終わったあとには強い印象を残してくれる。

とりあえず、一度は突っ込みたくなるポイントも多い本作であるが、その突っ込みどころこそが青春映画としての面白味なのだろう。もしも全員がスムーズに話し合いをしていたら、ここまで波乱万丈なドラマにはなっていなかったはずだ。むしろ問題だらけの学生生活だからこそ、彼らなりの答えを見つけていく過程にドラマが生まれるのである。

物語を振り返ってみると、主人公が「顔だけじゃ好きになれない」という壁に直面する場面がいくつも存在する。それは憧れの先輩とのすれ違いや、周囲の友人からの問いかけなど、ある意味ではごく身近な出来事の積み重ねだ。最初は見た目に惹かれていたはずの先輩へ、いつの間にか別の感情が芽生えていることに気づいたとき、主人公自身も戸惑いを隠せない。観客としても、「おいおい、そこまで顔重視だったのに、今さら内面のどこに惹かれたの?」と突っ込みたくなるかもしれないが、そこは青春のなせるわざだろう。人は意外なタイミングで、相手の本質を知る瞬間に出会うものだ。

一方で、先輩のほうも「顔だけで見られるのはウンザリだ」という思いを持っていそうに見える。ただ、実際のところは“顔だけ”が評価されているわけではなく、彼の持つ独特の雰囲気や繊細さに惹かれる人が少なくないはずだ。それなのに、自分で自分を“顔しか取り柄のないやつ”だと決めつけてしまっている節があり、その自己認識の低さがもどかしさを生んでいる。そんな先輩が主人公と関わることで、少しずつ心の重荷を下ろしていく過程には、たまらなく胸に迫るものがある。

ラストシーンに至るまで、本人たちは多くを語らない。だからこそ、ちょっとした視線や沈黙のタイミングに、キャラクターたちの心情がにじみ出るのが上手い演出だ。そこに過剰な説明を挟まず、若干の想像力を働かせる余地を残してくれているのが見どころだろう。もちろん、スパッと割り切ったハッピーエンドを期待する人にとっては、少し物足りない部分もあるかもしれない。だが、“顔だけ”で始まった恋がどこへ行き着くのか、観終わる頃には不思議と納得できるはずだ。

個人的には、もう少し主人公と先輩のバックボーンが深く描かれていれば、物語にさらなる厚みが増したのではないかと思う。先輩が留年した理由や、主人公が顔に固執するきっかけについて、背景をもう一歩突っ込んで提示してもらえると、彼らの言動にさらに説得力が増すだろう。とはいえ、あまり重苦しいドラマを盛り込まずに、あくまで爽快な学園ラブストーリーとして仕上げたいという意図も感じる。限られた上映時間の中でバランスを取るのは難しいが、この軽妙さが本作の魅力でもあるのだ。

以上のように、前評判だけを聞くと“イケメンを拝む作品”かと思われるかもしれないが、実際には思春期の迷いや恋心がしっかりと描かれた良作である。観る人によっては、自分自身の学生時代を思い出して胸がざわつく瞬間があるかもしれない。恋愛映画にありがちな大袈裟なイベントこそ多くはないが、だからこそキャラクターの心の動きが際立ち、物語の説得力につながっているのだ。

ここまで紹介してきたように、学園ラブコメ好きはもちろん、“ちょっと軽めの青春映画を楽しみたい”という層にも手に取りやすい作品であると感じた。主人公の明るさと、先輩の浮き世離れしたカリスマ性が噛み合う場面もあれば、真逆すぎて話が噛み合わない場面もある。その一喜一憂を眺めているうちに、気づけば物語の世界にすっかり浸ってしまうのではないだろうか。ラストに待ち受ける結末は決して派手ではないが、登場人物それぞれの心情に思いを馳せると、どこか爽やかな気持ちで劇場を後にできるはずである。

総合的に見ると、本作は“顔だけ”という入口からスタートしつつ、そこにとどまらない複雑な感情の変化を描いた青春物語だ。好きになることの根本は何なのか、見た目に惹かれたとしてもその先にある相手の本質を知ったとき、人はどれほど心を揺さぶられるのか――そうしたテーマが、軽やかな学園の空気と相まって、鮮やかに映し出されているのだ。観終わったあとには、意外なほど心の温かさを感じるはずである。

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映画「顔だけじゃ好きになりません」はこんな人にオススメ!

本作を勧めたいのは、まず学園ラブコメに馴染みのある人だ。ベタな展開もあれば、新しい切り口も感じられるので、ライトに楽しめる作品を探している人にはぴったりではないだろうか。加えて、見た目だけで相手を判断してしまいがちだけれど、本当は内面もしっかり知りたいと感じている人にも響くものがあると思う。実際、自分の“推し”を心から理解したいという思いを持つ人なら、本作の主人公に共感できる場面が多々あるはずだ。

さらに、人間関係のゴタゴタがあっても、それを前向きに乗り越える青春群像劇が好きな層にもマッチするだろう。登場人物同士のすれ違いや誤解はよくある話だが、本作のキャラクターたちは一度はケンカをしても、なんだかんだでお互いを気遣う優しさを持ち合わせている。そんな姿を見ていると、どんなにこじれそうな状況でも必ず希望の糸口があるのではないか、と思えてくるのだ。ちょっぴり胸がキュンとする恋愛要素もありながら、親しみやすい学園ドラマとしても十分に楽しめる一作だと思う。

また、実は恋愛ものにそこまで興味がないという人にもおすすめできる要素がある。恋愛そのものより、主人公たちのコミュニケーション不全っぷりやSNSを絡めたドタバタが面白く、学園生活のリアルな空気感を気軽に味わえるからだ。大事件こそ起こらないものの、一つひとつの出来事がキャラクターの成長につながっていて、観ているうちに「ああ、青春ってこんなふうに遠回りをしてしまうものだったな」と懐かしい気持ちになってしまう。

逆に、王道の胸キュン展開を求める人にはやや物足りない部分があるかもしれないが、それでもイケメン要素はしっかり押さえられているし、主人公の顔フェチっぷりがある種の清々しさを放っている。だからこそ、気負わずにさらっと観られる学園ラブストーリーを探している人には打ってつけだ。もし「外見にときめくのは正直仕方ないよね…」と共感できるなら、ぜひ一度この映画を手に取ってみてほしい。

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まとめ

本作は、見た目への憧れから始まる学園ラブストーリーだが、そこには意外なほど深いドラマが潜んでいる。主人公が“顔好き”から一歩ずつ進んでいく姿は、誰もが通る遠回りのようでもあり、観る者の心をくすぐる。イケメンという存在をただ称えるだけでなく、実は当人もいろいろな悩みを抱えているというバランスがとても絶妙だ。

派手な展開が少なく、地に足の着いたエピソードの連続ゆえに、余計なストレスを感じずに最後まで楽しめるのも魅力である。  総じて、“外見で判断するな”という道徳的なメッセージを押しつけるのではなく、むしろ外見に惹かれる気持ちを素直に認めつつ、その先にある心の触れ合いを丁寧に描いた作品だと感じた。だからこそ、主人公と先輩のやりとりに一喜一憂しながら、自分が過去に味わった初々しい感情を思い出せるのだろう。

観終わったあとには、ほんのりと温かい気持ちを抱けるはずである。 決して押しつけがましくなく、でも大切なことをふと気づかせてくれるような青春映画であり、観終われば誰かに語りたくなる不思議な魅力があるのも見逃せない。きらびやかなルックスに隠れたキャラクターの本音を知るほどに、観る側も自分の価値観を再確認させられる作品だと感じた。