映画「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」公式サイト

映画「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

長年続いた「ジュラシック・パーク」シリーズの最終章として大いに注目を集めた今作だが、その仕上がりにはなかなか尖った印象を受けた。前作までの流れを受けつつ、新旧キャラクターが勢ぞろいしている点は“お祭り映画”らしさがあって魅力的だ。しかし期待が大きすぎたのか、観ている最中には「本当にこれで締めくくっていいのか?」と思わず首をかしげる場面もあった。もちろん、恐竜の迫力ある描写や世界を飛び回る冒険活劇風の展開は迫力満点で、スクリーンいっぱいに恐竜たちの存在感が炸裂する。そうした豪快さは間違いなく見どころの一つだと言える。

とはいえ、ストーリー面ではやや強引な流れを感じた部分もあり、最終章にふさわしいインパクトを求めてハードルを上げすぎた人には「もう少し丁寧に描いてほしかった…」と感じるかもしれない。派手さと物足りなさが同居する、不思議な体験を味わえる作品である。

映画「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作は「ジュラシック・パーク」から始まるシリーズの第6作目にあたり、なおかつ「ジュラシック・ワールド」3部作の最終章として位置づけられる。とにかく大勢のキャラクターが一堂に集結し、壮大な恐竜ワールドを再び巡る展開は、ファンにとって感慨深い部分も多い。ただ、その“感慨深さ”が反面、少々「ファンサービス盛りだくさんでお腹いっぱい」という印象を与えるところもある。シリーズを振り返りつつ、本作の流れや見どころをざっくばらんに語っていきたい。

まず冒頭、前作で人間の世界へ解き放たれた恐竜たちが地球上のあちこちで姿を現し、社会問題化している描写が興味深い。たとえば街中を我が物顔でうろつく小型恐竜や、港付近に出没して船を襲う巨大な姿など「もし現代に恐竜がいたらどうなってしまうのか?」というイメージを映像で見せつける。ここだけ切り取れば、動物ドキュメンタリーさながらのスリルや新鮮さがあって面白い。しかし、その問題を解決するための組織や企業が登場してからは、やや強引かつ都合よく進む物語に「あれ、こんなにトントン拍子で話が動いていいの?」という戸惑いを覚える瞬間もあった。

巨大バイオテック企業・バイオシン社の野望や、遺伝子研究の是非を問う構図は、シリーズ伝統の“科学の暴走”を象徴するテーマだ。ここでは、遺伝子を組み替えられたイナゴが大量発生して世界の農作物に打撃を与えている…という展開が描かれる。確かに「恐竜」と「遺伝子工学」はこのシリーズにおける重要なモチーフであり、物語としても筋は通っている。だが、想像の遥か上をいく壮大なスケールに飛躍するわりには、ストーリー運びが早足で説明的になりがちなので、「そこに至る過程をもう少し掘り下げてほしかった」と思わず欲張ってしまう部分があるのも事実である。

一方で、シリーズを支えてきたキャラクターたちの動向や成長も大きな注目ポイントだ。前作や前々作から続投するオーウェンやクレアはもちろん、「ジュラシック・パーク」当時の主要メンバーであるアラン、エリー、イアンといった面々が再登場する。ファンとしてはこういった豪華共演を観られるだけで胸が躍るのも事実だが、同時に「どのキャラクターも全員しっかり活躍させよう!」という意気込みが強いあまり、かえってドラマが散らばって感じられるとも言える。ひとりひとりの物語を丁寧に描き切るには尺が足りないのだろうか、駆け足感が否めないのだ。

ただ、アランやエリー、イアンといった初期メンバーが再びスクリーンで並んでいる姿を見ると、やはり大きな懐かしさがこみ上げる。あのとき恐竜の恐怖を味わい尽くした彼らが、また恐竜たちと対峙する場面には「こんなに長いシリーズになったんだな」としみじみ感じるものがある。旧シリーズのファンならば、彼らの再合流に喜びを覚えるだろうし、いくつかのオマージュ的演出にニヤリとさせられること請け合いである。

さらに、アクションシーンはとにかく派手である。特に都市部での恐竜バトルや、ヨーロッパの景色をバックにした逃走劇はスリリングで、まるでスパイ映画さながらの雰囲気さえ漂う。モササウルスやティラノサウルスの圧倒的なパワーはもちろん、しなやかな動きで襲いかかる新種の恐竜も登場しており、スクリーンを彩る映像は豪華絢爛だ。アクションを期待して観に行くならば、恐竜たちの映像表現だけでも十分楽しめるだろう。ただ、個人的には「なぜそこまで無鉄砲に行動する?」と思えるキャラクターの行動原理が多々あり、映像の迫力に追いつかないまま次々と騒ぎが起こっていくため、少し振り回された感もあった。

終盤では、主要キャラクターたちがバイオシン社の研究施設に集合し、巨大イナゴの騒動を解決しながら、保護区に集められた恐竜たちと格闘するような怒涛の展開へ突き進む。恐竜の王者同士がぶつかり合うスペクタクルなシーンは、このシリーズの“お約束”とも言えるクライマックスだ。前作などでも見慣れた「巨大恐竜対決」が描かれ、文字通り地鳴りのような音響とともに迫力満点の戦いが繰り広げられる。その様子を横目に、登場人物たちがわちゃわちゃと脱出を試みる姿こそ、いかにも「ジュラシック」らしいカオスな状況だと感じた。

今回の物語でひとつの大きなカギとなっているのは、クローン少女のメイジーだ。彼女が持つ遺伝子が、巨大イナゴ問題や恐竜の生態に大きく関わっていくという流れも含め、「遺伝子は奇跡を起こすと同時に、時に人類に牙を剥く存在」というこれまでのシリーズのテーマを改めて想起させる。ただし、メイジー自身の葛藤やアイデンティティについて、もう少し丁寧に描いてもよかったのではないかと思う。物語を動かす装置として使われている印象が強く、クローン人間としての悲しみや苦悩が半端なまま駆け抜けていくため、感情移入がやや難しいとも感じた。

また、遺伝子工学の権威であるヘンリー・ウー博士や、シリーズ屈指の裏切り者として有名なルイス・ドジスンらがどう絡んでくるか…というところは、特に旧作ファンには気になる部分だろう。ウー博士の立ち位置は今作でも揺れ動きがあり、「科学者としての責任」を問われるストーリーラインが設定されている。一方、バイオシン社のCEOとして再登場したドジスンは、予想通りと言うべきか、相変わらずの悪巧みで世界をひっかき回す。彼の末路については、旧作へのオマージュとして「なるほど、こうきたか」と納得させられるシーンがあるものの、展開は非常にあっさりとした印象がある。どうせなら、もう少し盛大に“因果応報”を味わう姿を見せてほしかった気もする。

こうして書いてみると、「シリーズ最終章」と銘打っていながらも、全方位にネタをばらまいて欲張ったがゆえに、物語の芯がやや散漫になってしまった部分があるように思う。もちろん、恐竜の見せ場はたっぷり用意されており、アクションを楽しむ娯楽大作としては申し分ない。何より長い歴史を持つこのシリーズが一応の完結を迎える一作としては、出演者も豪華で映像技術も最高峰。いろいろと思うところはあるが「ついに大団円…かもしれない」と受け止めるしかないだろう。

ただ、作品の終わり方はやや急ぎ足で、「人類と恐竜はこれから共存していくのか、それともさらなる葛藤に陥るのか」といった根本的な問題は強く問いかけないままスッと終わる。個人的には「もっと深刻な状況になりそうだけど大丈夫?」と突っ込みたくなるが、あくまで作品世界としては、希望を持ってシリーズを締めくくりたいという意図が勝ったのかもしれない。かつての第一作では「恐竜を蘇らせる」というアイデア自体が新鮮なショックを与えていたが、今や観客も見慣れてしまい、インパクトで驚かせるのは難しい時代だ。そうした状況を踏まえ、過去作のエッセンスを総ざらいしてサービス満点で送り出したのが本作――とも捉えられる。

本作は「シリーズの長年ファンならば視聴は必須」と言える一方で、「単体作品としての完成度」を求めると、少々消化不良を感じるかもしれない。自分としては、「えっ、ここでもう終わりなの?」という拍子抜けな場面もありつつ、超ド派手な恐竜アクションや歴代キャラクターの再集結に盛り上がったので、結局は「まぁこれはこれでアリか」と腑に落ちた。大風呂敷を広げた割には畳み方が雑な印象もあるが、その豪快さこそ「ジュラシック」シリーズの味わいとも言えるだろう。もし最終章としての深いテーマ性を期待しているなら肩すかしを食らうかもしれないが、“恐竜の圧倒的存在感をスクリーンで楽しむ”という点だけでも観る価値は十分ある。

まとめると、これは観る人によって評価が割れそうな作品である。長年のファンには懐かしさや感慨が詰まったご褒美映画だろうし、「初めて恐竜シリーズを観る」という人にとっては「こんなにも大勢のキャラがいるの?」と驚きの連続かもしれない。いずれにせよ、「地球の支配者は一体誰なのか?」という大きな問いを投げかけながら、豪快に大暴れする恐竜たちを楽しめるのは紛れもない事実だ。筆者としては色々とツッコミどころがありつつも、やはりシリーズもののフィナーレとして見届けられたことに妙な達成感を覚えた。何だかんだ言いながらも、またいつか恐竜がスクリーンに帰ってくるのではないか…という予感を捨てきれないのが、このシリーズの底力なのかもしれない。

映画「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」はこんな人にオススメ!

今作をおすすめしたいのは、まず長年「ジュラシック・パーク」シリーズを追いかけてきた人だ。初期3部作から観続けたファンであれば、懐かしのメンバーたちが再集結するだけで嬉しさを感じるだろうし、「あのキャラクターが今ここに!」という胸アツの展開を楽しめる。シリーズに刻まれた数々の事件を思い出しながら、壮大な冒険のフィナーレを体験するというのは、なかなか贅沢な時間だと思う。

また、大迫力の映像体験が好きな人にもピッタリである。恐竜が街を駆け回り、乗り物を襲い、さらには巨大施設や自然豊かな保護区を背景にバトルを繰り広げるシーンは、圧倒的なスケールを誇る。最新のVFX技術によって再現された恐竜たちは生々しさ満点で、画面を通して「本当に目の前にいるかのような」錯覚を味わえるはずだ。理屈抜きでド派手なアクションを味わいたい人には最高のごちそうだろう。

さらに、登場人物がとにかく多いので“わちゃわちゃ感”を楽しみたい人にも向いている。旧キャラと新キャラが入り乱れてストーリーが展開するため、いろいろな立場や思想が交錯するのが面白い部分だ。正直、「もう少し落ち着いて描いてくれ…!」と思うところもあるが、その混沌こそがシリーズの賑やかさにつながっている。細かい設定よりも「みんなで大暴れする恐竜映画が観たい!」という気持ちの人には、理想的なエンターテインメントと言えるだろう。

逆に言えば、社会派の深いテーマや丁寧な人間ドラマを期待する人にはやや物足りないかもしれない。しかし、あえて細かいことを考えず、子どもに戻ったような純粋な気持ちで「スリリングな恐竜ワールドを体験しよう!」と身を任せるなら、とびきりの刺激を得られるはずである。そういった意味で、本作は幅広い層に“夏休みの大作映画”のような楽しみ方を提供してくれる作品だと思う。

まとめ

本作は、シリーズを締めくくる一大イベントとして豪華に仕上がっている一方、あらゆる要素を盛り込みすぎて少々大味になってしまった感もある。恐竜たちのダイナミックな活躍や、新旧キャラクターの総出演でお祭り感があるのは間違いなく魅力的だが、物語をじっくり味わいたい人には駆け足すぎる印象を受けるかもしれない。

それでも、第一作公開から約30年にわたって続いた壮大な冒険がひとまず完結するという点では、長年のファンにとってしみじみする部分が多いだろう。観終わったあとは、「やっぱり恐竜ってすごいな」と改めて実感すると同時に、次に恐竜がスクリーンへ帰ってくる日があるのかという期待も捨てきれない。何だかんだ言いつつも、このシリーズが歩んできた歴史をしっかり受け止められる作品だと感じた。