映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
突如として現代日本の政治の頂点に立つことになった徳川家康という設定を聞いた瞬間、なんだこれはと思った人は多いだろう。しかも、歴史上の偉人がスーツ姿で官邸に乗り込み、国会で論戦を張り、激烈な派閥争いを繰り広げるというのだから、これはもうタイムスリップものを超えたトンデモ政治ドラマなのか、それとも抱腹絶倒のコメディなのか。
個人的には、タイトルからしてふざけすぎだろうと半笑いだったが、実際に鑑賞してみると想像以上にガチな政治議論が展開される場面があり、むしろこちらが「ちょっと待て、こんな真面目な方向に振り切るのか?」と困惑してしまったほどである。それと同時に、江戸時代から続く“統治”の哲学を今の日本にどうやって当てはめるのかという、ある意味SF的なテーマまで盛り込んでおり、監督の野心が炸裂している。とはいえ、一方ではアイドル議員のスキャンダルから首相動静の週刊誌報道まで、現実の政治を面白おかしくイジったシーンが満載で、笑いどころにも事欠かない。
そんな映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら レビュー」としては、激辛ながらも大いに語る価値のある一作だと断言する。さて、ここからは具体的なストーリー展開をネタバレありで語っていくので、未見の方は注意してほしい。
映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作は、江戸幕府の初代将軍・徳川家康がもし現代に蘇り、しかも総理大臣の座に就いてしまったらどうなるかという、とんでもない仮定を映像化したコメディ作品である。最初に断っておくが、いくら映画とはいえ「家康が総理? そんなアホな」というツッコミは野暮だと思う。作り手が描きたかったのは、「もしも徳川家康が総理大臣になったら 感想」と「もしも徳川家康が総理大臣になったら レビュー」をまとめて語れるほどの、歴史と現代社会が奇妙に融合したエンターテインメントなのだろう。
まず、物語はとある歴史研究所が開発した最新技術によって、江戸時代から家康を呼び出してしまうところから始まる。これがどうやら政府公認の機密プロジェクトらしく、時の内閣が「国際社会に打って出るには日本の武士道精神を活かそう」という、まるで酔っぱらいの居酒屋トークのような理屈で家康を現代へ招致。しかも、当初は“観光大使”くらいに据えるつもりが、メディア人気が爆発して支持率がうなぎ上りになり、「これはもう首相に据えるしかない!」と与党が暴走。気がつけば、徳川家康が衆院選に立候補し、あれよあれよという間に選挙演説で大勝利を収め、本当に首相になってしまうのだから恐ろしい。
ネタバレを厭わずに述べると、家康は「天下泰平」を現代日本で再現しようと、あの有名な“鳴くまで待とうホトトギス”精神ならぬ、「とにかく争いを抑えて統制する」という江戸幕府的な発想で政策を進めていく。しかしながら、現代の社会問題は江戸時代とは桁違いに複雑である。国際情勢、経済格差、テクノロジー、そして国会内のドロドロした権力争いが渦巻いている。ここで家康が見せるのは、徹底的な調整力と粘り腰だ。あの戦国の世をまとめ上げた統率力は伊達ではなく、官僚をうまく使い、野党にも頭を下げ、メディア操作も心得ており、あれよあれよと与党内の対立派閥をまとめ上げてしまう。その様子は「マジで有能すぎるだろ」と思わず吹き出してしまうが、同時に家康が抱く「百姓(市民)の暮らしを第一に考えよ」という信念が現代にも通用するあたり、ちょっと感動してしまう部分でもある。
一方で、古い慣習を持ち込もうとする家康に、現代人たちが困惑するシーンも多い。たとえば閣議の場で「とりあえず座禅を組もう」と言い出したり、問題が起きると「腹を切って詫びろ」などと武士道精神を押し付けたりするから始末に負えない。さらにハイテク機器の操作には疎く、テレビ会議で「そこな箱の中の者、名を申せ!」と画面相手に怒鳴ってしまう場面など、コントのように笑える要素がこれでもかと盛り込まれている。とにかく映画全体にギャグが散りばめられており、シリアスな政治討論とコメディ的な歴史人物のギャップが絶妙にミックスされている印象だ。
中盤では、家康が海外首脳との会談で見せる“外交術”がひとつの見どころである。英語がまったく話せない家康が通訳を介して、慣れない外国要人に「どうか日本の平和を乱さずに」と頭を下げながら、結果的には“黒船”ならぬ“最新鋭空母”をなんとか帰国させてしまう展開には笑った。ここでは家康の「待つ」外交が炸裂し、相手が根負けするまでじっと待ち続けるという昭和の交渉術みたいなやり口を平然と貫く。その忍耐力たるや、さすが三河武士の代表といったところだろう。
後半は、家康を利用して権力を握ろうと企む黒幕が登場。どうやら江戸時代の復古主義者であり、新しい征夷大将軍体制を樹立して自分が実権を握ろうと画策する。家康はこれを察知し、満を持して臨時国会を招集。天下分け目の大議論が国会で展開されるのだが、そのスケール感がやたら大きい。家康の演説は「天下万民にとって、最も大切なのは日々の糧と安心である」という内容で、まるで江戸時代の石高制や参勤交代を思わせるような手法で現代社会に挑もうとする。しかし、現代の政治体制にそんなものをブチ込もうとしても簡単にはハマらない。与党内からも疑問の声が上がり、野党は「時代錯誤だ」と猛反発。家康が一度は押し切ろうとする場面もあるが、ついにメディアや世論から大バッシングを受け、支持率は急降下する。
ここで転機となるのが、家康の家臣団…もとい側近スタッフたちの存在である。彼らは元官僚やITベンチャー出身者など多種多様で、誰もが家康を“ほっとけないおじいちゃん”のように慕いつつ、現代社会の知識を注ぎ込んでサポートする。結果、家康は江戸のやり方をそのまま持ち込むのではなく、現代の技術や思想を融合させる必要性に気づき、再び支持を取り戻す。クライマックスの国会答弁では「拙者がここにいるのは、昔のやり方を押しつけるためではござらん。皆の知恵を借り、新しい天下泰平を築くためである!」と力強く宣言し、見事に黒幕の陰謀を粉砕する。ラストシーンでは、家康が首相官邸から眺める東京の街並みをバックに、戦国の世に生きた武将としての誇りと、現代社会に適応した新たな“平和”の形を見出す姿が印象的だ。
本作はバカバカしい設定を大まじめにやりきる姿勢が評価に値する。だが、その一方でテンポの悪さや一部の設定の甘さも目につく。特に家康がやたらと現代に順応しすぎる場面があったり、逆に現代人が歴史人物にすんなり従いすぎるところがリアリティを削いでしまう。もっと泥臭い対立や、家康の武士道と現代人の民主主義観がぶつかるドラマが深堀りされていれば、より刺激的な作品になったと思う。とはいえ、コメディ作品としての楽しさと、政治劇としての一面を兼ね備えているのは確かだ。ドタバタなのに妙に説得力がある家康の総理ぶりを観察していると、「こんな人が本当にトップになったら、意外とうまくいくかもしれないな」などと妙な気持ちにさせられる。
激辛な視点で言えば、後半にもう少しサスペンス要素を加えて、家康が政敵をバッタバッタと政治的に討ち取る展開があってもよかったかもしれない。なにしろ、徳川幕府を開いた男なのだから、本気になれば“どんな手段でも正当化しそう”な怖さも見せてほしかった。だが、作品のトーンとしてはあくまでエンタメ重視であり、そこまでハードには振らなかったようだ。監督は「家康が現代で政治の頂点に立ったらどれだけ面白い騒動が起こせるか」に注力しており、その点では大成功といえる。
最終的に、映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」は笑いと驚きと、少々の政治風刺をミックスした一風変わった時代×現代コメディに仕上がっている。深く考えずに楽しめる部分もある一方、政治好きや歴史好きには興味をそそる要素も満載だ。評価としては星3つが妥当だと感じる。傑作とまでは言えないが、この「もしも徳川家康が総理大臣になったら 感想」としては、十分に観る価値があり、語りたくなるネタが豊富な映画だと断言できる。
映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」はこんな人にオススメ!
まず、タイムスリップものや歴史改変ものにワクワクする人には激しくオススメである。徳川家康が現代に来て総理になるなんて、歴史にちょっと詳しければ「ご都合主義すぎるだろ」と思うかもしれないが、それを逆手に取って笑い飛ばす姿勢が本作の醍醐味だ。さらに、政治ドラマや社会派作品が好きな人にとっては、現代の政治システムを武士の論理でどう料理するかという不思議な化学反応が見どころになっている。あまり難しい理屈を考えずとも「マジかよ、家康が首相?!」という突拍子もない設定だけで楽しめるので、日々のストレス解消やちょっとした息抜きとしても最適だ。
また、時代劇ファンにも注目してほしいポイントが多い。家康が宮中行事や国会討論で見せる礼儀作法や、家臣たちとのやりとりは、江戸時代の空気を感じさせるコミカルな演出が盛りだくさん。さらに、普段はまじめな政治討論番組を観ている人ほど、本作で描かれる“やりすぎ感”にクスッと笑ってしまうだろう。結局のところ、本作はコメディとして肩の力を抜いて楽しめる作品でありながら、「もしも徳川家康が総理大臣になったら レビュー」的にも語りがいがある内容だ。荒唐無稽だけど、同時に「これが現代日本か……」と妙に納得してしまう瞬間があるのも魅力的である。頭を空っぽにして、かつほんの少しだけ現代社会と歴史の“もしも”を考えてみたい人には、まさにうってつけのエンターテインメントと言えるだろう。
まとめ
映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら」は、歴史上の偉人を現代の総理大臣に据えるという破天荒な設定ながら、その荒唐無稽さを逆手に取って存分に楽しませてくれる作品である。コメディとしての笑いどころから、政治ドラマとしてのカリカチュア、さらには歴史ファン向けの小ネタも盛り込み、観る側を飽きさせない構成になっている点は評価すべきだ。
ただし、設定の面白さに比して物語のテンポや深みがやや不足している部分があり、そこが激辛視点での減点材料にもなる。とはいえ、三河武士の粘り腰を現代日本の国会にぶち込むというアイデアだけでも十分楽しめるし、最後まで観ればなんだかんだで「この家康、アリかもしれん」と思わせるような魅力を醸し出している。絶賛するほどではないが、話のネタには事欠かないので、一度は観ておいて損のない一作といえるだろう。