映画「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」公式サイト
映画「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
まずは本作に触れる前に、そもそも『ガンダムW』自体が他のガンダムシリーズと一線を画す独特のキャラクター性や、少年兵たちの苦悩を描いたシリアスな世界観で人気を博してきたことをご存じだろうか。そんな彼らの物語が、映画という形でさらにスケールアップして帰ってきたのが本作である。宇宙戦争が終わりを告げた平和なはずの世界に再び暗雲が立ちこめ、5人のガンダムパイロットたちがもう一度戦いに身を投じるという、熱くも苦み走った展開が見どころ。映像や作画のクオリティはテレビシリーズから格段に上がり、新設定の武装や敵メカも大量投入されるため、メカ好きにはたまらない作品になっている。
とはいえ、単純に「バトルもの」と割り切れないのがガンダムWの面白いところ。それぞれの少年兵が抱えるトラウマや理想、過去と決別できない葛藤などの人間ドラマも密に描かれているので、見終わるころには「やはりガンダムWはひと味違う!」と感じること請け合いである。ここからは激辛トーク全開でガッツリ作品を斬っていくので、どうか心して読んでほしい。
映画「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」は、もともとOVAとしてリリースされた『Endless Waltz』を、劇場公開向けに再編集および追加シーンを盛り込んで仕上げられた作品である。タイトルに「特別篇」とついているわけだが、その名に恥じず映像面のクオリティアップや演出面のブラッシュアップが図られている。ガンダムファンにとっては、テレビシリーズ最終回後の物語をより深く楽しめるうえ、キャラクターデザインやメカデザインの再調整によって、テレビシリーズと比べてさらにスタイリッシュになった機体が拝めるのも見逃せないポイントだ。
さて、「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」の感想としてまず語りたいのが、やはり物語の背景だ。戦乱が終わり、“ガンダムを必要としない世界”が訪れたはずなのに、どうしてパイロットたちは再び戦場に呼び戻されるのか? ここには少々ひねりの利いた陰謀が存在し、それがマリーメイア軍という新たな脅威として姿を現す。このマリーメイアという少女は、かつてのトレーズ・クシュリナーダの血筋を受け継ぐ存在として、老獪な大人たちに祭り上げられてしまっている。さらに裏にはバートン財団やら何やら、いかにも「ガンダムW」らしい政治工作の数々が渦巻いており、5人の元パイロットたちが“もう乗る必要はないはずのガンダム”を再び駆り出していく流れは、観ていて胸が熱くなると同時に、なんとも複雑な気持ちにさせられる。
しかし、「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」のレビューを激辛モードで行うならば、まずツッコミたいのは「いくら何でもこの世界、平和ボケしてなさすぎじゃないか?」という点だ。戦乱が終わった途端、ガンダムたちを廃棄するという思い切りのよさは認めるが、それをいいことにマリーメイア軍が台頭し過ぎだろうと思わずにはいられない。さすがに元OZやロームフェラ財団の残党もいるだろうに、あまりにもあっさりクーデター成功しかけている気がする。まあ、そこは“ガンダムWならではのご都合主義”と言われても仕方ない部分ではあるが、「またやってくれたな!」というお馴染みのノリを楽しむのも一興だ。
キャラクターたちにも辛口コメントを入れてみよう。まずは主人公格のヒイロ・ユイだが、何かにつけて「お前を殺す」が口癖だった彼が、今回はわりと大人しめである。いや、それでも何度か物騒な発言をしているが、どこか吹っ切れたような雰囲気があるのが印象的だ。デュオ・マックスウェルは相変わらずお調子者のように見えながらも、どこか思慮深くなった印象があり、クワトロ…もとい、クアトロ…ではなく「クァトラ」読みで有名になった(?)カトル・ラバーバ・ウィナーは、お坊ちゃま属性をフルに発揮して資金面や情報面で裏方を支援している感じがある。トロワ・バートンは記憶喪失設定を引きずるかと思いきや、ちゃんと同姓のバートン財団と対峙するという構図に絡められている。ウーフェイ・チャンは相変わらず自分勝手に「正義とは何か」を問い続けており、そのストイックさに加えて新たな葛藤を抱えている姿が描かれる。要するに、テレビシリーズでは描き切れなかった彼らの“その後”の心境が丁寧に補完される形になっているのだ。
本作の醍醐味といえば、やはり“カスタム機体”のカッコよさだろう。ウイングゼロカスタムの天使の羽根のような背部ユニットは、一部ファンから「やり過ぎじゃないか」と突っ込まれそうだが、映像としてのインパクトは絶大で、スクリーンで観ると惚れ惚れする。デスサイズヘルカスタムの禍々しさや、サンドロック改のヒートショーテル二刀流、ヘビアームズ改の無駄に大量なミサイルポッド、シェンロン改(アルトロンガンダム)のドラゴンハング二門展開など、“これぞガンダムW!”と言いたくなる派手さが満載だ。とりわけ宇宙空間からの大気圏突入シーンなどは、TV版と比べ物にならないほど美麗に描かれており、CG技術の進歩も相まって見応えバッチリである。
ストーリー展開としては、マリーメイア軍が地球を制圧しようとするクーデター計画があり、その陰謀をパイロットたちが阻止しようと奔走する形で進んでいく。リリーナ・ピースクラフトが再び政争の渦に巻き込まれながらも、“真の平和”を訴え続ける姿には、TVシリーズでもそうだったが「ちょっと綺麗事すぎやしないか?」と思わされる瞬間もある。しかし、そこがリリーナのキャラクター性であり、彼女の存在があるからこそヒイロたちの戦う理由がより鮮明になるのも事実だ。終盤では、ヒイロがうっかりリリーナを撃ちそうになったり、ウーフェイが「まだ戦い続けるのか」と自問したりと、キャラクター同士の価値観の衝突が盛り込まれており、人間ドラマとしての厚みが増しているのが良い。
そういったキャラクター面の掘り下げがしっかりしているからこそ、クライマックスで民衆が“もう戦いはたくさんだ”と声を上げ、それにガンダムパイロットたちが呼応するシーンは胸アツだ。ここで描かれるメッセージは、戦争が終わった後の世界でいかにして平和を維持するか、という非常に現実的かつ重たいテーマに通じている。ガンダムWシリーズとしては、常に「戦い」と「平和」の間を行き来しながら、少年兵たちの心理面にスポットを当ててきたわけで、本作はその集大成ともいえる。しかしながら、その終わり方は決して「ハッピーエンドでよかったね」だけでは済まされない。何しろ宇宙世紀シリーズでもない、アフターコロニーという独自の世界観での物語だ。“ガンダムを必要としない世界”を本当に実現するために、彼らがガンダムを自らの手で破壊するラストは、あまりにも劇的かつ象徴的だ。そしてヒイロの「もう誰も殺させはしない」という決意は、かつての彼の「お前を殺す」とは真逆の意味を持つ言葉として強く印象に残る。
このように本作は、ガンダムWシリーズの魅力を凝縮した仕上がりになっている一方、どうしても“ご都合主義”や“スタイリッシュ偏重”といった声が出るのは仕方ない。テレビシリーズから続く設定の煩雑さも手伝って、初見では「誰が何をやりたいのかわからん」と思う人もいるだろう。さらに、映画としてのテンポを重視したせいか、いくつかのエピソードが端折られている印象も受ける。だが、それらを差し引いても、全体としては十分に楽しめる内容であり、映像クオリティはOVA版よりさらにグレードアップしているのだから、ファンとしては文句よりも感謝すべきかもしれない。
また、ユーモア面にも触れておきたい。ガンダムWというと「シリアス」「美形キャラ」「中二病全開」といったイメージが強いかもしれないが、本作ではデュオの軽妙なトークやトロワのボケなのか本気なのかわからない無口キャラぶりがちょいちょい笑いを誘ってくれる。ヒイロの無茶苦茶な身体能力や、カトルのテキパキしすぎるお坊ちゃまムーブなどは、もはやギャグの域に入っている。個人的には、戦闘シーンでいきなりウーフェイが「正義とは何だ!」と絶叫するあのシーンに、「おいおい、そこかよ!」と突っ込まずにはいられなかった。真剣なテーマを描きながらも、こうしたユーモアが時折顔を出すのがガンダムWの魅力である。
「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」のレビューとして一言でまとめるならば、“華やかでシリアスだけど、どこかぶっ飛んでいる”作品だということだ。深読みすればするほどガンダムW世界の政治構造や人物関係の煩雑さに頭が痛くなるが、そこをあえて細かく気にせず「おお、機体がかっこいい!」「ヒイロがまたムチャをやってる!」と楽しむのが正解かもしれない。もちろん、脚本の都合や演出の行き過ぎ感を感じるところはあるが、それも含めて『ガンダムW』らしさなのだろう。ファンにとっては、一度観ただけでは気づかなかった伏線や言動の意味を考察する余地も多く、ついつい何度もリピート視聴してしまう中毒性を持っている。
最後に、激辛ながら愛のあるツッコミとしては、「もうちょっと他のガンダムパイロット同士の掛け合いも観たかったな」という点だ。どうしてもヒイロ&リリーナがメインになりがちで、他のメンバーはそれぞれ動いているものの、5人がわいわいバカ騒ぎするシーンは皆無に等しい。でも、それはガンダムWの持ち味といえばそうで、「こいつら一緒に行動したら絶対仲悪そう…」という絶妙な距離感こそが魅力とも言える。仲良しこよしのガンダムチームではなく、あくまで個々の信念と目的で動いているという点が、作品にリアリティを与えているのかもしれない。
というわけで、本作は決して万人受けする映画ではないが、熱い戦闘シーンと重厚な人間ドラマ、そしてどこかクセの強い世界観が好きな方にはたまらない一作である。テレビシリーズを観たうえで挑むと数倍楽しめること間違いなしだ。ひとしきり激辛に語ってきたが、ガンダムWファンとしてはやはり見逃せない作品であり、「こんなこともあったなあ」と思い出話をしながら楽しむのが正解だろう。ぜひ映像特典のメイキングや、他の関連資料を読んでみるとさらに深みが増していくはずだ。そうやって何度も反芻しながら、ガンダムWの世界観を味わい尽くすのが通の楽しみ方というわけである。
映画「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」はこんな人にオススメ!
本作をおすすめしたいのは、まず「美形キャラがいっぱい出るガンダムが観たい!」という方だ。ガンダムシリーズといえば、マッチョなおっさんや復讐鬼のライバルが大暴れ…というイメージが強いかもしれないが、『ガンダムW』は少年兵や華麗なキャラクターデザインが特徴的で、一見すると乙女ゲーかと思うほどイケメンが揃っている。そのうえストーリーは決して甘ったるくはなく、内戦や政治工作、テロリズムといった硬派なテーマもしっかり描かれるので、目と頭の両方が忙しい。さらに、本作ではOVAから劇場版への編集過程でビジュアル面が強化されているため、「あれ、TVシリーズのあの子がちょっと美人度増してない?」と感じる場面も多々ある。イケメンと美人が入り乱れる戦場なんて、他のガンダムシリーズではなかなか見られない光景である。
また、テレビシリーズを観た人はもちろん、本作単体でも楽しめる要素が多いので、「ガンダムWに興味はあるけどテレビシリーズを全部追うのはちょっと…」というライト層にもオススメだ。確かに設定は複雑だが、パイロットたちの過去と現在の対比や、世界観のあらましは劇中でもある程度フォローされている。むしろ、「なんかよくわからないけど、ガンダムのデザインがすごくカッコいい!」とビジュアル一発でハートを射抜かれてしまうケースもあるだろう。戦争をやめた世界がなぜ再びガンダムを呼び寄せてしまうのか、その皮肉やメッセージを考えつつ、キラキラしたキャラたちとド派手なメカアクションに酔いしれるのもアリだ。「ガンダムって難しそうだし敷居が高い…」と思っている人ほど、本作のわかりやすいところとわかりにくいところを同時に楽しんでみてほしい。
まとめ
まとめとして、本作「新機動戦記ガンダムW EndlessWaltz 特別篇」は、ガンダムWシリーズの集大成と言える内容でありながら、激辛な目線で見るとツッコミどころやご都合主義的な展開も満載である。だが、それこそがガンダムWという作品の“味”とも言えよう。
天使の羽根を背負うウイングゼロカスタムや、やたらとミサイルを積みまくったヘビアームズ改など、メカ的な見どころもたっぷり。加えて、パイロットたちそれぞれの過去のしがらみや理想に決着をつけるドラマ面も熱く、最後まで飽きさせない。テレビシリーズを観ていなくてもそれなりに楽しめるが、やはり観ていたほうがより深くキャラクターの内面を理解できるだろう。
ユーモアとシリアスがないまぜになり、場面によっては「突っ込み待ちか?」と思うような演出もあるが、それを含めてガンダムWの醍醐味である。良くも悪くもクセの強い世界観を堪能したい方にとっては見逃せない一本だ。