映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」公式サイト

映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

宇宙世紀という壮大な舞台で繰り広げられるモビルスーツ戦や、熱いドラマが人気のガンダムシリーズ。中でも「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」は、OVA作品『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』を映画として再編集した一本である。

本作はファンの間で賛否両論が巻き起こるほどに大胆なカットや追加シーンが話題となった。だが、そのおかげでストーリーがぎゅっと凝縮され、エンタメ性も倍増したという声もあるから不思議だ。もはやガンダムシリーズにおいては“細かいことは気にするな”が一種の合言葉になりつつあるが、そこをあえて気にしてしまうのがファンの性(さが)。

本記事では、物語の核心部分を含むネタバレを交えつつ、その魅力や惜しい部分を遠慮なくズバッと語っていく。ガンダムならではのモビルスーツのかっこよさや、キャラクターの痛々しくも愛らしい人間関係から、作中に散りばめられた小ネタまで、突っ込みどころ満載。ギリギリのバランスで成り立っている本作に一体どんな評価を下すのか。

さあ、心のバルバトス(ちょっと違う作品の機体だが)を起動して突撃する準備はいいだろうか。ここでは激辛視点で語るので、やや辛口コメントも飛び出すかもしれない。だが、それもガンダム愛ゆえ。最後には「いや、なんだかんだ言って結局見ちゃうんだよな」と思わせるようなレビューを目指したい。

映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」の感想・レビュー(ネタバレあり)

ここからは映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」の感想・レビューをネタバレ全開で語る。覚悟はよろしいだろうか。

まず、物語の大まかな流れを簡単におさらいしよう。本作は一年戦争終結後の宇宙世紀0083が舞台。地球連邦軍の新型モビルスーツ“ガンダム試作2号機”を、元ジオンのエースパイロット、アナベル・ガトーが強奪するところから始まる。しかもこの試作2号機、なんと核弾頭を搭載できるという恐ろしい代物だ。ガトーは「ソロモンの悪夢」の異名を持つ歴戦の男で、最強のライバルとして立ちはだかる。主人公のコウ・ウラキは駆け出しのパイロットながら、この重大事態に否応なく巻き込まれていく。

映画としてまとめられた「ジオンの残光」では、OVA版のストーリーをキュッと凝縮しているが、ファンにとっては「えっ、あのシーンごとまるまるカット?」と驚く箇所もちらほらある。特にキャラクターのやりとりが省略されていたり、戦闘シーンの一部がばっさりカットされていたりして、「もうちょっと見たかった…」と肩を落とす場面も正直ある。しかし、逆に新作カットや細かな修正が入っているため、ハイテンポでストーリーを追う分にはむしろ映画版のほうがスピーディーでわかりやすいと感じる部分もあるのだ。

本作最大の見どころのひとつは、なんといってもガンダム試作1号機(GP01)から試作3号機(GP03)までが登場し、それぞれが個性的な活躍を見せる点である。特に最終決戦でのおなじみデンドロビウムは、でかいだけじゃなくその火力と推進力がエゲつない。そこにガトー率いるジオン残党が総力をかけて挑むわけだから、まさに宇宙が揺れる壮絶バトルが展開する。満天の星空(?)が吹っ飛びそうな巨大戦闘を眺めていると、「こんな戦闘費用、どこから出てるんだ…?」という小市民的ツッコミが脳裏をよぎってしまうが、これぞガンダム。スケールが大きいのがたまらないのだ。

また、登場人物たちの人間関係も見逃せない。コウとニナ・パープルトンの微妙な距離感は、恋愛初心者の視聴者にはちょっと生々しすぎるかもしれない。コウの心情が複雑なのか、ニナが複雑なのか、もう見ているこっちが複雑骨折しそうなくらいにすれ違いまくる。しかもラスト近くでの展開がなかなか衝撃的で、「おいおい、そんな急な方針転換あるか!」と突っ込みたくなること請け合いだ。だが、そこがいい。ガンダム作品においては人間ドラマが実は戦争の悲哀を濃厚に映し出す重要な要素だと思う。あっちにいったりこっちにいったりする複雑な心模様が、戦争という極限状況の中でよりドラマチックに見えてしまうのだ。

敵役のガトーとその盟友たちの生き様にも注目したい。一年戦争で敗れたジオン公国の残党たちは、理想や誇りを胸に秘めながらも時代の変化に追いつけないまま、最後の大博打に出る。特にガトーは「ソロモンの悪夢」と呼ばれるだけあって、そのパイロットとしての腕前はもちろん、独特のカリスマ性も持ち合わせている。彼のセリフや立ち居振る舞いを見ていると、「あれ、地球連邦よりこっちを応援したくなるかも…?」と思えてしまう不思議な魅力がある。戦争の善悪なんてそう単純に割り切れないというテーマを、ガトーの存在がさらに強く浮かび上がらせているのだ。

もっとも、本作における一部の描写はやや強引な部分がある。例えばコウの成長過程だ。OVA版ではもう少し丁寧に描かれていたコウの心境変化が、映画版では急ピッチで進むため、「いつの間にそんなに強くなったんだ?」と首をひねる瞬間がある。だが、映画は時間が限られているので仕方ない部分かもしれない。むしろテンポがよくなったことでサクサク観られるというメリットも大きい。戦闘シーンの迫力は損なわれていないし、ストーリーは必要最低限の要素を絞り込んでいるので初見でも比較的わかりやすい。OVA版を全部観るのはちょっとハードルが高いという人にとっては、本作でまず大筋を把握するのも手だろう。

ここでちょっと余談だが、冒頭で言及したように、ガンダムシリーズは派生作品が大量に存在し、正史扱いかどうかでファン同士が激論を交わすことも多い。「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」も例に漏れず、「本編と設定が合わない部分がある」「公式が何をどう考えているのかいまいち不明」など、細かいところをつつけばキリがない。だが、そこも含めてガンダムだと言わざるを得ない。あまりに細かい矛盾を気にしてしまうと、宇宙世紀の大河ドラマは楽しめないどころか胃に穴が開いてしまうかもしれない。なので、自分は「これはこれでアリ」と割り切って楽しむ派である。実際に作品を観ると、モビルスーツがかっこよければそれでいいじゃないか、とつい思ってしまうのだ。

さて、激辛と銘打ちつつも、ここまでのところ褒めたりツッコんだりのバランスがやや褒め寄りかもしれない。だが、一つだけどうしても引っかかる点を挙げるとすれば、やはりラストのまとめ方だろう。ネタバレ全開で言ってしまえば、コロニー落としが決行される結末はシリーズの大きな転機となる出来事なのだが、映画版ではその後の地球圏情勢が駆け足で流されてしまうために、視聴後「え、これで終わりなの?」という感が残る。もう少し物語の余韻を楽しみたかったというのが正直なところだ。ただし、その余韻を補完するのが逆襲のシャアへと続く宇宙世紀の流れだと思えば、これはこれで「歴史の歯車は容赦なく回るんだな…」としみじみ感じてしまう部分でもある。

総合すると、「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」はリメイクや総集編にありがちな“あれも削ってこれも削って”の煩わしさを感じる場面こそあるものの、それを補って余りある爽快な戦闘シーンと濃厚な人間ドラマがぎゅっと詰まった作品である。特に、ガトーとコウのライバル関係はガンダムシリーズの中でも屈指の熱さであり、ラストまで観れば「なんだかんだで燃えたぜ…」という気持ちになること請け合いだ。もしガンダムというシリーズの世界に踏み込みたいならば、一年戦争後の世界観を知るためにも、この作品は外せない一本だと思う。むしろOVA版を観る前の“試し味”として映画版をチェックするのも悪くない。そうこう言いつつ、結局のところファンは両方観てしまうのだが…。

そして最後に、あえて笑いを交えるならば「ジオンの残光」というサブタイトル。なんだかやたらカッコいいが、直訳すればジオンがまだほのかに光ってるよ、というニュアンスなのかと思うと、ちょっとシュールだ。人類が宇宙へ出て行っても、争いを繰り返す姿は何とも切なく、しかしその“残光”にこそ人のロマンが宿っているのかもしれない。そう考えると、ガンダムシリーズは今後何十年たっても残り続ける光なのではないか。そんな想いが頭にちらつきながら、エンドロールを見つめる自分がいるのだ。

映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」はこんな人にオススメ!

本作をおすすめしたいタイプは、まずガンダムシリーズに興味を持ちつつも「どれから観たらいいかわからない」と尻込みしている人である。一年戦争を描いた初代『機動戦士ガンダム』をかじってから、「ちょっと時代が進んだ話も観てみたいな」と思い始めた段階の人にはぴったりだ。OVAを全話追うのはハードルが高いが、映画版なら一気にストーリーを把握できるのが大きな利点でもある。さらに、モビルスーツのバリエーションと派手な戦闘シーンが観たい人にはうってつけ。試作1号機、2号機、3号機という夢のガンダムが次々と登場しては大暴れする様子は、見ているだけでテンションが爆上がりだ。

また、宇宙世紀の“重苦しさ”に少しでも魅力を感じる人にもオススメである。ガンダムの世界は「ヒーローが敵をバッタバッタとなぎ倒して終わり!」という単純な構図ではない。敵にも理想や信念があり、それが時に正義と悪の境界線をあいまいにする。そんな奥深いテーマに惹かれる人なら、コウとガトーの対比や、ニナをめぐる複雑な心理戦にドキドキしながら楽しめるはずだ。最後に、カップルや友人同士で突っ込みながら観るのも楽しい。コウたちのすれ違いや「急に恋の方向性変わりすぎじゃない?」などと、愛をもって茶化し合うのもガンダム視聴の醍醐味のひとつ。結果的に「いやあ、ガンダムって面白いね」と盛り上がること間違いなしだ。

まとめ

ここまで映画「機動戦士ガンダム0083 ジオンの残光」の感想・レビューを激辛目線でお届けしてきたが、結論としては“ツッコミどころをも含めて愛おしい作品”である。

OVA版に比べて削られたシーンや駆け足気味の展開に違和感を覚える人もいるだろうが、その分スピード感やメリハリが効いているのは事実だ。さらに、モビルスーツ同士の死闘や主人公とライバルの対立、ヒロイン(?)との微妙な三角関係など、ガンダムの魅力が詰まった要素がてんこ盛り。激しく燃え上がる戦闘シーンを観ながら、「連邦もジオンも大変だなあ」とぼやくのも一興である。

コアなファンにとっては物足りない部分もあるかもしれないが、ここからOVA版を深掘りしたり、他のガンダムシリーズへと沼落ちしたりする入り口として活用するのもアリ。要するに、“ガンダム沼”にこれから一歩を踏み入れたいなら、ぜひこの映画を見逃す手はないだろう。