映画「アナと雪の女王」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作はディズニー作品の中でも社会現象を巻き起こした大ヒット作であるが、あまりにも有名すぎて逆に「もう語ることなんてないんじゃないか」と思ってしまいがちだ。だが実際に鑑賞してみると、しっかり語りたくなるポイントが山ほどある作品でもある。舞台となる王国は美しい雪景色が印象的だが、その裏側では家族愛や自我の解放、そして人間関係のズレや誤解がひしひしと描かれており、むしろ冷気というより熱気を感じる瞬間が盛りだくさんだ。しかも、登場キャラクターの名前もアナ、エルサ、オラフと、どこか言いやすく覚えやすい響きなのも特徴だろう。子どもたちにとっては憧れのプリンセス物語かもしれないが、大人の視点で鑑賞すると「意外とここシビアじゃない?」と思わせる場面が盛り込まれているのも面白い。

ここでは、世界中が熱狂した「アナと雪の女王」をあえて激辛スパイスを振りかけつつ、良いところもイマイチなところも率直に語っていこうと思う。楽曲は耳にこびりつくレベルの中毒性があるし、映像美は言わずもがなだが、それだけで終わらないのが本作の奥深さ。知られざる裏話的なネタや、結構攻めたストーリーの骨格など、ネタバレ全開で突っ込みつつレビューしていくので要注意。読めばもう一度観直したくなるか、あるいは「こんな見方があるのか」と衝撃を受けるか、どちらかはお楽しみだ。

映画「アナと雪の女王」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「アナと雪の女王」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作「アナと雪の女王」は、ディズニーアニメの新たな金字塔として君臨しただけあって、その楽曲や映像美は目を見張るものがある。まず最初に言いたいのは、あの大ヒット曲である“あの歌”が耳にこびりつくレベルで刷り込まれる点だ。正直、劇中で流れ始めるとついつい一緒に口ずさんでしまう自分がいる。あれほど印象的な主題歌を生み出したこと自体、ディズニーの音楽制作チームの底力をまざまざと見せつけられた気分だ。だが、その強烈なメロディがあまりにも前面に出すぎてしまい、結果としてストーリーの細部がおろそかになるリスクも否めない。鑑賞後に「結局、どんなお話だったっけ?」と曲だけが頭に残る現象が起きやすいのである。

もっとも、本作の物語自体はベタな姉妹愛の感動ドラマかと思いきや、しっかりツイストが加えられているのが面白いところだ。エルサが氷の魔法を制御できなくなる経緯や、妹アナとのすれ違い、そして王国を凍りつかせてしまうという展開は、まるで冬のボーナスが消え去るような冷え切った展開にハラハラさせられる。しかし、その危機感をマイルドに中和してくれるのが、雪だるまのオラフである。オラフの存在は単なるギャグ要員というだけではなく、「寒い世界でも温かい気持ちを忘れない」象徴のような役割を担っていると感じる。彼の登場シーンになると一気に空気が柔らかくなるため、観ている側としてはついクスッと笑ってしまう。

一方で、人間関係の描写に関してはディズニーらしからぬ“ドライ”さも見え隠れするのが興味深い。たとえば、アナが一目惚れするハンスとの急速な関係は、ディズニープリンセス映画の王道をパロディ化したかのように描かれていて、「結婚は勢いとテンションで決めていいのか?」と突っ込みたくなるレベルだ。そして物語後半では、そのハンスの裏の顔があらわになるという急展開が用意されている。「ディズニー映画の王子って大抵イケメンで善良じゃないの?」と思っていると、なかなかエグい裏切りに遭遇するわけである。この王道裏切り展開が一部の観客を戸惑わせ、また一部には「よくぞやってくれた」と喝采を浴びる結果となっているように思う。

姉妹の関係性も、表面上は「大人しく控えめな姉」と「活発でおてんばな妹」というステレオタイプに見えるが、実際にはエルサは内面に強い衝動と恐れを抱えており、アナは愛に飢えたがゆえの勢いある行動派という構図だ。姉妹というよりは、もはや同居人が長年コミュニケーション不足に陥った結果のこじれた関係にも見える。そこに加えて、魔法という超常スキルがさらに溝を深くしているわけで、ファンタジー要素を借りながらも、実社会の家族関係における“心の通いづらさ”がしっかりと描かれている点は評価に値する。正直、「なんでもっと素直に話し合わないの?」というもどかしさに加え、「いや、そもそも雪の魔法ってそんなに迷惑なの?」と少し冷静になってしまう自分もいるのだが、そこはファンタジーとして割り切るべきかもしれない。

映像面では文句のつけどころがあまりない。雪と氷がメインビジュアルということで、背景美術やキャラクターの動きにおいても光の反射や陰影が見事に表現されている。エルサが自分の力を解放して氷の城を築き上げるシーンは圧巻だし、ここで流れる主題歌との相乗効果はまさに“ディズニーマジック”を体感できる場面である。しかし、あまりにも絶景を見せつけられると、逆に「ここまで綺麗に氷ができるなら、もう観光地として開放して大儲けすればいいんじゃないか」と考えてしまうのは私だけではないはずだ。激辛に言えば、「雪が降りまくって寒くなる」というマイナスだけでなく、「世界有数のウィンターレジャーを体験できるエリアを作れそう」という経済的アプローチもありだったのでは、と思わなくもない。

ストーリー後半でのクライマックス、いわゆる「真実の愛」によるアナの救済シーンは、ディズニーの伝統的な“キス”を使わずに「姉妹の愛」を直接的に描いた点で一際目を引く。ここは「恋愛至上主義に対するアンチテーゼとして画期的だ」と賞賛される一方で、「えっ、そこはやっぱり王子とのキスでしょ!」と肩透かしを食らった人もいたようだ。ただ、個人的にはこの姉妹愛の着地こそが本作の肝だと思っている。氷の魔法が大惨事を引き起こした一方で、その裏には「愛されたい」「理解されたい」と願う姉妹の切実な想いがあったという点は、シンプルながらもエモーショナルなテーマであり、大勢の観客が思わず涙腺を刺激される理由でもあるだろう。

しかし、“感動作”に位置づけられる一方で、本作のストーリー展開にはやや不満が残る部分もある。アナの行動力が少々無鉄砲すぎて、その場のノリで突っ走ってしまうため、彼女自身が危険に飛び込みがちなのだ。「ちょっと待って、もうちょい事前調査とかしようよ」と突っ込みたい場面も多い。とはいえ、元気いっぱいの主人公像を描くにはこれくらい振り切った性格でないと物語が動かないのも確かなので、そこは観る側としても妥協が必要だろう。また、ハンスの裏切り方については、若干急すぎて「え、そんな悪役でしたっけ?」と戸惑う部分があるものの、ド派手なアクションではなく心理的な急転で驚かせてくれるのは良い刺激になる。

ユーモア面では、オラフの天然ボケに代表されるギャグシーンの割合はしっかり確保されているが、全体的にテンポがやや不均衡な印象を受ける。冒頭の導入部分で姉妹の幼少期が描かれるシーンは割と情緒的でシリアスな雰囲気を漂わせているのに対し、中盤にオラフが合流してからは急にコミカル色が強くなり、その後に王国が危機に瀕するとまたシリアスモードに舞い戻るという具合だ。もちろん、シリアスとコメディをミックスさせることで視聴者を飽きさせない工夫と言えるが、人によっては「もうちょっと安定したトーンで観たかった」という声もあるかもしれない。

以上を踏まえると、本作は映像美と音楽面では抜群に秀逸でありながら、物語の整合性やキャラクターの一貫性という部分ではやや粗が目立つという印象だ。これは悪い意味ではなく、言い換えれば“勢い”や“インパクト”を重視したディズニーの挑戦とも捉えられる。近年のディズニー作品は、古典的なプリンセス像に新しい風を吹き込む路線を積極的に模索しているが、「アナと雪の女王」はその先駆けのような作品であり、姉妹の絆を中心に据えることで「プリンセス=王子を待つだけの存在」という固定観念を打ち破っている。その意味では、大きな意義を持つチャレンジングな作品だと評価したい。

激辛レビューとして言いたいことをまとめると、(1)楽曲の知名度が高すぎてストーリー全体の印象がやや埋もれがち、(2)キャラクターの言動がやや突飛に感じる部分がある、(3)王子様ポジションの扱いが大胆すぎて一部の観客にはショック、などが挙げられる。一方で、(A)映像美は圧巻、(B)姉妹愛というテーマは新鮮、(C)コミカル要素とのバランス感覚が絶妙、といった良さもぎっしり詰まっている。したがって、エンターテインメントとしては十分楽しめる仕上がりだし、一度観れば印象的なシーンも多いので「ディズニー作品に興味がない人でも観る価値はある」と言える。

「アナと雪の女王」は世代を超えて愛される要素がたっぷり詰まった作品である一方、ディズニー作品の常識をいい意味で揺さぶってくる挑戦作でもある。姉妹の物語を純粋に楽しむもよし、厳しくツッコミを入れながら観るもよし。激辛レビューと銘打ちながらも、結局のところは「なんだかんだ言って、やっぱりすごいよディズニー」と感心してしまうのだ。少々クドいほどにリピートされる主題歌も、気づけば頭に居座って離れない魔力を持っている。もしまだ観ていない人がいるなら、騒がれるだけの魅力とちょっとした欠点を両方抱える、“おいしくもスパイシー”な一本としてぜひ体験してほしい。

映画「アナと雪の女王」はこんな人にオススメ!

まずはディズニー作品が好きな人はもちろん、姉妹や兄弟など家族との関係に何かしら思うところのある人にはぜひ観てほしい。氷の魔法というファンタジー設定を通して、実は家族同士のすれ違いや遠慮が溶けきれないもどかしさがリアルに描かれているので、「自分の家族もこんなことあるかも……」と共感しやすいだろう。

また、プリンセス映画というと恋愛がメインのイメージが強いが、本作は恋愛だけに頼らない構成が新鮮で、「そんな結末、ありなの!?」と驚くかもしれない。それでもしっかり心を揺さぶるエモーショナルな演出が用意されているので、ロマンチックな要素がまったく無いわけではない。さらに、耳に残る音楽やキャッチーなキャラクターが好きな人にはたまらない魅力が詰まっている。歌を聴いた瞬間に「あ、これ知ってる!」と思わず反応してしまうポップ感が盛りだくさんだ。氷の城や雪景色を観ているだけでも、美術作品として目を楽しませてくれるので、ビジュアル重視派にもおすすめである。

一方、意外と突っ込みたくなる要素も散らばっているため、「ちょっと変わった視点で作品を楽しみたい」という批評的な目線を持つ人にも向いているだろう。要するに、ディズニーの王道を期待する人にも、少しひねりの効いた物語を求める人にも対応できる、器用な作品なのだ。

まとめ

映画「アナと雪の女王」はディズニー作品の中でもとびきりの視覚的・聴覚的インパクトを誇りながら、家族や自分自身の在り方を問いかける奥深いテーマを孕んでいる作品だ。

激辛目線では「ご都合展開だ」「無鉄砲すぎるキャラクターがいる」といった粗さもあるが、結局のところそのパワフルさこそが本作の魅力と言えよう。観終わった後に、あの主題歌が頭から離れない現象もまた、作品の魔法にかかってしまった証拠なのかもしれない。二度三度と繰り返し観ることで新たな発見やツッコミどころが増えていくタイプのエンターテインメントでもあるため、時間が許すならばぜひ再鑑賞をおすすめしたい。

結局、細かいアラがあろうが、愛され続ける作品というのはそれだけのパワーを持っているものだ。そして「アナと雪の女王」は、そんな“愛されパワー”で世界を雪まみれにしてしまった稀有な一本ではないだろうか。