映画「DEATH NOTE デスノート」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
正義とは何か、人間の倫理とはどこまで許されるのか……そんな命題を真っ向からぶちかましたのが、この「DEATH NOTE デスノート」である。闇夜に舞い降りた死神と、一冊のノートがもたらす死の脅威。これほど中二病心を刺激する設定はそうそうないだろう。実際のところ、主人公の夜神月(やがみライト)と名探偵L(エル)の頭脳戦が見応え十分で、何度観ても手に汗握らされる。さらに、死神のリュークが放つブラックユーモアもクセになる魅力だ。
ただ、本作は“正義のための犯罪は許されるのか?”という重いテーマを扱いつつも、どこか軽妙なテンポで話が進むため、ふと考え込む隙を与えないまま物語が怒涛の展開を繰り広げる。果たして、自分がそのノートを手にしたらどうするか?もしそんな状況に陥ったとき、自分は夜神月のように「新世界の神」になろうとするのか――。映画を観終わったあと、恐ろしいほどの想像が頭を巡り、ゾクゾクする。そんな危険な魅力を放つ「DEATH NOTE デスノート」、激辛目線で徹底解析していく!
ちなみに原作ファンはもちろん、未読の方でも十分楽しめる作りになっているのもポイントだ。
映画「DEATH NOTE デスノート」の個人的評価
評価:★★★☆☆
映画「DEATH NOTE デスノート」の感想・レビュー(ネタバレあり)
まず、本作「DEATH NOTE デスノート」の魅力を語るうえで欠かせないのは、やはり夜神月とLの壮絶な頭脳戦である。凡人には思いつかないような作戦の応酬がこれでもかというほど繰り広げられ、いつ裏をかかれるのかハラハラしっぱなしだ。そもそも死神のノートというファンタジー要素が強烈な存在感を放っているのに、そこに現実的な論理思考を持ち込むことで、なぜかものすごく説得力がある世界観に仕上がっているのが面白い。加えて、天才同士が互いを出し抜くために血眼になる姿は、どこかスポーツ漫画のような熱さすら感じさせる。こんなにもデスゲーム的なスリルと推理小説的な知的興奮が同居した作品は、当時かなり革新的だったのではないかと思う。
もっとも、夜神月というキャラクターは「完璧超人」というわりには感情の振れ幅が激しいと感じる部分もある。父親である夜神局長に対しては敬意を払いつつも、自分の理想を実現するためなら迷わず罪を重ねていく。そして、そんな自分の行動を正義と信じ込んでいる姿には、どこか危うい狂気が垣間見えるのだ。俳優・藤原竜也氏の鬼気迫る演技は、その狂気を見事に表現しており、正直「こいつ絶対いつかボロが出るだろ」と思わせる危なっかしさがある。まあ、実際にボロが出るかどうかは、映画を観てのお楽しみということで。
一方のLこと竜崎は、不気味な外見と奇妙な姿勢、そして大量の甘いものを口に頬張りながらも隙のない推理を披露するという、非常にアンバランスなキャラクターである。ところが、これがまた魅力的。冷静沈着だけど、どこか幼さを感じさせるような仕草や言動が、観る者の心をくすぐるのだ。そのくせ、夜神月に対してはきわめて冷酷かつ正確に包囲網を狭めていく。ケーキをほおばりながら「あ、あなたがキラですね」とか言い出しそうな雰囲気は正直クセになる。松山ケンイチ氏の怪演っぷりも必見で、独特の歩き方や姿勢の再現度がちょっと笑えるのに、なぜか目が離せないのだ。
さらに注目したいのが、死神リュークのキャラ立ちである。CGで描かれた姿は、原作の不気味さをうまく残しつつも、映画的なリアリティが加味されている。しかも、リュークがときおり放つブラックジョークが地味におかしくて、物語全体の重苦しさをほどよく中和しているのがいい。死神なのに「りんごがないと禁断症状が出る」というシュールな設定も相まって、見た目の怖さとのギャップが大きく、そこから生まれる笑いは意外と大きい。ただ、個人的にはもう少しリュークの活躍シーンを増やしてほしかったな、と思わないでもない。せっかくの強キャラなのだから、もっと画面狭しと暴れてほしかった気もする。
この映画は前後編に分かれており、本作では夜神月とLの最初の大きな衝突が描かれる。正直、「ここで終わるのか!」と突っ込みたくなるような引きで幕を下ろすので、劇場公開当時は続編への期待とともに「待て次号!」感がすごかった。それでも、前編だけで十分な見応えがあるのが「DEATH NOTE デスノート」の強みだろう。謎が謎を呼ぶ展開が矢継ぎ早にやってくるし、夜神月の計画とLの推理がめまぐるしく交差するさまは、観ているこっちもまるで頭をフル回転させられているような錯覚に陥る。そして、いつの間にか自分の中で「もし自分がライトの立場だったら?」という疑似体験が始まってしまい、気づいたら映画の世界にずぶずぶハマっているのだ。
ただ、激辛目線で言わせてもらうと、ある程度ストーリーを知ってしまうと、再鑑賞のときにスリルが薄れてしまうのは否めない。初見時の「ああ、こんな手があったのか!」「まさかここでこのキャラがこう動くとは!」という驚きが、2回目以降はどうしても半減してしまうのだ。また、一部のキャラクターの存在意義が薄いと感じる場面もあり、登場シーンはあるものの、物語の核心にはあまり絡まないままスルーされるキャラも少なくない。原作を読んでいる人にとっては、「あれ?あのキャラこんな扱いなの?」と少々肩透かしを食らう部分もあるかもしれない。
さらに言えば、人間ドラマの深堀りがやや物足りないと感じるところもある。夜神月とLの対決構造がメインに据えられている分、どうしても周囲の人間関係や心情の変化がさらっと流されがちなのだ。夜神父子の葛藤や周囲の刑事たちの苦悩など、もうちょっと描いてくれたらさらに感情移入が深まるのにな、という惜しさは拭えない。とはいえ、あまり内面を掘り下げすぎるとテンポが悪くなる恐れもあり、その塩梅が難しいのだろう。映画としては、エンターテインメント性を重視してどんどん展開を進めるスタイルを取ったのだと思われる。
ところで、本作を観ていると絶妙に挟まるギャグ要素が心地よいスパイスになっているのも見逃せない。例えばリュークのりんごへの執着や、Lの甘党っぷり、ライトの「天才アピール」など、シリアスなシーンとの対比が絶妙なのだ。特にライトが一人でブツブツと策を練えているときに見せる妙なテンションは、「この男、本当に頭は切れるけど、性格はちょっとアレだな……」という感じで笑わせられる。こうしたユーモアの挟み方は原作でも好評だった要素だが、実写映画でもしっかりと活かされていると思う。
総合的に見ると、「DEATH NOTE デスノート」は死神や魔法のノートといったファンタジー要素を軸に、現代社会の道徳や正義の在り方を問う斬新な作品であると感じる。エンタメとしても十分楽しめるが、少し頭をひねれば「いや、こんな力を手にしたら誰だって悪用するんじゃないか?」といった現実的な葛藤を想起させる点が面白い。そういう意味では、ただの娯楽映画とは一味違う後味を残してくれる。夜神月のカリスマ性が光る反面、その歪んだ正義観に翻弄される周囲の悲哀も見どころだ。特に捜査陣が「犯人がわからないから手も足も出ない」という絶望感を漂わせつつも、それでも必死に抵抗するさまには胸を打たれるものがある。
もっと掘り下げるならば、本作が描くのは単なる勧善懲悪ではなく、「善と悪が表裏一体である」ということの恐ろしさだろう。ライトは自らを新世界の神と位置づけ、犯罪者を裁く絶対的存在になろうとする。しかし、その行為は一歩間違えれば大量殺人であり、死神という超常的存在を味方につけているにすぎない。彼の行いが果たして本当に正義と言えるのか、観客は絶えず問いかけられる。Lもまた、正義を掲げてはいるが、その手段は必ずしも法に則ったものばかりではない。「目的のためには手段を選ばない」という共通点が、実はライトとLをどこか似た者同士に見せているのだ。そう考えると、この作品はいつしか観る側に「自分はどっちの立場に立つのか?」という選択を迫ってくる。そこがまた刺激的であり、ゾクッとさせられるポイントだと思う。
個人的に印象的だったのは、作中でライトが見せる“ほころび”の瞬間だ。どれだけ頭脳明晰でも人間である以上、感情が揺さぶられればミスは起こる。そのミスをどれだけ隠蔽できるかが勝負の分かれ目になるわけだが、見方を変えればライトの緻密な計画こそが彼の自信を肥大化させ、いざというときの失態を招いてしまうとも言える。これは人間の性(さが)でもあり、またライトのキャラクター性を際立たせるエピソードになっている。詰将棋のように進んでいく物語だからこそ、その一手が狂ったときの破壊力はものすごく大きいわけだ。
とはいえ、全体を通して観ればアクション要素は控えめなので、「もっと迫力あるシーンが見たい!」という向きにはやや物足りないかもしれない。銃撃戦や肉弾戦がド派手に展開されるわけではなく、あくまで頭脳戦が中心である。そこが醍醐味でもあるが、スピード感を求める人には向かない側面もあるだろう。また、社会派的なテーマを深堀りするというよりは、エンタメとしての推理&サスペンスを前面に出しているので、「もっと人間ドラマを見たかったのに」という意見もあるだろう。とは言え、映画としては限られた時間でまとめる必要があるので、どこかで割り切りが必要だったのだと思う。
総じて、「DEATH NOTE デスノート」は硬派な題材を扱いながらも、どこかライトに楽しめてしまう不思議な作品である。死神とノートという非現実的な道具立てを使いながらも、人間の欲望や正義感というリアルなテーマを浮かび上がらせている点が秀逸だ。前編を観終わると、続編を観ずにはいられなくなるような絶妙な終わり方も含め、映画としてはうまく作られていると思う。自分的には「あともう少し人間ドラマに厚みがあったら神作になれたのになぁ」と感じる面はあるものの、それを補って余りあるほどの緊迫感とストーリーの勢いがあるので、評価は★★★☆☆でも十分に楽しめる一本であることは間違いない。
それから、本作において外せないのはミサ=アマネの存在だ。彼女はアイドルとして世間から注目を浴びながらも、キラとして世界を変えようとするライトに心酔している。物語が進むにつれて、彼女の行動が予想外の波紋を広げるのが見どころの一つだろう。ミサの積極的すぎるアプローチには「ちょっと落ち着け!」とツッコミたくなるが、その猪突猛進ぶりが逆に物語をかき回していく。彼女の思い切った行動力がライトやLにどう影響を与えるのか、注目してほしい部分である。正直、いい意味でも悪い意味でも「この娘、空気読まないな…」と思うシーンがあるのだけど、それこそがミサの魅力といえるのかもしれない。
また、作中では事件を追う刑事陣やメディアの反応がリアルに描かれている。キラの存在が世界中に知れ渡るにつれ、犯罪者にとっては恐るべき死のカウントダウンが始まり、市民の間ではキラを神格化する動きが出る。ネット上の世論も二分化され、「キラは正義か、ただの大量殺人鬼か」という論争が起きる。これが現代社会と妙にリンクしているのが興味深い。ネット時代の今だからこそ、こうした群衆心理の動きには身につまされるものがある。もし本当にキラのような存在が現れたら、意外と多くの人がその力を支持しそうだし、その裏では怯える人々もいるだろう。そう考えると、映画の設定は決して荒唐無稽なだけではなく、割とリアルな社会風刺にもなっていると思う。
さらに追記すると、作中で繰り広げられる心理戦の根底には、「人は力を持つとき、どこまでそれを制御できるのか」という問いがある。誰もがうらやむ頭脳と、死神のノートという絶対的な力を手にした夜神月ですら、完璧には立ち回れない。むしろ、その力があるからこそ余計なリスクを背負ってしまい、破滅への道を歩む可能性を秘めている。ここには人間の弱さや醜さがしっかりと描かれており、ただのファンタジー映画とは言いきれない深みを感じる。もちろん、ライトが異常すぎる天才だからこそ面白いのだけど、普通の人間が同じ力を手にしたらもっと早くメッキが剥がれてしまうのではないか、と想像してしまうところだ。
総括すると、「DEATH NOTE デスノート」は日本映画のなかでも比較的珍しい、頭脳バトル系のエンタメ大作だと言える。ビジュアルのインパクト、キャストの熱演、そして何よりもストーリーの独創性が光っている。とはいえ、やはり原作のボリュームを2時間ちょっとの映画に詰め込むには無理もあったのか、細かい設定やキャラの心情が端折られている印象もある。そこを割り切って楽しめるかどうかで、評価が分かれるかもしれない。しかし、映画としてのテンポ感とスリリングな展開はかなりレベルが高く、初見なら間違いなく引き込まれるはずである。
そんなわけで、「DEATH NOTE デスノート」は賛否両論あるにせよ、観て損はない一作だと思う。特に、サスペンスや推理ものが好きな人には絶妙に刺さるはずだ。加えて、ちょっとダークな雰囲気と現代社会への風刺要素も含まれているので、ただのポップコーンムービーとは一線を画す奥行きがある。ぜひ先入観なしで楽しんでいただきたいが、初見の方は後編もセットで観ることを強くおすすめする。あのラストを観て、「自分ならどうするか?」という無限の妄想を膨らませてほしい。これが「DEATH NOTE デスノート」という作品の恐ろしい魅力なのだ。
映画「DEATH NOTE デスノート」はこんな人にオススメ!
正直、頭脳戦や推理モノが好きな人にはドンピシャの作品だと思う。犯人捜しや謎解きの要素が好きな人なら、夜神月とLの激烈な頭脳バトルに一気に引き込まれるはずだ。また、ちょっとダークな雰囲気を好む人にとっては、死神やノートといった怪奇的要素がたまらなく魅力的に映るだろう。さらに、「もし自分が同じ力を得たらどうする?」なんていうシミュレーションを脳内でこっそり楽しむタイプにもオススメできる。絶対に正解は見つからないのに、なぜか考えずにはいられないという中毒性があるのだ。
一方で、ホラー映画ほどの怖さはないけれど、不気味なキャラクターや人間の本性が浮き彫りになる展開を味わいたい人にも適している。社会問題や道徳観といったテーマがうっすらと匂うので、娯楽作を観ながらも考えさせられる部分があるのが面白い。とにかくライトとLのやり取りに「なるほど、それは盲点だった!」と驚かされたい人や、そんな緻密な心理合戦の裏で巻き起こるギャグシーンにクスリと笑いたい人にはぜひ観てほしい。日常を忘れて、死神がいる世界にどっぷりハマりたいという方は、覚悟を決めて鑑賞してみるといい。
あと、意外なところでは「原作を読んでいないけど、とりあえず話題作だから押さえておきたい」というライト層にも十分アピールするはずだ。映画版はストーリーや登場人物がある程度整理されているので、原作未読でも入りやすい構成になっている。もちろん、原作ファンからすれば「あのシーンがない!」とか「このキャラの扱いが薄い!」といった不満もあるかもしれないが、実写ならではの緊迫感や役者陣の演技が新鮮に楽しめると思う。特にリュークの存在感は映像作品でこそ映える部分も大きく、彼の不気味さとユーモアが作品世界をより鮮烈に彩ってくれる。いずれにせよ、サスペンスとファンタジーが融合した独特の世界観を味わいたいなら、一度は観ておいて損はない作品だろう。
まとめ
総括すると、「DEATH NOTE デスノート」は人間の欲望や倫理観をダイレクトに炙り出す一方で、テンポのよい頭脳戦と独特のキャラクター描写で最後まで飽きさせない作品である。
死神のノートという非現実的なアイテムを使いながらも、日常と地続きの世界観を感じさせるのが妙にリアルでこわい。頭脳合戦のスリルとドキドキを味わいつつ、「もし自分が同じ力を得たらどうなる?」と考えさせる余韻が残るのが魅力だ。激辛目線では物足りない点もあるが、それを補うだけのパワーがあると思う。映画の前後編を通して楽しめば、あの緊迫感をさらに堪能できるはずだし、きっと観終わったあとに「自分ならどんな使い方をするんだろう…」と妙な妄想が止まらなくなるだろう。とりあえず、人生に一度は死神とノートの世界を体験してみるべし!
社会派かと思いきやキャラクター主体のエンタメ性が強く、ヘビーになりすぎないところもポイントだ。シリアスなシーンの合間に、リュークやLの奇妙な言動が笑いを誘ってくれるため、ダークなテーマながらも意外とサクサク観られる。良い意味で原作とは別物としても楽しめるし、役者陣の演技からにじみ出る人間の弱さや葛藤に共感する場面も多い。総じて、観終わったあとに必ず人と語り合いたくなる映画であることは間違いない。