映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」公式サイト

映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

まずは、ドラマから続くこのシリーズのテンションが映画でもしっかり維持されているかが気になるところだ。タイトルに“ロマンス編”とついているが、どうせまたダー子、ボクちゃん、リチャードの三人組がド派手に人を騙すだけなんじゃないのかと思っていた。しかし、実際に観てみると意外にも甘酸っぱい展開がそこかしこに転がっており、ちょっとだけキュンとさせられる場面もあったのだ。もっとも、その甘さが最後まで続くかと思いきや、やっぱり裏をかいてくるのが「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の巧みなところ。気を抜いた瞬間に、いきなりドッカーンと騙されるから油断できない。

ただ、基本はあくまで“コンゲーム”の愉快さを中心に据えており、騙し騙されの連続が観る者を飽きさせない。見た目はポップでも内容は相変わらずエッジが効いており、観客を翻弄する術には大いに感心させられる。本稿では、そんな映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の魅力やツッコミどころを遠慮なくぶっちゃけていくので、まだ観ていない方はここから先、覚悟して読み進めていただきたい。

映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作「コンフィデンスマンJP ロマンス編 レビュー」を書くにあたり、まず前提として押さえておきたいのは、これがドラマ版「コンフィデンスマンJP」の延長線上にある作品だということである。ドラマを観ていない人でも楽しめる作りになっているとはいえ、やはり登場人物のキャラや役回りを知っていると、より深いツボにハマるように構成されている。とはいえ、そこは映画らしく大きな舞台と派手な仕掛けが用意されており、単にドラマの焼き直しというよりは、スケールアップされたコンゲームが楽しめる仕上がりだ。

さて、このシリーズでおなじみの詐欺トリオといえば、主人公・ダー子、そしてボクちゃん、リチャードの三人。彼らが悪党を騙し、さらには観客さえも煙に巻いてしまう展開こそが、「コンフィデンスマンJP ロマンス編 感想」を語るうえで外せない醍醐味である。しかし今回は“ロマンス編”というだけあって、単にお金を巻き上げるとか、悪いヤツを出し抜くというだけじゃなく、恋愛模様がストーリーのアクセントとしてきらりと光っている。

物語の舞台は南国リゾートさながらの風景で始まり、最初は「おいおい、いつもの東京の雑踏はどこへ行ったんだ?」とツッコミたくなる。だが、そこで繰り広げられるコンゲームは常夏のバカンスムードとは裏腹に、実に巧妙かつ腹黒い。むしろ、陽気な空気の中で繰り返される壮大な“だまし合い”には、いっそうの爽快感すら覚えるのだ。絶景のリゾート地を背景に、現地の富豪やら怪しい投資家やらがまんまと術中にはまっていく様子は、観ていて「やっぱりやってくれたな」と思わせるシリーズらしさ満点だ。

そんな中で印象的なのは、ダー子の変幻自在な魅力だろう。彼女は今回もいろいろな姿に化けるのだが、そのたびに「どっからその衣装出してきたんだ!」とツッコミたくなるほどのコスプレっぷりを披露する。その上、トリッキーな作戦を思いつくスピード感と、派手なアクション(?)をも辞さない大胆さで、相手をバッサバッサと騙していく。ボクちゃんはいつものように「これって詐欺じゃないの?」と常識人っぽく迷いながらも、結局はダー子のペースに巻き込まれ、いつの間にか相手を騙す片棒を担ぐ羽目になる。リチャードはというと、詐欺師仲間にしては妙に大人な空気感を出しており、「俺は騙すのも商売だけど、最低限の美学は守るよ」みたいなクールさを醸し出す。三者三様のキャラクターがバランスよく噛み合っているのが、このシリーズの最大の強みだ。

ところが、“ロマンス編”と銘打たれただけに、今回はいわゆるラブ要素が前面に押し出される……かと思いきや、実際は「これ、どこがロマンス?」と首をかしげるシーンも多い。いや、一応はあるのだ、恋愛エッセンスが。ダー子がほのかに思いを寄せているかもしれない人物が出てきたり、ボクちゃんがいつも以上に乙女心に振り回される様子が描かれたりする。だが、結局は騙すか騙されるかの瀬戸際で感情が揺さぶられ、ロマンスが一筋縄ではいかない状況に仕立てられている。まさに、本作の魅力が詰まった展開だ。

ネタバレ込みで語るなら、終盤にはやっぱりどんでん返しが待っている。これは「コンフィデンスマンJP レビュー」をするうえで毎度おなじみだが、観客の誰もが「もう騙されないぞ!」と警戒しているはずなのに、それでもやられてしまうのがこのシリーズの恐ろしさ。ストーリーの後半、誰が誰をどうハメようとしていたのか、さらに誰がそのさらに上をいっていたのかという複雑な図式が交錯することで、頭がこんがらがってくる。だが、それこそがこの映画の醍醐味である。「結局、騙される快感を味わいたいから観に来るんだろ?」と監督がこちらを嘲笑っているかのようで、悔しいけれど心地よい。

とはいえ、激辛視点でいえば、「あれ、さすがにそれは無理があるんじゃないの?」と思うような強引な展開もある。例えば登場人物が「その情報、どこから仕入れたの?」とツッコミたくなる場面や、ちょっとご都合主義に感じる作戦の成功例など、突っ込みどころは満載だ。だが、そこも含めてのエンタメ作品だと割り切れば、むしろそのちょっとした破天荒さが作品の魅力を加速させているといえる。完璧に緻密な脚本を期待するよりも、「まあ騙されたもん勝ちだし、楽しめりゃいいじゃん!」という心持ちで観るほうが、この作品には合っている。

キャスト陣の演技にも注目したい。長澤まさみのダー子は相変わらずパワフルで、相手をからかうときの小悪魔的な表情が最高だ。東出昌大のボクちゃんは、いつもながら真面目なのに振り回されてしまう愛されキャラぶりがほほ笑ましい。そして小日向文世のリチャードは、いい意味で飄々としていて、どこか一歩引いた立ち位置から全体をうまく回していく。そのほかゲスト陣も個性派ぞろいで、誰もが一枚上手なのか一枚下手なのか分からない雰囲気を醸し出している。それこそ、“誰が黒幕か分からない”というスリルをさらに増幅させているのだ。

ちなみに、“ロマンス編”における恋愛描写は、あまりストレートではない。むしろ「これは恋なのか? 仕事上の駆け引きか? それとも騙しの延長か?」と考えさせられる部分が多い。はっきり言ってロマンチックな告白シーンや、胸キュンいっぱいの王道ラブストーリーを期待していると肩透かしを食らうかもしれない。でも、「騙しの中に見え隠れする人間ドラマこそ、コンフィデンスマンJPの真骨頂だろ?」と考えるのであれば、十分に楽しめる。人の心の機微を利用して相手を陥れるという要素が、ある意味では最もアダルトなロマンスを醸し出しているともいえる。

ストーリーの最後には、ど派手な逆転劇が用意されており、今作も観客を「あれ? これっていつ仕込んでたんだ?」と驚かせること間違いなしだ。たとえ途中で「もしかしてこうなるかも?」と予想していても、決定的な場面でひっくり返される快感はクセになる。しかも、そのひっくり返し方がわりと大胆で、多少強引でも「まあ、いっか!」と思わせてしまうところが、「コンフィデンスマンJP ロマンス編」のエンタテインメント力の高さだと感じる。

総括すると、「コンフィデンスマンJP ロマンス編 感想」を一言で表すならば、「ロマンスというより、いつも通りの超絶コンゲームだけど、そこにちょびっとだけ甘酸っぱさが加わったお得パック」といったところだろう。詐欺映画としては軽快で、キャラの掛け合いはコミカルで、騙し合いのスリルはバッチリ。ロマンスの要素はおまけ程度でありながら、ラストまで観ると不思議な余韻が心に残る。それこそが、この作品が普通のコメディ映画とは一線を画す理由だと思う。シリーズファンなら間違いなく楽しめるし、「まだドラマを観たことがない」という人でも十分にエンジョイできる。何よりこの映画は、騙されること自体を娯楽として提供しているので、疑り深い人ほど逆にハマりがちだ。

もっとも、本作は“ロマンス”に期待しすぎると肩透かしかもしれない。とはいえ、あのとんでもないキャラたちに無理やりじっとりした恋愛ドラマをやらせるほうがむしろ違和感だ。だからこそ、この多少シュールなロマンス感でちょうどいいのだろう。結局、観終わってから「やっぱりこのメンバー、どこまで本気で感情移入してるのかわからん!」と笑いながら帰路につく。そんな一筋縄ではいかない結末を楽しむのが「コンフィデンスマンJP ロマンス編 レビュー」の醍醐味だといえる。

映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」はこんな人にオススメ!

まず、騙し合いのスリルを存分に味わいたい人にオススメだ。観客すらも騙そうとしてくる脚本に対し、「俺はそんなトリックに引っかからないぜ」と身構えながら観ても、あっさり裏をかかれてしまうタイプはきっと大興奮間違いなしである。また、キャラクター同士のテンポの良い会話劇や、豪華な舞台設定の中で巻き起こるトリック合戦が好きな人は文句なく楽しめるだろう。

次に、軽妙なコメディを求めている人にもぴったりだ。本作は詐欺を題材にしているわりには重苦しさがなく、むしろ「こんなバカな手口があるか!」と笑い飛ばしたくなるようなシーンが多い。さらに、キャストそれぞれの個性が際立つ演技が魅力的で、「あ、コイツは絶対裏があるな」と思わせてくれる怪しさが逆に楽しい。それに加えて、ストーリーが二転三転どころか四転五転くらいするので、常に新鮮な驚きが待っている。頭の体操が好きな人にもぜひチャレンジしてほしい映画だ。

そして、恋愛要素はそこそこに楽しみつつも、あくまでメインディッシュはコンゲームであってほしい人にもうってつけだ。ロマンスというより“騙しのテクニック”の方が上に来る展開なので、ベタな胸キュンを期待している人は肩透かしかもしれない。けれど、恋愛の駆け引きが詐欺のそれと微妙にリンクしている描写があるため、「実は恋愛って詐欺に似てるんじゃないか?」と考えてしまうシニカルな人はニヤリとできるだろう。要は、ちょっとひねくれた視点でロマンスを楽しみたい人にもオススメなのだ。

まとめ

映画「コンフィデンスマンJP ロマンス編」は、タイトルに“ロマンス”と入っているが、結局のところは“騙し合い”を存分に楽しむエンタメ作品だというのが正直な感想である。甘いラブストーリーを期待して行くと「おいおい、ぜんぜん甘くないじゃないか!」と肩透かしを食らうかもしれないが、そこはご愛敬というべきだろう。実際、観客さえも煙に巻いてくるプロの詐欺師トリオの言動に目を奪われていると、いつの間にかキャラクターたちの恋心っぽい感情まで騙されたような気になってくるのだ。

要するに、「騙された! でも面白い!」と笑える映画を求めているなら、この「コンフィデンスマンJP ロマンス編」はうってつけである。シリーズのおなじみメンバーのコミカルな掛け合い、豪華な舞台、そして最後に待ち受ける大胆不敵などんでん返しは、観終わったあとにスカッとした爽快感を残してくれるはずだ。