はたらく細胞

映画「はたらく細胞」公式サイト

映画「はたらく細胞」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本記事では、清水茜原作の人気漫画を実写映画化した「はたらく細胞」を題材にした“はたらく細胞”について、個人的な視点から激辛コメントを交えつつ徹底的に語っていく。

2024年12月の公開直後から驚異的な興行収入を記録したことで話題を呼んだが、果たして本作は評判通りの完成度だったのか。体内世界を美麗なCGとド派手なアクションで描く一方、人間ドラマを並行して取り入れようとする欲張りな構成が功を奏しているのかどうか、実際に観てみると気になるポイントがいくつも浮上してくる。

もちろん、その高いエンターテイメント性や教育的要素は決して無視できない魅力として評価されるべきである。しかし、実写であるがゆえに原作ファンのイメージとの乖離も否めず、キャスト陣の配役や演出に対して疑問符がつく場面もいくつか見受けられた。

そんな良い点も悪い点も含め、ネタバレ覚悟で突っ込んでいくので、「はたらく細胞」の感想・レビューを探している方にはぜひ最後まで読んでいただきたい。ここではストーリーの重要部分にも触れるため、未鑑賞の方は注意してほしい。それでは早速、激辛レビューの幕開けである。

映画「はたらく細胞」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「はたらく細胞」の感想・レビュー(ネタバレあり)

映画「はたらく細胞」(以下、「はたらく細胞」実写版として言及する)は、一見すると漫画やアニメをそのままスクリーンに落とし込んだ軽快なエンタメ作品のように見える。しかし、実際に鑑賞してみると、体内でのスペクタクルな戦闘シーンの連続だけでなく、思いのほかダークでシリアスなテーマも混在している点に驚かされた。健康的な生活を送る女子高生・日胡の体内と、不摂生な父・茂の体内を対比させることで、“体を大切にすること”の重要性を説く教育的要素があるのは間違いない。だが、そのメッセージを視聴者に強く訴えかけるためか、後半になるにつれてドシリアスな展開へ雪崩れ込むのが印象深い。

そもそも原作漫画「はたらく細胞」は、細胞の働きを子供から大人まで楽しく学べる“体内擬人化”というアイデアが新鮮で人気を博した作品である。一方でスピンオフの「はたらく細胞BLACK」は、喫煙や飲酒、過労などの不摂生な生活習慣が引き起こす体内環境をブラック企業になぞらえるという重いテーマを扱っている。実写映画ではこの2作品の要素を混在させた結果、どうしてもトーンの統一に苦労している部分があるように思える。コミカルなやり取りが続いたかと思えば、急にシリアスな闘病描写が挟まり、観客の感情の落としどころが見えにくくなるのだ。

特に激辛ポイントとして挙げたいのは、キャラクター造形のばらつきである。赤血球(AE3803)や白血球(U-1146)など、メイン細胞たちの演技やビジュアルは原作イメージを極力再現しようと頑張っているように見える。例えば赤血球役のキャストが持つ元気でフレッシュな雰囲気は、原作ファンが抱いていた印象に比較的近い。しかし、それ以外の細胞たちはキャラが立ちすぎたり、逆に薄かったりとムラがある。特に白血球周りは“クールな殺し屋”という一貫したキャラ付けを狙うがゆえに、感情表現が極端に抑えられすぎており、舞台となる体内世界に馴染みきれていないようにも見える。

また、CGで描かれた体内空間は確かに迫力があるものの、ところどころ質感が合っていない場面が見受けられ、違和感を覚えることもしばしば。体内という未知の世界を映像化することは非常に困難であるため、ある程度の粗は仕方ないのかもしれないが、敵細菌のデザインや処理落ちのようなモタつきを感じる映像表現は、2025年近辺の映像技術を考えるとやや古臭いと感じてしまった。アニメやCGアニメを前提に考えれば不自然さも小さく収まるが、実写とCGを掛け合わせる以上、もう一段リアリティを求めたかったというのが本音である。

忘れてはならないのが、人間ドラマの部分だ。日胡のほうは比較的あっさりと描かれるが、父親・茂の体内ではタバコ、酒、ジャンクフードといった要素にまみれ、もはや悲壮感すら漂うブラックな労働環境となっている。実際に茂の体内の細胞たちがストレスで疲弊し、やがて深刻な病気につながる様子は原作の「BLACK」を彷彿とさせるが、そこに現実世界での親子愛のドラマをがっつり挟み込むため、どうにも中途半端に感じてしまう。二人の関係性に割く時間はそう多くはなく、一方で細胞同士のアクションシーンには時間を費やすというアンバランスさが目立ち、観客としてはどちらの物語に集中すればいいか迷わされるからだ。

さらに、ストーリー終盤にかけては病原体の猛威が一気にヒートアップし、ほぼ戦争映画さながらのドンパチ状態に突入する。ここに至っては、もはや体内教育どころの話ではなく、ただのアクション大作として突き進んでしまう感が否めない。もちろん戦闘シーンが派手で見応えがあるのは事実で、急変する体内環境の切迫感を描くには有効な手段だろう。しかし、その迫力に重点を置きすぎたために、当初示唆していた健康啓発や親子の絆といったテーマが尻すぼみになり、最終的には「結局どの要素を一番見せたかったのか?」という疑問が残る。

以上、激辛視点で問題点を並べてみたが、実は見どころも多い作品である。まず、細胞たちの服装デザインや小道具は相当作り込まれており、コスプレ的な楽しさがある。特に赤血球の制服や血小板たちの可愛らしい装いは、ファンならばつい目を細めてしまうだろう。また、キャスト陣が自分たちの役割を理解したうえで演じている点は高評価である。白血球役のクールさと赤血球役のドジっ子感が対照的に映し出され、彼らのやり取りにクスっとさせられるシーンも少なくない。

興行収入が50億を超えている事実からもわかるように、万人受けするエンターテイメントとしては成功と言えるだろう。細胞たちの活躍を通じて健康意識を高める狙いもきちんと機能しており、特に若い世代が学びやすい形になっている。ただ、激辛目線で言えば、終盤のごちゃ混ぜ感や映像の粗さ、キャラクター造形のバラつきなど、伸びしろがある部分は確実に存在する。原作漫画やアニメ版を愛しているファンほど、こういった細かな部分が気になってしまうかもしれない。

総じて、映画「はたらく細胞」は★★★☆☆の評価が妥当と感じる。“体内×人間ドラマ”という野心的な路線は否定できない魅力を放っており、カジュアルな学習要素がある分、エンタメ作品としての幅も広い。しかし、欲張った結果として生じる物語の散漫さや、映像表現の粗が目につく点は否めない。大ヒットを記録しているからこそ、今後の続編や関連作品ではさらに洗練された演出を期待したいところである。感想としてまとめるならば、“エンタメとしては合格点だが、人間ドラマやテーマ性に期待すると少し肩透かしを食らうかもしれない”というところだろう。

映画「はたらく細胞」はこんな人にオススメ!

本作をおすすめしたいのは、まず体の仕組みや健康について楽しく学びたい人である。実写とCGが融合した体内描写は、学習漫画の延長線上にあるわかりやすさを維持しつつ、映像的な楽しさをしっかり盛り込んでいる。特に、細菌やウイルスとの戦いを通して免疫機能をざっくり理解したい人にはうってつけだ。これは子供から大人まで幅広く受け入れられる要素だと思う。

次に、原作の世界観が好きで「はたらく細胞」と「はたらく細胞BLACK」の両方に興味を持っている人にもオススメしたい。ストーリーとしては2つの路線をミックスしており、健康的な体と不健康な体の両面を比較しながら物語が進行する構成になっているので、原作ファンにとっては「こんな風に実写化されたんだ」という驚きがあるはずだ。

さらに、大掛かりな戦闘シーンや派手なアクションが好きな人も楽しめるだろう。後半では病原体との壮絶な“体内戦争”が繰り広げられ、一気にアクション映画の色合いを帯びる。マクロファージやキラーT細胞、NK細胞など、専門用語的なキャラたちが次々と活躍し、アクション好きの観客でも飽きさせない作りになっている。多少雑多な印象はあるものの、派手な映像を楽しみたい人には十分見応えがあるはずだ。

一方、重厚な人間ドラマを期待する人には、やや物足りない面もあるかもしれない。親子関係や病気の描写といった深刻なテーマに踏み込もうとしているが、それをがっつり掘り下げるには尺が足りず、中途半端な印象を受ける部分もある。とはいえ、コミカルな要素とエモーショナルな要素のバランスをほどよく楽しみたい人には、ちょうどいい加減のエンタメ作品と言えるだろう。

まとめ

映画「はたらく細胞」は、原作の魅力を実写映画の枠に収めるべくさまざまな工夫を凝らしているが、あれもこれもと詰め込みすぎた感があるのは否めない。

健康体と不健康体、それぞれの体内で巻き起こる出来事を並行して描くというアイデア自体は面白いし、映像技術やキャストの頑張りも見どころだ。しかし、後半から終盤にかけて一気にシリアスな戦争映画さながらの展開になり、せっかく丁寧に構築してきたコメディ要素や教育的要素が急にどこかへ吹き飛んでしまう印象である。

にもかかわらず、興行収入が大きく伸びた背景には、やはり作品自体の斬新さと“体内を舞台にした冒険”というコンセプトの強さがあるのだろう。短所と長所が同居する作品ではあるが、この設定を楽しみたい人にとっては十分満足できる内容でもある。今後、続編や関連作品が生まれるならば、本作の課題点を踏まえ、より統一感あるストーリー運びや映像表現のさらなる洗練に期待したい。