映画「ブレット・トレイン」公式サイト

映画「ブレット・トレイン」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作はスリル満載の列車を舞台に、多彩な殺し屋たちが入り乱れる一風変わったアクション映画である。主役のブラッド・ピットをはじめ、そうそうたるメンツが顔をそろえ、ひたすら走る車両の中でドッタンバッタンの大騒ぎを繰り広げるのが特徴だ。シリアスな空気感と軽妙なやり取りを同時に味わえる点が絶妙で、観客を飽きさせない構成になっていると思う。邦画や洋画の枠を超えて、世界的に有名な原作小説を題材に大胆アレンジを施したところもポイントの一つである。何も考えずアクションの連続を眺めるだけでも十分に面白いが、緻密に張り巡らされた伏線を回収する快感も見逃せない。

今回は、そんな刺激的な魅力に満ちた作品をじっくり語っていく次第である。まるでジェットコースターのような展開に目を奪われつつも、個性的なキャラクター同士の掛け合いが妙にクセになる。その不思議なバランス感覚こそが本作の持ち味ではないかと感じるのである。とりわけ劇中に散りばめられた小ネタや、予想を覆す仕掛けの数々は一見の価値がある。これから語る内容には重要な筋書きが含まれるが、読む方はぜひ気楽に受け止めてほしい。

映画「ブレット・トレイン」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「ブレット・トレイン」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本編をじっくりと振り返ってみると、まず目につくのは列車内という限られた空間で次々と事件が巻き起こるという構造である。通常なら乗客たちは静かに目的地へ向かうだけの乗り物であるはずが、本作では危険人物だらけの密室劇へと早変わりしている。登場する暗殺者たちはいずれも強烈な個性を放ち、ときに間の抜けた行動を取ることで妙に笑わせてくれるのが印象的だ。ただただ殺し合うだけではなく、ちょっとした会話のやりとりや過去の因縁などが絶妙に盛り込まれており、退屈さを感じさせないのは見事である。

特に主人公の殺し屋が「自分はツイていない」と嘆きながらも、奇妙なくらい命拾いを繰り返す姿には思わず苦笑してしまう。なんだかんだ言っても運が良いのか悪いのか判断しづらく、そこにこそ作品の肝があるのではないかと思うのだ。普通なら即死してもおかしくないような危機をあっさり乗り越える一方で、予想外のトラブルに足を取られたりするシーンが連発する。自分が災難を引き寄せているのか、それとも見えざる力に守られているのか、とにかくそのアンバランスさが妙に癖になるのである。

また、各殺し屋同士の主張や目的が微妙に食い違っている点が面白い。金目当てで動く者、復讐の念に駆られている者、さらには全てを裏で操る黒幕的存在まで入り乱れており、ただ闇雲に暴れるだけではなく陰謀の匂いを漂わせているところも目が離せない。列車という閉ざされた舞台の中で、誰が誰を殺し、誰と手を組み、最終的に何を得るのかというサスペンス要素が盛り上がる仕掛けになっているのだ。

一方で、日本が舞台なのに不思議な日本描写が散見される点には、少し違和感を覚える向きもあるだろう。駅の雰囲気や広告の演出など、海外から見たステレオタイプなイメージが強調されていると感じる場面がいくつかある。とはいえ、この作品の場合はあえて現実的ではない世界観を作り上げているようにも思えるので、そうした“妙な日本”の風景を含めて一種のファンタジーとして捉えれば十分に楽しめるはずである。

そのうえで、列車の各車両を移動しながら繰り広げられるアクションが非常に多彩だ。銃や刃物はもちろん、小物や身の回りのアイテムを駆使した戦い方がある一方で、言葉巧みに相手を出し抜く精神戦のような場面も用意されている。とにかく観客を飽きさせないような工夫が詰め込まれており、それこそテンポよく進行していくので、息つく暇もないままクライマックスへなだれ込む流れが見事だと思う。

演者たちの魅力も語らずにはいられない。中心となる殺し屋役を担う大スターは、軽快な身のこなしと飄々としたセリフ回しで、その場をかき回すトラブルメーカーとして大活躍している。いかにも危険な香りを漂わせていながら、どこか抜けたところがあるというギャップが見どころであり、彼がスクリーンに映るだけで場の空気が一変する存在感はさすがといったところだ。

一方で、脇を固める殺し屋コンビの掛け合いも絶品である。それぞれの役柄が持つ背景や性格がはっきりと描き分けられており、ちょっとした会話劇だけでも見応えがある。ぶつかり合いながらも妙な信頼関係で結ばれた彼らの姿は、血なまぐさいアクションの合間に思わぬ笑いを提供してくれる。中には幼く見える人物が恐ろしい企みを隠し持っていたり、無表情で淡々と人を始末する怪人物が紛れていたりするのだから、キャラクター面だけでも豊富なバリエーションが楽しめるのだ。

さらに、本作には日本を代表する名優が存在感を放つシーンが用意されている。海外映画の中での日本人キャストというと、どうしても形だけのゲスト出演だったりすることが多い印象だが、本作では物語の鍵を握る重要な役割を担っている。異国の殺し屋たちに引けを取らない風格と演技力で、物語全体を大きく左右する立場を見事に体現していると感じる。微妙な英語のイントネーションから生まれるリアルな雰囲気も含めて、作品世界に欠かせない存在であることは間違いない。

そうした豪華キャストが入り乱れているからこそ、一人ひとりの動向を見逃せないのがまた悩ましい点だ。どの人物も次の瞬間に何をしでかすか分からないうえに、突然姿を消したかと思えば次の場面で唐突に再登場するケースもある。いわゆる“群像劇”としての魅力と、アクション映画特有の派手な見せ場が上手く組み合わさっているため、終盤まで目が離せず、気がつけば物語に没入してしまうというわけである。

監督の演出面にも注目したい。かつて超人的なアクションを手掛けた作品で名を馳せた人物だけに、本作でも随所に軽快なリズムが感じられる。アクションシーンの連打が続くかと思えば、急に静寂が訪れ、あえて間をとることで緊張感を高めるという演出が見られるのだ。映像表現も派手さにこだわりつつ、コミカルさや意外性をちりばめるバランス感覚が巧みで、観る者の心を引きつける力を備えていると感じる。

また、音楽の選曲や劇中のカット割りにも凝った工夫があるのが特徴だ。ときには日本語の楽曲が耳に飛び込んできたり、レトロな演出で一息つかせたりと、ただ殴り合うだけの単調な流れにならないよう配慮が行き届いている。血や銃撃だけを全面に押し出す作品とは一線を画し、娯楽性とエンターテインメントを最大限に引き出そうとする意欲をひしひしと感じるのだ。

とはいえ、物語の大筋はシンプルな要素で構成されている印象もある。ブリーフケースをめぐる争奪戦と、各殺し屋たちの因縁がごちゃ混ぜになって大混乱を引き起こすという構図だが、その分、意外なつながりが浮かび上がってくる瞬間は強烈なインパクトを与える。バラバラに思えたピースが一つの流れに収束していく感覚が快感でもあるし、“結局こうだったのか”と唸りたくなる仕掛けはしっかり用意されている。

ただ、あまりにもドタバタ感が強いために、登場人物の行動原理や心理描写に関してはやや薄味に感じられる部分もあるかもしれない。そこを深掘りするタイプの作品ではないので、意外性とスピード感を求める観客に向いているといえよう。何しろ、次から次へと繰り広げられる衝突と裏切り、そして不可解な偶然の重なりがメインディッシュというわけである。

終盤の盛り上がりは圧巻だ。列車が文字通り暴走し、主要人物たちが総力を挙げて死闘を繰り広げる様は、まさにカオスの一言に尽きる。建物や街に甚大な被害をもたらすシーンでは、さすがハリウッドの特撮技術というべき迫力が画面を埋め尽くす。日本らしさを感じる部分といえば、幕の内弁当や車内販売といったディテールが時折入ってくる程度だが、それも含めて“外国人が想像する日本”の極端なイメージとして楽しんでしまえば大いにアリではないかと思う。

このラスト付近で明らかになる陰謀や人物関係の交錯も、最後まで飽きさせない要因である。誰が真の黒幕で、そもそも何のためにこんなに多くの殺し屋が集められたのか。その答えを知ったとき、“え、そうなるのか”という驚きと同時に、一連の出来事がまるで仕組まれた運命のようにも見えてくるのだから面白い。無論、理屈で突っ込もうと思えばいくらでも突っ込みどころはあるが、そこに目くじらを立てるのは野暮というものだ。勢いに任せたエネルギーこそ本作の醍醐味なのである。

一方、キャラクターのやり取りに目を向けると、軽妙な会話がテンポよく繰り返されている点が魅力的だ。これは脚本やアドリブ力が大きく物を言うところでもあり、メインからサブに至るまでそれぞれの役柄に活気があるからこそ成り立っている。実際、殺し合いに必死なはずの登場人物がちょっと笑えるジョークをかます場面もあり、単純なバイオレンス映画とは一線を画す世界観を作り上げているといえるだろう。

原作が日本の小説だと知っている人にとっては、その大胆な翻案ぶりに驚く部分も多いかもしれない。だが、そもそも生々しいリアリティを追求する作品ではないので、“そこは映画的脚色だろう”と大目に見てしまったほうが楽しめると思う。どうにも合点がいかない点があったとしても、ここまで振り切れたアクションに仕立ててくれたのだから結果オーライだという気にもなる。笑うか呆れるかの境界線を行ったり来たりしつつ、気づけばクライマックスまで一気に駆け抜けてしまうのだから、作り手の意図通りではないかとすら思うのだ。

逆に言えば、シリアスな人間ドラマや深いテーマ性を求める人には物足りないかもしれない。あくまで見どころは疾走感とド派手な対決、そして途中で挟まれる軽妙なやり取りや仕掛けの妙なので、そこを楽しめれば十分満足できる作品だと断言できる。いずれにせよ、列車内バトルが好きな人や、テンポ重視のアクションを求める人であれば、一度は体験してみる価値のある映画である。

本作はあくまでエンターテインメント性を最優先にしているため、深いメッセージ性や社会的テーマを求めると肩透かしを食うかもしれない。しかし、それこそが最大の魅力でもある。大騒ぎを繰り広げる殺し屋たちが、運命に翻弄されながらもひたすら右往左往していく様は、観ている側にとって痛快そのものだ。途中でちょっと立ち止まってツッコミを入れたくなるような展開も多々あるが、その雑多な要素をも包括して走り抜けるパワーに圧倒される作品ともいえる。

とりわけ印象的なのは、主要キャラクターたちが背負う運の良さや悪さ、あるいは宿命というモチーフだろう。なんでもない偶然が次々と重なって事態が別方向へ転がり続けるさまを見ていると、自分の人生を振り返ってみたくなるような妙な感覚すら生まれてくる。現実にはそううまくいくわけがないのだが、“運命って不思議だよね”と割り切ってしまえば、これほどまでに破天荒な物語を爽快に楽しめるのかと感心する次第である。

また、個人的には出演者の全力疾走っぷりに拍手を送りたい。大物俳優が体を張って走り回り、同時に魅惑的な脇役たちが好き勝手に暴れ回る。どちらが主役なのか分からないほど群像劇的な盛り上がりを見せつつ、最後にはド派手な落としどころを用意してくれているのだ。終始ハイテンションで走りきった結果、見終わった後はちょっとした爽快感と脱力感が同時にやってくるという、なんとも言えない独特の後味を残すのが面白い。

そうして混沌とした中にも、監督のサービス精神と役者陣の本気度が詰まっているのが感じられるからこそ、観客の心をしっかりつかんで離さないのだろう。理屈や整合性を強く求める人にはハードルが高いかもしれないが、一度思いきり肩の力を抜いて“こんな列車があってもいいじゃないか”という気分で挑めば、十分に満足できるはずだ。いわば破天荒なアトラクションに乗り込むようなものだと思えば、危険を楽しむスリルと笑いが同居する希少な体験を味わえるのである。

以上の点から、本作は見る人を選ぶ面はありつつも、刺さる人にはとことん刺さる作品だと思う。深く考えるより、目の前のアクションとテンポに身を任せて、気づけば全てが丸く収まる(あるいはとんでもない破壊へ突き進む)という行き当たりばったりな展開を大いに堪能してほしい。パンチの効いた列車アクションを欲している人なら、まず間違いなく楽しめると断言しておく。

最後に付け加えるなら、この作品は細かいリアリティを求めるより、むしろ壮大なボケとアクションへの振り切りを楽しむものだと考える。どこかコミカルな雰囲気をまといつつも、しっかり骨太の戦いを描き切っているのはさすがの一言に尽きる。シーンによっては思わず吹き出してしまうようなやり取りも繰り返し登場するため、血生臭いだけの作品に疲れた人にも程よい刺激を与えてくれるはずである。

もちろん、最後まで見ると「それで全部解決していいのか?」と首をかしげたくなるような部分もあるが、それも含めて勢い重視の痛快作品として割り切るのが正解であろう。列車を舞台にした密室アクションというだけでも珍しいが、本作はそこに多数の殺し屋と無数の偶然を詰め込み、カオスを極限まで加速させることで他にはない個性を確立している。合う人にはクセになる魅力を放つ作品だと改めて強調しておきたい。

映画「ブレット・トレイン」はこんな人にオススメ!

疾走感あふれるアクション映画を好む人なら、一度は視聴して損はないだろう。とにかくテンポ重視の展開が続くため、あれこれ考えるより流れに身を委ねて楽しみたいタイプに向いている。また、濃厚な血みどろ描写よりも、多少のドタバタ感を交えたアクションコメディ的要素が好きな人にもフィットするはずだ。登場人物の奇妙なやり取りが多く、時に脱力系のやり取りに笑いを誘われる場面もあるので、重苦しさを避けたい気分のときにもピッタリである。

加えて、豪華キャストの競演を眺めたい人にとっても満足度は高いといえる。それぞれが濃い個性を発揮しながらも、ひとつの列車にひしめき合って物語を盛り上げる様はなかなかの見応えだ。特に主演級の俳優が複数登場し、一筋縄ではいかない関係性を繰り広げるさまは、派手なアクションに加えて人間模様まで堪能したい観客にうってつけである。さらに、日本が舞台とはいえ独特の架空感があるので、現実離れした世界観にワクワクしたい人にも刺さるだろう。どちらかといえば肩の力を抜いて、破天荒な列車の旅をのぞき見するような気持ちでエキサイティングな時間を過ごしたい人にオススメだと思う。

一方で、緻密な人間ドラマやリアルな日本描写を求める人には、やや荒唐無稽に映るかもしれない。そこに物足りなさを感じる人もいるだろうが、頭の中を空っぽにして奇天烈なストーリーを楽しめるかどうかが本作の分かれ目となる。アニメ的なノリや予測不可能な展開を面白がれるなら、その突拍子もないやり口がむしろクセになるはずである。全体として、ほどよいナンセンスとアドレナリン全開の戦いが融合しているため、かしこまった雰囲気よりもワイワイ騒ぎながら鑑賞するのに向いているともいえる。賑やかな映画体験を求める人なら、きっとエンドロールまで退屈せずに走り抜けることができるだろう。

まとめ

以上のように、列車という密閉空間で巻き起こる大騒動を描いた本作は、豪華キャストと派手な演出で最後まで突っ走っている。深いテーマや社会性よりも、“何でもアリ”の勢いを楽しむタイプの映画に仕上がっており、その明快さこそが最大の持ち味といえよう。奇想天外な暗殺者たちが、ちょっとあり得ないくらいの不運と偶然に巻き込まれ続けるさまは、まるでジェットコースターに乗っているような感覚を生むはずだ。

もし観終わった後に「こんな滅茶苦茶な展開でいいのか?」と呆れつつも、なんとなく爽快感が残るなら、それはこの作品の術中にハマった証拠である。筆者としては、時に荒唐無稽な設定をあえて受け入れ、迫力と笑いを同時に味わえる作品として評価したい。仕事や日常のストレスを一気に吹き飛ばしたいときや、リラックスして勢いだけを堪能したい気分のときにはぴったりの一本ではないかと思う。複雑なプロットに頭を悩ませるより、むしろ突拍子もない状況が次々に投げ込まれるエネルギッシュな作風をそのまま楽しむのが得策だろう。スカッとしたいときや、豪華俳優陣の共演を堪能したいときに、これほど手軽に盛り上がれる映画はなかなかないと感じる次第である。