映画「あのコはだぁれ?」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
本作は渋谷凪咲が主演を務めるホラー作品でありながら、不意打ちの展開やちょっと笑えるやりとりがバランスよく盛り込まれているのが魅力だ。冒頭から突然の事故シーンでド肝を抜かれるかと思えば、そこに漂う独特の空気感が不気味さを増幅させる。おかしみを感じる場面がある分、いざ恐怖要素が襲いかかると余計に驚かされる構成になっているのもポイントといえる。
とりわけ、渋谷凪咲演じる主人公が抱える恋人や生徒との関係が「え、そこまで踏み込むの?」とハラハラさせてくれるのだが、まさかの場面でズドンと怖がらせる清水崇監督の手腕はやはりさすが。学校という身近な舞台も相まって、「普段こういう場所でこんな目に遭いたくないな…」とゾワッとする。しかも脇を固める俳優陣のリアルな表情が、霊の存在を余計に感じさせるからあなどれない。夏にピッタリの肝試し感覚で楽しめるが、不気味な演出も多いので、人によっては夜道が怖くなるかもしれない。
もっとも、それだけの怖さを味わったあとに、ちょっとだけ笑い飛ばしてしまいたくなるような空気感を残してくれるのが本作の妙味でもある。そんな振り幅の大きさこそが、この映画ならではの醍醐味といえるだろう。さて、ここから先はより深い部分に踏み込んでいくので、気になる方はぜひ心の準備を整えてほしい。
映画「あのコはだぁれ?」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「あのコはだぁれ?」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作は一見シンプルなホラー映画に見えるかもしれないが、その裏で交錯する人間関係や隠された過去が、想像以上に濃厚だ。まず、主演の渋谷凪咲演じる君島ほのかという女性教師は、夏期補習を担当することになるのだが、そのクラスに「いないはずの生徒」が紛れ込んでいる。この謎めいた存在が、ほのか自身の恋人を巻き込んだり、同じクラスの生徒に奇妙な災難をもたらしたりと、徐々に周囲を恐怖に染めていく展開が肝を冷やす。ただ怖がらせるだけではなく、ほのかが感じる違和感や、いつの間にか追い詰められていく心理を絶妙に描いているため、「あれ、これって何か裏がある?」と観客の頭がフル回転になるのだ。
しかも、ホラー部分の演出はしっかり攻めているのが印象的だ。普通なら安心できそうな場所で突然起こる怪異や、誰もいないはずの空間から覗き込む視線など、よく考えると背筋がゾクッとするシーンが続出する。ときには思わず笑いたくなるような独特の場面も挟まれるが、そういう和らいだ空気に慣れかけたタイミングで一気に恐怖がブワッと押し寄せるため、心拍数が急上昇してしまう。まさに油断大敵という感じだ。清水崇監督らしい“あの不意打ち”が繰り返し訪れるので、観ているこちらとしては一瞬たりとも気を抜けない。
中心にいるのは、不可解な死をいくつも誘発させる「あのコ」である。周囲の人間が次々と命を落としていく描写だけ聞くと、怨念が原因なのではと思いがちだが、実際にはもう少し複雑な事情が絡んでいる。そこに、主人公ほのかの恋人・七尾悠馬が深くかかわっているという事実が明るみに出るあたりから、一気に物語の歯車がギギッと軋み始める。まさかの展開に唖然としつつも、「いや、待てよ?」と疑問を抱きつつ画面に釘付けになること請け合いだ。
ほのかと悠馬のあいだには、いわくつきの家族史がちらつく。悠馬が幼いころに見たかもしれない光景や、補習で現れる不可解な“来訪者”の姿は一種の因縁を感じさせるのだが、それがただの復讐劇では終わらないのが本作の意外性である。ホラー映画でありながら人間ドラマの側面も色濃いので、子どもを守りたい母親の苦悩や、かつて悲劇が起きた学校の校長先生が背負う後悔、さらには「自分はあの時こうしていれば」という後悔を引きずる人物などが登場する。そんな迷いや負い目がいくつも積み重なることで、「あれ、これひょっとして誰が主犯とかじゃなく、もっと根深いテーマがあるんじゃ?」と考えさせられる。だからこそ、ただの怪談話で済ませない深みが出ているわけだ。
脇を固めるキャラクターも印象に残る。補習を受けている生徒たちは、年頃らしいちょっとした反抗心を見せながらも、どうしようもない恐怖に巻き込まれて青ざめていく様子がリアルだ。とりわけ瞳という少女は、謎の生徒に奇妙な共感を持ちかけられているように見えるため、観客としては「おい、そこで踏み込んだら危ないぞ!」と画面越しに声をかけたくなる。こうした若者たちが陥る絶体絶命の状況は、観る側に「もし自分だったら?」と想像させてしまうゆえの恐怖を強烈にあおるのだ。
肝要なのが終盤に待ち受ける衝撃の事実である。ほのかが目撃する光景や、そこにつながる過去の事件の真相は、一度は「よかった」と安心させておいてから突き落とすような仕掛けになっている。しかも、ある人物が最後に呟く言葉が、実は全体の運命を示唆していたのではないか…とあとで気づいてドキリとするのも、清水監督作品らしい後味の悪さ(いい意味で)がたっぷり。下手をすると夜道で一人歩きするときにふと背後を振り返りたくなるような感覚に陥るかもしれない。
ホラー好きにも嬉しい工夫が散りばめられているのが興味深い。本編を観ていると「あれ、これどこかで見たことある演出?」とニヤリとするような要素があったり、同監督の別作品との共通点を探して楽しめたりするのだ。わかる人だけわかる程度の小ネタなので、知らなくても大丈夫だが、知っているとより深みが増すという寸法だ。狙いすぎると白けがちだが、本作はその加減が絶妙で、よく考えると隅っこに怖い仕掛けがうっすら見切れているなんてこともある。くまなくチェックしようとすると、いちいち鳥肌が立つが、そこがまた楽しい。
本作は血みどろのグロ描写ばかりで押し切るタイプのホラーではなく、じわりじわりと不穏を煮詰めながら、「あれ、まだ何か隠れてるんじゃない?」と探らせる奥深い作品だ。しかも人間ドラマパートが充実しているので、事件が起きるときの衝撃がより強く感じられる。自然な会話の流れに紛れ込む怖さもあれば、いきなりドンと来るショッキングな場面もあるため、ホラー初心者からベテランまで、それぞれの視点で楽しめる絶妙な温度感といえるだろう。個人的には、「あの瞬間、本当はどうなっていたのか?」とネタバレ後に考察する面白さを味わえるのが何よりの魅力だと思う。
劇中で暗示される「死後の世界」や「執着」の描き方が独特で、人によっては「そんな考え方もあるのか」と新鮮な驚きを味わうかもしれない。登場人物同士の関係が複雑なぶん、ひとつの行動が別の悲劇を呼び、そこからまた別の真実が見えてくる構造になっているのも面白い。ストーリーがクライマックスに近づくほど謎が解けるはずなのに、むしろ「え、じゃあ最初のあれって結局どういう意味だったの?」と新たなクエスチョンが生まれるのだから、なかなか手強い。だが、それが「続きが見たい」「もっと深堀りしたい」という気持ちを駆り立て、エンドロールまで観終わっても余韻に浸れるわけだ。
とにかく観てほしいのは、ラストで突きつけられる“どんでん返し”とその後に待っている不穏な余白だ。あの時点で「あれ?」と気づいた瞬間の寒気は、この夏一番の衝撃かもしれない。「まさかそういうオチか!」と膝を打ちたくなる反面、実感としては「これは一筋縄じゃ終わらないな…」とぞっとする。エンドクレジットの後にも“あの存在”を感じさせるカットがあるため、席を立つ際には背後を見ないようにするのが無難かもしれない。うっかり振り向いたら、そこに誰かがいるかもしれないから…。
以上、ネタバレ含みの感想としては、本作の怖さはもちろん、隠されたドラマ性と後引くラストのインパクトが印象的だった。ホラーの醍醐味を存分に堪能しつつも、家に帰ってからもいろいろ考えたくなるので、気づいたら「まだ何か見落としていないか?」ともう一度観たくなる。ある意味では鑑賞後にも恐怖が続く体験といえるだろう。そういう余韻を長く楽しみたい方にはもってこいの一本である。
映画「あのコはだぁれ?」はこんな人にオススメ!
ホラーが苦手だけれど背筋をスッと冷やす体験をしてみたい人にこそ、ぜひ挑戦してほしい。血みどろ描写が延々と続くわけではなく、“来るぞ来るぞ”と思ってしまう緊張感と突き刺さる恐怖が交互に押し寄せるので、終始ソワソワしながら作品世界に入り込めるはずだ。
一見怖いだけの存在かと思われる「あのコ」に込められた切なさや執着心に気づくと、「単なるホラーじゃない!」と気づかされるのも面白い。人間関係の機微がしっかり描かれているおかげで、ただの怪談話では終わらない深みを味わえるだろう。過去の出来事が今の状況にどう影響してくるか、そのパズルを推理しながら観るのが楽しいのだ。ホラー慣れしている人なら「そう来るか!」とニヤリとできるし、初心者なら「怖いけど知りたい!」という好奇心をくすぐられる。
さらに、劇中には思わず笑いそうになる場面もさりげなく挟まれているので、ずっと眉間にしわを寄せっぱなしにならずに済む。そんな絶妙な温度差を味わいつつ、最後には思いきり怖がりたい人や、観終わった後に語り合える作品を探している人にも向いているだろう。深読みできる要素が多い作品なので、友人や家族とああでもないこうでもないと話し合う時間も含めて、じっくり楽しんでほしい。
まとめ
「あのコはだぁれ?」は、正統派の心霊ホラーを軸にしながらも、人間ドラマや意外な謎解きが絡むことで多層的な楽しみを提供してくれる一作だ。
最初は薄暗い学校の怪談めいた空気に戸惑いつつも、そのうち謎が謎を呼ぶ展開に引き込まれ、「ここで終わりか」と思いきや、最後の瞬間に背筋を凍らせる仕掛けを突きつけられるのだから油断できない。恐怖心だけではなく、登場人物同士のやりとりにクスッとなる部分が織り交ぜられているので、観終わった後に「いや、怖かったけど面白い体験をしたな」と思えるだろう。特にホラー初心者にとっては刺激が強いかもしれないが、それだけに映画館で体感する価値はある。
大きなスクリーンと音響のもとで味わう恐ろしさはひと味違うし、意外な場面で思わず笑ってしまうような瞬間も会場で共有すると心臓のドキドキがいっそう盛り上がるはず。観る人の好奇心をしっかり刺激しつつ、おどろおどろしい余韻も残していくホラー作品といえるだろう。