映画「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」公式サイト

映画「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作はガンダムシリーズの最新作として2025年に公開されたが、シリーズ伝統の重厚感や世界観に加え、スタジオカラーとサンライズという二大巨頭の共同制作が話題を集めていた。しかし、いざ蓋を開けてみると、賛否の声が真っ二つに割れそうな要素が目立つ作品だと感じた。

斬新な設定やキャラクターの組み合わせは見る人を惹きつけるが、それゆえに過去作へのオマージュが中途半端に感じられる部分もあり、シリーズファンほど首を傾げるかもしれない。とりわけ、女子高生アマテ・ユズリハが謎のモビルスーツ「GQuuuuuuX」に乗り込み、非合法なモビルスーツ決闘競技「クランバトル」に参加するという展開は、ガンダムと“闇バトルアリーナ”の組み合わせとしては興味深い反面、「それが本当にガンダムでやる必要があったのか?」という疑問も浮かぶ。

とはいえ、新時代のガンダムとして評価すべき点も少なくなく、特にバトルシーンの作画や音楽には目を見張るものがある。米津玄師の主題歌「Plazma」が盛り上げる世界観は、耳触りも良く映像との親和性も高い。だが、本作特有の“奇をてらった”演出が万人受けするかと言われると正直微妙で、公開前のハードルの高さを考えると「期待値に見合ったか」と問われれば、やや物足りなさを覚えるのも事実である。

そんな本作について、いいところも悪いところも包み隠さずレビューしていきたい。

映画「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作の舞台は宇宙世紀をベースにした“if”の世界でありながら、これまでのガンダムシリーズとは大きく異なる雰囲気を打ち出している。女子高生のアマテ・ユズリハが“マチュ”というエントリーネームを使い、謎のモビルスーツ「GQuuuuuuX」を駆って非合法バトルに身を投じるというストーリーは、ガンダムの持つ「戦争」や「政治的対立」のイメージを覆すものでもあるし、正当な系列作品を愛してきたファンにとっては戸惑いを覚える導入になっている。むしろ、どこかゲーム的でポップな感覚さえあるため、「この軽さはガンダムらしくない」と思う人もいるだろう。

その一方で、スタジオカラーらしい演出が色濃く反映されている点には注目したい。例えば、主人公アマテがコクピットで見せる感情表現や、モビルスーツ戦時の精神世界の描写など、“エヴァンゲリオン”を連想させるような独特のカット割りや色彩設計が随所に見られる。これはシリーズファンにとっては新鮮味をもたらす一方、「ガンダムでこういう表現を見たかったのか?」という疑問も同時に浮かぶところだ。好き嫌いははっきり分かれると思われるが、実験的な試みとしては評価に値する。長年続いてきたガンダムシリーズを新たにアップデートしようという挑戦が感じられるのは間違いない。

しかし、物語の核となるはずの「クランバトル」の描写が、少々散漫に感じられたのは惜しい。クランバトルがいかに危険で非合法な賭け試合であるかはセリフでは示唆されるものの、その緊迫感や命懸けの修羅場としての迫力がいまいち伝わりにくい。アマテが参戦する動機や、ニャアンとの関係性、またシュウジが登場するまでの運び屋稼業のくだりなど、それぞれのエピソードに費やされる尺が思いのほか短く、ストーリー全体が駆け足気味に進んでいく印象を受けた。結果として、キャラクター同士の絆やドラマが十分に積み上がらないままクライマックスに突入してしまうため、話の盛り上がりを最大限に感じづらいところがある。

特に、アマテとニャアンの友情や、シュウジとの微妙な距離感がもう少し丁寧に描かれていれば、観客として彼女たちの行動により感情移入できたはずだ。非合法の舞台で互いをどう支え合い、あるいはぶつかり合うのかが物語の重要な柱になるのだが、その葛藤や成長のプロセスがシーンごとに断片的に見える。後半になってからようやく、アマテの“自由”への渇望や、ニャアンの“奪われた故郷”への執着、シュウジの“ガンダム”にまつわる謎が一気に動き出すが、前半のスロースタートが響いているために、「待たされたわりに急に詰め込まれた」という印象が否めない。

メカニック面に目を向けると、“GQuuuuuuX”のデザインや戦闘描写はおおむね高評価だ。コアブロックシステムによる変形機構や、細部まで作り込まれた機体表面のディテールは、ガンダムシリーズで積み重ねられてきた技術力を感じさせる。実際に戦闘シーンでGQuuuuuuXが軽快に動き回る様子は迫力があり、作画が崩れることもなく、視覚的に楽しませてくれる。さらに、いわゆる「専用機vs専用機」の構図だけでなく、クランバトルの複数機参戦ならではの乱戦シーンが用意されているのも新鮮だ。ただ、バトルシーンでは見せ場を作ろうとするあまり、演出が過剰気味になってしまい、カメラワークやエフェクトの派手さが逆に見づらさを生んでいるところもある。特に大画面の劇場で見ると情報量が多すぎて、一度鑑賞しただけでは状況を把握しきれないかもしれない。

音楽に関しては、米津玄師の主題歌「Plazma」や挿入歌のセンスが光っている。本作独特のスピード感と重厚感を併せ持った曲調は、アクションシーンやキャラクターの心情描写に寄り添う形で成立しており、演出を効果的に支えている。音響まわりの迫力も映画館でこそ楽しめるレベルでまとまっており、この点に関しては素直に「さすがガンダム×カラーのハイレベルな仕事だ」と感じた。

キャラクターについては、やはり賛否を呼びそうな部分が大きい。アマテは典型的な「どこか閉塞感を感じている少女」というテンプレートに近く、そこから一歩踏み出す原動力としての“クランバトル”に対する憧れや好奇心は理解できるが、劇中で彼女が人格的に大きく変化するような成長の描写はやや乏しい。ニャアンの抱える過去の悲惨さがもう少し深く描かれていれば、二人が出会う必然や、互いに救い合う絆の物語として深みを与えられただろう。シュウジもまた“謎の少年”として登場するわりに、意外とすぐに事情を語るシーンがあり、もっとゆっくり小出しにされていればミステリアスな存在感を演出できただろうに、と惜しさが拭えない。

総じて言うと、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」はガンダムシリーズを革新しようとする意欲と、新しさを詰め込みすぎた不安定さの両方が同居した作品である。作画面や音楽面は高水準だが、脚本やキャラクター描写、演出のバランスに課題を感じる。ガンダムである必要性がどこまで担保されているかという部分も含め、「シリーズらしさ」を求める人と「新しいアプローチ」を求める人の間で評価が割れそうだ。

今後、TVシリーズが放送される際には、劇場版で提示しきれなかった背景やキャラクターの掘り下げが行われる可能性に期待したい。劇場版単体ではやや消化不良感を覚えるが、もしかするとシリーズ全体で見れば大きく評価が変わるかもしれない。そういう意味では、興味を持った人はぜひ今後の展開を追いかけ、追加情報やTVシリーズとの兼ね合いで本作の真価を判断してほしいと思う。激辛な意見を述べてきたが、それでもなお「新しいガンダムを見たい」と思う人には、目を見張るようなシーンや魅力的な試みは十分に詰まっている。そこが本作最大の光と影を同時に生んでいるのだろう。

映画「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」はこんな人にオススメ!

まず、既存のガンダムシリーズにそれなりに触れてきた人で、「何か新しい切り口のガンダムが見たい」と考えている層にはオススメである。スタジオカラーとのコラボレーションが生む独特の映像演出や、女子高生パイロットを主人公に据えた斬新な構成は、いわゆる“正統派”だけを求めるファンにとっては冒険と映るかもしれないが、新たな風を感じたい人には刺さる部分があるだろう。

一方、「ガンダム」という名前は知っているが過去作はそこまで詳しくない、というライト層にも入りやすい要素がある。非合法な“クランバトル”という舞台装置はやや尖った設定ではあるが、競技ものとしてのエンタメ性を備えているので、ガンダムにまつわる複雑な設定や世界観をそれほど予習しなくても楽しめるはずだ。

さらに、「映像の美しさや豪華なスタッフ陣の制作現場に興味がある」という層にとっても、カラーとサンライズの合作は大きな魅力だろう。メカアクションやカット割りの緻密さ、音楽と映像が融合したダイナミックなバトルは、劇場大スクリーンでこそ味わうべき迫力を持っている。

ただし、従来の宇宙世紀シリーズや“ファーストガンダム”のようなドラマ性や戦争描写を求めている人には物足りないかもしれない。キャラクターの背景や人間ドラマの掘り下げが浅い部分が目立つため、既存作品のような濃厚なストーリー展開を期待すると肩透かしを食らう可能性がある。それでも、新しいガンダム像を模索する過程そのものを楽しみたい人には、十分刺激的な作品だといえる。

まとめ

「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」は、ガンダムシリーズの新境地を切り開こうとする意欲作だと感じる一方、シリーズファンが求める要素と、新規層にアピールしようとする要素の両方を詰め込みすぎた結果、脚本やキャラクター描写にバラつきが生じている印象も拭えない。とはいえ、メカ作画や音楽のクオリティは高く、激しい戦闘描写や斬新な演出がガンダムの新時代を予感させるのも事実だ。

本作を評価するポイントは、人によって大きく異なるだろう。「これがガンダム?」と思うか、「新しいガンダムが来た!」と喝采を送るかは、観る側のスタンスやシリーズへの思い入れ次第だと言える。いずれにせよ、これほど賛否両論を巻き起こす作品であるからこそ、話題作として見逃すわけにはいかない。今後のTVシリーズ展開や関連グッズの展開も含め、ファンであれ新規であれ、気になる人は要チェックだ。