映画「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」公式サイト

映画「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は、かつて初代キャプテン・アメリカだったスティーブ・ロジャースから盾を託されたサム・ウィルソンが主人公となる新章である。いわば“2代目キャプテン・アメリカ”の奮闘記が描かれるわけだが、ここにきて元将軍サディアス・ロスがいきなり大統領に就任という話も飛び出し、観客の度肝を抜く展開が目白押しである。しかも、新たなファルコンが誕生し、世界的な陰謀も同時進行。とにかくスケールが大きいのに、いざ蓋を開ければ意外と泥臭い人間ドラマが詰まっていて、「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」の感想としては“政治スリラー×ヒーロー活劇”という贅沢ミックスがクセになる作品であった。

ここでは「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」のレビューとして、細部に触れながら本作を徹底的に語ってみたいと思う。ウワサのレッドハルクだとか、ドラマシリーズ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」の伏線回収だとか、もうネタ満載。真っ赤に盛り上がった頭で突っ走るロス大統領の運命や、2代目キャップの奮闘ぶりを存分に味わってほしいである。

映画「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」の個人的評価

評価:★★★★☆

映画「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本作「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」は、いわゆる“MCU”の一角を担う大作でありながら、その実、政治ドラマの要素がガッツリ盛り込まれているのが最大の特徴である。もともとキャプテン・アメリカシリーズは、戦争や国際問題など“国と正義”を正面から扱う傾向が強かったが、今回はそれがさらに加速。劇中ではインド洋に現れたセレスティアルズの島をめぐる資源問題が浮上し、“アダマンチウム”なる新素材が世界各国を揺るがす。しかも、大統領となったサディアス・ロスが、その採掘や分配を通じて世界の平和を主導しようと躍起になるのだから、こりゃすでに嫌な予感しかないである。

そもそもロスといえば、ハルクとつながりの深い政府要人として有名なキャラクターで、過去作では執拗にハルクを追いかけ回し、さらにはアベンジャーズの規制を押し付けるなど、“お前それやっていいのか”精神を炸裂させた因縁の人であった。そんなロスが大統領になった日には、思わず「アメリカ本気か」とツッコミたくなるわけだが、ハリソン・フォードの貫録たっぷりの演技も相まって、なんだか妙に説得力が出てしまう。ロスが冷静な顔で「これからは俺が世界を導く」的なことを言うシーンなんか、「インディ・ジョーンズから大転身か!」と心中で叫ばずにはいられないである。さらに、自分の身勝手さが引き起こす危機に気づかないまま突っ走っていくその姿には、むしろ“ロス節”を感じてしまい、かつてのウィリアム・ハート版の厳格さとはまた違う“熱さ”がグイグイ前面に出ているのが面白いところである。

そうした中で物語の中心に立つのが、もちろん2代目キャプテン・アメリカことサム・ウィルソンだ。もともと血清を打たれていない彼は、超人こそではないが、翼を背負って大空を駆け回るファルコンスタイルに、キャプテン・アメリカの象徴である盾を組み合わせるという独自スタイルを確立。ドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」での激闘を経て、今や“自分は自分なりのキャプテン・アメリカである”というメンタルを持っているのだが、本作でもやはり“スーパーソルジャーじゃない自分に重圧を感じる”瞬間は多々ある。特に、バッキー不在でひとり頑張っている前半などは、「盾でドヤるのもいいけど、やっぱりちょっと心細そう…」と観ているこちらがハラハラしてしまう。

しかし彼の頼れる相棒・ホアキン・トーレス、つまり新ファルコンとのバディ感が非常にいい塩梅だ。ホアキンは若さゆえの突っ走りと、サムへのリスペクトを絶妙に兼ね備えており、見ていて「君たち、いい夫婦になれそうだね」と言いたくなるぐらい息が合っている。コックピットから「キャプテン、燃料減りまくってるんですけど!?」なんて軽口を叩きながらも、いざというときは二人でスッと背中を預け合う感じが微笑ましい。特にセレスティアルズ島での日米対立が勃発しかけた場面の空中戦は、まさに二人羽織状態で飛び回り、ミサイルやら戦闘機やらをかいくぐっていくアクションが大迫力。これが劇場の大スクリーンで炸裂するのだから、「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」のレビューとしては“最強の空戦ショー”と太鼓判を押すである。

とはいえ、サムの内面ドラマも本作の大きな魅力だ。血清なしで世界を守るプレッシャーと、あのスティーブ・ロジャースから盾を託された責任感はやはり強大である。そんなサムに対し、「お前は超人じゃなくても、ここまでやれるんだ」と気づかせてくれるのが、終盤で登場する旧友バッキーの一言。バッキーが「俺たちみたいな古株(?)は、今の世代が希望を作っていくのを見守ってやるんだ」みたいなことを言うシーンは、やけに感慨深い。ドラマで散々凸凹コンビを披露してきた二人が、いまやちょっとした陰陽の関係になっているのだから、そりゃあサムも涙腺が刺激されるである。しかもバッキーがどうやら「下院議員」に立候補とか言い出していて、これは続編や「サンダーボルツ」あたりでどう転ぶのか期待しかない。

さて、そんな政治とヒーローの狭間で繰り広げられる今回のストーリーには、イザイア・ブラッドリーという重要キャラも再登場している。戦争下で実験台にされた悲しき過去を持ち、サムとも深い縁ができたイザイアだが、今回はまさかの大統領暗殺未遂犯として投獄されてしまう。もちろん真相は「洗脳に使われた超音波やらライトパターンやらが原因」なのだが、“政府に迫害された黒人ヒーロー”という立場ゆえに、いっそう痛ましい展開となっている。彼の苦悩と、それを救おうとするサムの奮闘ぶりには胸が熱くなる要素が詰まっており、同時に「アメリカって国はヒーローを利用するのが得意だけど、切り捨ても得意だよな…」と再認識させられる。政治と正義が交錯する世界で、どのように“キャプテン・アメリカ”の象徴を守り抜くのか。それこそが本作の焦点になっているといえるである。

また、本作で話題をかっさらう要素のひとつがレッドハルク登場だ。ネタバレを承知で語れば、ロス大統領が緊急事態でガンマ線的な何かが引き金となり、ド派手に変身を遂げるシークエンスは圧巻。真っ赤な巨体で暴れ回る姿は、まさに“アメリカの暴走”そのものを体現しているかのよう。これまで血生臭い政治工作を続けてきたロスが、最終的に純粋な暴力モンスターと化すあたり、皮肉というか悲劇というか、あまりに象徴的すぎて笑うに笑えない。しかしそこを真っ向から止めに入るのが、普通の人間の身体を持つサム・ウィルソンだというからまた面白いである。派手な必殺技をぶっ放すわけでもなく、「目を覚ませ、あなたは娘さんと和解したいんだろ?」みたいな説得を試みる展開には、ちょっと『ウィンター・ソルジャー』のスティーブとバッキーのあのシーンを思い出す。大暴れの赤いハルクをなだめるのが“口八丁キャプテン”というのは、これまた人情と根気に満ちたサムの魅力を象徴しているといえよう。

一方で、本作は今後のMCUに関わる重大な伏線が多数仕込まれているように感じる。まずは今回の舞台ともいえるセレスティアルズ島。『エターナルズ』で石化していたティアマットがもとになっている設定で、そこから採掘される“アダマンチウム”が登場するのは間違いなく今後のクロスオーバーへの布石である。言わずもがな、X-MENのウルヴァリンにまつわる金属として有名なやつだし、「これはいよいよミュータント参戦か!」とテンションが上がるファンも多いのではなかろうか。ドラマ「シー・ハルク」でも“X-MENに関する匂わせ”が散りばめられたが、本格導入までの下準備は確実に進んでいる印象だ。

さらに終盤、ロスやスターンズ(インクレディブル・ハルク以来おなじみの“リーダー”)などがどう動くのか、そして“マルチバース問題”や“ドクター・ドゥーム登場のウワサ”など、ファンが気になる要素は山盛り。今回もポストクレジットでさりげなく「他にもヒーローがいる」とスターンズが口にしたり、ロスがラフト刑務所に収監された状態でベティ・ロスと対面する場面があったり、いろいろ含みを残している。続編にあたる『サンダーボルツ』や、今後の『アベンジャーズ』新作へ続く流れとして、大いに盛り上がれる仕掛けがしっかり用意されているとみて間違いなさそうである。

そういうわけで、本作「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」の面白さをまとめるならば、(1)普通の人間であるサムだからこそ苦悩し、そこから生まれるドラマが熱い、(2)政治や国際問題の描写が濃厚で、激しいアクションだけでなく知略戦もたっぷり、(3)レッドハルクというスーパー怪力の乱入により、最高に荒ぶったクライマックスが味わえる、(4)X-MENや次のアベンジャーズにつながりそうなギミックが満載…といったところだろうか。いろいろケチをつけようと思えば、たとえば日米対立や政府の動きがいささか雑だとか、洗脳描写がもうちょい深掘りされてもよかったとか、ロスがやけに短気すぎるとか、細かい不満点はあるにはある。しかし、そのスピード感あふれる混沌が“キャプテン・アメリカらしさ”でもあるのだから、ここはむしろ「らしくていいじゃないか!」と手を叩きたいところである。

何より、スティーブ・ロジャース不在のキャプテン・アメリカシリーズがどうなるか、正直「エンドゲーム」後は不安もあったが、いざ蓋を開ければサム・ウィルソン流のキャプテン像がしっかり確立され始めていて、これには胸が熱くなる。彼の決め台詞である「守るべきものがあるんだ」は、単なる“カッコいいフレーズ”にとどまらず、差別や偏見を乗り越えてきた意志の強さを含んでいるのがデカい。そこにドラマで紡がれた“イザイアの悲痛な歴史”が重なることで、本作のメッセージ性はさらに強力になっていると思う。

結論として、「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」の感想をひとことで言うならば、“政治的ヒリヒリ感と熱いヒーロー魂の融合”だ。マーベル的ド派手さを期待している人にも十分応えてくれるが、裏では国家権力とヒーローの関係性、そして多様性や責任というリアリティがずっしり根を下ろしている作品である。もちろんユーモアシーンも健在で、サムとホアキン、あるいはサムとロスの無理やりな駆け引きなど、ところどころでニヤリとさせられる要素も豊富。いかにもMCUらしい「強いパンチと軽快なおしゃべり」な空気感も大事にされているため、重苦しすぎることなく2時間の物語を楽しめるはずである。

長々と語ってしまったが、要するに本作は“次への橋渡し”としても十分興奮するし、“1本の映画”としても政治スリラーとヒーローアクションがバランスよく溶け合った快作だということだ。ロス大統領が暴走する展開なんて「おいおい大丈夫か?」とツッコミつつ、最後にはサムが全部まとめてくれる安心感があるのが不思議な魅力でもある。これまでの“スティーブからのバトン”の伏線回収もあり、イザイアやバッキーのゲスト的立ち位置も胸アツ要素だし、何よりファルコン×キャップの新コンビが生み出す“空中戦 with 盾”のアクションは映画館でこそ味わいたいド迫力。まさしく、タイトル通りの“ブレイブ(勇敢)”な世界観を全力で打ち出しているのが「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」である。

映画「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」はこんな人にオススメ!

まずは「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」のレビューとして、スリリングなポリティカル要素も含めたヒーロー映画を楽しみたい人にオススメである。国家レベルの陰謀や資源争奪戦が展開されるため、どこかスパイ映画や国際政治ドラマの雰囲気を味わいたい向きにはピッタリだ。特に『ウィンター・ソルジャー』や『シビル・ウォー』のように、単なる勧善懲悪で終わらない“政府 vs ヒーロー”の緊張感が好きなら、迷わず本作に飛び込むべしである。

さらに、元々キャプテン・アメリカが好きだけれど「スティーブ・ロジャースじゃないキャップはどうなんだろう…」と気になっている人も、むしろ積極的に観てほしい。サム・ウィルソンが自分なりの“キャプテン像”を模索しつつ、最終的には彼にしかない色を確立していく過程は胸が熱くなるし、ドラマで育んだ魅力を存分に映画へ持ち込んでいる。新たなファルコン・ホアキンとの掛け合いも楽しく、旧シリーズに慣れ親しんだ人ほど新鮮なコンビネーションが味わえるだろう。

あと、そもそもMCU未体験の人でも、意外とこの作品を入り口として楽しめるのではないかと思う。確かに過去作品への言及は多いが、ロスとハルクの因縁などはざっくり会話から補完できるし、サムがキャプテン・アメリカになった経緯も要所で描かれる。超人血清や洗脳技術など“専門用語”は多少飛び交うものの、要は「いつものマーベルヒーローたちが政治のゴタゴタに巻き込まれ、挙げ句の果てに新たな怪物レッドハルクが暴れる」というわかりやすい構図。物語のスピード感に身を任せれば問題なくエンタメとして楽しめるはずである。

要するに「ヒーローもの+政治劇+人間ドラマ」のバランスを面白がれる人、もしくは豪快なアクションが大好物な人、さらに今後のMCU(特にアベンジャーズやX-MENっぽい展開)を追いたい人にはド直球でオススメしたい一本だ。とにかく見どころの幅が広いので、いろんな観点で楽しめるのが魅力といえるだろう。

まとめ

「キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド」は、2代目キャプテン・アメリカとして奮闘するサム・ウィルソンを中心に、政治的陰謀や国際的緊張感が渦巻くドラマを豪快に見せつけてくれる作品である。ハリソン・フォード演じるロス大統領がむちゃくちゃな手段で世の中を引っかき回し、その暴走の果てにレッドハルク化してしまう展開には“これぞマーベル!”という興奮が詰まっている。

一方で、血清なしのヒーローとしてアイデンティティを模索するサムの姿にはリアリティがあり、バディであるホアキンとの関係も微笑ましさ満点。おまけにバッキーやイザイアなどのサポートキャラが要所をギュッと締めてくれるので、ドラマ性とアクション性のバランスがちょうど良い。

“新しいキャプテン・アメリカ”をどう魅せるかという点にしっかり答えを出しながら、今後のMCUにも期待を膨らませる要素がテンコ盛り。シリーズのファンはもちろん、マーベル初心者にもおおいに楽しめる仕上がりだ。