映画「劇場版 トリリオンゲーム」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
まさか日本でカジノ映画が堂々登場するとは、正直びっくりである。本作は“世界一のワガママ男”ことハルと、気弱でお人よしな天才エンジニア・ガクが1兆ドル(トリリオンダラー)を目指す物語なのだが、映画版では彼らが日本初のカジノリゾート開発に挑むというから興味をそそられる。
ドラマ版でもぶっ飛び展開だったのに、さらにスケールアップした本作は、ハリウッド顔負けのアクションと荒唐無稽な計画が盛りだくさん。実際、ワガママとハッタリを突き詰めた先に何が生まれるのか気になるではないか。しかも舞台が離島ということで、“島の風情”ד巨大資本”דカジノのきらびやかさ”という、一見かみ合わなさそうな三位一体がコメディチックに融合するさまは見ものだ。
そんな実態に迫るべく、激辛視点で「劇場版 トリリオンゲーム」の感想・レビューを包み隠さず語っていこうと思う。
映画「劇場版 トリリオンゲーム」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「劇場版 トリリオンゲーム」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作「劇場版 トリリオンゲーム」は、ドラマ版の続編という形でありながら、単品でもわかりやすい構成になっている。ざっくり言えば、仲間と協力しながら無茶な事業を成功させるハルとガクの“痛快サクセスストーリー”である。だがそこに舞台として用意されたのが「日本初のカジノリゾート」。法律面や地域住民との対立など、生々しく火種だらけの題材にあえて飛び込むのだから、何かが起こる予感しかしない。
まずは主人公コンビをおさらいしよう。天王寺陽(通称ハル)は“口八丁手八丁”の人たらし。どんな状況でもハッタリをかませるし、仲間にとっては頼もしく、敵にとっては最強に厄介な男である。そんなハルのパートナー、平学(ガク)はエンジニアとして超一流ながら気が弱い青年。しかしながら、ドラマ版ラストで見せたガクの成長ぶりは凄まじく、今作でもその“底力”と“優しさ”が存分に発揮されるのだ。彼らの会社・トリリオンゲーム社はすでにECやゲーム、メディア事業で大きく成功を収めており、世間の注目を一身に集めている。だがハルにとっては「まだまだ通過点」。日本初のカジノリゾートを立ち上げ、さらなる1兆ドル稼ぎを現実のものにしようというわけだ。
この映画前半で印象的なのは、ふたりが海外のカジノで再びウルフ・リーという大物と再会を果たすシーンである。世界中の富豪や怪しい連中が集う秘密のカジノに、ハルがイカサマ紛いのテクニックで潜り込むくだりは、まるでスパイ映画のようなテンポとアクション。街中を爆走したり、エレガントなディーラー(シシド・カフカ演じるラモーナ)にあっさり手の内を見抜かれたり、ハルとガクが追いかけまわされる様子はハチャメチャだが痛快である。まるで「お前ら警察に捕まるぞ」と言いたくなるが、そういう無茶をやり切ってしまうのがハルという男なのだ。
ここで登場するウルフ・リー(石橋凌)は、かつてハルが“わがままを極めるには金が必要”という真理(?)を学んだ師匠のような存在。要するに世界のカジノ王であり、手段を選ばず莫大な富を築き上げたフィクサーだ。彼に「日本初のカジノを一緒にやりませんか」と持ちかけるのだから、ハルのメンタルはどこまで図太いのか。そこそこなら「ふざけるな」と一蹴されるはずが、ウルフも「面白いかもしれん」と興味を示す。こうして物語の大きな歯車が回り始めるのだが、それと同時に、ライバル企業・宇喜多ホールディングスの宇喜多隼人(田辺誠一)が暗躍。ドラゴンバンク社長・黒龍キリカ(今田美桜)も巻き込んで、実に複雑な陣取り合戦へと展開していく。
肝心のカジノ候補地は、岡山の離島「桃木島」。過疎化や産業の衰退、島民の高齢化など現代日本の縮図のような課題を抱えており、当然「カジノなんていらない」という強硬反対派も存在する。単にお金を持ち込めばいい話じゃなく、住民との信頼関係や環境問題、文化継承をどうするかが問われるわけだ。そんな難題に対し、宇喜多は“金と政治力”で島民を根こそぎ動かそうとする。一方ハルたちは“人たらし”能力と巧みなプレゼンで「島の暮らしを守りつつ発展させる」方法を模索する。この真っ向勝負、ドラマを知っている身としては「どうせ無茶な手段でひっくり返すんでしょ?」とニヤニヤしながら期待してしまう。
そして期待通りにハルが繰り出す策は豪快だ。島民の前で「北部の採石場を改修し、ブランド石を再生産しながら、その場所にカジノリゾートを作れば島の南部に住む人は立ち退かなくていい!」とぶち上げるのだから、島民も驚くしかない。しかも「人手が足りないなら全国から重機と人材を集める」と即決。無理筋にしか見えない計画を大胆に実行し、老職人をも落とし込むあたりが、まさに“世界一のハッタリ男”の面目躍如である。このあたりの展開は島民を説得するプロセスが丁寧に描かれており、単にお金で解決というわけでもない。のどかな離島の風景の中に、カジノというキラキラ成分が混ざり合う化学反応を見るのはなかなか新鮮だ。
物語後半、ついにカジノがオープンしてからは、いよいよクライマックスに向けた大暴れが始まる。冒頭に出てきたウルフ・リーや、新キャラであるラモーナ(シシド・カフカ)の暗躍も相まって、強盗事件やセキュリティの崩壊など、てんやわんやの騒動が巻き起こる。特に大金を狙う覆面強盗とのカジノ内アクションは大迫力。ハルが防弾チョッキもなしに銃弾を受けるシーンは「そこまでやるか!?」とヒヤヒヤするが、同時に“絆”の強さを印象づける見せ場でもある。ガクが自責の念にかられる一方、意識不明になったハルをキリカが見舞う場面は、ドラマ版から続く複雑な「恋とも対立とも言えない関係性」を象徴していて、ニヤニヤが止まらない要所だ。
最終的にはガクやキリカ、そしてまさかの宇喜多も巻き込んだ“逆転劇”がカジノのバックヤードで展開される。こここそ本作の白眉と言っていい。ウルフの不正を暴くため、巧妙な芝居とシステムハッキングを仕掛け、金塊や裏取引の証拠をバラ撒いて大混乱を招くのだが、その切り札が「仲間を巻き込んでこその大芝居」という点が胸アツ。ハルとガクが「この島の住民ごとドッキリを仕掛ける」ような壮大な作戦に出るのは、いかにも彼ららしい。しかも最後の最後で本格ポーカー対決が待っているとあって、観る側は「そうきたか!」と手を打つしかない。ウルフが激昂し、ラモーナがどちら側につくのかピリつく駆け引きも見応えがある。
もちろん細かいツッコミどころは多い。「そんな簡単に法的な認可が取れるのか?」「強盗団はあっさり逃げおおせるのか?」などなど現実感を求めすぎると首をかしげる部分も出てくる。だが、そもそも本作は“リアルを追求するビジネス映画”ではなく、“少年漫画的な痛快サクセスストーリー”として楽しむのが正解だろう。ハルとガクのバディが繰り広げる“世界一のワガママ”を、エンタメとして堪能するほうが絶対に面白い。
また見どころとしては、今田美桜演じるキリカとの火花散る掛け合いだ。「俺に嫉妬してんのか?」「何してるの?」みたいな会話劇がいちいちニヤニヤさせられる。ドラマ版から続く二人の腹の探り合いと淡いロマンスが、今回もやはりたまらない魅力。さらにガクとリンリン(福本莉子)の可愛らしい恋模様も健在で、ガクが不器用なりにプロポーズするシーンは“尊さ”に悶絶必至。そこへハルが容赦なく乱入してぶち壊すドタバタもお約束感があって笑える。
映画のラストは、さらに次なる野望として「宇宙開発」へと舵を切るハルの姿が描かれる。連続ドラマのころから“ロードマップ”という形でステップを踏んできた彼らだが、ついには宇宙進出を本気で目論むのだから呆れるしかない。とはいえ「次はどんなワガママっぷりを見せてくれるのか?」と期待する自分もいる。突拍子もない計画を笑いとアクションと友情で成立させるのが、この作品の醍醐味なのだ。
まとめると、本作は間違いなく“ハチャメチャな痛快エンターテインメント”である。多少のご都合主義はご愛嬌。予想の斜め上を行く展開や、主人公たちのドラマチックなコンビネーション、そして豪快なアクションによって、一瞬たりとも退屈する暇を与えない。ドラマ版を観ていなくても十分に楽しめるし、キャスト陣の演技合戦やビジュアル映えするシーンが多いのも嬉しいところだ。逆にドラマを網羅しているファンは、小ネタや登場人物の成長ぶりにも注目して「ニヤリ」とできる要素が多い。
正直言って、壮大な金の話・リゾート開発・マネーロンダリングなど、題材としてはシリアスになりがちなのに、それらを軽々とエンタメ化してしまう本作の爆発力には素直に感心させられた。お硬いテーマと思いきや、肩肘張らずに楽しめる娯楽作として非常に優秀である。もう少し本格的な社会派要素を期待した人には肩透かしかもしれないが、そこは“トリリオンゲーム”らしい軽妙さで突き進むのが持ち味。結果的に「爽快感とハラハラドキドキの連打」こそが、本作の最大の魅力なのだ。
そんなわけで「劇場版 トリリオンゲーム」の感想をざっくり総括すると、「ハル&ガクのワガママパワーは健在、むしろレベルアップ」「カジノの舞台装置がごちゃまぜの荒唐無稽感を強調」「仲間を大事にするハルの人たらし力が最高」というところに尽きる。笑いながら“そうくるか!”と手を打ち、最後にはガクのちょっと泣きそうな顔に感情移入してしまう。この作品ならではのエネルギーと熱を、劇場スクリーンで存分に味わうべし。
映画「劇場版 トリリオンゲーム」はこんな人にオススメ!
本作をオススメしたいのは、「大げさで派手なエンターテインメントが好きな人」だ。理詰めなリアリティを追求するよりも、勢いで道を切り開く痛快サクセスストーリーに胸を躍らせたい人にはピッタリである。例えば少年漫画の主人公が「世界を救う」と言い出す感覚が苦手でないなら、きっとハルとガクの豪腕ぶりにワクワクできるはず。
また、ドラマ版を観ていなくても十分楽しめるよう配慮がされているので、「最近忙しくてシリーズをイチから追えないんだけど、大丈夫?」と不安な方も大丈夫。大きなアクションシーンやポーカー勝負などの見せ場が詰め込まれ、文脈を知らなくても爽快に盛り上がれる内容である。「細かいことはさておき、“仲間”と“お金”と“夢”がぶつかりあうのが見たい」という人も納得の作品だ。
さらに「イケメンが全力でバカやるのが観たい!」という方にも激推しである。主演の目黒蓮や佐野勇斗をはじめ、今田美桜や福本莉子といった若手俳優陣が容赦なくはしゃいだりドヤ顔をキメたりしてくれるのは眼福。恋愛描写もありつつ、過剰に恋愛メインにはならないので「ラブコメより友情ものが好み」という層にもハマるだろう。むしろバディムービー的な要素が強いので、「あんまり恋愛映画は得意じゃない」という人もご心配なく。
最後に、社会派テーマに触れたい人でも、適度な“現実問題”に引っかかれる点はある。離島の過疎化やカジノ合法化への反発、汚れ仕事を伴う巨大資本との対立などが盛り込まれており、それらをファンタジー寄りのアプローチで描いている。本格的な政治・経済ドラマというよりは“あくまでエンタメ”として作られているので、深刻になりすぎずに話のタネを見つけたい人にちょうどいい。よって、本作は“気分爽快な大冒険”を望む方に全力でオススメできる一本なのだ。
まとめ
「劇場版 トリリオンゲーム」は、“ワガママは世界を動かす”を地で行く痛快エンタメである。ドラマで確立されたハル&ガクの最強バディ感はそのままに、離島×カジノという絶妙なミスマッチ設定を一気に駆け抜ける。むろん、お金やビジネスの裏側を描きつつ、現実離れした大成功を成し遂げる姿はあくまでファンタジー的。だがそこにこそ“少年漫画的ロマン”があり、見終わった後には妙な爽快感を覚える。さらにキャラクターのやり取りにユーモアが満ちていて、二度三度見ても飽きない中毒性があるのが特徴だ。
銃弾を受けても立ち上がるハル、ガクの不器用な優しさ、キリカやリンリンの刺激的かつ愛嬌のある立ち位置——これらが渾然一体となって“トリリオンゲーム”の世界を彩っている。映画館でド派手に楽しむもよし、シリーズを見返してニヤニヤするもよし。とにかく、ハルとガクの次なる“宇宙一のワガママ”を期待させるラストまで含め、満腹感と続編への渇望を同時に味わえる作品であった。