モアナと伝説の海2

映画「モアナと伝説の海2」公式サイト

映画「モアナと伝説の海2」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は、前作で海に選ばれた少女モアナがさらなる冒険へと漕ぎ出す物語である。前作の公開から数年が経ち、多くのファンが心待ちにしていたであろう待望の続編だが、はたしてこの作品は期待に応えてくれるのか。

映像美や音楽、キャラクターの魅力がディズニー映画の醍醐味である一方、ストーリーの深みや新キャラクターの扱い方には賛否があると言われている。本記事では、物語の重要な要素やキャラクターの変化、そして前作では描き切れなかった部分に注目しつつ、本作の魅力や気になる点を厳しめの視点で掘り下げたいと思う。

前作が世界中で大ヒットを記録し、モアナという新たなディズニープリンセス像を確立しただけに、続編としてのクオリティや意義をどこまで高められているのかが最大の焦点となるだろう。果たして、新たな航海に出るモアナは、われわれの胸を熱くする航跡を残せたのか。

ここから先はネタバレも含め、包み隠さずレビューしていくので、鑑賞前の方は注意して読んでいただきたい。

映画「モアナと伝説の海2」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「モアナと伝説の海2」の感想・レビュー(ネタバレあり)

続編を作るうえで前作の成功に囚われすぎると、新鮮味が失われたり無難な仕上がりに陥ったりしがちだが、本作は一見すると「映像技術の進化」「キャラクターの成長」「新キャラクターの登場」という要素を盛り込むことで、続編ならではの挑戦を打ち出そうとしているように見える。実際、スクリーンに映し出される海や島々の風景、そしてモアナの髪の毛やタパ(ポリネシアの樹皮布)などの質感表現には目を見張るものがある。前作でも高く評価された海のダイナミックな描写は、約7年半の技術的進歩によってさらに磨きがかかり、波の動きや泡の表現がリアルかつ美麗にアップデートされていた。

しかし、こうした映像面の進化が顕著な一方で、物語運びのスリルや新鮮味に関しては、正直「もう一歩踏み込みが欲しかった」と感じる部分が大きい。本作では前作から3年後の世界が舞台となり、モトゥヌイ島のリーダーとして成長したモアナが再び大海原へと旅立つ。しかし、その旅の動機や旅先でのドラマが比較的シンプルにまとめられているせいで、「世界観の広がりがあるようで実は狭い」という印象を与えてしまっているのが惜しい。前作は、未知の海への憧れと島の危機を救うという二つのモチベーションがせめぎ合い、モアナが自分の本当の居場所を探すという成長譚に厚みを与えていた。本作も「世界を再び一つにする」という壮大なテーマを掲げるが、その割にドラマの盛り上げ方が淡泊に感じられる箇所も多いのだ。

特に気になったのは新キャラクターたちの扱いである。モアナと旅を共にするモニやロト、ケレといった仲間たちは、それぞれ個性的な背景を持ち、ストーリーを動かす要素にもなり得るはずだが、実際にはほとんどの描写が「簡単な自己紹介」レベルにとどまっているように見受けられる。悪役として登場する嵐の神ナロやコウモリの女神マタンギも、前作の冒険の要所を彩ったモンスターたちほどの強烈な存在感を発揮しているとは言い難く、どこか消化不良のまま物語が進んでしまう。この中途半端さが、本作を“続編”としては成立させつつも、満足度を落としている原因だと感じる。

一方で、映像や音楽の面ではさすがディズニーと唸らされる仕掛けが多い。特に音楽面では、前作のテイストを受け継ぎながら、新曲「ビヨンド ~越えてゆこう~」や劇中歌「We’re Back(原題)」などが印象的に配置されている。モアナの旅立ちを奮い立たせるような力強いバラードは、聴き手の心を大いに揺さぶるし、劇中での歌唱シーンはキャラクター同士の心情を象徴的に表現してくれる。マタンギの曲や、エンドソングとして起用されたガールズグループME:Iの歌など、多彩な音楽が作品を彩る点は見逃せない魅力だ。

また、本作で描かれるモアナの“19歳の姿”は前作と比較して少し大人びており、心身ともに成長していることが画面から伝わってくる。実際の声優インタビューでも、「モアナが歳を重ねるディズニー・プリンセスは前例がない」という点がしばしば強調されているが、それゆえに、モアナが責任感やリーダーとしての苦悩を抱えながら旅立つ姿には新鮮さがある。ただ、その成長がドラマとして十分に活用されているかと問われると、やや物足りない部分もある。周囲の期待を背負うプレッシャーや、島の未来のために自分がどこまでリスクを負うべきなのかといった苦悩は断片的に示される程度で、彼女が前作を超える内面の変化に辿り着くかどうかは、人によって捉え方が違うだろう。個人的には、前作の「自分のアイデンティティを見つけ、海に選ばれた意味を確信する」というテーマの鮮烈さと比べると、本作のモアナの葛藤はやや散漫に感じられた。

マウイとの関係性については、お互いが前回の冒険を通じて築いた絆がより深みを帯びている反面、それが原因でかえって冒険における緊張感が薄まっている側面もある。前作は、モアナとマウイの衝突やすれ違いが物語を彩ったが、本作ではその衝突が少なく、あまり波風が立たないままストーリーが進む印象を受けた。もちろん、マウイが再び苦難に陥る展開や、新たな敵に立ち向かう場面はあるのだが、全体的に“大きなピンチ”を感じる時間が短く、あっさり決着する。物語をクライマックスへ向けて盛り上げるために、もう少しドラマを深めてもよかったのではないかと感じる。

とはいえ、本作が描こうとするメッセージに注目すれば、それなりの説得力はある。「道は一つじゃない」「迷子になることは魔法への道」というキーワードが示すとおり、モアナたちは必ずしも“決まったルート”を辿らなくても、自分たちなりの答えを見つけ出せるという希望を提示している。世界が分断されがちな今の時代、海を舞台に“すべてを繋げよう”とするモアナの姿は、確かにポジティブなエネルギーを与えてくれる。ディズニー映画としての娯楽性や視覚的・聴覚的な楽しさは十分なので、「とにかく新しい映像美や楽曲を楽しみたい」という観客層には理想的な作品といえる。

一方、前作のように“モアナの内面を深く掘り下げる冒険譚”を期待すると、やや薄味に感じるかもしれない。新キャラクターが多数登場するものの、その魅力を十分に引き出せているかというと疑問が残り、物語のボリューム不足を感じる。制作陣は取材やリサーチによってポリネシア文化へのリスペクトをさらに高めているらしいが、それがストーリー全体に強く反映されているかと問われれば、装飾的な要素にとどまってしまっているような印象もある。

総じて、本作は「映像美・音楽・成長したモアナという目に見える変化」を存分に味わえる一方、「ストーリー面の奥行き」や「新キャラクターの深い活躍」という点で物足りなさが否めない続編である。評価としては中間的な3点が妥当だろう。前作ほどの大きな驚きはないが、ディズニーらしいエンターテイメントとして、一定の水準をクリアしているのは間違いない。激辛な意見を述べれば、「映像と楽曲に助けられている部分が大きい」作品とも言えよう。ただし、そこがディズニー映画の強みでもあるので、前作の海や音楽に魅せられた人にとっては、楽しめる要素は十分に用意されている。

映画「モアナと伝説の海2」はこんな人にオススメ!

本作をおすすめしたいのは、まず「ディズニー作品の映像表現や音楽を堪能したい人」である。特に前作からのファンであれば、一段と美しくリアルになった海の描写や、前作のテイストを受け継ぎつつパワーアップした音楽の数々は見逃せないだろう。また、「ポリネシア文化に興味がある」「新たなディズニープリンセスの姿を追いかけたい」という人にも適している。19歳になったモアナの成長した立ち居振る舞いや、島のリーダーとしての責任感がにじみ出る描写など、前作にはなかった視点でモアナの人間性を楽しめるはずだ。

加えて、子どもと一緒に映画を観るファミリー層にも向いている。冒険やキャラクター同士の掛け合い、そして力強く勇気を与えてくれる音楽は、家族で分かりやすく楽しむのに十分な要素だろう。激しい残酷表現や難解なストーリー展開も少ないので、安心して子どもを連れて行ける作品といえる。

逆に、「前作を超える濃密なドラマ」や「新キャラクターの深い掘り下げ」を求める人にはやや不向きかもしれない。世界観の説明や新たな敵との対峙の仕方など、もっと掘り下げて欲しい部分がサラッと流される印象もあるからだ。ただ、ディズニー映画らしい明快さや前向きなメッセージを享受したいのであれば、本作は十分に楽しめるはずである。大人が観ても映像と音楽の力に素直に感動できるところは、本作の大きな魅力だ。もし前作のモアナやマウイが好きなら、彼らが成長した姿に再会できるだけでも価値があるのではないだろうか。

まとめ

「モアナと伝説の海2」は、鮮烈なビジュアルと心躍る音楽を重視するディズニーらしさが存分に発揮された作品である。

成長したモアナと再会できる喜びや、さらなる冒険に胸が弾む一方で、新キャラクターの扱いとストーリー面ではやや薄味な仕上がりと言わざるを得ない。前作にあった“未知への渇望”や“自分探しのドラマ”が、どうしても強く印象に残っているからこそ、それを超える感動や意外性を求めると肩透かしを食うかもしれない。

ただ、映像技術の進化による海の壮麗な表現や、パワフルな楽曲群から得られるエンターテイメント性は高く、家族や友人と気軽に楽しむには最適な続編といえるだろう。ディズニー映画らしい“勇気”と“希望”のメッセージも依然健在で、観終わったあとには前向きな気持ちを取り戻せるはずだ。

批判すべき点もあるものの、総合的には「安定した続編」として、多くの観客を満足させるポテンシャルを備えている。