映画「見えない目撃者」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!本作は、2011年に公開された韓国映画『ブラインド』をリメイクした2019年の日本映画であり、監督は森淳一、主演は吉岡里帆だ。視力を失った元警察官・浜中なつめが、少女の助けを求める声を聞いたことをきっかけに、連続誘拐事件の謎を追うというストーリーである。
設定自体は非常に興味深く、視覚を使えない捜査というサスペンス要素がしっかり機能しているのが特徴だ。だが、リメイク作品としての新規性や、オリジナルと比較しての完成度については意見が分かれるところだろう。本記事では、映画「見えない目撃者」の魅力と気になる点を徹底的に掘り下げていく。なお、本作のラストまで踏み込んだネタバレが含まれるため、未鑑賞の方は注意してほしい。
映画「見えない目撃者」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「見えない目撃者」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作の最大の特徴は、「目撃者なのに目が見えない」という皮肉な設定だろう。主人公・浜中なつめ(吉岡里帆)は、かつて将来を嘱望された警察官だったが、交通事故で弟を亡くし、自らも視力を失った。そんな彼女が、ある夜、少女の助けを求める声を聞いたことをきっかけに、警察に通報するが相手にされず、独自に調査を始めることとなる。
なつめの盲目という特性がしっかりと活かされており、視覚を失った者がどうやって捜査を進めるのかという部分は非常にスリリングだ。彼女は音や匂い、周囲の微細な変化に敏感になっており、視覚以外の感覚を駆使しながら手探りで事件を追う。その描写はリアルで、観客もなつめと同じように緊張感を持って物語を追うことになる。
しかし、物語が進むにつれて、サスペンスよりもアクション要素が強調されてくる。序盤のミステリアスな雰囲気は良いのだが、後半になると急激に「視覚障害の捜査官が戦うアクション映画」に変わってしまうのが気になるところだ。なつめは決して特殊能力を持っているわけではないのに、クライマックスでは犯人との肉弾戦を繰り広げるシーンもあり、「いやいや、そこまでできる?」とツッコミを入れたくなる場面もある。
また、犯人の動機がやや薄く、説得力に欠ける点も本作の惜しいポイントだ。連続誘拐事件の真相が明かされるが、なぜ犯人がそのような行動を取るに至ったのかが十分に掘り下げられていないため、「なるほど!」と膝を打つような納得感が得られない。この点が、サスペンス映画としての完成度を若干下げてしまっていると感じた。
一方で、本作は映像的な演出や音響面では優れている。視覚を失ったなつめの世界を体験するようなカメラワークや、静寂と環境音を効果的に使った演出は秀逸だ。特に、暗闇の中で何が起こっているのかわからない恐怖感を強調する演出は素晴らしく、こうしたディテールは本作の強みといえる。
また、吉岡里帆の演技は非常に力強く、なつめというキャラクターをしっかりと成立させていた。彼女の表情や仕草から、視覚を失ったことによる不安や葛藤がリアルに伝わってくる。一方で、共演の高杉真宙が演じる刑事・国崎のキャラクター造形はやや浅く、もう少し彼の背景や成長が描かれていれば、よりバディムービー的な魅力が出せたのではないかと思う。
総じて、「視覚を失った目撃者が事件を追う」という設定自体は非常に面白く、それを活かした演出や演技も評価できる。しかし、ストーリーの詰めの甘さや、アクションに寄りすぎた後半の展開が惜しい作品だったといえる。
映画「見えない目撃者」はこんな人にオススメ!
・緊張感のあるサスペンス映画が好きな人
・盲目の主人公がどのように事件を解決するのか興味がある人
・吉岡里帆の演技を楽しみたい人
・細かい設定の矛盾を気にせず、スリルやアクションを楽しみたい人
逆に、「緻密なミステリーを期待している人」「リアリティを重視する人」にはやや不向きかもしれない。本作はサスペンス要素よりもエンタメ性が強いため、気軽にスリリングな映画を楽しみたい人向けの作品といえる。
まとめ
映画「見えない目撃者」は、視覚を失った元警察官が事件を追うというユニークな設定を活かしたサスペンス映画である。吉岡里帆の熱演や、緊張感のある演出は見どころだが、物語の後半でアクション要素が強くなりすぎる点や、犯人の動機の掘り下げが足りない点が惜しい。とはいえ、娯楽作品としては十分に楽しめる一本であり、サスペンスとスリルを求める観客にはオススメできる作品だ。