映画「ヒッチハイク」公式サイト

映画「ヒッチハイク」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は、2023年7月7日に公開された日本のホラー映画であり、都市伝説を題材にしたスリラー作品だ。監督は「コープスパーティー」シリーズで知られる山田雅史、脚本は「きさらぎ駅」を手掛けた宮本武史が担当している。主演にはダンスボーカルユニット「原因は自分にある。」の大倉空人を迎え、中村守里、平野宏周、高鶴桃羽らが出演している。

本作は、かつてインターネット掲示板「2ちゃんねる」のオカルト板で話題となった都市伝説を元にしており、山中でヒッチハイクを試みた大学生たちが得体の知れない一家に遭遇するというシンプルながらも恐怖感のあるストーリーが展開される。しかしながら、ホラー映画好きの筆者としては、この映画の出来には大いに疑問を抱かざるを得なかった。今回はその点も含めて、辛口目線でレビューしていく。

映画「ヒッチハイク」の個人的評価

評価: ★☆☆☆☆

映画「ヒッチハイク」の感想・レビュー(ネタバレあり)

まず、本作の最大の特徴は、その題材にある。日本の都市伝説をホラー映画に落とし込むという試み自体は決して悪くない。しかし、それを映画としてうまく昇華できているかというと、答えは「NO」だ。ホラー映画において、観客の不安を掻き立てる演出や、登場人物の行動に説得力があることが求められるが、本作はそれらを欠いている。

ストーリーは、ハイキング帰りの大学生である涼子と茜が、バスの時間が合わず、山中でヒッチハイクを試みるところから始まる。そこに現れたのがカウボーイ姿のジョージと名乗る男。彼はキャンピングカーを運転しており、二人を親切そうに迎え入れる。しかし、車内には彼の「家族」も乗っており、徐々に異様な空気が漂い始める。一方、同じく山中でヒッチハイクをしていた健と和也の二人も、運命的にこの一家と関わることになる。

ここまでは、ホラー映画として王道の展開だ。しかし、問題はこの後のストーリー展開の雑さにある。ホラー映画としての緊張感を保つどころか、展開があまりにもご都合主義的で、登場人物の行動にも納得できない部分が多すぎる。例えば、ジョージの家族の狂気が明らかになっていく過程が非常に強引であり、何の伏線もなく突如として暴力的な行為に及ぶため、観客としては「なぜ?」という疑問が先行してしまう。

また、映像演出に関しても、ホラー映画としての怖さを醸し出す工夫がほとんど見られない。暗闇の中での影の使い方や、音響効果を駆使して観客の心理的な恐怖を煽る演出が不足しており、結局のところ「ただ登場人物が次々に殺されていく」という流れになってしまっている。特にクライマックスでは、緊迫感を高めるべきシーンにも関わらず、映像が単調で、恐怖を感じることなく終わってしまった。

さらに、キャラクターの描写も薄っぺらい。主人公たちの性格や背景がほとんど掘り下げられず、彼らに感情移入することができない。ホラー映画において、登場人物がどのようなバックグラウンドを持ち、どのような心理状態で恐怖に直面するのかが重要だが、本作ではその点が完全に置き去りにされている。結果として、キャラクターが次々に命を落としていく展開も、「ふーん」としか思えず、まったく感情を揺さぶられないのだ。

ホラー映画においては、「観客に恐怖を植え付けるための工夫」が不可欠である。しかし、本作は単なる「人が死んでいくだけの映画」であり、それ以上のものを提供できていない点が致命的だ。

映画「ヒッチハイク」はこんな人にオススメ!

本作をおすすめできるのは、以下のような方々だ。

  • 都市伝説を基にしたホラー映画に興味がある人
    • 2ちゃんねるのオカルト板で語られた都市伝説を映像化したという点で、都市伝説マニアには一定の価値があるかもしれない。
  • B級ホラー映画を楽しめる人
    • ホラー映画はストーリーや演出の完成度が低くても、「突っ込みながら観る楽しさ」があるジャンルでもある。本作はまさにそんな作品であり、「どうしてこうなった?」と笑いながら観るのが正解かもしれない。
  • 短時間でサクッと観られるホラーを探している人
    • 本作の上映時間は74分と短いため、「ちょっとした空き時間にホラー映画を観たい」という人には向いている。

しかし、王道ホラーや心理的な恐怖を求める人、あるいは脚本や演出のクオリティを重視する人には決しておすすめできない。

まとめ

映画「ヒッチハイク」は、都市伝説を基にしたホラー映画としての魅力はあるものの、脚本・演出・キャラクター描写のどれを取っても完成度が低く、ホラー映画としての出来栄えは非常に厳しいと言わざるを得ない。キャラクターに感情移入できず、恐怖を感じる要素も少ないため、ホラー好きには物足りない作品だろう。

唯一の救いは、74分という短い上映時間のため、あまり時間を取られずに観られる点くらいだ。もしも都市伝説系ホラーに興味があるなら、一度観てもいいかもしれないが、過度な期待は禁物だ。