映画「美しい彼 eternal」公式サイト

映画「美しい彼 eternal」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は萩原利久が主演を務める恋愛ドラマの総決算ともいえる作品である。ドラマシリーズからの流れを踏まえ、大学卒業を控えた主人公たちが新たな局面を迎えるさまが描かれており、予想外の波乱も盛りだくさんだ。まさに一筋縄ではいかない青春ラブストーリーが、スクリーンの中でどのように花開くのか、最後まで目が離せない展開となっている。

しかも、物語のテンションが上がるにつれ、登場人物それぞれの想いが爆発し、思わず笑いがこぼれるシーンも少なくない。誰に感情移入するかによって見方が大きく変わる奥深さがあるので、初見の人はもちろん、ドラマ版をじっくり味わった人にとっても新鮮さを感じることだろう。ここからはストーリーの核心に触れていくので、まだ観賞していない人は要注意。ネタバレを気にしない方は、どうぞこの激辛レビューにお付き合いあれ。

さらに本作では魅力的な脇役も多数登場し、それぞれの視点から紡がれる恋模様が実に味わい深い。実際に鑑賞すると、その重厚感と甘さのバランスに驚かされるはずだ。心の奥底に突き刺さるような台詞の応酬がありながら、思わず吹き出すような場面も織り交ざっているのが見どころだ。

映画「美しい彼 eternal」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「美しい彼 eternal」の感想・レビュー(ネタバレあり)

本編では大学卒業を控えた平良一成と清居奏の姿が描かれる。ドラマ版でふたりが紆余曲折を経てようやく結ばれたのは記憶に新しいが、劇場版ではさらに周囲の人間関係や外部環境が複雑に絡み合い、ふたりの仲を大いに揺さぶる展開が待ち受けている。芸能界を目指す清居と、カメラマンのアシスタントを始めた平良との間に生まれる微妙な温度差は、まさに一触即発の危うさを孕んでいるように見える。とはいえ、ふたりはただ対立するわけではなく、互いを強烈に意識し合うがゆえのすれ違いを繰り返している点に胸が締めつけられる。

劇場版では舞台装置もさらにスケールアップしており、ふたりが新しい住処を探す過程で顕在化する社会のリアルさにも注目したい。物件の内見に行けば、条件の厳しさに直面し、同性同士で暮らすことのハードルを思い知るシーンには思わずため息が出る。清居は表向きはクールで涼しい顔をしているが、平良の一挙一動に心を乱されてしまう様子がじわじわとにじみ出ている。とくに風呂場の場面では、視聴者が「ついに来たか」と身構えるような大胆描写が飛び出し、劇場内もドキッとさせられたはずだ。

平良がカメラマンの野口のもとでアシスタントとして働き始めたことで、ふたりの時間が合わなくなっていく様子もまた生々しい。仕事に邁進しながらも清居を愛する気持ちは変わらない平良だが、芸能界で注目を浴びる清居を見ていると、自分の存在がどこか小さく感じられるのか、微妙に距離を置きたくなる瞬間があるらしい。そのくせ、平良の中には清居こそが唯一無二だという絶対的な想いが根付いているため、矛盾が爆発したときの感情表現にはかなりの迫力がある。いわば、ふたりの恋心は過保護なまでに純粋であり、それゆえに心をえぐられるような衝突が生まれるのだ。

そんなふたりを取り巻くキャラクターとして外せないのが安奈である。清居の共演者として登場し、その美貌と才能を武器に芸能界で活躍している。安奈自身もまた人には言えない秘密を抱えており、清居との距離感に微妙なズレが生じるところが見どころとなっている。表面的には華やかな世界で生きているように見えるが、実際には身勝手な事務所方針や世間からの関心の目にさらされ、彼女の内面にはどうしようもない不安が渦巻いている。安奈が無理に笑顔を作るシーンなどは、いかにも切なく、観る側の胸を締めつけてくる。

そしてもうひとり、平良が出会う設楽という人物の存在も重要だ。安奈に強い思い入れを抱くファンとして登場するが、彼の熱量はどこか常軌を逸している。はじめのうちは平良が同じファン仲間として興味を持つが、徐々に設楽の執着心がエスカレートし、やがては取り返しのつかない事態へと発展していく。まさか映画のストーリーがそこまで重苦しい領域に踏み込むとは思わなかったが、恋愛感情が歪んだときの恐ろしさを目の当たりにするには十分な演出である。

大学の卒業式が迫り、平良も清居もそれぞれの将来を見据えなければならない状況になったとき、ふたりの間には一層の緊張感が走る。どちらも相手の負担になりたくないと思うあまり、本音を隠して遠回りな行動を取ってしまうのだ。そんな両者の未熟さがときにコミカルでありながら、同時に切実でもある。視聴者としては「素直に言い合えばいいのに」と突っ込みたくなるが、それができないのが若さの痛々しさでもあり、物語をさらに面白くしている要因でもある。

劇中で特に印象的だったのは、平良がふと垣間見せる弱さと、それを受け止める清居の心境である。清居は常に堂々としているように見えて、実は平良の反応に振り回されている。自己肯定感が決して高くないふたりが、お互いを必要以上に崇拝したり、逆に落ち込ませたりしながら手探りで関係を維持していくのが微笑ましくもあり、危うくもある。特にクライマックスでは両者の想いが大きく衝突し、雨の中で叫ぶようなシーンも出てくるが、その演技力には目を見張るものがあった。

映像面でいえば、本作は決して豪華絢爛な演出ばかりではないが、随所に挿入されるライトと影のコントラストが美しかった。たとえば清居のクールなイメージを象徴するような青白い照明と、平良の素朴で温かい雰囲気を暗示する柔らかな色合いの照明が交互に使われているのが印象的だ。劇場版だからこそ、映画館の大きなスクリーンでそのビジュアルを堪能できるのは大きいメリットといえる。特にクライマックスでは、一瞬のきらめきが人の心を強く捉える演出が施されており、観終わったあとに余韻が残る。

演技面については、まず萩原利久演じる平良がすばらしい。もともとドラマ版での彼の繊細な演技に注目していたが、劇場版ではさらに感情の起伏が大きく表現されている。清居への愛が抑えきれなくなるときの目の表情や声のトーンの変化には、グッと引き込まれるものがある。一方で、清居役の八木勇征は、アイドルグループのメンバーという経歴を活かしつつ、繊細さとキレのある演技を両立させていた。冷静沈着に見せかけて、実は不器用な愛情を抱えているキャラクター像をうまく表現していると感じた。

周囲を固めるキャラクターたちも魅力的だ。とりわけ、平良の職場のボスにあたる野口の存在感は絶大である。一見すると気難しい芸術家タイプに見えるが、内心では平良を応援している節があり、そのちょっとした優しさに思わずほろりとさせられる。また、設楽のように感情が暴走してしまう人物を登場させることで、「愛」はときに狂気へと変わりうるのだと痛感させられる。これもまた本作が単なる恋愛ものにとどまらない深みを持つ理由のひとつだといえよう。

物語の終盤では、これまで積み上げてきた伏線が一気に回収されるが、その過程で平良と清居の関係は大きな変化を迎える。誰よりも“美しい存在”だとあがめる平良の心と、そんな平良を愛していながらも対等な立場を望む清居の苦悩が、激しく噛み合うシーンには圧倒される。ふたりの衝突は、一歩間違えれば破滅へと向かってしまう危うさをはらんでいるが、それでもあきらめられないほど強く惹かれ合っているところに、本作ならではのロマンが宿っていると感じた。

恋愛作品を観るとき、筆者としては「どれだけ本音のやり取りが描かれているか」が気になる。本作の場合、セリフそのものはシンプルなようでいて、互いの感情を推察させる行間が多い。だからこそ、俳優たちの演技力が重要になるのだが、彼らはその難しい課題をしっかりとクリアしている。ふとした仕草や目線の動きに込められた“言葉にできない想い”が丁寧に表現されていて、観客としては何度も胸をぐっとつかまれるはずだ。

また、劇場版だからこそのメリハリある脚本構成にも注目したい。ドラマ版で積み重ねたエピソードをベースにしながら、新規視聴者にも配慮したわかりやすい導入が挿入されているので、いきなり劇場版を観てもストーリーの大筋は追えるようになっている。そのうえで、ドラマ版を観ている人ほど感慨深いシーンやセリフが散りばめられており、「あのときの伏線はここに繋がっていたのか」とニヤリとする瞬間が絶妙なのである。

恋愛映画の定番要素として、すれ違いと成長は欠かせないが、本作はその要素を思う存分に盛り込んでいる。それも単純な誤解や遠慮などではなく、現実世界で起こりうる社会的な問題や個人のトラウマ、周囲の視線などが複雑に作用しているからこそ、より深刻な局面が生まれているのだろう。そして、これらの障害を乗り越えてこそ“永遠”が見えてくるのだと、観終わったあとに強く感じさせられた。

結末部分を大まかに語ると、平良と清居が最後に選んだ道は、ふたりにとって最良の形といえるだろう。もちろん、簡単にハッピーエンドとは言い切れない複雑さがあるが、そこには彼ら自身が大人になっていくプロセスがはっきりと刻み込まれている。愛情を捧げる側と捧げられる側という構図から、互いに一人の人間として尊重し合う姿勢へと移行していく物語の流れが実に心地よい。観客もまた、あの二人をそっと背中から押してあげたい気持ちになるのではないか。

本作は単なるボーイズラブの枠に収まらない多面的なテーマを備えている。自分の欲望や愛情、社会の壁との向き合い方、そして人との距離感の取り方など、多くの示唆を与えてくれるのがうれしいところだ。とはいえ、涙を誘うシリアスな場面だけでなく、クスッとさせられる緩い場面も散りばめられているため、最後まで飽きずに観られるのも魅力だと感じた。

特に、萩原利久が演じる平良の「清居を見つめる視線」には注目である。あそこまで堂々と相手を崇拝する想いを表現できるのは、役者としての度胸がなければ難しいはずだ。一方で、八木勇征の演じる清居も、自分に向けられる愛情に戸惑いつつも、いざというときには“キング”らしい絶対的な存在感を示してくれる。そのギャップが心を揺さぶるポイントになっていると感じる。

エンディングに至るまでの紆余曲折は、観客の感情を大いに揺さぶるが、最後には「このふたりだからこその愛の形」が見えてくる。まさに劇場版にふさわしいクライマックスの作り込みであり、映画を観終わったあとに席を立ち上がった瞬間、筆者の心にはなんともいえない充実感が広がっていた。人を好きになるということは、一筋縄ではいかないし、ときに痛みも伴う。しかし、それでも歩み寄ろうとする姿は尊く、見届けてよかったと思える作品である。

結局のところ、この映画の肝は「人はどこまで他者を受け入れられるのか」という普遍的な問いに対するひとつの答えを示している点だろう。平良と清居、そして周囲の人々が織り成す関係性をじっくり見つめることで、すれ違いや衝突の裏にある真の思いやりに気づかされる。そういった意味では、ただの甘いラブロマンスではなく、人間の本質に迫る群像劇としても楽しめるのではないかと思う。

以上のように、劇場版「美しい彼 eternal」は、愛と葛藤、そして成長が詰め込まれた魅力的な作品である。ドラマ版から観てきた人にとっては感慨深いし、劇場版から入る人にとっても新鮮な発見が待っている。何より、平良と清居の奇妙なまでに濃密な関係が“永遠”へと向かうプロセスは、一見の価値があるはずだと断言できる。もし感動と刺激を同時に味わいたいのであれば、ぜひ本作を大スクリーンで体験してみてほしい。

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映画「美しい彼 eternal」はこんな人にオススメ!

本作は、ただの恋愛映画を求めている人にも、より深い人間模様を味わいたい人にも刺さる内容である。たとえば、「好き」という気持ちが強すぎて、相手にどう接すればいいか分からなくなった経験がある人はもちろん、誰かを崇拝するがあまり自分を見失いかけたことがある人にも響くだろう。また、自分の意見や気持ちをうまく表現できず、結局まわりに流されてしまうタイプの人なら、平良や清居の苦悩に共感しやすいはずだ。

自分とは違う境遇の人がぶつかる社会的な壁を知りたいと考える人にもおすすめできる。登場人物たちが直面する住宅問題や芸能界の厳しさなどは、決して他人事ではなく、この現代社会で生きる上で多くの示唆を与えてくれる。一方で、時折挟まれる和やかな場面によって心の緊張がほぐされるので、極端に重苦しいだけの作品になっていない点も魅力だ。

ドラマ版を観ていた人には待望の“あの続き”がいよいよ完結を迎えるというわくわく感があるし、劇場版から入る人でもキャラの関係性が掴みやすいため、初挑戦としてもうってつけだと思う。感傷的になりすぎず、でも確実に胸をえぐられるような恋愛映画を求めている人には打ってつけの一本である。

もちろん、ボーイズラブ作品だからこその特有の空気感も存分に楽しめるため、繊細な心の動きに興味がある人にも合っている。恋愛要素だけでなく、成長や葛藤がしっかり描かれているので、青春群像劇が好きな人ならばドハマりすること請け合いだ。役者たちの瑞々しい演技によって、登場人物それぞれの悩みや喜びがリアルに伝わってくるため、いつの間にかスクリーンに自分を重ねているかもしれない。

さらに、視覚的な魅力を重んじる映画ファンにもおすすめしたい。照明やカメラワーク、色彩設計といった要素が重なり合い、“美しさ”を最大限に引き出している点も見逃せないからだ。二人の密かなやり取りや、周囲の人物との掛け合いに時折生まれる笑いが、観る者の心を軽くしてくれる。結局のところ、本作は多面的な楽しみ方を与えてくれる作品なので、恋愛映画が好きな人からヒューマンドラマを追いかけたい人、そして映像美に魅了されたい人まで幅広くオススメできるといえる。

まとめ

本作は、ただの恋物語に終わらない奥行きと刺激を兼ね備えた作品である。平良と清居の微妙な心のズレが、一方ではすれ違いを生み出し、他方では強烈な絆をも育んでいる点が見どころだ。大学卒業を目前に控え、将来の方向性を考えざるを得ないふたりが、数々の障害を乗り越えようともがく姿は、まさしく青春の宝石といえるだろう。そこに、安奈や設楽といった個性的なキャラクターたちが絡むことで、物語はより一層スリリングになっている。

観終わったあとには、二人の関係がどれだけ波乱含みであっても、その深い愛情が生み出すパワーに圧倒されるはずだ。結局、好きになる気持ちは理屈では計りきれないからこそ苦しく、だからこそ美しい。本作を通じて、恋愛の難しさと尊さを改めて味わえるのではないかと感じた。もしも今、誰かを好きになることに勇気を出せずにいるなら、この作品からほんの少しだけ背中を押してもらえるかもしれない。そして、ドラマ版からの流れを大切にしつつも独立した映画作品としてまとまっている点も評価に値する。笑いあり、涙ありのエピソードが次々と展開しながら、最後には「これぞ二人のかたち」という結末にたどり着くのだ。