映画「バジーノイズ」公式サイト

映画「バジーノイズ」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作はJO1の川西拓実が主演を務める青春音楽ドラマであり、バンドが生み出すエネルギーや人間関係の機微が詰め込まれた意欲作である。静かな部屋で爆発的な創作を行う主人公の姿や、才能ゆえに周囲から注目を浴びてしまう葛藤が映し出されるさまは、一見シンプルな構成に見えながらも多層的なメッセージを含んでいると感じた。さらに、川西拓実と桜田ひよりのコンビネーションも見応え十分で、観る側の心をくすぐる場面が連続する点が魅力だ。

監督の風間大樹による映像表現は、日常の何気ないワンシーンを切り取りながらも、音楽に向かう若者たちの熱量をあざやかに演出している。劇中に流れる曲も印象深く、バンド活動のリアリティがビンビン伝わってくる。笑えるところでは思わず声をもらし、切ない場面では胸がきゅっと締めつけられるような展開もあり、あっという間に物語へ引き込まれてしまった。

そうした多面的な魅力を帯びた作品だけに、登場人物たちがどんな道を選び、どのように決断していくのかが気になって仕方ない。いわゆる青春映画の定番要素を押さえつつも、音楽を愛するがゆえの苦悩や一瞬のきらめきがしっかり焼き付いており、観終わった後の満足感が非常に高い一本である。

映画「バジーノイズ」の個人的評価

評価:★★★★☆

映画「バジーノイズ」の感想・レビュー(ネタバレあり)

まず、この作品は音楽を題材としているにもかかわらず、単なるサクセスストーリーには終わっていない点が大きな特徴である。主人公・清澄はひとり黙々と曲を作り続けるタイプで、世間的には内向的と見られそうだが、実際は音と向き合う時間こそが何よりも楽しいという人物だ。彼のピュアな姿勢は観客の胸を打ち、だからこそバンド仲間が増えていく過程にエネルギーが宿っていると感じた。最初は「自分の音楽に他人が入り込むなんて想像もつかない」とでも言いたげな雰囲気だった清澄が、桜田ひより演じる潮らと出会うことで、意外な方向へ転がっていく展開がおもしろい。

この潮というキャラクターがまた刺激的で、何も考えていないようでいて、誰よりも行動力と勘の鋭さがある。行き過ぎとも思えるほど突拍子もない手段で清澄を世に知らしめようとするが、その結果、SNSやレコード会社の目にとまって大きな動きが生まれるのだから侮れない。端的に言えば“周りを振り回すタイプ”でありながら、彼女の熱量のおかげで清澄が音楽を外へ解放するきっかけを得ているところが要注目だ。現実では距離を置きたくなる存在かもしれないが、物語として見れば華があって、画面に登場するたびに次は何をしでかすのかとワクワクさせられる。

一方、陸や航太郎といったメンバーは、清澄の才能に惚れ込んでいく過程が繊細に描かれている。プロの世界ではしばしば嫉妬や葛藤が生まれそうだが、彼らはむしろ「すごい才能を前に、そこに加われるなら自分も楽しいはずだ」という前向きさで清澄を支える。その姿は非常に人間くさく、それぞれ仕事や人間関係の難しさと向き合う場面で妙なリアリティを見せる。たとえば陸は清澄ほど“孤高の天才”ではない分、バンドの中でいかに自分の居場所を確保するかを模索している。演奏面でアイデアを出したり、仲間として清澄を助けようとしたりするが、時にやりすぎて空回りする。そうした等身大の揺れ動きが、物語全体を地に足のついたものにしているように思う。

航太郎は少々おっちょこちょいな熱血気質で、バンドや音楽にかける想いが強いゆえに暴走しがちな一面を持つ。そこに陸のクールさが混ざり合うことで、グループのバランスが整っていくのが見ていて楽しい。通常、実写化作品では「原作のキャラクター像に合っているか」が話題になりがちだが、この映画に限って言えば“キャラクターを生き物として立ち上げる”という点に成功している印象だ。俳優たちが演じることで原作の絵とは違った肉付けがなされ、まるで画面から体温が伝わってくるような温かさを感じる。

さらに注目すべきは、楽曲のクオリティだ。劇中で清澄が作った曲の説得力がなければ、この作品は空回りしてしまう危険がある。しかしながら、実際にはプロデューサー陣がしっかり作り込んだ楽曲が響きわたり、「ああ、この音楽なら清澄が世界を変えてしまうのも納得だ」と思えるほどクオリティが高い。特にエンディングのライブシーンは圧巻で、スクリーンからあふれ出るサウンドに心が震えた。川西拓実による生々しい歌声には、さほど加工されていないリアリティがあり、ライブハウスで演奏を聴いているような没入感を味わえたのが大きなポイントだ。

物語の展開としては、清澄が一躍注目を浴びることで音楽業界のビジネス的な側面が色濃くなるのも見どころだ。もし才能を商業的に扱われることが嫌なら、最初から表に出なければいい…という極論もあるが、実際には簡単には割り切れない。清澄は「音楽は純粋に好きだけれど、外の世界には興味がない」タイプだが、そこに会社との契約やCDリリースといった現実が降りかかり、周囲の期待に自分が引きずられていく苦しさが描かれている。その揺れ動きこそが主人公の大きな試練となり、作品の軸となっているわけだ。

潮もまた、新しい環境に飛び込む清澄を見守りながら、その陰に取り残されていくような切なさを感じている。積極的に清澄を推し上げたのは自分だという自負があるにもかかわらず、ある瞬間から「彼にとって自分は不要なのではないか」と思い込み、ひとり背を向ける場面には心が痛む。しかし、それがきっかけで清澄は改めて自分の音楽の本質と向き合うことになるため、結果的に潮の存在はこの物語に欠かせない原動力だとわかる。

舞台設定が原作と一部異なる点も議論の種になりそうだが、個人的には横浜の街並みが作品の雰囲気をオシャレに彩っていたと感じた。神戸を期待していた原作ファンには賛否あるかもしれないが、海辺の景色や倉庫街の風景が持つ独特の寂しさとロマンが、本作の空気感とうまくマッチしていると思う。ロケーションが変わることで登場人物たちの背景に若干の差異は生まれるものの、肝心のドラマ性や熱量はきっちり保たれているため、大きな違和感はなかった。

そして何より、川西拓実の演技が清澄というキャラクターそのものになっているのがすごい。普段、人見知りなイメージがあるだけに、作品内での初々しい表情や“人と向き合うのが苦手”という役柄がぴたりとハマっている。ピアノやDTMに挑戦したという撮影裏話も聞こえてくるが、その努力が映像のリアルさにつながっていると感じた。彼がJO1として活動している姿とはまた違った魅力が垣間見えるため、ファンにとっても新鮮な驚きがあるだろう。

本作は音楽を描くと同時に「人と人とが繋がる難しさ」と「誰かを想う気持ちの尊さ」を問うているように思う。自分一人で完結していた世界が、他者と出会うことで予想もつかない形に変化する。そこには迷いや失敗もあるが、同時にかけがえのない喜びや発見もあって、それが清澄と潮や仲間たちの成長を支えているのだと感じた。だからこそ、終盤にはいろいろな感情がないまぜになり、観客の心を揺さぶる。エンドロールが流れ終わっても余韻に浸り続けられるのは、この映画ならではの力だと思う。

最終的に清澄はバンドとしての新たな一歩を踏み出し、潮は一歩引いた形で彼らの音楽を応援するポジションに落ち着く。それは「才能を輝かせたい人」と「才能を守りたい人」の共存を表しているようで、単なるハッピーエンドというよりは「これから先も苦難や喜びが交互に訪れるんだろうな」という現実的な感覚を残した終わり方だった。だからこそ、本編を観終わったときの余韻は深く、もう一度劇場に足を運びたくなる魅力がある作品に仕上がっていると思う。

バンドメンバーが集い、音楽が人を変え、人間同士の距離感が微妙に変化する。その一連の過程をじっくりと描きながらも、ところどころ笑わせてくれる演出やテンポの良い掛け合いがあるため、気負わずに観ることができるのも良い。ふとした瞬間に「このセリフ、もしかしてアドリブ?」と感じる場面があって、役者同士の化学反応をうまく活かしているのではないかと思った。何気ない会話の中にこそ登場人物たちの本質がにじみ出るので、そうした細部の描写も見逃せない。

トータルで見れば、音楽映画としてのエモーショナルさと青春映画の熱量を兼ね備えた作品だといえる。ある人にとっては青春が走馬灯のように蘇るかもしれないし、ある人にとっては「これからの自分を後押ししてくれそうだ」と感じるかもしれない。少なくとも観終わったあとに「ああ、音楽って最高だな」と思わせてくれる力があることは間違いない。

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映画「バジーノイズ」はこんな人にオススメ!

まず、音楽が好きな人はもちろん楽しめるはずだ。バンド演奏や楽曲制作の裏側が丁寧に描かれていて、スタジオでのやり取りなどに共感できる部分が多いだろう。次に、やりたいことはあるけれど周囲に合わせるうちに見失いがちな人にも響く内容だと思う。清澄のように突き抜けた才能がなくても、何かを好きでい続けることには価値があると気づかせてくれるからだ。加えて、JO1のファンや川西拓実のファンならば、彼の新たな魅力を発見できる絶好のチャンスでもある。普段のパフォーマンスとは違う演技の表情や役柄としての存在感に注目すれば、バンド活動を通じて成長していく若者の姿をリアルに体感できるはずだ。

また、爽快感だけでなく、物語に漂う切なさや人間同士のすれ違いが好きな人にもうってつけだと思う。特に、仲間とぶつかり合いながらも、結局は音楽が好きだから一緒に走っていくという展開は、胸が熱くなること間違いなし。音楽映画や青春群像劇が好きな方、そしてちょっとクスッとするような掛け合いに弱い方にもおすすめできる一本だといえる。

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まとめ

映画「バジーノイズ」は、音楽をテーマとしながら人間関係の葛藤や創作の喜びを丁寧に描いた青春劇である。

外の世界に興味を持たなかった主人公が、一人の少女と出会うことで自らの才能を解放していく展開は、そのまま観る側への勇気となるはずだ。原作では神戸が舞台だったところを横浜に変更するなど、実写化ならではのアレンジも興味深いが、作品全体のメッセージや熱量は損なわれていない。何より、川西拓実の演技と音楽に対するストイックな姿勢がスクリーンを鮮やかに彩っているのが印象的だ。

誰かとぶつかっても、音楽に救われる。突拍子もない行動に見えても、そこに秘められた想いを感じる。そんな不器用な登場人物たちのやり取りを眺めているうちに、いつの間にか「自分ももう少し好きなことを追いかけてみようかな」と前向きになる。観た後の余韻が大きく、もう一度劇場に足を運びたくなる作品だと思う。

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