映画「赤羽骨子のボディガード」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
ラウールが主演を務める本作は、突拍子もない設定とアクションが融合した刺激的な作品である。最初は「なにやら派手なアクションと学園モノを混ぜこぜにしたお祭り騒ぎか?」という印象を抱いたが、見始めると予想を裏切るように人間ドラマの要素も詰め込まれていた。特に、家族の因縁や仲間との絆を軸に描かれる展開には、想像以上に引き込まれるところが多い。もっと単純な熱血アクションかと思いきや、青春群像劇や恋模様まで巧みに組み込まれているのが興味深いところだ。
しかも、威吹荒邦を演じるラウールのキレのある身のこなしは、漫画のキャラクターから飛び出してきたかのような説得力を持っている。軽快な掛け合いや意外な伏線も多く、終わってみれば意外と見応えがあったというのが率直な感想である。ここからは容赦なく核心部分に踏み込んで語っていくので、未見の人は注意されたし。
映画「赤羽骨子のボディガード」の個人的評価
評価:★★★☆☆
映画「赤羽骨子のボディガード」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作はラウール演じる威吹荒邦が、懸賞金100億円をかけられた少女・赤羽骨子を守り抜く物語だ。あまりに荒唐無稽な設定ではあるが、そこを逆手に取って「学園×バトル×陰謀」を徹底的に盛り上げているのが特徴的である。冒頭から爆発的なアクションシーンが始まり、「いったい何がどうしてこうなった?」と観客を置いていく勢いがあるが、それも含めて突き抜けているところが魅力のひとつだろう。
まず言及せねばならないのは、主人公・荒邦とヒロイン・骨子の関係性である。幼馴染ゆえの気安さを感じさせながらも、実際には父親同士の複雑な事情が絡む運命共同体のような立場だ。骨子の父親は国家安全保障庁の高官という設定だが、ここが原作では極道の跡目争いになっていたという話を聞くと、どうしても違和感を抱く人がいるかもしれない。反社会的な要素を削ぎ落とすために変更したのだろうが、その影響で「どうして骨子がそこまで命を狙われるのか」がやや弱くなった節は否めない。とはいえ、映画の狙いは細かい整合性より「派手なバトルや青春劇を楽しませる」点にあるようなので、そこは勢いで突っ走ってしまえ、という割り切りを感じる。
しかし、勢いだけに任せているかというと、意外にもストーリーの要所要所に抑えるべきドラマがある。たとえば骨子を守るクラスメイトたち“3年4組”の存在だ。なんと全員が幼少期から訓練を受けた秘密のボディガード集団という設定で、常識から大きく外れているが、そのチーム感がアニメ的で実に痛快である。1人ひとりが得意分野を持ち、リーダー格の澄彦(奥平大兼)が頭脳を駆使して指揮を執る構図は、まるで一昔前の少年漫画を観ているような熱量を帯びている。オープニングで順番に必殺技を見せながら自己紹介するシーンは、テンションを一気に上げてくれる仕掛けだ。
この“3年4組”の描写で注目なのは、キャラクターそれぞれが割と印象に残る見せ場を持っている点である。本来なら映画の尺的に、20名以上もいるクラスメイトを全部描き分けるのは至難の業だ。ところが本作は、個々の見せ方を短いカットに凝縮しつつ、クラスとしてのチーム感を大切にし、一枚岩のような連帯感を浮かび上がらせることに成功している。一瞬だけ画面に映るメンバーでも「何かやってくれそうだ」という雰囲気があり、体育会系や情報戦担当、メカ操作が得意な者などバラエティ豊かなキャラクターがちらりと顔を見せる。それが後半まで続くので、飽きが来ない。
ラウールが扮する荒邦は、ヤンキー風の喧嘩慣れした立ち回りをベースにしながらも、ヒロインへの好意を隠しきれない不器用さを見せる。そのギャップが非常に魅力的で、単なる男気一本槍ではない柔らかさを作品に与えている。ラウールは長身という強烈な武器を持っているが、それをさらりと活かしつつ、眉の動きひとつで感情を表現するところが漫画的だ。「骨子を守るためなら命を張る」という熱血根性を、過剰にクサくならない絶妙な具合で演じていたのも好印象である。
対する骨子を演じる出口夏希は、まさに純真さと芯の強さをあわせ持ったヒロイン像を体現していた。撃たれてもめげないしぶとさの一方で、危機的状況に陥っている自分の立場をあまり深刻に考えていないような無防備さもある。だからこそ荒邦やクラスメイトたちは「守ってやらねば」と本気になるのだろう。このヒロインが無条件に愛される存在であることが伝わってくるからこそ、彼女が巻き込まれる騒動に説得力が生まれている。
また、物語を面白くしているのが正親(土屋太鳳)の存在だ。骨子の姉でありながら、父親から幼少期に苛烈なトレーニングを強いられた人物として描かれる。姉妹でありながら異なる道を歩まされた背景を知ると、一見悪役風に映る正親の行動にも悲しみや寂しさが見えてくる。土屋太鳳は身体能力の高さから激しいアクションを難なくこなし、さらにコミカルな場面でも妙な説得力を発揮しているのがすごいところだ。劇中では不器用な恋の空気が漂うシーンもあり、抑揚のあるキャラクターを成立させていた。
そして荒邦の良きライバルであり、クラスの司令塔でもある澄彦を演じた奥平大兼の存在感も大きい。最初は頼れる頭脳派かと思いきや、物語中盤で裏切りのような動きを見せるため、観客の心を一気に揺さぶる。だが後半になると、その行動には別の意図があったことが明らかになり、またしても驚かされる展開だ。荒邦と澄彦が最後に共闘してラスボスを倒すカタルシスは、王道でありながら何度見ても燃えるものがある。さらに、2人の呼吸感やアイコンタクトからは「かつて深い友情でつながっていたんだな」と感じさせる熱さが伝わり、盛り上がりに拍車をかける。
一方で「激辛」の視点を加えるならば、やはり脚本面でのバランス不足は気になる。誰がどこで何を狙っているのかという舞台設定が後手後手になりがちで、途中で「今どこが核心の対立軸なのか」が曖昧に感じる場面がある。特に正親と父親の確執や、骨子が狙われる理由の詳細は「とりあえず危険だし追われる」という状況に大きく振り切ったことで、リアリティより勢いを優先した印象だ。原作では極道絡みだった設定を無理やり公的機関に置き換えた弊害かもしれない。もう少し細かい解説や伏線があれば、作品世界に深く入り込めただろう。
それでも、多数のキャラクターやバトル展開を120分程度に詰め込みながら、しっちゃかめっちゃかに破綻する一歩手前でまとめ上げている手腕は評価に値する。あらゆる人物が同じ熱量で動き回るため、観客としては次から次へとイベントが起きて退屈する暇がない。まるで“春映画”のような「知っているキャラ総出演・お祭り感」を満喫するには最適な設計なのだ。ここで作品に強い思い入れがある人ほど「原作と違う」「あのキャラはそうじゃない!」と不満を抱くかもしれないが、割り切って眺めればこれはこれで楽しい娯楽作に仕上がっている。
ラストシーンは、骨子を守り抜いた荒邦とクラスメイトたちが一斉に笑顔を交わすところで締めくくられる。そもそも「ボディガードがクラスメイト全員」「しかも強敵たちが次々現れる」という設定からして現実離れしているので、結論としては何でもアリのエンタメ路線に振り切ったのが正解だったのだろう。荒邦の真っすぐな想いと、それを支える3年4組の友情は見ていて爽快だし、どんな超人技が出ても許せてしまう空気がそこにはある。まるで文化祭か体育祭を見ているような高揚感があり、細かいことを考えず盛り上がりたい人には打ってつけだ。
本作にはツッコミどころや強引さも多々あるものの、その分だけ派手さと魅力的なキャラクターが詰まっている。ラウールの個性的な存在感、土屋太鳳の振り切った演技、奥平大兼のクールな表情、そして多彩なクラスメイトたちが乱舞する姿を見るだけでも十分に楽しめる作品だ。ストーリー重視というより「祭り映画」としての勢いを楽しむのが吉だろう。観た後には賛否はあれど「なんだかんだで最後まで駆け抜けてしまった」という妙な爽快感に包まれる。まさに、観客をも3年4組の仲間にしてしまうような団結力を感じる作品である。
映画「赤羽骨子のボディガード」はこんな人にオススメ!
本作は、とにかく勢い重視の熱量あふれる学園アクションが見たい人にうってつけである。脚本の綿密さよりも、キャラクターが次々登場して多方向にバトルを繰り広げていく展開を楽しむタイプにはピッタリだ。さらに、主人公とヒロインが幼馴染という甘酸っぱい関係性もあり、アクションだけではなく青春ドラマ的なときめき要素も盛り込まれている。
また、大勢の仲間たちが一丸となって困難に立ち向かう王道パターンが好きな人なら、そのチーム感に胸が熱くなるだろう。画面いっぱいに散りばめられた「クラスメイト総出」の騒がしさは、子どもの頃に憧れた“みんなで力を合わせて事件を解決する”快感を呼び起こしてくれる。
登場人物がそれぞれ専門スキルを生かして活躍するので、ヒーローものやアニメのオールスター感にテンションが上がる人には相性がいいかもしれない。深刻なテーマより“こんな無茶苦茶な展開、むしろおもしろい”と笑い飛ばせる人には楽しさ倍増だろう。逆に、設定やストーリーのつじつまを厳密に検証しがちな人にはモヤモヤが残る可能性もあるが、そこを飲み込めるかどうかで評価が分かれそうだ。
とにかくラウールの躍動感あるパフォーマンスを堪能したい人、そして学園祭や運動会のノリでワイワイ盛り上がりたい気分の人にこそおすすめしたい一本である。
まとめ
本作は、ハチャメチャな設定と登場人物の多さを武器に、最初から最後までアクセル全開で突き進む学園アクションエンターテインメントだ。荒唐無稽な場面展開がてんこ盛りだが、その分だけ予測できないお祭り感を満喫できる。むしろ真面目に筋道を追うより「これはお祭りなんだ」と割り切って楽しんだほうが得だろう。
主人公・荒邦の直球勝負ぶりや、骨子の天真爛漫さ、正親の過激なバックボーンなど、各キャラの個性がぶつかり合う様子はなかなか痛快である。破綻しそうになりながらも、何とか一つにまとまっていくストーリーの強引さを含めて、“勢いで押し切るエネルギー”が魅力だと言える。
観終わったとき、人によってはあちこちツッコミたくなる部分が山のように出てくるかもしれないが、それすらも含めてワイワイ語り合える面白さがある。一風変わった学園ヒーロー大合戦を求めるなら、ぜひ手に取ってみてほしい。