映画「君の名は。」公式サイト

映画「君の名は。」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

新海誠監督の作品はどれも美麗な映像で有名だが、本作ではその魅力がさらに加速していると感じる。とはいえ、ただ「映像がキレイ!」で終わるのではなく、時空を超えたドラマや一筋縄ではいかない男女の入れ替わりネタなど、風変わりなストーリーがテンコ盛りだ。公開当時に社会現象クラスの大ヒットとなったのも納得できる仕上がりである。

とはいえ、あまりに絶賛されると素直に乗っかりづらい天邪鬼な人もいるかもしれない。そんな諸兄には、あえての激辛視点であれこれツッコミを入れつつ、映画「君の名は。」の良いところも悪いところも丸裸にしてみようと思う。はたして、時間差ラブストーリーの行く末やいかに? そして入れ替わり生活の実態はどこまでリアリティがあるのか? ネタバレ満載でお届けするので、未見の方は要注意である。

映画「君の名は。」の個人的評価

評価: ★★★☆☆

映画「君の名は。」の感想・レビュー(ネタバレあり)

ここからはネタバレを気にせずに、筆の赴くまま率直に感想を述べていく。まず最初に、本作を観ていて強烈に印象に残ったのは、やはり映像美である。例えば糸守町の描写は、まるで画面の向こうに実在しているかのようなリアリティとファンタジー感を両立しており、「こんな田舎町なら住んでみたい」と思わせる不思議な説得力を持っている。新海監督特有の光や空気の表現が素晴らしく、夕暮れや夜明けの色合いには毎度感心してしまう。加えて、「何でこんなにキレイなんだ、こりゃCGじゃなくて写真でも撮ったのか?」と勘違いするぐらい、風景の完成度が高いシーンが多々見受けられる。とにかく、視覚的満足感は文句なしといえよう。

一方、ストーリー面では入れ替わりネタを中心にしつつ、巨大隕石の落下という一大スペクタクルが絡んでくるあたりが、本作ならではの異色感だ。普通の高校生男女がある日突然互いの体に入れ替わり、最初は戸惑いながらもノートやスマホでメッセージを残し合うことで日常を何とか回していく。そこまでは「ちょっと不思議な青春もの」ぐらいの軽いノリなのだが、物語が後半に向かうにつれて、舞台となる糸守町がすでに3年前に消滅していたという衝撃事実が明かされる。この時点で観客は「えっ、どういうこと?」と困惑しながらも、瀧が必死に三葉を助けようとするタイムリープ展開に引き込まれていくことになる。

この急展開は確かに「ご都合主義」と言われても仕方がない部分もある。いきなりタイムスリップみたいな要素が入り混じり、隕石がどうのこうのとSFチックな設定が前面に出てきたため、「そりゃちょっと詰め込みすぎじゃないの?」という声があっても不思議ではない。筆者個人としては、「よくぞそこまで詰め込んだな」と逆に感心してしまった。大衆向け映画としては、これくらいのエンタメ感があってもいいではないか、と考えている。むしろ入れ替わりだけの青春ラブストーリーで終わっていたら、ここまでの社会現象にはならなかったかもしれない。

また、RADWIMPSの音楽との融合も見逃せない。前前前世をはじめとして、劇中歌やエンディング曲が物語を盛り上げる役割をしっかり担っている。筆者は普段そこまでRADWIMPSを聴いているわけではないが、この映画とあの歌が組み合わさることで、感傷的な青春感がさらに増幅しているように感じた。また、音楽の使い方も印象的で、いわゆるミュージックビデオ的にババンと曲が流れるシーンはとても耳に残る。あの時代の高校生がこれを映画館で観たら、そりゃサントラも買うし、歌も口ずさむだろうと思わせる説得力がある。

ただし、筆者の辛口ポイントを挙げるなら、ややキャラクターの掘り下げ不足や急ぎ足の展開が気になった。「東京の男子高校生」と「田舎の女子高校生」というだけでも、もっと文化差や日常の違いをネタにできたはずなのに、そこがあっさり流されてしまっている印象を受けた。入れ替わり生活のコミカルなシーンはそこそこ面白いが、もう少し長めに見せ場を作ってくれれば、キャラ同士の絆や個性に深みが増したのではないかと思う。また、クライマックスあたりでやたら劇的なアクションや超常現象に寄せすぎて、途中までのほのぼのムードとの落差が大きい。個人的には「そこまで盛り上げなくても十分感動できたのでは?」と感じる部分があった。

それでも、映画「君の名は。」が多くの人の心を掴んだ理由はわかる気がする。時間や距離の壁を越えて結ばれようとする二人の姿はロマンチックだし、都会と田舎の対比や伝統行事の要素など、日本的なノスタルジーが詰まっている。さらに、災害の影がストーリーの背景にあることで、作品に一種の切なさや儚さが漂うのも事実だ。現実世界においても大きな自然災害を経験した日本だからこそ、多くの人が深く共感し、胸を打たれたのではないだろうか。

以上を踏まえると、映画「君の名は。」のレビューとしては、「驚きと感動に包まれるが、やや強引な設定には目をつぶるべし」と言いたい。絶賛派と否定派どちらの意見も理解できるが、社会現象にまでなったという点で、一度は観ておいて損はない作品であることは間違いない。もし本作にツッコミを入れながら鑑賞できる余裕があるなら、それはそれで面白い体験になるだろう。「君の名は。 感想」を語るうえで、どうしても“流行りすぎた作品”ゆえの偏見がつきまといがちではあるが、先入観を外して素直に観れば、きっと映像美と青春のきらめきを堪能できるはずだ。筆者は★3つと辛めに評価したが、映像の美しさでは間違いなく★5に近い。ストーリーの整合性や急展開が気にならなければ、より高評価をつける人も多いだろう。

結論としては、エモさとSF要素と若者向けミュージックビデオ的演出が奇跡的にマッチし、観終わったあとには「あれ、なんか切ないけど元気も出る」という謎の多幸感を得られる映画である。欠点も含めて「君の名は。」という作品は、一度観ると忘れられないインパクトを与えることだけは確かだ。

映画「君の名は。」はこんな人にオススメ!

まず、ひとつめは「映像美至上主義」の映画ファンだ。とにかく美しい景色や幻想的な光の描写が大好物という人ならば、本作はそれだけでも充分価値がある。次に、タイムリープや入れ替わりネタに興味があるSF寄りの観客にもオススメだ。時空を超えて人を救うという王道のロマンが詰まっており、アニメっぽい突拍子もない展開が好きな人にはたまらないはずである。さらに、青春ものが好きな人にとっても、田舎の女子高生と都会の男子高生が互いの生活を体験するというシチュエーションは魅力的だろう。無垢なときめきやコミカルな戸惑いが描かれており、初々しい青春の甘酸っぱさを疑似体験できる。

また、「今さら有名作品を未見とは言いづらい…」と気後れしている人にもぜひオススメしたい。世の中でこれだけ話題になった映画だからこそ、むしろ今になって初見の反応を周囲とシェアするのも一興である。ネタバレを踏まずにここまで過ごしてきたのなら、そのレア体験を堂々と楽しむべきだ。あとは、「日常をちょっと飛び越えたファンタジーを求めているが、あまりにハードなSFは苦手」という人にも向いていると思う。大規模な世界崩壊が起きるわけでもなく、あくまで町単位・人間関係単位でドラマが展開するので、気軽に観やすい点が魅力といえよう。観終わったあとに、「ああ、こういう奇跡っていいな」とホロリとする作品を探しているならば、「君の名は。」はうってつけの一本だ。

まとめ

本記事では社会現象にもなった本作の魅力や欠点をざっくりと掘り下げてみた。結論を言うと、入れ替わりとタイムリープをガッツリ混ぜ込んだ青春ファンタジーであり、鑑賞後には映像の美しさも相まって独特の余韻を味わえる。しかし一方で、急な展開やご都合主義的な要素にツッコミどころが多いのも事実である。だからこそ、観る人の好みによって評価が大きく分かれる作品かもしれない。

とはいえ、RADWIMPSの楽曲との相性の良さや、田舎と都会のギャップを活かしたコミカルな描写など、多角的に楽しめる要素が揃っているのも事実だ。ちょっと遠巻きに敬遠していた人でも、一度観てみると意外とハマる可能性がある。興行収入の数字だけでなく、人々の心をとらえ、聖地巡礼ブームまで巻き起こしたそのインパクトは伊達ではない。もしまだ観ていない人がいるなら、ぜひ自分の目と耳で体験してみてほしい。