映画「六人の嘘つきな大学生」公式サイト

映画「六人の嘘つきな大学生」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

就職活動が佳境を迎えるある企業の最終選考に残った六人の大学生たちが、突如として疑心暗鬼に陥る展開が衝撃的な作品である。主人公・嶌衣織を演じる浜辺美波をはじめ、赤楚衛二や佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠といった注目株が集結し、密室で繰り広げられる攻防戦に息つく暇がない。穏やかに協力し合う就活生たちの物語かと思いきや、ある日届いた告発状によって互いの秘密が次々に暴かれ、雰囲気が一変する。ここから、人間関係の崩壊と同時に浮かび上がる“裏の顔”がじわじわと明らかになっていくのだ。エリートを目指す若者たちが追い詰められる姿は、リアルかつ痛烈な印象を残す。就職活動という舞台だからこそ、多くの人にとってどこか身近で、かつ恐ろしいドラマを感じられるのではないだろうか。

今回は、この映画ならではの魅力や大胆な仕掛けを存分に語っていく。とりわけ、浜辺美波の繊細な演技や、若手俳優同士が火花を散らす緊迫感など、見どころは尽きない。スリリングな世界に引き込まれること必至である。

映画「六人の嘘つきな大学生」の個人的評価

評価:★★★☆☆

映画「六人の嘘つきな大学生」の感想・レビュー(ネタバレあり)

まず最初に、この作品の肝となるのは“仲間だったはずの六人が、一転してライバルになる”という構図である。就職活動の最終局面において、協力して内定を勝ち取ろうと努力していたはずなのに、突然「内定者は一人だけ」と告げられる。そのうえ、全員の過去を告発するかのような手紙が投げ込まれ、それぞれが抱える秘密が次々と明かされていくのだ。この流れで、一気に六人の結束が崩壊していく様子がなんとも生々しい。表面上の明るい笑顔とは裏腹に、内定獲得のための焦りや、自分だけは落ちたくないという本音が表に出始め、見る者の神経を逆撫でするような展開になる。

本編では、嶌衣織(浜辺美波)を中心に、矢代(山下美月)、波多野(赤楚衛二)、九賀(佐野勇斗)、袴田(西垣匠)、森久保(倉悠貴)の六人が最終選考に臨む。六人は最初こそ和気あいあいとした雰囲気を醸し出し、まるで「全員で受かろう!」と団結しているかのように見える。だが、いざ“誰か一人だけが内定”となれば、当然のように競争が激化する。さらに、彼らの部屋に謎の封筒が置かれており、その中身を開けた瞬間から関係性は一変する。誰が書いたのかもわからない告発文には、いじめや裏口入学、過去の不祥事、あるいは人間関係のトラブルなど、思わず他人には知られたくないような経歴が克明に書かれているのだ。告発された者は当然パニックに陥るし、告発されていない者たちは“これを利用してやろう”と考える者もいれば、根が真面目すぎて内部告発そのものに嫌悪感を抱く者もいる。ここで一気にバラバラになっていく六人の心理戦が、実に息苦しく、しかしどこか魅力的でもある。

本作の魅力をさらに語るならば、それぞれの役柄を演じる俳優陣の熱量も無視できない。主人公を演じる浜辺美波は、周囲に合わせようとしながらもどこか達観した雰囲気を持ち、緊迫の場面における目線や細やかな表情が絶妙である。一方で、波多野役の赤楚衛二は“熱血かつ誠実”な空気をまとっており、仲間をかばう姿勢が妙に胸を打つ。だが、その“善人”らしさが逆にあやしく見えてくるのだから不思議だ。九賀役の佐野勇斗は、どこか冷静なポーカーフェイスでありながら、一瞬のうちに感情を爆発させる場面があり、その振り幅に引き込まれる。山下美月の演じる矢代は、一見すると柔らかい空気感をまといつつ、相手を見透かすような鋭い発言を繰り出すため、「彼女は敵か味方か?」と観ていて心をざわつかせる。袴田役の西垣匠も、イケメンらしい爽やかさの裏に秘めた攻撃性が際立ち、物語を一気に混沌へと導く存在だ。さらに森久保役の倉悠貴は、なよなよしているように見えて芯が強く、一度思い込んだら引かない頑固さが面白い。こうした個性豊かな人物像が激突するからこそ、誰が敵で誰が味方なのか、最後まで確信が持てない状態が続く。

また、この映画の展開が秀逸なのは、告発文によって一人ひとりの暗部が暴かれるたびに「じゃあ犯人はこの人だろう」と思わせておいて、次の瞬間には違う視点で物語が進んでいく点だ。まるで観客を弄ぶかのように疑惑の矛先がころころ変わるため、集中力を切らしていると置いていかれる恐れがある。実際に筆者も、途中で「あの人物に違いない」と思い込んでいたら、見事に裏をかかれてしまった。まさに、ミステリー映画としての醍醐味を存分に味わえる仕掛けが詰まっているといえよう。

ストーリー終盤では、告発文をめぐる謎が一気に解き明かされる。これによって、今まで悪者扱いされていた人物の実像や、逆に善人に見えた人物の真意がくっきりと浮かび上がるわけだ。とりわけ、波多野と嶌のやりとりには胸を締めつけられるものがある。正しさを信じて奔走しているかと思いきや、実際は自分自身を守るための行動だったのではないか…といった葛藤が見えるのは、人間味にあふれていて興味深い。さらに、全員で足の引っ張り合いをしていたと思いきや、実は“表に見えない事情”を抱えていただけという真実が判明するくだりが最大の見どころだ。人間というのは、どうしても表面的なイメージや思い込みで相手を判断しがちだが、実際には言えない事情を持っていることも多い。そんな“見えない部分”を描き出すことで、この映画は単なる就活ミステリーに留まらず、人間ドラマとしての奥行きを生み出していると感じる。

本作を通して感じるのは、“言葉の力”の恐ろしさだ。告発文のように、わずか数行で人の印象をひっくり返してしまう場合もあるし、“正義感あふれる言葉”がかえって周囲を追い詰めてしまうこともある。就活生という立場に限らず、日常生活でも似たような心理的な衝突は起こり得るはずだ。だからこそ、観終わったあと、単純に犯人捜しだけでなく「自分自身も同じような状況に置かれたらどうするか?」と考え込んでしまうのである。この問いかけが心に刺さるあたりが、本作の真骨頂だと思う。

ところで、タイトルにある“六人”という人数も秀逸だ。物語を観始めると「この人数で全員が最終まで共に行けるわけないだろう」と少し冷めた目で見ていたが、逆に全員が物語に深く関わり、誰一人として“ただいるだけ”のキャラクターがいない。六人それぞれがバラバラに動き出し、思惑が交錯するため、ときに密室劇なのにスケールの大きさを感じさせる。監督の佐藤祐市によるテンポの良い演出もあり、会話劇が続いているはずなのに全く飽きがこないのが凄いところである。さらに、撮影や照明の工夫によって、同じ部屋が場面ごとに全く違う雰囲気を醸し出すのも見逃せない。物語が進むにつれ、陰謀と不信感が増していくのに合わせて、空気がどんどん重く感じられる演出効果が絶妙なのだ。

誰もが“善い面”と“悪い面”を併せ持っているということ。就活や社会人生活において、外側だけ取り繕っていても、いつか真の姿が露わになる可能性はある。そう考えると、本作は就職活動という題材を借りたサスペンスでありながら、“お互いをどう評価するか”の危うさを突きつけているともいえる。特に、高い志を持っているように見える人物が、実は身勝手だったり、逆に軽率に見えた人物が苦しんでいたり。こうした二面性を描いたことで、単なる犯人探しの枠を超えた深みが生まれたのではないかと思う。

結末において、事件の真相が明らかになると同時に、登場人物たちがそれぞれに進む道が描かれる。誰が内定を勝ち取るのか、そして残された者はどのような思いを胸に未来へ向かうのか。それを見届けたとき、単なるスリルだけでなく、どこか清々しい読後感…いや、鑑賞後感とでも呼べるような感慨が湧いた。この映画を観終えたあとに残るのは、「ああ、人間ってやっぱり複雑で興味深い」というひと言に尽きる。その複雑さこそが本作の真価であり、一度観ただけでは気づけない伏線や表情の微妙な変化が多数散りばめられているのもポイントだ。だからこそ、リピート鑑賞の価値があるだろう。就職活動や人間関係のもつれをリアルに体感したい人にも、見応えのあるミステリーを求める人にも、心に残る作品だと断言できる。

こちらの記事もいかがですか?

浜辺美波さんの出演映画はこちら

映画「六人の嘘つきな大学生」はこんな人にオススメ!

就活を経験した者ならば、一度は「こんな選考があったら怖すぎる」と震えるだろうし、逆にまだ就活を経験していない若者にとっては「社会に出る前に観てよかった」と思うかもしれない。そもそも、仲間と協力して目標を達成するはずだった計画が、突然ひっくり返ってしまう展開は、学園ドラマや青春群像劇が好きな人にも刺さる要素だ。仲の良いグループが些細なきっかけでバラバラになり、お互いを疑心暗鬼で見るようになる様子は、ある意味ホラーよりも怖いかもしれない。

また、心理戦を堪能したい人にもぴったりだ。わずかな手がかりをもとに「あの人が怪しい」「いや、この人こそ犯人だ」と目まぐるしく疑いが移り変わるため、頭をフル回転させる楽しみがある。まるで密室で行われるマーダーミステリーゲームのような感覚に近いが、そこに就活という社会的リアリティが加わり、どこか背筋を寒くする説得力があるのだ。それぞれのキャラクターが抱える事情もリアルで、「自分の友人にもこういう人がいるかも」「自分自身にも覚えがあるかも」と思う瞬間があるだろう。さらに、出演陣の体当たりの演技を楽しめる点も魅力だ。若手俳優が勢揃いし、それぞれのカラーがかち合いながらも絶妙に絡み合っているため、「誰を推せばいいんだ!」と戸惑ってしまうほど目が離せなくなる。

逆に、本格的なアクションやド派手なVFXを期待している人には物足りないかもしれない。舞台のほとんどが室内で展開されるため、場面転換は少なく、地味な印象を受けるかもしれない。しかし、その限られた空間で繰り広げられる頭脳戦こそが魅力なので、そこに惹かれる人にとっては至福の時間になるはずだ。社会の厳しさや人間の二面性を描きつつも、最後にはそれなりのカタルシスが用意されているので、「観終わった後に重苦しい気分だけが残る」という作品ではない。むしろ、本作を通じて“人は何を隠し、何に惑わされるのか”を考える絶好の機会になるだろう。

こちらの記事もいかがですか?

佐野勇斗さんの出演映画はこちら

まとめ

映画「六人の嘘つきな大学生」は、就活が舞台の密室ミステリーでありながら、人間の多層的な部分を抉り出す深みがある作品だ。

仲の良いグループが突如として分断され、互いの秘密を暴露し合う姿は、観ていて息が詰まるほどの緊張感がある。それでも、誰か一人だけを悪者として終わらせるわけではなく、“人には多面的な側面がある”という真理が見えてくるのが興味深い。鑑賞後には、単なるエンターテインメントの枠を超えて、自分自身や周囲の人間関係を見直したくなるだろう。コメディ要素や派手なアクションはないが、俳優同士の対話劇から生まれるテンポの良さや、絶妙に積み上げられた伏線が見事に回収される展開は、観客を最後まで飽きさせない。初見で「なるほど」と思った伏線も、再度観れば異なる視点で味わえるかもしれない。

そんな発見に満ちた本作は、就活経験がある人にも、これから社会に出る人にも、一度は観ておいて損はないミステリー映画といえる。