映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!

本作は1985年に公開されたSFコメディの金字塔であり、「タイムマシンで過去に飛んだら、自分の存在が危うくなるかもしれない」という奇想天外なアイデアを、見事なユーモアと軽快なテンポで描ききっている。

高校生のマーティと、怪しげな天才科学者ドクによる騒動は、一歩間違えればSFホラーに転んでもおかしくないほどスリリングだが、なぜかほっこりしてしまうところが醍醐味だ。加えて、80年代アメリカのポップカルチャーの香りや、主人公がギターでかき鳴らすロックサウンドなど、レトロフューチャー感満載の要素がぎっしり詰まっている。

結果として本作は、一大社会現象を巻き起こし、多くの続編や関連グッズを生むほどの大ヒットを記録した。今なお語り継がれ、その魅力は色あせるどころか輝きを増している。タイムトラベルのワクワク感に浸りたい人も、懐かしの80年代カルチャーを堪能したい人も、本作を語らずして時空を超える話はできないかもしれない。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の個人的評価

評価: ★★★★☆

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の感想・レビュー(ネタバレあり)

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、1985年の公開以来、SF映画のみならずエンターテインメント全般の歴史を塗り替えた一作である。まず注目すべきは、その設定の突拍子もなさだ。天才科学者ドクが開発したタイムマシンが、なぜかスポーツカーのデロリアンであるという時点で、「何を血迷ったんだゼメキス監督!?」とツッコミたくなるが、観終わる頃には「デロリアンじゃなきゃ嫌だ」と思わせてしまうほど説得力があるのが面白い。過去を変えれば未来も変わるというタイムパラドックスをコメディタッチに仕上げた手腕は見事であり、マーティとドクの凸凹バディ感がスリルとユーモアを絶妙にブレンドしている。

物語は、ロックとスケボーを愛するイマドキ高校生のマーティが、ドクの実験に巻き込まれ、1955年の世界へ放り出されるところから一気に加速する。ここで現れる若き日の両親が、見るからに冴えない父と、おとなしいようで意外と積極的な母という珍妙な組み合わせ。しかも母親が自分に惚れてしまうという、あまりに気まずい展開が待ち受ける。この「ママが自分にベタ惚れ」という状況は、人によっては禁断の気持ち悪さを感じるかもしれないが、そこをさらりとコミカルに描くことで、不思議な人間ドラマに仕立てているのが本作の妙技だ。

さらに注目したいのは、タイムパラドックスを巡る緊張感だ。マーティは両親を無事に結びつけなければ、自分の存在が消えてしまう危機に陥る。写真の自分の姿が薄れていくシーンは、後のタイムトラベル作品がこぞって真似した名演出であり、「もし自分が過去に干渉しすぎたら…」という背徳感を視覚的に見せつけた。観客はハラハラドキドキしつつも、マーティがなんとか父に自信を持たせ、母の好感度を上げようと奮闘する展開に笑いつつ応援してしまう。と同時に、彼らが一歩でも道を踏み外したら一大事というスリルが常に付きまとうので、緩急のバランスが絶妙なのである。

演技面では、マイケル・J・フォックスの軽快な動きと若々しい魅力がひときわ光っている。何しろ彼は、当時撮影スケジュールが超過密で、昼間はドラマの撮影、夜中は映画の撮影という離れ業をこなしつつ、このマーティというキャラクターを生き生きと演じたというのだから恐れ入る。また、クリストファー・ロイド演じるドクは、白髪を振り乱して奇抜なセリフを放つ怪人物だが、その裏には科学者としての真摯な探求心と、マーティへの友情がきっちり描かれている。こうした相棒同士の信頼感があるからこそ、大胆なタイムトラベルの冒険譚にも妙な説得力が生まれるわけだ。

そして、作品を盛り上げる一翼を担うのが音楽である。特にヒューイ・ルイス&ザ・ニュースによる「The Power of Love」は、本作を象徴するテーマ曲としてもおなじみだ。かと思えば、マーティが過去の世界で披露するロックンロールの名曲「ジョニー・B.グッド」は、当時の人々に「なんだその前衛的なギターさばきは!?」と衝撃を与えるというギャグ的要素を盛り込みながら、観客には痛快極まる音楽シーンとして刻み込まれている。こういった音楽とドラマの融合によって、観客のテンションは常に最高潮に引き上げられ、クライマックスでの雷を利用したタイムトラベル・リターン作戦を最高に盛り上げる。

また、欠かせないのが、多くのトリビアや撮影秘話だ。本作が初期段階では「冷蔵庫でタイムトラベルする」構想だったとか、マーティ役が当初エリック・ストルツだったがイメージに合わず途中交代したとか、撮影現場でさまざまな難題を乗り越えてきた点にプロジェクトX的なドラマを感じる。もしデロリアンではなく冷蔵庫を使っていたらと思うと、あのクールなカーアクションの爽快感は生まれなかっただろうし、マイケル・J・フォックスほどのエネルギッシュなマーティ像はなかったかもしれない。そう思うと、この映画の成功は偶然の産物ではなく、いくつもの奇跡が重なった必然なのだと感じる。

社会的影響にも触れないわけにはいかない。本作は公開当時から大ヒットし、続編の製作を促したばかりか、いわゆる“フューチャー現象”を巻き起こした。デロリアンやホバーボード(2作目に登場)といった近未来ガジェットに人々が熱狂し、ナイキの自動靴紐スニーカーに代表されるような「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にインスパイアされた実用品が開発されるなど、作品世界が現実社会にも影響を与え続けた。あの印象的な時計台や、雷にまつわるエピソードは、今やアメリカの小さな町にも“未来を変えるかもしれない”という夢を与えたと言える。

一方で、客観的に見れば、ツッコミどころも無いわけではない。タイムトラベルにおける因果関係の矛盾を真面目に追及すると、「あれ、過去であんな大事件を起こしておいて、どうして未来がそこまで平然としていられるの?」という疑問がわく。だが、そのあたりは勢いとユーモアで乗り切ってしまうのが、いかにもハリウッド大作らしい大らかさだ。ヘリクツをこねる前に「いや、面白いから細かいことはいいんだよ!」と言わんばかりの説得力がある。いわゆる“細けえこたぁいいんだよ”精神で勢いを最後まで保ち、観客をワクワクに巻き込むことに成功している点は評価に値する。

まとめると、時代を超越したアイデアとキャラクターの魅力、そして音楽を中心とする演出が三位一体となった傑作である。一方で、ややご都合主義に見える部分や、過去と未来を自由に行き来しすぎる点が散見されるため、完璧な100点満点の仕上がりというよりは、ちょっとした荒削り感も含めて“愛される名作”だと言えよう。笑いとスリルを共存させつつ、家族愛や若者の冒険心を温かく描いたその姿勢は、人類の永遠のテーマである「もしあの時こうしていたらどうなっただろう?」という妄想を最高の形で体現しているのではないか。

だからこそ、時空のズレを突っ込みたい専門家タイプから、単純にお祭り騒ぎを楽しみたいライトユーザーまで、あらゆる層がこの作品を愛し、語り継いできたのだろう。大げさなようだが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が今なお盛り上がるのは、未来であれ過去であれ、希望と不安が渦巻く人間模様はいつの時代も変わらないのだというメッセージが込められているからかもしれない。どこかでドクとマーティのような奇天烈コンビが、「もっと面白い明日」を探しに旅立っている――そう思えば、私たちの現実世界も少しだけワクワクするではないか。

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はこんな人にオススメ!

本作をおすすめしたいのは、まず何よりもタイムトラベルものに目がない人だ。昔の雑誌の「未来の生活はこんな風になる!」特集をワクワクしながら読んでいたタイプにはたまらない設定が満載である。さらに、80年代カルチャーをとにかく楽しみたい方にもピッタリだ。マーティのファッションやサウンドトラックはもちろんのこと、町の映画館やカフェの様子まで、80年代ならではの香ばしさが詰まっているので、「ああ、当時はこんな空気感だったのか」と懐かしい感情や新鮮な発見が得られるはずである。

また、ちょっとドジな自分の父母が若い頃はいったいどんな人間だったのだろう、という妄想をしたことがある人にもオススメだ。マーティが過去で目撃する両親の姿は、ある意味で「人間誰しも、若いときはクレイジーで情熱的」という真実を浮き彫りにする。これを観た後に、自分の両親に「そういえば高校生の時ってどんな感じだったの?」と聞いてみたくなるかもしれない。さらに、本格的なSFというよりは軽快なコメディを求める層にもピッタリだ。どシリアスなタイムパラドックス議論よりも、「まあ細かいことは気にせず楽しもう!」というノリで盛り上がれるので、気負わずに映画を満喫できる。

要するに、本作はロックが好きな人からファミリー層まで幅広く刺さる作品だ。ビフをはじめとするちょっと憎めない悪役の扱い方や、テンポ良く展開していくストーリー構成も、老若男女問わず楽しめる理由の一つだと言える。タイムマシンで人生のやり直しを想像したことがある人なら、一度は観ておくべき名作である。

まとめ

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、SFコメディの枠を超えて、時代そのもののアイコンになった作品だと言えよう。タイムトラベルのワクワク感と、その裏に潜む家族愛や自己発見のテーマが、観る者の心を揺さぶる。デロリアンがいつ飛び立ってもおかしくないワクワク感を提供しながら、意外と深いメッセージを散りばめているのが憎いところだ。

もちろん、タイムパラドックスや「そんなのアリなの?」といったツッコミどころはあるが、それをも包み込むエネルギッシュな物語性とキャラクターの魅力が、本作を時代を超えて語り継がれるエンタメ大作に仕立て上げている。「大真面目にバカバカしいことをやる」というハリウッド的エッセンスを最高に味わいたいなら、やはりこの作品は外せない。30年以上経っても色あせず、むしろさらに輝くタイムトラベル映画の金字塔として、ぜひ一度は観てほしい一本である。