映画「秒速5センチメートル」の感想・レビューをネタバレ込みで紹介!
本作は、新海誠監督の美麗すぎる映像美と、少年少女の淡い恋心を中心に据えた物語として有名である。とはいえ、ただの青春恋愛アニメかと思いきや、観る者によっては「えっ、これって切ないだけなのでは?」と突っ込みたくなるようなドラマが詰まっているのも事実だ。何しろタイトルからして文学的オーラ全開だが、その実、雪に阻まれた電車が進まない場面では「駅長さーん! どこかにドクターイエロー落ちてませんか?」と心の中で叫びたくなった視聴者も少なくないはず。
そんなある意味“激辛”なポイントが満載の映画「秒速5センチメートル」を、ネチネチと噛み締めながら掘り下げてみることにする。青春の輝きと痛みにズキズキ共感しつつも、「ちょっと待て、新海作品ってこんなに胸をえぐるのかよ?」と動揺必至の展開を、あえて笑い飛ばしながらチェックしていくのが今回のミッションだ。
そこでこの記事では、秒速5センチメートル 感想・レビューというキーワードでも検索上位を狙いつつ、本作の核心部分にもガッツリ切り込みたいと思う。少しでも「青春って甘酸っぱいなあ…そしてちょいと苦いなあ…」という読後感をお届けできれば幸いである。さて、早速ではあるが、踏み込んだネタバレも含め、本作の魅力と“痛み”を存分に語っていこう。
映画「秒速5センチメートル」の個人的評価
評価: ★★★☆☆
映画「秒速5センチメートル」の感想・レビュー(ネタバレあり)
本作「秒速5センチメートル」は、桜の花びらが散る速度にちなんだタイトルを持つだけあって、儚くも繊細な恋物語がメインテーマである。だが、その純真さゆえに、視聴後には「もう少し報われてもいいんじゃないの?」とモヤモヤが尾を引く作品でもある。
3章構成の中で、時間と距離に翻弄される登場人物の心情がじっくりと描かれているが、同時に、「人生なんて思い通りにいかないもんだよね」と大人の苦い笑みがこぼれてしまうドラマにも仕上がっているのがポイントだ。以下、ざっくり3章を振り返りつつ、良い点や気になる点を語ってみる。
第1章「桜花抄」のあたり
幼き頃の遠野貴樹と篠原明里の友情…いや、間違いなく友情以上の感情を抱く二人のほろ甘い関係が描かれる。小学生時代に芽生えた淡い想いというのは、日本全国どの地域でも繰り広げられがちな鉄板エピソードなのだが、そこは新海監督。電車の窓から見える風景と、降りしきる雪の描写にやたらリアルな力が注がれていて、「こんなに電車が止まるんかい!」とツッコミを入れる余地を許さないほど、映像の美しさに圧倒される。
ただ、あまりに映像が綺麗すぎて、肝心の再会シーンは「雪じゃなくて花びらでも飛んでるんじゃ?」と錯覚するレベルだ。このあたり、新海節と呼ばれる背景作画の芸術性が炸裂しており、「アニメでしかできない美的表現ここに極まれり!」と感嘆する一方で、ドラマの地に足が付いていないと感じる人もいるかもしれない。もっとも、二人の再会を阻む雪そのものがドラマを象徴していて、「いやいや、ちょっと距離あると人生思うようにはいかんのよ」というメッセージがギュッと詰まっているようでもある。美しさに酔うか、あるいは現実とのギャップに冷めるかで評価が大きく分かれそうな第一章といえよう。
第2章「コスモナウト」のあたり
舞台が種子島に移り、今度は高校生となった貴樹の隣で澄田花苗が切ない片思いをくすぶらせる。ロケット打ち上げのシーンが綺麗だというレビューはよく目にするが、「秒速5センチメートル レビュー」なんかで検索すると、この花苗の報われなさに関する嘆きも大量に見受けられる。貴樹は明里への未練にどっぷり浸かったままなので、花苗は永遠に“いい人止まり”状態。
一方で、花苗視点のモノローグを軸に進んでいくこの章は、どちらかといえば「どうにもならない片思いを抱える側の苦悩」がリアルに描かれていて、多くの視聴者に刺さるドラマでもある。ロケットが空へ飛び立つたびに、恋の加速を期待してしまう花苗の胸中に共感するか、「打ち上がるのはロケットだけで恋は上がらないんだな」と自虐的に笑うかは人それぞれ。可哀想な花苗に光を当てたい気持ちはあるが、貴樹の心がひとつの思い出に縛られたままだとどうにも進展しない。ここがまた青春のもどかしさを象徴しており、良くも悪くも“可もなく不可もなく”なムードを醸し出している所以でもある。
第3章「秒速5センチメートル」のあたり
タイトルでもある最終章では、ついに大人になった貴樹と明里のその後が描かれる。仕事に疲れ、恋もなんだかうまくいかず、ガンガン消耗している貴樹の姿に、「ああ…現実ってこんなもんだよね」と妙に納得してしまう社会人は多いのではなかろうか。しかも、もはや彼の中には明里への執着と諦念がごちゃ混ぜ状態。
後半の印象的なシーンといえば、線路の向こう側ですれ違う二人——のはずが、遮断機が上がったときにはもう姿が見えなくなっている。あそこで「あれっ?」となる演出は好みが分かれそうだが、自分はむしろ「あっ、もう会えないんだな」と妙に納得してしまった。青春の輝きが過ぎ去った後には、もう二度と同じ景色が見えない。人は変わり、環境は変わり、記憶だけがやけに鮮明に残る。そんなわかりやすすぎるまでの切なさこそ、本作の真骨頂だと思う。
だが、「切なさは分かったけど、それならもうちょいドラマティックにしてくれよ!」という声があるのも事実である。実際、全編を通してセリフよりも風景描写が上回っており、キャラの感情が台詞でぶつかり合う場面はあまり多くない。ゆえに、物足りなさを感じる視聴者もいるのだろう。ストーリーが淡々と進むぶん、貴樹の悶々とした想いが行き場なく彷徨い続け、視聴後はスッキリしない気持ちだけが溜まってしまう。人によってはそこがリアルだと評価するし、逆に「映画なんだからもう少しエンタメ要素を!」と叫びたくなるかもしれない。
とはいえ、美麗な映像と抒情的な音楽には抗いがたい魅力がある。本作のために開発されたかのような神々しい背景美術は、まるで現実世界を超越した“もうひとつの現実”を作り上げているかのようだ。音楽もまた静かに心に染み入るメロディで、「これぞ新海ワールド」と声を大にして言いたくなる。
総合すると、「秒速5センチメートル 感想」としては、「美しさと切なさで心をギュッと締め付けられるが、同時にわりと地味で気が滅入る」というのが率直な印象だろう。決して大絶賛するわけではないが、青春の儚さを描いた作品としては十分すぎるほどのインパクトがある。一度観れば、「あの透き通った桜並木の風景と、雪のホームでのキス未満の空気感」をずっと忘れられなくなるはずだ。可もなく不可もなく…いや、ちょっと苦味のある青春映画としては良作だと思う。
以上、やや辛口を交えながらも絶妙な塩梅を評価した結果、本作は星3つに落ち着く。苦いが美しい、そして“諦め”と“未練”が入り交じった物語が見たい人にはきっと刺さる作品である。ストレートなハッピーエンドを求めるならば肩透かしかもしれないが、そこにこそ秒速5センチメートル レビューの肝となる“切な味”が潜んでいるのだ。
映画「秒速5センチメートル」はこんな人にオススメ!
まず、究極に美しいアニメーション表現を求める人には強く推したい。新海誠監督の持ち味である、背景美術の圧倒的クオリティを堪能するにはベストな作品だからだ。特に、桜や雪、星空など、自然の風景が「こんなにロマンチックでいいんだろうか?」と思うほど幻想的に描かれているので、ビジュアル重視派にはドンピシャである。
また、淡くも切ない片思いの経験がある人には、貴樹や花苗の葛藤がズシリと胸に刺さるだろう。自分の恋愛が成就しなかった記憶が呼び起こされて、「どうしてあのときもっと勇気が出せなかったんだ!」と叫びたくなるかもしれないが、それも一種のご褒美だと思って受け止めてほしい。
さらに、いわゆる“すれ違い”や“タイミングの悪さ”に共感できる人にもオススメだ。人生はときに不条理なまでに歯車が合わず、気づけば雪の降るホームや線路の向こう側で、相手の姿が見えなくなってしまうもの。本作はそんな苦味を美しい背景と静謐な音楽でコーティングしながら描写しているので、「わかる…わかるよ、その気持ち」と涙腺を刺激される可能性が大である。
反対に、頭をカラッポにしてポップコーン片手に楽しめるようなエンタメ活劇を求めている人には、あまりオススメできない。終始しっとりしたムードで進行し、実際のところ笑える要素は皆無に近い。しかしその分、心を静かに浄化させる力はあるため、「ちょっと現実逃避したい…でも甘ったるいだけじゃ物足りない」という人にはぴったりだと思う。要するに、淡々とした余韻を味わいながら、自分の過去の思い出をほじくり返して涙するような時間が欲しい方にドンピシャな作品である。
まとめ
映画「秒速5センチメートル」は、一見すると淡く儚い恋物語なのだが、その奥底には視聴者の心をえぐるような苦さが隠されている作品だ。電車がなかなか進まない雪の夜や、種子島のロケット打ち上げ、そして線路の向こうをすれ違うシーンなど、印象的な映像が次々に登場し、「こんなに切なくても大丈夫?」と心配になるくらいの孤独感や郷愁を誘ってくる。
とはいえ、その切なさがこの作品の最大の魅力でもある。可もなく不可もなくと言いつつも、一度観ると忘れられないビジュアルと音楽に取り憑かれる可能性大だ。恋愛のもどかしさ、叶わなかった初恋、そして大人になっても引きずる感情…そういった甘酸っぱさの詰め合わせを受け止められる人なら、この作品の余韻を存分に味わえるだろう。
「何もかも上手くいく恋物語じゃ物足りない!」という天邪鬼な方や、現実の厳しさを痛感しながらも、どこかで光を求めてしまう人にこそオススメだ。鮮烈でありながらもどこか静寂をたたえる世界観が、あなたの思い出の扉をそっと開けてくれるかもしれない。